東地中海旅行記(ギリシャ / ロードス島、ピレウス、アテネ)

午後1時半ごろロードス島のディアゴラス空港に到着。ここで降りる乗客はそう多くはなく、入国審査を短時間で通り抜け、今回の旅行で3ヶ国目となるギリシャに入国した。旅行を始めて20日ほどだが、エジプトを旅行していたのがなんだかずいぶん前のような気がする。

空港内の銀行でギリシャの通貨ドラクマを入手したところ、1ドラクマは約0.4円だった。1キプロスポンドが約170円だったので、扱う数字が急に大きくなり、ギリシャ滞在中はなんだか金を使いすぎているような錯覚に陥ることが多かった。

空港前からタクシーに乗り、ロードスシティへ。

ロードスシティ

旧市街の中心にあるツーリストインフォメーションセンターの前でタクシーを下車。センターに入り、ピレウスまでのフェリーのチケットが買える場所を教えてもらった後、旧市街の地図をもらってから泊まるところを探しに出ることにした。海岸沿いのホテルは高そうなので、地図を見て旧市街の奥にある “cava d’oro hotel” という小さなホテルを選び、直接訪ねてみたところ空きがあったのでここに泊まることにした。

部屋に荷物を置き、まずはフェリーのチケットを買いに港へ。トルコ行きの国際便にはフェリーターミナルがあるが、国内便は岸壁に並んでいるプレハブのような小屋でチケットを売っている。ここで翌日の午後4時に出港するピレウス行きのチケットを無事に入手できた。

その後、旧市街を散策。最初に訪れたのは旧市街の中心にあるグランドマスター宮殿。

入場料は1200ドラクマ。宮殿といっても外見は華美なものではなく、軍事用に作られているため武骨な感じがする。かつてロードス島がイタリア領だった時代に、ムッソリーニが別荘として使用していたこともあるそうで、規模はかなり大きい。内装もそれほど豪華という感じはしないが、中庭に面したいくつかの部屋が収蔵品の展示室になっていて、そこはなかなか興味深いものが多かった。

ロードスシティの旧市街は高い城壁に囲まれた 500m 四方くらいの範囲だが、ここは建物がほとんど昔のまま残っているところがすごい。下の写真は大通りにある広場。

旧市街の奥へ進むと、さらに細い路地が入り組んでいて、まるで迷路のようになっている。

城壁にぶつかって道が行き止まりになっていたり、ひっそりと小さなホテルがあったりして、なかなか面白い。このあたりは観光客が少なく、歩いていると靴音が響く感じがするくらい静か。

下の写真は港からグランドマスター宮殿へ続く騎士団通り。薄暗くなってから写真を撮ったため、あまり鮮明でないのが残念だが、まるで中世の騎士が歩いているような雰囲気のある通りだった。

続いてロードス港へ。それほど大きな港ではなく、歩いて一回りできる。風車が並んでいる突堤を歩いていくと石造りのセント・ニコラス要塞があり、さらに突堤の先端に鹿の像が建っている。

ロードス港といえば、世界七不思議のひとつ「ヘリオス像」が立っていたところとして有名。もちろん現存はしていないが、かつてヘリオス像があったとされる場所に建っているのが、この鹿の像。想像図などでは港の入り口をまたぐように立っている姿を見ることがあるが、やはりまたぐ形には無理がある。おそらく港の入り口の片側に建っていたのだろう。

観光地だけあって治安はよく、夜遅くまで人通りは多い。タベルナで食事をしたり、土産物を買ったりしながら旧市街を散策してみた。

下の写真は夜の旧市街中心部の風景。ここで頭の中に流れるBGMは遊佐未森の「旅人」。

ホテルに戻り、翌日は夜行フェリーでピレウスへ向かうことになるので、この日は早めに就寝。

ペタルーデス(蝶の谷)

翌日はロードスシティから 40km ほどのところにある「ペタルーデス」という場所を訪れてみた。たくさんの蝶が飛び回っている渓谷ということで「蝶の谷」という名前がつけられているという。ホテルに夕方まで荷物を預かってもらうことにして、朝9時半のバスでペタルーデスへ。約45分で到着した。

