東地中海旅行記(エジプト / アスワン、アブシンベル)

朝10時半ごろ、アスワン駅に到着。寝台列車ではなかったが、1等車両は座席の間隔がゆったりとしていたため、それほど疲れなかった。


今回の旅行では、エジプト南部は個人旅行ではなくツアーを利用した。カイロからの往復の1等列車運賃と、アスワン、アブシンベル観光、アスワンからルクソールまでのナイル川クルーズ、ルクソール観光がセットになっていて、料金は1,600ポンド(約5万円)。カイロ市内の “Amigo Tour” という旅行店で予約したが、なかなか快適なツアーだった。やはりツアーは楽でいいですね。

アスワンハイダム

アスワン駅で他のツアー参加者と合流し、いったん近くのホテルへ。ホテルで2時間半ほど休憩した後、マイクロバスでアスワンハイダムとイシス神殿の観光に出発した。

なお、ホテルに着いてすぐ部屋で洗濯をしたのだが、出発前には完全に乾いてしまった。内陸部だけに、かなり空気が乾燥しているようだ。

アスワン市街を離れて(ハイダムに比べれば)規模の小さいアスワンダムを過ぎ、やがてアスワンハイダムに到着。日本ではダムというと山間部にあるものだが、このダムは砂漠の真中にある。そして、このダムによって出現したナセル湖はとんでもなく広い。全長500キロ、これは福岡から大阪までの距離だ。

このダムはロシアやフランスなど5ヶ国(だったと思う)の援助で完成したそうで、ダムにはその記念碑もある。

下の写真はダムの上流に広がる広大なナセル湖。

ダムの下流のナイル川はこんな感じ。

このダムについては、最近は灌漑などのプラス面より環境破壊のマイナス面の方が大きく取り上げられるようになった感がある。下流で洪水が起きなくなったため塩害が発生したり、ナセル湖周辺でときどき雨が降るようになったため、もともと雨を想定していない住居の屋根が落ちるなどの被害が出ているという。たしかに砂漠地帯にこんな大きな湖ができたら環境も影響を受けるだろう。水の蒸発量も凄そうだし。

イシス神殿

アスワン近郊、ナイル川の中の島にある神殿。河岸から船で渡るのだが、この付近のナイル川の水はかなりきれい。下の写真のように青く光っている。

ガイドブックによると、この神殿はもともと隣の島にあったのだが、アスワンダム建設によって水没してしまうことになったため現在の位置に移されたもの。

上陸すると、しばらくガイドが英語で説明しながら案内し、そのあと自由行動になる。数千年前の姿を想像しながらしばらく散策。

自由行動中、日本人観光客の団体に遭遇した。1人で歩き回っている私を不思議そうに見ていたが、団体旅行者は個人旅行者をどう思っているのだろう。「うらやましい」と思うものなのだろうか。

30分ほどの自由行動の後、船で河岸に渡ってアスワンに戻った。


この後、イシス神殿で行われるライトショー(これは別料金)に行くこともできたのだが、これはパスしてアスワン市内を散歩。ナイル河岸に沿って歩き回り、インターネットカフェがあったので知人に何通かメールを送る。アラビア語のキーボードを初めて見た。

ナイル川に沈む夕日を見た後、河岸のレストランで食事にした。メニューはさすがに羊肉が中心。普段あまり酒は飲まないが、せっかくなのでエジプト産の “ステラ” というビールを飲んでみた。イスラム教では酒は禁止されているはずなのにビールを生産してるのは不思議だが、これは主に外国人向けらしい。

遅くまで歩き回ってからホテルへ戻った。ナイル河岸一帯に関しては、観光客が多く歩いているので治安は悪くない。(もっとも「一緒にファルーカに乗ろう」と親しげに話しかけてくる人もいることはいるが)

アブシンベル

夜中の3時に起床。3時半頃、ワンボックスカーに12人ほど乗って近くの集合場所へ。ここに大型バスからワンボックスカーまで数十台の車が集まり、4時ごろアブシンベルへ向けていっせいに出発。先頭と最後尾は警察の車両で、こういう移動をポリスコンボイというらしい。

なぜこうやって移動するかというと、アスワンからアブシンベルまで危険度のやや高い場所を通るため。安全を考えるならアスワン~アブシンベルは飛行機で移動するのがいいのだが、やはり飛行機は料金が高いため、ここは車での移動を選択した。

アスワンからは地平線まで一直線に続く道路を延々と走る。もちろん周囲は地平線まで砂漠。最初は真っ暗で星がきれいに見えていたが、すっかり明るくなった午前7時半ごろ、アブシンベルに到着した。

入場券を買って敷地内に入り、しばらく歩くとTVや写真で何度も見たことのある大神殿が見えてくる。

大神殿と対面して、しばらく感動。子供のころから何度もTVで見ていたが、本当に訪れることになるとは思わなかった。何しろここはエジプトの南端、隣国スーダンまで約50キロの地点。よくこんな地の果てまで来たもんだ。

周知の通り、この神殿はもともと100メートルほど離れた場所にあったのだが、アスワンハイダム建設によって水没することになったため安全な地点に移動させたもの。山ごとブロック状に切って移動させたため、よく見ると山に切れ目が入っている。また、正面のラムセス2世像は一体が崩壊しているが、足元に落ちている残骸の位置まで正確に再現されているという。大神殿を作ったラムセス2世もすごいが、それをそのまま移動させた技術者もすごい。

大神殿に入り、まっすぐ奥に進むと祭壇がある。この祭壇は1年に2回だけ朝日が直接照らすように設計されている。

神殿内の壁には戦いの模様などがびっしりと刻まれている。こういった神殿内の写真を撮る場合、フラッシュと使うと雰囲気が出ないので夜景モード(シャッタースピード2秒)で撮るのだが、三脚がないのでよく手ぶれをおこす。わりときれいに取れた写真を下に載せておく。(この旅行当時はフィルムカメラを使っていた)

大神殿の横にあるのが小神殿(ハトホル神殿)。ラムセス2世の王妃ネフェルタリを祀ってあるそうだ。

アブシンベルの滞在時間は約2時間。その間、神殿や目の前に広がるナセル湖を見ながら自由に散策。果たして、もう一度ここを訪れることはあるだろうか。


9時半頃、アブシンベルを出発。アスワンまでは約3時間半の行程だが、往路とは違ってこの時間になるとかなり暑くなっている。一応、ワンボックスカーにはエアコンはあるものの、10人以上も乗っていると効きが悪い。炎天下の砂漠を延々と走り、午後1時頃アスワンに着いたときにはみんな呼吸困難気味でぐったりしていた。

このとき一緒に乗っていたのは、新婚旅行中というペルー人の夫婦の他は私も含めて1人旅がほとんどのようだった。そのうち2人は若い女性(オランダと南アフリカの人)。海外では1人旅の女性をよく見かける。

なお、ペルー人夫婦は世界一周旅行中ということだった。エジプトの後、アジアを横断してオーストラリアへ渡り、南米に帰るということだったが(日本には寄らないらしい)、実にうらやましい限り。

この後、アスワンからクルーズ船に乗り、ルクソールへ向けて出発。