国内旅行編(淡路島ナゾのパラダイス)

1999年の秋、急に思い立って淡路島にある「ナゾのパラダイス」へ行くことにした。ナゾのパラダイスというのは通称で正式名は「立川水仙郷」というのだが、写真の通り堂々と「ナゾのパラダイス」と入口に書かれているので、ここではそう呼ぶことにする。

ここは、かつてはほとんど人に知られていない場所だったようだが、TV番組「探偵ナイトスクープ」で紹介されてからごく一部の通な人たちの間で爆発的に人気が出たそうだ。私はたまたまこの番組を見ていて、すごく笑えたのを憶えている(何年前だったか忘れたが、兵庫県の親類の家でこの番組に遭遇した)。

3連休にどこに行こうかと考えているとき、ここのことを思いだしてインターネットで検索してみたところ、物好きな人もいるもので(笑)訪問記のホームページがいくつかあった。それらを見ているうちにますます行きたくなったので、次のような予定で淡路島を訪れることにした。

10/8佐世保から夜行の高速バスで大阪へ。
この日は大阪泊。
10/9大阪から三宮へ行き、そこから
高速バスで淡路島内の津名町へ。
レンタカーで洲本市内のナゾのパラダイスへ行き
洲本市内を散策してからレンタカーを返却。
この日は洲本泊。
10/10洲本から路線バスで福良港へ。
遊覧船で鳴門の渦潮を見てから
バスで徳島市へ。
この日は徳島泊。
10/11徳島空港から飛行機で福岡へ。

最初はレンタサイクルを考えていたのだが、洲本市内で自転車をレンタルできるところが洲本観光案内所しかなく、ここが3時半までに返却しないといけないということだったので諦めてレンタカーにした。ナゾのパラダイスは洲本市街から約15キロの距離があるうえ、その他に山の上にある千光寺も見たかったので3時半では時間が足りない。

また、なぜ帰りは飛行機という贅沢なことをしたかというと、徳島~福岡間はプロペラ機の YS-11 型機が就航している数少ない路線だったため。プロペラ機に乗ってみたかったので、時刻表でこのことがわかるとすぐに飛行機利用を決めた。

以上で計画は終わり。金曜は仕事を早めに切り上げ、夜行バスに乗りこんだ。

立川水仙郷(ナゾのパラダイス)

さて、無事に淡路島の津名に到着し、レンタカーを借りてナゾのパラダイスへ向かった。津名町から洲本市街を通り過ぎ、しばらく海沿いを走ると急に山道になった。これは自転車ではきつそうだ。

やがてナゾのパラダイスの正面ゲートに着くと、車はあっという間におばさん2人に取り囲まれてしまった。ここで入場料の500円を払い、チケット、パンフレット、お土産の「金の玉」と書かれた小袋(笑)、UFO神社で使用するフリスビー、水仙神社で使用する絵馬、猿のエサをもらう。パンフレットには「ハァ~ハァ~笑うところ 立川水仙郷」とある(いいコピーだ)。「金の玉」には黒飴が2個入っていた。

パラダイス内に入ると、いきなり30度以上はありそうな急勾配を降りなければならない。しかも道は車幅ぎりぎりで片側は崖。注意しながら降りていくと、やがてさまざまな「名所」が現れてくる。


「チンチン音頭発祥の地」という記念碑。そりゃあこんな歌を作るところは他にないだろうから「発祥の地」も間違ってはいない。隣のトーテムポールみたいなものは「西暦2000年記念の塔」で、どういう意図なのか不明。

UFO神社横にあったチンチン音頭の歌碑。参考までに、歌詞の1番は以下の通り。

「淡路よいとこそろっておいで ナゾの立川パラダイス」
「こうじ」この世の中で あなたが すき
もっともっと 強く抱いてね
「これはまいった チンチンいっぱい うれしいな」

という感じで6番まである。

それにしても、この歌碑も隣りの恐竜も相当に金がかかっているように思える。客がそんなに多いようには見えないが、大丈夫なのか?

