バルト諸国旅行記(1日目)

(1999.7.3) 福岡 ~ 成田 ~ Sankt Peterburg

前日の金曜の夜に長崎の自宅から福岡の実家に移動しておき、早朝に実家を出発。福岡に実家があると、こういうときに便利だ(長崎からだったら飛行機に間に合わない)。

7時25分発の日本航空380便で成田へ。機中では特に変わったことは無し。定刻通り9時5分に成田空港到着した。

成田空港には初めて来たが、予想よりはるかに大きい空港だった。飛行機から降りてシャトルバスに乗り、すぐ近くのターミナルに行くのかと思ったら、陸橋を渡ってかなり離れたターミナルまで移動。10分近くかかったような気がする。

ターミナルについてから、出発ロビーへ。まず、ブレーン企画のカウンターで航空券を受け取り、それからアエロフロートのカウンターで搭乗手続きをしなければならない。しかし、出発ロビーに着いてみると、広い空間に呆れるほどの人の波。そしてすごい数のカウンター。これなら福岡空港で出国する方がずっと楽だ。この空港を嫌う人が多いのも理解できる。

しばらくブレーン企画のカウンターを探し、ようやく見つけて航空券を受け取った。それからアエロフロートのカウンターに移動。それにしても、ツアー旅行客のほとんどが大きなスーツケースを持っているものだから、なんだか場所が狭く感じる。

搭乗手続きを済ませ、出国手続きへ。長い行列に並んでようやく出国。その後、「ロシア旅行にトイレットペーパーを持っていくことは常識」と聞いて用意していたのに忘れてきたことに気づき、出発前にティッシュペーパーを購入(結局、使うことは無かったが)。

1階のシャトルバス乗り場からバスに乗り、さっき通った陸橋を再び渡ってずいぶん離れた駐機場まで移動。初めて見るアエロフロート機が現れた。

飛行機は予想よりやや小さく、窓側が2列で中央が4列。搭乗率は90%程度のようである。サンクトペテルブルク行き590便の出発予定時刻は11時5分なのだが、30分ほど遅れて離陸した。

機内では、日本語のアナウンスはまったくなく、ロシア語と英語のみ。乗務員は全員ロシア人のようで、これで日本人のツアー客が大勢乗っていなかったら、「機内からすでにロシア」という雰囲気なのだろう。

サンクトペテルブルクまでの飛行時間は約10時間。シベリア上空を飛んでいるのだろうが、雲が多いため地上の景色はほとんど見えなかった。最初の機内食は、肉料理、魚料理、牛丼(!)からの選択で、乗務員が「ニク? サカナ?」と聞いてから配っている。「ニク」と言ったのだが、渡されたのはサーモンの料理。「Fish」と聞こえたのか? まあ、どちらでも良かったから構わない。

しかし、日本ではアエロフロートはあまりイメージが良くないようだが、今回乗った感じでは特に悪い印象はなかった。機内食も悪くはないし、サービスも悪いとは思わない。落ちることを心配する人がいるかもしれないが、アエロフロートの国際線は確か1回しか落ちたことはないはずである。目的地がロンドンやパリならロシアで一泊することなく乗り継げるはずだし、料金を考えたらかなりお薦めできる航空会社だと思う。乗りもせずにイメージだけで判断してはいけない。

そういえば、途中でちょっとした出来事があった。飛行機左側のかなり離れたところを他の飛行機がほぼ並行して飛んでいたのだが(ここまではそう珍しいことではない)、しばらく眺めているうちにだんだんと近づいてきて、アエロフロート機の上を横切って右側へと飛行して行った。最接近距離は数百メートルといったところだったと思う。このくらいの距離はニアミスとは言わないのか? 周りの日本人客は少し騒いでいたが。

着陸が近づき、次第に高度が下がってくると、地上の景色が見えるようになった。平原の上らしく、周りには山も海も見えない。地上に見える線路にカーブが無く、一直線に走っているのはさすがに大陸である。

出発は30分ほど遅れたが、途中で遅れを取り戻したらしく、ほぼ定刻の16時10分、サンクトペテルブルク・プルコヴォⅡ空港に到着。

成田~サンクトペテルブルクのアエロフロート機

飛行機を降りてバスに乗り、すぐ近くのターミナルビルに移動。着いたところに入国審査の長い行列ができていた。列に並ぶ前に、乗ってきた飛行機の写真をガラス越しに撮った(上の写真)。ただし、旧ソ連地域では空港での写真撮影は禁止されている場合が多いそうで、見つかるとフィルムが没収されることもあるそうである。私の場合は、たまたま見つからなかっただけかもしれない。

1時間近くかかってようやく入国審査を終え、空港出口へ向かう。出口付近に日本人ツアー客が集まっていて、人数確認を行っているようだった。彼らはやがて観光バスに乗って行ってしまったが、こちらはまず市街地への行き方を調べなければならない。といっても、最寄の地下鉄駅のマスコーフスカヤ駅まで13番のバスで行けばいいということだけは既に調べていた。

まず、空港内の両替所で50ドル両替することにして、行列に並んだ。ところが、前の人の順番になったときに、そこの両替所のルーブルが無くなってしまい、出発ターミナルにある別の両替所に行くことになった。いったん空港の外に出て、出発ターミナルへ向かう。空港の外に出ると、何人かの男たちが「タクシー?」と言って近寄ってくるが、「No.」というとすぐに引き下がってしまった。そんなに金を持っていないように見えるのか?

