国内旅行編(三重 / 元祖国際秘宝館・伊勢館)

(注)2007年3月で、元祖国際秘宝館は閉館になりました

名古屋から快速「みえ51号」で伊勢市へ向かう。「みえ51号」はわずか2両編成ということもあり、車内は満員。早めに並んでいたおかげで座ることができた。

途中、第3セクターの伊勢鉄道(ここは別料金となる)を経由し、午前10時ごろ伊勢市駅に到着。


伊勢といえば日本一神聖な場所「伊勢神宮」が有名だが、一方で秘宝スポットマニアにとって絶対にはずせない「元祖国際秘宝館」がある場所でもある。ここは文字通り日本にある秘宝館の元祖であり、規模も日本最大らしい。ここを知らずに秘宝館を語ることはできないので、この機会に訪ねてみることにした。(この「元祖国際秘宝館」を西の横綱とすれば、東の横綱は「熱海秘宝館」ということになるだろう。こちらもいつか必ず訪れたい)

元祖国際秘宝館は、正確には伊勢市ではなく渡会郡玉城町にある。伊勢市駅前から松坂方面行きのバスに乗り、バス停「世古」で降りると目の前に秘宝館があった。


ここは、ゲームセンターやパチンコ店、漫画喫茶などが集まったドライブインになっている。その中で最も目立つのが、モスク風の建物に大きく書かれた「秘宝館」という文字。

少し空腹だったので、すぐに秘宝館には入らず漫画喫茶で休憩した。漫画喫茶前には、この秘宝館のキャラクター「TVでおなじみの秘宝おじさん」がいる。私は東京と九州にしか住んだことがないのでよくわからないが、関西や東海地方ではTVでおなじみなのかもしれない。下の写真が、その秘宝おじさん。

漫画喫茶を出て、いよいよ秘宝館へ。入口付近には「馬の交尾ショー」「とびだす立体映画」などの看板がある。立体映画の看板の下には「シロナガスクジラの雌生殖器」の標本が少し濁った水に浸かっている。しかし「伊勢志摩観光みやげ」がクジラの生殖器を指しているように見えるのが面白い。

「馬の交尾ショー」の看板の下は柵になっていて、以前見た写真にはここに馬が写っていたのだが、このときは何もいなかった。

館内に入り、階段を上がったところに入場券売り場がある。この階段には「社会に役立つ元祖国際秘宝館」のまわりに沢山の張り紙がしてある。いくつか紹介すると「日本一のホモ太郎」「大女体池と女体丘」「への子林」「天女の舞」「八戒のブランコ」「ひらけモモ」「おいろけ射的」「伊勢の海女」「伊勢の遊郭」「飾り窓の女たち」「ビックリトイレ」「お色気スベリ台」「陰部神社」「スピンバスケットSEX」などなど。想像しただけで夜も眠れなくなるようなものばかり。

入場料を払い、入場券とパンフレット、福引券をもらう。入場券売り場のまわりは土産物コーナーになっていて「伊勢志摩観光みやげ」などと書いてあるが、実際にはほとんどアダルトショップ。これは後でゆっくり見ることにして、まず秘宝館に入ることにした。入場料は2,600円で、さすが「元祖」だけあって値段も格が違う。私が訪れたときには他に客はいなかったらしく、館内では福引のおばさん以外、誰にも会わなかった。


館内は、通路の総延長がなんと600メートル! さすがに「日本最大の秘宝館」だけのことはある。通路を歩いていくとさまざまな展示品やアトラクションが現れるのだが、なにしろ規模が大きいうえに館内は写真撮影禁止なので、今となっては細かい部分は覚えていない。いくつか記憶に残っているものを紹介する。

最初は、ギリシャ神話のコーナーだったと思う。ロウ人形を使って再現したさまざまな場面(たしか、ケンタウロスの略奪場面などがあった)が続く。

続いてアニマルパラダイス。おそらく牧場をイメージした広いスペースに、いろいろな動物の剥製標本(馬や牛や鹿など。もちろん交尾した状態)が並んでいる。その動物たちの間を通り抜けると「このあたりで一度振り返ってください」という表示があり、その通りに振り返ってみると牧場内を見渡せるようになっている。けっこう生々しくて迫力がある。

このあたりからの順番はよく覚えていないので、順不同で紹介する。

<恐怖コーナー>

1体数百万円するというロウ人形のコーナー。内容はもちろん拷問や刑罰などの残酷展示。なかなか怖いものもあった。「別冊宝島378」によれば、かつてはこの秘宝館の隣に「恐怖館」が併設されていたそうなので、おそらくその展示物を移設したものだろう。ホラーファンは必見。

<陰部神社>

男根や女陰をかたどったオブジェが御神体になっている、秘宝館の定番。ただし、ここの陰部神社は前を通ると音声が流れるようになっている。賽銭を入れさせるのが目的らしく、内容は次のとおり。