ここが日本で唯一のUFO神社。参拝方法は入口でもらったフリスビー(マジックで「厄除」と書いてある)を投げるというもの。向こうはちょっとした崖になっていて、フリスビーが点々と落ちている。「厄除はここから下え投てください」とあり、ひらがなの使い方がおかしいが、それもなんとなくここの雰囲気に合っている。

パラダイス内の最下層まで降りると、ようやく駐車場があった。ここからは海が見える。ここから見える斜面はいずれも水仙畑らしく、今は従業員のおばさんたちが球根を植えているようだ。おそらく水仙の季節には一面の花畑になるのだろう。水仙の季節がいつか、私は知らないのだが。

付近を歩いていると、このような顔出し看板が並んでいた。一番奥は宇宙人だろうか。手前の恐竜は顔を出す位置がおかしい。これじゃあ人面瘡だ。

さて、ここからがパラダイスの中枢「おしべとめしべのことをまなぶこところ」になる。つまり秘宝館なのだが、なかなかいいコピーだ。(入口横にアーチェリー場があったが、ほとんど使用不能の状態だった)

入り口にいたおばさんにチケットを渡すと「右側から入ってください」とのこと。右側の狭い通路に入ると…いや、想像を超えていた。なんと言ったらいいのか、実に独特の雰囲気。これを言葉で説明するのは難しい。気になった人はぜひ訪れてもらうしかない。

狭い通路を抜けると、そこにはさらに別世界が広がっていた。下の2枚の写真はその一部。

ここには「男女和合 立川(たつこ)神社」という神社があり、御籤も売られていて賽銭も結構入っているようだった。

それにしても、人形だの工芸品だの絵画だの、よくこれだけ集めたと感心するほどの量だと思う。それがすべてその種のものばかり。一体どれだけの時間と費用をかけたのか? 好きでなければとてもできないことだ。

(注:これは当時の感想。各地の秘宝館や秘宝スポットを見た後になってみれば、ここの秘宝館はかわいいものだったと思う)

館内には常時音楽が流れている。チンチン音頭ではなく「らくがきソング」という曲で、歌詞の1番は以下の通り。

淡路島 初めて来て
海がとっても きれいだった
ついに見つけた パラダイス
とってもとっても 勉強になりました
チンチン いっぱいたのしいなあ

という感じで5番まである。歩き回っているうちに頭がくらくらしてきた。この場所にはトリップ効果もあるようだ。

以下、印象に残ったものをいくつか紹介する。


一画に板で囲ってある部分があり、踏み台に乗って上から中を覗くようになっている。早速覗いてみると床に大型テレビが置かれていて、左の写真のようなビデオが映っている。周囲には意味ありげにティッシュペーパーが散乱しているという凝りようで、なんだかコメントしづらい。

ビデオ映像の舞台はどうやらこの水仙郷らしく、水仙の中で戯れる女性が映っている。映像を見ているうちに、モデルは案外ここにいるおばさんたちの1人の若いころなのかもしれない、と思った。(といっても20代以下ということはないだろうし、30代でもないかもしれないが)

続いて声のベスト順位。「こげちゃう~」というのがいいね。その他には「ごめんごめん」「ゆるしてゆるして」「かんにんかんにん」と謝っているものが目立つ。「いためて」って何だ?

