大分県の山奥に「正雲寺」という寺院があります。ここはかつて「善徳院」という名前で、非常に特徴的な門があることから珍寺マニアの間では有名な寺院でした。
その後、経済的な事情から福島県にある「正雲寺」という寺院の大分分院になり、現在に至っています。以前から興味はあったものの、善徳院の時代には訪問する機会がありませんでした。
個人的に2017年から趣味で乗馬を始めており、この寺院のことをふと思いついて調べたところ湯布院の乗馬クラブからそう遠くないことがわかりました。このため、2022年の桜の時期に行ってみることにしました。
よく晴れた日曜日、由布岳 I.C. の近くにある乗馬クラブで午前中のレッスンを終えてから正雲寺方面へ。今は事前に行き方を調べていなくても Google Map が音声案内してくれるのですから、便利な時代になったものです。
途中の山道もわりと整備されていて、静かな集落の中にある寺院に30分ほどで到着しました。この日は4月3日で、桜が満開。
そして、この寺院が珍寺マニアの間で有名になった理由が、こちらの合掌門。
いやあ、これはすごい。こんな独創的な造形の門があるのは、日本でここだけでしょう。
こんな形をよく思いついたものです。それに、服のしわまで細かく表現されているのもすごい。
快晴の青空と、桜と合掌門のコントラスト。なんともシュールな眺め。
この合掌門は善徳院の時代は金色だったそうですが、正雲寺になってから白色に変わっています。おそらく、法衣をイメージしているんでしょう。
門をくぐってから、後ろを振り返ってみました。
寺院とは関係ないんですが、この崩れかけた蔵もいい感じですねえ。実は宝物が埋もれていたりして。
では、寺院内へ。最初に見えるのが、こちらの馬頭観音。「動物守り御本尊」だそうです。
馬頭観音は憤怒の姿が特徴なので、この観音像も威圧的な表情をしています。
馬頭観音の前は駐車場になっていて、ここに車を停めてから本堂へ向かいます。この坂道の先が本堂エリアで、金色の大きな観音像が見えています。
ありがとうの文字と、白い本堂。本堂の建物が見事なまでの純白なのがすごい。
本堂に参拝する前に「由布大観音」を見てみました。大きさは15メートルだそうで、迫力があります。
「願いが叶う由布大観音」と書かれていて、観音像の前に鐘があります。この鐘を鳴らしてから参拝。
満開の桜と由布大観音。
青空と桜と観音像の眺め。この時期の快晴の日にしか見られない景色です。
観音像の周囲にも、石像などがいろいろと並んでいます。
こちらは七福神の石像。
十八羅漢像もありました。
羅漢さんといえば、格好がそれぞれ面白いのが特徴。個人的に羅漢像の最高傑作だと思っている香港の萬佛寺ほどではないものの、ここの羅漢さんたちもよくできています。その中の一人、腹を割って話そうとする羅漢さん。
羅漢さんの中でも、最強レベルで変わった姿なのが「眉毛が異常に長い人」。この眉毛を石で表現したのがすごい。
香港の萬佛寺の風景を見たい人は、当サイト本館の旅行記を参照してください。
続いて、純白の本堂へ。
本堂内の写真は撮っていないので、紹介できるのはここまで。かなり立派な建物でした。
本堂の横に、こういう小道があります。
小道の終点には「愛児の家」という動物供養の観音像がありました。犬がリアル。
本堂の前に階段があり、寺院の前の県道に下りられるようになっています。石に刻まれた文字を見ながら、いったん県道へ出てみることにしました。
県道の向かい側から眺めた正雲寺。
周囲を少し歩き、桜を眺めながら寺院へ戻ります。
それにしても、桜が本当にきれい。この時期に来てみてよかった。
本堂横の壁に、こういう案内がありました。前述の通り、この寺院は善徳院から大分正雲寺に名前が変わっていますが、会津若松市にある本家「正雲寺」がペット供養に力を入れている寺院らしく、ここも今はペット関連が一番の推しみたいです。
「ご自由にお入りください」と書かれていたので、ペット専門斎場「合掌庵」に入ってみました。
ペット用の小さな火葬場、棚に並んでいる骨壺、「虹の橋伝説」という壁一面の動物たちの絵などがありましたが、写真は撮っていません。
個人的に、いつか柴犬を飼ってみたいという気持ちもあるんですが、その機会はないままです。今からでも飼えなくはないでしょうけど、特に「虹の橋伝説」を見ていると別れがつらそうです。犬は大好きなんですが、躊躇しそう。
境内には総合案内所がありましたが、この時間は無人でした。
境内の端には展望所がありました。この望遠鏡は無料。
遠くに見えるのは、左が由布岳で右が鶴見岳。この景色はなかなかのもの。
しばらく景色を眺めた後、最後に「由布美術館」に入ってみることにしました。
案内書きによると、世界中の名画が展示されているみたいです。入場料は500円。
寺院の関係者に連絡すれば鍵を開けてもらえるんでしょうけど、先ほどの総合案内所で待っていても誰も来ません。諦めようかと思い始めたころ、ようやく僧侶らしい人が現れて境内の清掃を始めたので、声を掛けて中に入ることができました。しかし総合案内所も開けっ放しだし、街中であれば不用心なんでしょうけど、ここでは普通のことみたいです。
その由布美術館の内容ですが、靴を脱いで中に入ると畳敷きの広い部屋がいくつかあり「西洋美術」「日本画」「掛け軸」「仏像」などジャンル別に展示されていました。「ピカソ」「シャガール」「ミレー」「ユトリロ」「横山大観」「竹久夢二」などビッグネームが並んでいましたが、さすがに本物ではないでしょう。
ただ、ミレーの「落穂拾い」のエッチング(有名な油絵を描く前の習作だそうです)は美術館イチ推しみたいだったので、本物かもしれません。あと王立クリスタル工場(1666年)製という「クリスタルトランペット」が見事だったので印象に残っています。
撮影禁止という表示はなかったものの、写真を撮るのは自粛しました。このため、有名作品の山を見たい人は直接訪れて下さい。
美術館を出て、周辺を歩いてみました。気になったのが、寺院の近くにあったこちらの建物。
庭が少し荒れてますが、廃墟ではなさそう。その庭に動物のオブジェが点在していました。
ペット供養の寺院だけに、ここも寺院に関係する建物かもしれませんが、よくわかりません。
寺院の境内に戻り、さらに散策。
満開の桜と一緒に、境内の風景を撮ってみました。
本当に、この季節に来てみてよかった。
合掌門を見ることが目的で訪問を計画している珍寺マニアの人は、ぜひ桜の時期に訪れることをおすすめします。
では、そろそろ訪問を終えて帰ることにしました。
合掌門を見るために訪れた寺院ですが、境内もきれいに清掃されていて雰囲気がよく、何より満開の桜がきれいでした。また来年、この季節に来てみることを考えています。
大分正雲寺の公式サイトはこちら。
この寺院が「善徳院」と呼ばれていた時代の風景については、以下のサイトを参照してください。
このページの上の方に載せている Google Map を見ると、この正雲寺の近くに「無量壽寺」という寺院があることがわかります。ちょっと気になったので、別の日に車で近くを通ってみたところ、とんでもない規模に驚かされました。車の中から眺めただけですが、いったいどれだけの面積があるのかというほど広大で、正門や仁王像などもとにかく巨大。
これは当サイトのネタにできるかも、と思って調べてみたのですが、次第に「この寺院には関わらないほうがよさそう」と思えてきました。これ以上は触れませんが、気になる人はネットで検索してみて下さい。当サイトでは今後も取り上げないことにします。
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