ペタルーデスは川に沿った長さ数キロの渓谷で、バスが着いたところは渓谷の入り口、一番下流のあたりになる。ここから、ロードスシティ行きのバスが出るまでの2時間ほど渓谷を歩いてみた。写真は渓谷の入り口付近で、このあたりでは水は豊富に流れている。

入り口から遊歩道が上流に延びている。水は伏流水になっているらしく、上流に進むと川の水はほとんど涸れてしまう。ところどころに起伏の大きい場所もあり、少し息を切らせながら上流へ。周囲の景色は、だいたいどこも下の写真のような感じ。観光客はわりと多い。

で、肝心の蝶なのだが、いないことはないがそれほど目立たない。よく見ると周囲の岩や木にはかなりとまっているのだが、飛んでいる数は案外少ない。しかも蝶自体がそれほど大きくはなく、さらに地味な色なので、よく見ないと飛んでいることに気づかない。

ところどころに設置してある案内板によれば、近年になって蝶の数が次第に減少しているということだったので、観光地化される前はもっとたくさん飛び回っていたのかもしれない。しかしまあ、こちらも蝶が吹雪のように舞っている光景を想像していたわけではないから、それほどの肩透かしはなかったが。

遊歩道を登りきったところに小さな売店があり、休憩できるようになっている。ここでジュースを買ってしばらく休んだ後、来た道を引き返して下流へ戻った。バス停付近にはカフェなどがあり、渓谷を歩き回って疲れた観光客で賑わっていた。カフェではなく水辺の岩に座ってしばらく休んだあと、12時15分のバスでペタルーデスを後にした。ロードスシティに午後1時に帰着。

城壁ツアー

フェリーの出港までまだ時間があるので、グランドマスター宮殿からスタートする城壁ツアーに参加してみた。これは毎週2回、火曜日と土曜日の午後に行われているもので、ちょうどこの日が火曜日だったのは幸運だった。

ツアーといってもガイドが案内するわけではなく、旧市街を囲んでいる城壁の上を好きなように散策するだけ。下の写真に写っているのがグランドマスター宮殿で、ここがスタート地点になる。

景色も天気いいので、なかなか気持ちがいい。考えてみれば、エジプト~キプロス~ギリシャと旅行する間、天気は快晴続きで一度も雨に会わなかった。夏の地中海沿岸はもともと雨が少ないのだろうが、日本は梅雨の時期なのだから、改めて日本から遠く離れた場所を旅行していることを実感した。

下の写真は城壁の上から見た旧市街。石造りの建物がひしめいているのがよくわかる。

ツアーの終点で城壁から降りると、ちょうどホテルの近くだった。ここで荷物を受け取り、ロードス港へ。すでに停泊していたピレウス行きのフェリー “MARINA” に乗り込み、しばらく船内を見て回った後、デッキで休憩。客室はいくつかのクラスに分かれていて、私が買ったのがかなり安いクラスのチケットだったため立ち入ることができるのはデッキ上と座席室(高速船の船内のように座席が並んでいる一画)だけだった。デッキにはプールがあるが、水は入っていなかった。

午後4時に出港。遠くなっていくロードス島をしばらくデッキで眺めていたが、やはり暑い季節でも風をずっと浴びていると寒くなる。船内のレストランは高いので、デッキにあった売店で食糧を買い、船内に移動した。

フェリーは午後7時半にコス島、8時半にクリムノス島に寄航し、それからピレウスへ向かった。

ピレウス、アテネ

朝7時ごろ、ピレウス港に到着。港近くにあった食料品店でパンとジュースを買い、しばらく休憩した。下の写真で煙突から煙が出ているのがロードス島からのフェリー。

今日の午後2時の飛行機でシンガポールへ向かうので、あまり時間がない。すぐ近くにあるピレウス駅から地下鉄に乗り、アテネ中心部のモナスティラキ駅で下車。ここから空港行きのバス乗り場があるシンタグマ広場まで歩いてみたが、こんな都会を歩くのは久しぶり。