しかしながら、どういう調査に基づくものかは一切不明。しかも14位がない。

写真ではよく見えないかもしれないが、名竿目録というのがある。

内容は以下の通り。

  1. 天突く〇羅
  2. かり高〇羅
  3. てり〇羅
  4. すぼき〇羅
  5. 赤〇羅
  6. 白〇羅
  7. いがみ〇羅
  8. ねじれ〇羅
  9. せつき〇羅
  10. 常立〇羅

あえて指摘するまでもないが、伏字は明らかに「魔」だろう。

その他に「名器目録」というのもあったが、こちらの写真は省略。内容を知りたい人は直接訪れてほしい。

「探偵ナイトスクープ」で放送されたことを記念するコーナー。TV放送時に桂小枝が書いていた「あ~たのしかった。岡部まり」という色紙もちゃんと保存されていた。

しかし「ナイトスプーク」になっているんだが。

ここではいろいろと土産も売っている。内容もそっち系で、さまざまな蘊蓄が書かれたハンカチ、男女和合キーホルダー、さらには「立川水仙郷 ナゾのパラダイス」と手書きで書かれたTシャツ(笑)など。私は引っ張るとチンチンが立つようになっているキーホルダーを買ってみた。(これは後日会社に土産として持っていったところ女性社員の間で好評でした)

ちなみに、私が秘宝館にいる間、他の客は外国人の(!)カップルが1組だけ。後は出ようとしたとき入れ違いに1人入ってきたくらいで、かなりゆっくりと見ることができた。


秘宝館を出てから隣りの食堂でサービスのお茶とお茶菓子をもらったが、これはなかなか美味しかった。それからエアーガンをしばらくやった後、猿にエサをやってから駐車場に戻った。

あと残っているのは絵馬だけ。車で急勾配を登ると、途中に水仙神社(まだ建造途中のようだったが)があり、いくつか絵馬が掛けてあった。私は「もう一度ここへ来たい」と書いて置いてきた。願いはかなうだろうか。


ナゾのパラダイスを後にして、次は洲本市はずれの山の中にある「千光寺」に行ってみた。三重塔や鐘楼など、なかなか美しく、写真も撮ってきたのだが、ナゾのパラダイスの後にその写真を載せるのは気が引けるので省略。

鳴門の渦潮

洲本市で1泊し、路線バスで淡路島南部の福良港へ向かった。福良港からは渦潮を見る遊覧船が出ている。帆船タイプの「咸臨丸」に乗り、渦潮を見物してきた。

潮汐のことは何も考えていなかったのだが、この日はたまたま大潮付近で、最強時の流速は8ノット以上になるという。遊覧船に乗った時刻が最強時の1時間ほど前だったのでそこまでの流速はなかったが、それでも5ノット以上はあるだろう。潮流に逆らっているときは船がなかなか進まない。

大鳴門橋の下では水に段差ができて流れていた。大きな渦が頻繁に発生と消滅を繰り返している。すごいねえ。


福良港からバスで南淡路 I.C.へ。高速バスに乗り換えて鳴門駅前まで行き、JR鳴門線で徳島へ向かう。高速バスは徳島行きだからそのまま乗っていてもいいのだが、鉄道好きとしてはやはりこういうローカル線には乗っておきたい。

徳島県は今回はじめて訪れた。私が訪れた42番目の県で、残る未踏の地は青森、秋田、岩手、高知、愛媛の5県となった。


徳島市内で1泊した後、徳島空港から日本エアコミューター192便で福岡空港へ向かった。

64人乗りで機内は満席。乗る前はプロペラの音がうるさいかと思っていたが、まったくそういうことはなかった。ジェット機と比べて低いところを飛ぶので、地上の景色がよく見えるのがいい。ただ、瀬戸大橋やしまなみ海道がいずれも飛行機の左側で、私の席は右側の窓際だったため見ることができなかった。これは残念。

さて、今回の旅行で一番印象に残ったのは、鳴門の渦潮よりもやはりパラダイスだ。日本にはこういう「秘境」がいくつもあるようなので、今後の国内旅行ではそういうところを巡ってみたい。

とりあえず、次の目的地は埼玉県東松山市にあるという「神秘珍々ニコニコ園」だ!

(1999.10.9~11)


4年半後の2004年5月、淡路島ナゾのパラダイスへの再訪を果たした。再訪記はこちら。