出発ロビーの両替所では、無事にルーブルを手に入れることができた。先ほど、到着ターミナルと出発ターミナルの間にバス停を見つけていたので、そこへ行ってバスを待つことにした。普通の路線バスの他、ワンボックスくらいの大きさのミニバスが頻繁にやってくる。おそらく市街地へ直接行くものも多いのだろうが、よくわからないのでやめておいた。何しろ、行き先の表示がキリル文字だけなので、読めない。

やがて、13番のバスが来たので乗りこんだ。乗りこんだのはいいが、運賃をどうやって払うのかがわからない。降りるときに払うのか?などと考えていると、腕章をつけた年配の女性が近くにやってきて、何か言いたそうにしている。おそらくこの人に払うのだろうと思い、金額がわからなかったので5ルーブル硬貨をわたすと、つり3ルーブルとチケットをくれた。

停留所に止まる度に、車内アナウンスで「メトロ・マスコーフスカヤ」と言っているので、おそらくそこが終点なのだろう。15分ほどで終点に着いたが、予想通りすぐ近くに地下鉄駅の入り口があった。

地下鉄に乗る前に、近くに何かの記念碑が見えていたので、そちらへ行ってみた。広い敷地内に、いくつかの銅像やモニュメントが建っている。1945という文字があったので、たぶん第2次世界大戦のモニュメントではないかと思う。そういえば、ここはあの「レニングラード封鎖」があった町だ。

(おそらく第2次世界大戦の)モニュメント
モニュメントの前から続く道路

周囲には高層アパートがいくつも建っているのだが、驚いたのはその間から地平線が見えること。さすがに大陸はスケールが違う。

駅に戻り、地下鉄に乗ることにする。階段を降りて地下道をしばらく進むと、改札口があった。近くの窓口で5ルーブル渡すと、ジェトンとつり2ルーブルをくれた。ジェトンを改札口に投入し、回転式の棒を押して中に進むと、すぐにロシア地下鉄名物のエスカレーターがある。何しろ長くてスピードが速い。日本のエスカレーターの2倍くらいのスピードで、轟音をたてて降りていくのだが、それでも下に着くまでに2分以上かかる。なんでも、有事の際の避難場所として作られているそうで、最初に上から見下ろしたときにはさすがに感動した。エスカレーターに乗っているときは、まるで奈落の底に落ちていくような感覚になる。

旅行前にインターネットで見つけたサンクトペテルブルク地下鉄路線図をプリントアウトして持っていったのだが、これが役に立った。この路線図によると、マスコーフスカヤ駅を通っているのは2番線で、これで5つ目の「Technologichesky Institut」駅で1番線に乗り換え、3つ目の「Ploshchad Vosstaniya Mayakovskaya」駅で降りれば、モスクワ駅の近くに出るようである。モスクワ駅からホテルモスクワまでは、近いようなので歩くことにした。

列車に乗り込むと、ほぼ満員。車内はやや薄暗い。ドアがすごい勢いで閉まったと思うと、これまたすごい勢いで加速しだした。しばらく轟音をたてて走り、再びすごい勢いで減速して次の駅に着いた。これを繰り返して、「Technologichesky Institut」駅に到着(工科大学という意味か?)。

サンクトペテルブルクの地下鉄には、1番線~4番線の路線があり、それぞれ色分けされているのでわかりやすい(1番線は赤、2番線は青など)。ただし、駅構内には英語表記は一切ない。赤色を目印に地下道を歩いていくと、1番線のホームに着いたが、ここで少し困った。持っている路線図はアルファベット表記だが、駅構内はキリル文字のみ。どちらの列車が「Ploshchad Vosstaniya Mayakovskaya」駅方面行きなのかわからなくなったのである。結局、「駅名が3つの単語からなっている」「2番目の単語の3文字目と4文字目が同じ文字」ということを手がかりに、方向を特定できた。ちなみに、「Ploshchad Vosstaniya Mayakovskaya」は、キリル文字では「Площадь Восстания Маяковская」に、「Technologichesky Institut」は「Технологический Институт」となる。(文字化けしませんように)

それにしても、豪華なつくりの駅が多く、ライトがシャンデリア風になっていたり、柱が神殿風になっていたりする。しかし何でこんなところに金をかけるんだろう。

無事に目的の駅に着き、地上に出ると目の前にモスクワ駅があった。なかなかきれいな建物だ。

モスクワ駅

モスクワ駅の前を通っているのが、ネフスキー通りである。この通りのうち、エルミタージュ美術館がある宮殿広場からモスクワ駅の間が、サンクトペテルブルクで一番の大通りで、モスクワ駅から先、ホテルモスクワがある辺りまでは、ネフスキー通りの中でも外れのほうらしく、交通量も少ない。

ネフスキー通り

15分ほど歩いて、ホテルモスクワに到着した。フロントでバウチャーとパスポートを提示すると、すぐに部屋の鍵をくれた。ただし、パスポートはホテルで預かるらしく、チェックアウト時に返却するということだった。

部屋はツインのシングル使用で、わりと広かった。シャワーは湯も出るようである。旧ソ連製または東欧製の古いテレビがあり、しばらくテレビを見ていたが、まだ明るいので外出することにした。

ホテル・モスクワ

ネフスキー通りをモスクワ駅付近まで戻ったとき、雨が降り出した。しばらくファーストフード店で雨宿りしてから、小降りになったので付近を散策しようとしたが、雨は断続的にぱらぱらと降ってくる。仕方がないので、(ホテル内のレストランはすごく高そうだったため)近くで軽く食事をとってから、ホテルに帰った。

ホテルに着いたのが9時ごろ。しばらくテレビを見ていたが、眠くなったので、シャワーを浴びてから就寝。寝るときも、まだ外は明るかった。(この季節は、白夜とまではいかないが夜中でも完全に真っ暗になることはないようである)