2023年に起きたアゼルバイジャンとの軍事衝突の結果、アルメニア系勢力が事実上敗北したことによりアルツァフ共和国(旧ナゴルノ・カラバフ共和国)は2024年1月1日で消滅しました。
このページについては、かつて存在した未承認国家の紹介記事として残しておきます。現在は状況が完全に変わっていますので、あくまで過去の記録として読んでください。
アルメニアから入ることができる未承認国家「ナゴルノ・カラバフ共和国」を2015年5月に旅行してきましたので、その体験をもとに主な見どころを紹介します。なお、旅行者が一般的な手段で訪れることができる場所のみ紹介しています。
ナゴルノ・カラバフ共和国への行き方については前回の記事を参照してください。
ステパナケルト
ナゴルノ・カラバフ共和国の首都。人口約5万人のこじんまりとした町で、道路や公園などはきれいに整備されています。この町を見る限り、アゼルバイジャンとの戦争の跡は見られません。
アルメニアの革命家ステパン・シャウミン像。ステパナケルトという市名になっている人物で、アルメニアの英雄みたいな人。
サッカースタジアムもあります。
この階段の両側に並んでいるオブジェが面白い。
遊園地もあります。
暗くなってからも危険そうな雰囲気はありませんが、もちろん最低限の注意は必要です。
アパートの間に洗濯物を干すためのワイヤーが張られているのも面白い光景です。
それほど大きな町ではないので、中心部だけなら半日ほどあれば回れます。後述のシューシやガンザサールに行った後、夕方から歩いても夜景を楽しめるはずです。
「我らの山」像
ステパナケルト郊外にあるモニュメント。ナゴルノ・カラバフを紹介するサイトには必ず載っている有名なモニュメントです。
モチーフは老夫婦だそうですが、モアイみたいにも見えます。
我らの山が見ている景色。
行き方ですが、ガンザサールへ向かう途中にあるので私は車で移動する際に立ち寄ってもらいました。ミニバスでも行けなくはないと思いますが、ガンザサールとセットで訪問するのがお勧めです。
シューシ
ステパナケルトからミニバスで30分ほどのところにある町。旧ソ連時代、アゼルバイジャンの中にあるナゴルノ・カラバフ自治州はアルメニア人が多数を占める地域でしたが、その中でもシューシだけは例外的にアゼルバイジャン人がほとんどだった町です。
つまり「島の中の島」みたいな感じの町で、1990年代初めのナゴルノ・カラバフ紛争ではアゼルバイジャン勢力の拠点になった場所です。最終的にはアルメニア勢力に敗れ、陥落後の民族浄化によってアゼルバイジャン人たちは去っていきました。かつての住居が廃墟になって残っていて、戦争の跡を見ることができる町になっています。
(2021年 追記)
2020年に発生したナゴルノ・カラバフ紛争で、この町はアゼルバイジャンによって制圧されました。その後の停戦協定により、シューシはアゼルバイジャンに返還されることになっています。
シューシ陥落のときにアゼルバイジャン大統領が「すべての建物を元通りに復元する」と声明を出していますので、このときに見たモスクやハーンの宮殿などは修復されることになるはずです。このページに載せているたくさんの廃墟は、アルメニアが実効支配していた当時の風景として見て下さい。
この旅行当時、シューシで出会ったアルメニア人たちが今後も住み続けられるのか不明ですが、いつかまたこの町を訪れてみたいものです。
シューシへはステパナケルトのバスセンター(エレバンからのミニバスが到着する場所)から行くことができます。運賃は200ドラムでした(2015年時点)。
かつてアゼルバイジャン人が住んでいた建物は廃墟になっています。なんだか痛々しい。
これらのアパートに住んでいた人たちは、今はアゼルバイジャンで国内難民として生活しているそうです。
ミナレットがあるモスクも廃墟。
これはハマムだった建物かも。
ハーンの宮殿という重要な建物まで廃墟になっています。
他にも町は廃墟だらけ。
一方でアルメニア人による入植も進んでいます。ガザンチェツォフ教会という新しい教会が建っていました。
歩き疲れたらカフェもあります。
戦争について思いをはせるには適した場所かもしれません。
ステパナケルトからミニバスが1時間おき程度には運行しているようなので、ナゴルノ・カラバフ滞在中は訪問してほしい町です。
ガンザサール修道院
ステパナケルトから約40キロほどの Vank 村にある修道院。ここはナゴルノ・カラバフ紛争時にも特に被害は受けなかった地域だそうで、13世紀に建てられた修道院が残っています。
行き方ですが、ステパナケルトから Vank 村まではミニバスも運行されているようです。ただし運行本数は多くはなく、また修道院は丘の上にあるので麓の Vank 村から山道を1時間ほど歩く必要があります。このため、ステパナケルトからタクシーを使うのが無難です。
私はノープロブレム親父(前回の記事を参照)と交渉してステパナケルトからアグダム遠望地点~ティグラナケルト~ガンザサール~アマラス~ステパナケルトと1キロ当たり150ドラムで移動してもらいました。効率よく回ることができるので車をチャーターするのもお勧めです。
ガンザサールへ向かう途中の車窓風景もきれいです。
麓の Vank 村に到着。学校もありました。
丘の上に修道院が建っています。13世紀の古い建物です。
修道院の内部。
修道院が建っている場所が丘の上なので、眺めも抜群です。
修道院だけでなく眺望も本当にきれいなところです。ステパナケルトからは少し距離がありますが、ぜひ行ってみてください。
旅行者が一般的に訪れる場所は上記の通りなんですが、私は2015年に旅行した際にアマラス(Amaras)というところにも行ってきました。普通は行かないような村らしいのでここでは紹介していません。興味があれば本館の個人旅行記を参照してください。地元の人たちの誕生日会に参加しています。
ナゴルノ・カラバフは自然が美しいところです。もっとも、だからこそアゼルバイジャンも奪還を諦めておらず、いつまた緊張が高まるかわからない地域でもあります。このページを見て興味を持った方は、最新情報を確認したうえで、あくまで自己責任で旅行してみてください。
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