【長崎県佐世保市の針尾無線塔を紹介します】

2022年3月に西海市で行われた「さいかい里山の春まつり」を訪れ、その帰りに「石原岳森林公園」という若干B級スポット的な公園を散策してきました。当サイトに、それぞれの訪問記を載せています。

そして、このときはもう1ヶ所「針尾無線塔」も見てきました。場所はこちら。

佐世保市在住なので、この無線塔はもちろん何度も遠望したことがあります。しかしながら、平成25年に周辺が整備され一般公開されているというのは知っていたものの、近くまで行ったことはありませんでした。今回、初めて無線塔を近くで見ることができています。

旧佐世保無線電信所(針尾無線塔)

西海市から西海橋を渡って佐世保市に入り、国道202号線を離れて針尾無線塔方面へ。途中の道路も意外と整備されていて、快適に移動できました。わりと広い駐車場に車を停め、近くに見える無線塔へ。

この無線塔については、このページでは詳しく説明はしないので Wikipedia や佐世保市の紹介サイトなどを参照してください。検索すれば来歴などはすぐに調べられます。

当サイトでは案内書きの写真のみを載せておきます。なお、入場料等は必要なく、無料で入ることができます。

無線塔は正三角形に3本立っていて、内部を見学できるのはそのうちの1本(3号無線塔)のみ。まずは、そちらへ向かいます。塔の高さは137メートル。

満開の桜と一緒に写真を撮ってみました。

塔の近くには、3号無線塔の案内書きもありました。建設途中の写真も載っています。

では、ここから塔の内部へ。

内部に入ると、おそらくは昇降装置の跡が残されています。かつてはたくさん設置されていたはずの機器類も撤去され、ガランとした感じ。

上を見上げてみました。梯子が伸びていますが、さすがに上に登ることは禁止されています。ここから見るだけ。

アップで撮った写真。なんというか、芸術的な美しさがあります。こういう風景を見ることができる場所は、おそらく日本にはほとんどないはず。

私は高所恐怖症ではないので登ってみたい気持ちもありますが、禁止されているので諦めます。いつか、イベントなどで登頂する機会が開催されるのであれば、参加したいものです。

内部の風景をしばらく眺めた後、外に出て周囲を歩いてみました。見上げると、高さに圧倒されます。

コンクリートのアップ。完成したのが1922年ということなので、この訪問時(2022年)でちょうど100年になります。それにも関わらず、見てわかる通り100年経つというのにコンクリートの劣化がほとんど見られません。

これは、コンクリートの材料として海砂ではなく川砂が使用されているため。現在の構造物は主に海砂を使うので、どれだけ脱塩処理しても完全には塩分を除去できず、それがコンクリートの寿命を短くする要因になっています。

それに対し、古い時代のものは塩分が含まれない川砂を使っているため、現在のものよりも寿命が長くなるという逆転現象が起きています。この無線塔もコンクリートは本当にきれいです。もう、現在ではこのような構造物は作れないでしょう。

塔の根元から周囲を眺めると、菜の花が満開でした。

遠くに見えるのは針尾瀬戸と新西海橋。

余談ですが、私は新西海橋の建設に少しだけ関わっています。といっても工事ではなく、設計段階での「新西海橋が針尾瀬戸を航行する船舶に与える影響について」の調査なんですが、自分が少しでも関わった大型構造物を眺めるのは感慨深いものです。

20年以上前に行った調査のことを懐かしく思い出しながら、桜と塔を見上げてみました。

続いて「電信室」も見学できるということなので、そちらへ行ってみます。遠くに見えるのは2号塔で、ここには近づくことはできません。

こちらが電信室。

まずは正面から眺めてみました。建物を覆うツタがいい感じです。

この廃墟感がいいですねえ。マニアにはたまりません。

建物の内部には、こちらから入ることができます。

中に入るとヘルメットが並んでいました。ちゃんと装着してから、先へ進みます。

建物の中は、機器類はほとんど残っていません。外観とは違って、そこまでの廃墟感はないかも。

唯一、こちらの「倉庫」だけが激しく劣化していました。

ここに保管されていたのがバッテリーに使用される硫酸だったためだそうで、化学薬品を長く保管していたらこういうことになるみたいです。

この建物で一番広いスペースが「機械室」。奥に見えるクレーンは1921年製だそうです。

説明書きによれば「世界で5基しか製造されなかったアレクサンダーソン型高周波発電機が設置されていた」そうです。今は何も残っていません。

電信室を出て、有刺鉄線越しに2号塔を眺めてみました。

これで見学できる範囲を見終わったので、管理所の方に「コンクリートが本当にきれいで、感動しました」と挨拶してから駐車場へ。出発する前に、駐車場から1号塔へ行けることがわかり、そちらへ歩いてみました。

扉が閉まっているため、中に入ることはできません。

1号塔の眺め。この塔もコンクリートにはまったく劣化が見られません。

こういう正統派の遺構を「B級スポット」と呼ぶのは気が引けますが、非常に興味深い施設であることは間違いないと言えます。興味を持った人は、ぜひ訪問してみて下さい。

西海橋公園

先ほど遠望した新西海橋の近くに公園があり、ここからは逆に針尾無線塔が遠望できます。この公園にも立ち寄ってみました。ここから眺めると、無線塔の高さがわかるはず。

針尾瀬戸と無線塔の眺め。針尾瀬戸は大村湾と外海をつなぐほぼ唯一の水道で、最大で8ノットにも達するという強烈な潮流が見られる場所でもあります。ただ、このときは憩流の時間帯だったため、流れはそれほど見られませんでした。

灯台があるのは「弁天島」という小島。こうして眺めてみると、3本の無線塔が並んでいるのは実に独特の眺めと言えます。こんな異様な風景が見られるのは日本でもここだけのはず。

新西海橋には、車道の下に遊歩道が作られています。ここを歩いて対岸へ渡る途中に眺めた(旧)西海橋。旧といっても、まだ現役で国道202号線が通っています。

遊歩道の途中には、もちろん下を眺められる場所があります。高所恐怖症の人は、これも怖いと思うものなんでしょうか。

対岸の公園に渡り、新旧の西海橋を眺めてみました。

ちなみに2つの橋でアーチの形が違うのは、新西海橋では航行する船舶への影響が考慮されたためです(旧西海橋のようなアーチ橋は、大型船は正確に水路の中央を通らないといけないため、操船者への心理的な負荷が大きい)。この橋の形式は私が関わった調査によって決定されました。これも「地図に残る仕事」と言えるんでしょうかね。ちょっと自慢したい気持ち。

この公園からも、遠くに針尾無線塔が眺められます。

その後、しばらく橋周辺の遊歩道を散策。西海橋はアーチの下まで近づくことができます。前述の調査の際、このあたりの場所に数日間常駐して、ここを通航する船舶の実態調査を行ったこともありました。20年以上前、季節が冬だったので寒い思いをしながら船舶の名前や大きさを記録していたのが懐かしい。

桜の時期なので、例年であれば花見をしている人も多いはず。このときはコロナという時節柄あまり多くはありませんでしたが、それでも公園内は観光客で賑わっていました。「さいかい里山の春まつり」「石原岳森林公園」「針尾無線塔」「西海橋公園」を見て回る充実した1日は、これで終了。


翌年の2023年も「さいかい里山の春まつり」へ行ってきましたが、その帰りに西海橋水族館の跡地に立ち入れるかどうか調査してきました。興味があれば、こちらもどうぞ。

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