途中、ミトロポレオス大聖堂の内部を見学した後、シンタグマ広場にあったマクドナルドで休憩。よく憶えていないが、たしか「日本バーガー」「タイバーガー」「ベトナムバーガー」などアジアの国の名前がついたハンバーガー各種を売っていたように思う。

せっかくアテネに来たのだからパルテノン神殿くらいは見たかったが、それほど時間に余裕がない上に夜行フェリーでかなり疲れていたので、丘の上にあるパルテノン神殿まで行く気力がなくなってしまった。そこで、空港行きのバスからパルテノン神殿を眺めることができるだろうと思い、このまま空港へ行くことにした。

ところが、空港行きのバスがなかなか来ない。不審に思ってチケット売り場でよく聞いてみると、今日はシンタグマ広場からのバスは運行されていなかった。いったん地下鉄で郊外へ行き、そこからバスに乗る必要があるという。

仕方がないので近くの駅から地下鉄に乗ってアテネを離れることにしたが、アテネに行きながら結局パルテノン神殿を見ないという、かなり間抜けなことになってしまった。しかしまあ、次回アテネに来たときには見ることができるだろう。

地下鉄とバスを乗り継いで昼ごろエリニコン国際空港に到着。それにしても、バスの車窓から見える景色がかなり荒涼としていたのが印象に残っている。

シンガポール航空のカウンターでチェックインを済ませ、ギリシャを出国。今回はわずか3日ほどの滞在だったためロードス島くらいしか見ることができなかったが、メテオラやテッサロニキなどギリシャ本土にも行ってみたい場所は多い。いつになるかわからないが、この国は再び訪れたい。

これで約20日にわたる東地中海周辺の旅行を終え、午後2時のシンガポール航空機でシンガポールへ向かった。

シンガポール

約10時間のフライトの後、早朝6時半にシンガポールに到着した。福岡便の出発は深夜なので、丸1日自由時間ができる。当初はシンガポールに入国していろいろと出歩いてみるつもりだったが、夜行フェリーの後の10時間のフライトで予想以上に疲れたため、入国は諦めてトランジットホテルで休むことにした。シャワーを浴びた後、昼過ぎまで就寝。

午後はシンガポール航空が主催しているフリーツアーに参加してみた。トランジットエリアにあるカウンターで受け付けていて、シンガポール航空の半券を見せれば無料で参加できる2時間ほどのツアーになる。パスポートにスタンプは押されないので、正式に入国したことにはならないらしい。

空港前から大型バスに乗り、シンガポール市街へ。ラッフルズホテル、シティタワーなどをバスの中から見た後、ラッフルズ卿上陸地点(ラッフルズ卿の白い石像が立っている)でバスを下り、しばらく散策。その後、シンガポール川のリバークルーズ船に乗って水の上からシンガポールの高層ビル群を眺めることができた。クルーズ船といってもかなり小さなものだったが、なかなか楽しかった。

写真はクルーズ船から見た「世界3大がっかり」のひとつ、マーライオン。たしかに有名なわりにはそうたいしたことはなく、がっかりの名に恥じないものだった。大きさも意外と小さい。

ツアーを終えて空港に戻り、出発までトランジットエリアで過ごした。それにしても、この空港はトランジットエリアがかなり広大で、免税店だけでなく Cactus Garden (サボテンが見られる)や Orchid Garden (蘭が見られる)などがあって退屈しない。夕食はフードコートで取ったが、ここで久しぶりに箸を使った。

深夜1時半にシンガポールを離陸。約5時間のフライトの後、午前8時過ぎに福岡空港に到着した。旅行期間が少し長かったためか、手荷物をちょっと詳しく調べられたりして時間がかかったが、無事に日本に帰国した。


これで25日間の海外旅行がすべて終了した。約1ヶ月にわたって外国を気ままに旅行するという、日本で普通に社会人生活を送っている者にとってはなかなかできないことができ、かなり貴重な体験だったと思う。今後は年1回、1週間程度の旅行が主になると思うが、いずれまた、さらに長い旅行をしてみたいものだ。


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