「陰部神社を素通りする者は、老若男女を問わず、たちどころに珍罰満罰が下るであろう」

以下、珍罰満罰の内容が延々と続くのだが、もう憶えていない。

<大女体池と女体丘>

巨大女が仰向けに寝ていて、そのまわりに池が広がっているという、映画のセットのようなコーナー。池に架かっている橋を渡るとセンサーに反応して女の声が響き渡るのだが、この声は今でもはっきりと憶えている。

「あなた、そこ、触らないで!。私のいちば~ん感じるところなの。ああ、もうだめ。あなた、何とかして~」

この脱力感がたまらないね。この池のまわりには民話をエロティカルにアレンジしたような場面がいくつかあり、いずれも人が近づくと動き出すようになっている。妙に色っぽいこぶとりじいさんがいたり、桃太郎が鬼とやっていたり、逆立ちして放尿している金太郎がいたり、なかなかよくできている。おそらく、ここがこの秘宝館で一番金がかかっている場所ではないかと思われる。

この他、ドアを開けるとマネキン人形が和式トイレにしゃがんでいる「ビックリトイレ」、病院の手術風景(患者として置かれているのが内臓や筋肉剥き出しの人体標本。さらに看護婦が胸を出している)、降りた先に大きな女体が待ち構えている「お色気スベリ台」など、脱力感溢れる展示物が延々と続く。その中で面白かったのはターンテーブルに林立している各種バイブレーター群。スイッチを押すといっせいにくねくねと動き出すのだが、その様子が馬鹿馬鹿しくてかなり笑えた。

このように呆れたり脱力したりするような場面がほとんどなのだが、その中で唯一、ものすごく感動した場所には触れておかなければならない。それは、女体の一部が壁や天井一面に大量に貼りつき、まるで前衛芸術のようになっている場所。これはまさしく江戸川乱歩の「盲獣」の世界だ。この場面の製作者も、おそらくあの怖い小説に影響を受けたのだろう。乱歩マニアなら、この場所だけでも見る価値は十分にある。

通路の途中には福引コーナーがある。しかしながら、ここでくじを引くためには福引券だけを渡せばいいというものではなく、さらに福引料500円を払わないといけない。つまり、この秘宝館から出るためには入場料プラス福引料で3,100円が必要というわけ。

で、この福引の結果なのだが、当たったのはコンドーム1箱(12個入り)だった。「どうせ売れ残りのキーホルダーかなんかだろう」などと考えていたので予想しない景品に驚いたが、こういう「実用品」は秘宝館の景品には似合わないような気がする。おそらく500円では買えないだろうから得をしたということになるのだろうが、私の場合は使う機会がないからまだそのまま家に置いてある。

その後、ポルノ映画が大音響で上映されているミニシアターにたどり着いた頃には、すっかりグロッギー状態になっていた。そして出口付近にくると、次第に馬の匂いがただよい始める。ここの名物「馬の交尾ショー」の会場があるのだが、しかし私が訪れたときには大変残念ながら馬の交尾ショーはやっていなかった。まあ、馬も毎日発情しているわけではないだろうから、運が悪かったということだろう。

というわけで最後は少し落胆して秘宝館を出ることになったのだが、「日本最大の秘宝館」だけあって規模の大きさはさすが。秘宝スポットマニアにとっては絶対に訪れないといけない「聖地」だろう。私も、いつか必ず再訪して「馬の交尾ショー」を見てみたい。


秘宝館を出ると、そこは屋外ではなくゲームセンターの店内だった。ちょうどそのときは客がまばらだったからよかったが、混んでいるときだったりしたらいっせいに「金払って秘宝館に入るなんて、物好きな人間がいるもんだよ」という目で見られることになっただろう。客が少なくてよかった。

いったん外へ出て、再び秘宝館入口に戻り、土産物コーナーを見てみた。たくさん置いてあるアダルトグッズやらアダルトビデオなどではなく、この秘宝館のオリジナルグッズを買いたかったのだが、こちらは種類が少ない。結局、秘宝おじさんと秘宝館小唄が書かれたうちわを買った。

元祖国際秘宝館・鳥羽館(SF未来館)

バスで伊勢市駅に戻り、ここから各駅停車に乗って終点の鳥羽へ。かつて、鳥羽駅の近くに元祖国際秘宝館の姉妹館「SF未来館」があった。しかしながら、このSF未来館は2000年5月で残念ながら閉館してしまった。ぜひ見たいと思っていた場所だけに、すでに閉館したというニュースを知ったときにはすっかり落ち込んでしまったのを憶えている。今回、まだ跡が残っていればと思って鳥羽へ行ってみたところ、建物はまだそのままになっていた。

今となっては 別冊宝島378・全国お宝スポット魔境めぐり や、まんだらけ出版の あかまつ創刊号 など、いくつかの書籍でしか内容を知ることはできない(もっとも、これらの書籍も現在は簡単には入手できないと思われるが)。

などと思っていたのだが、「あかまつ」創刊号をよく読んでみると鳥羽SF未来館の写真集が出版されていることがわかった。早速インターネットで注文してみたところ、これがなかなか豪華な写真集だった。これを元に、かつての館内の様子を簡単に紹介してみることにする。

館内はSFコーナーと江戸コーナーに分かれていたらしい。SFコーナーがここのメインであり、入口には下のように書かれていたという。

1999年、今世紀末にいたり、人間のユートピア、豊かな地球はノストラダムスの予言通り壊滅的破壊をうけ、生命あるもののすべてを道連れに、この太陽系から姿を消そうとしている。

ちょうどその時、遠い宇宙の星を征服した宇宙戦斗艦登録ナンバー14108号が地球へ凱旋してきた。宇宙基地の提督ヒトリー将軍は地球の危機を知り、人類の再起を願い超未来人間の製造を兵士に命じたのである。生き残った人々を狩り集め、特殊磁気、特殊栄養、短期成長イースト菌などを用い、短期間のうちに成長させる超未来的方法で成熟した肉体年齢(18歳)を3年間で成長させ、1人の人間として完成させようとするものであった。しかし、その裏に秘めた宇宙征服とするどす黒い野望に血塗られた未来社会へのドラマの中で、未来人間の悲劇は始まったのである。

つまり、この設定に沿って物語が展開していくことになる。展示は以下の10のセクションに分かれていた。

  1. 人間狩り
  2. 狩り集められた人間の選別と抹殺
  3. 脳移植と人間改造(サイボーグ)
  4. 精液の強制搾取と注入
  5. 生産と誕生
  6. 胎児の成長
  7. 新生児から成人へ
  8. セックス教育
  9. 将官と女たち
  10. 超未来人

各セクションごとに説明があるが「1. 人間狩り」の説明は以下の通り。

瓦礫に身を寄せ合って生き続けた少数の人々は、ある日突然宇宙戦艦の兵士たちに襲われ、捕らわれ狩り集められた。その行為は、暴力的で残酷でしかも エロチカルな ものであった。

最後の一文が素晴らしい。このセクションでは、廃墟なのになぜか下着姿の女性たちを宇宙服を着た兵士たちが狩り集めるという場面が人形を使って再現されていた。

以下、集めた人間に対してさまざまな検査を行い「程度の低い人間(ダメ人間)」は「人体消滅処理装置」で抹殺、残った人間から胎児を生産し、特殊栄養素を与えて急速に成長させ、やがて超未来人間が誕生する、というストーリーだったという。こう書くとわりとまともな展示のように思えるが、実際の内容は破綻気味でむやみとエロティックなものだったらしい。ちなみに超未来人は、両性具有で身長2m30cm 体重130kg バスト120cm ピップ 110cm だそうだ。

館内には、元祖国際秘宝館の初代社長、故松野正人氏の人形もあった。この松野氏の人形は「鯉の快感を体感する」と題されていて、少年時代の松野氏が股間を鯉にくわえさせているというもの。こういう人形を展示に加えるとは、なかなかできることではない。偉人だと思う。(この松野氏は、日本の秘宝館の生みの親という人物。この人の生涯については、前出の出版物に詳しく記述されている)

ちなみにSF未来館は「1999年が過ぎたから」という理由で閉館してしまった。ここにも2000年問題があったことになる。

興味を持った人は、以下の写真集を購入してみてほしい。ただし、値段はやや高い。

(都築響一「精子宮 SF未来館のすべて 鳥羽国際秘宝館」)


鳥羽から快速「みえ16号」で津へ。ここから亀山~加茂~木津~京都と各駅停車を乗り継ぎ、京都から博多行きの夜行快速列車「ムーンライト九州」に乗る予定だったのだが、京都駅に着いてみるとホームには長蛇の列ができている。これではとても座ることはできないが、かといって他に列車はない。そこで、少しでも長く座っていられるように新快速で姫路へ行き、姫路からムーンライト九州に乗ることにした。新快速はさすがに快適で、あっという間に姫路に到着。

ムーンライト九州では、座席は満員だったのでドア付近に新聞紙を敷いて座っていたのだが、隙間風が入ってきてかなり寒い。しかし他に場所はなく、結局まったく眠ることはできなかった。早朝、疲れきって門司駅で下車。

ここで鹿児島本線の各駅停車に乗り換え。この列車は程よく暖房が効いていて快適だったため、鳥栖駅付近まで熟睡していた。昼過ぎ、佐世保に帰着。

(2001.3.17)


※約6年後、営業最終日の2007年3月31日に再訪を果たした。再訪記はこちら


<2001年 / 愛知、三重旅行記のインデックスページ>