東地中海旅行記(キプロス / レメソス、トロードス)

午後4時半ごろレメソスに到着。レメソスでは海岸沿いにある “Continental Hotel” に泊まろうと思っていたので、ホテル前のバス停で下車し、フロントで部屋があるかどうか聞いたところ空きがあったのでここに3泊することにした。料金は1泊17ポンド(約3,000円)と安いが、海岸に面した部屋で眺めも良く快適なホテルだった。

レメソスは海岸沿いにあるキプロス第2の都市。かつては「リマソール」と呼ばれていて、レフコシアと同様に以前の名前に戻したということだったが、リマソールという名前は旅行当時も広く使われていた。


翌日の午前中は、キプロスからロードス島までのフェリーのチケットを入手するためレメソス市内の旅行店を何軒か回ってみた(当初の予定では、レメソスからロードス島行きのフェリーに乗りつもりだった)。POSEIDON LINES のサイトに載っていた運航表を印刷したものを用意していて、それを見せて説明したのだが、調べてもらったところ運航表が間違っていて予定していたフェリーは運航されていなかった。仕方がないのでロードス島までは飛行機で移動することにして、そのチケットを購入(料金は91ポンド)。ついでに翌日のトロードス地方のバスツアーを予約した。(なお帰国後に POSEIDON LINES のサイトを見てみたところ、運航表はちゃんと訂正されていた)

リマソール城

チケットが入手できたので、午後はレメソス近郊を訪れることにした。最初はホテルの近くにあるリマソール城へ。中世に建てられた城で、屋上からはレメソス市内が一望できる。レメソスはキプロス最大の港町なので、沖には船が何隻も錨泊している。下の写真は屋上からの眺め。

城の中には中世博物館があり、アンティークのコレクションを見ることができる。

クリオン

リマソール城前のバス停から路線バスに乗り、クリオンへ。マイクロバス程度の小型バスだが、それでも小さな集落の路地では道幅ぎりぎりになり、家をかすめるように通るためスリルがあって面白かった。

終点のクリオンで下車。クリオンはレメソスから 10km ほどの距離にある遺跡地帯で、半円形のローマ式野外劇場があることで有名。帰りのバスの時間を確認したあと、バス停近くのゲートで料金を払い、遺跡内に入った。坂道を上っていくと、やがて左側に神殿跡が見えるが、そこは後で見ることにしてまずは野外劇場へ。

下の写真が、私が生まれて初めて見た野外劇場。遺跡自体が高台にあり、目の前が海になっているため眺めが素晴らしい。最上段に座り、しばらく休憩。

ガイドブックによれば、この劇場の建設は紀元前2世紀。一度地震で壊れた後、2世紀に再建されたもので収容人数は約2,000人。この劇場は現在でも夏には音楽会などに使用されているということだった。

野外劇場の観客席の近くには5世紀の公衆浴場跡があり、床のモザイクが残っている。

下の写真は公衆浴場跡付近からの眺め。植物には詳しくないからよくわからないが、ひょろ長いのは何という種類の木でしょうか。

観光客の団体がときどきバスでやってくるが、それほど多くはなく、景色と雰囲気をゆっくりと楽しむことができた。

野外劇場を散策したあと、神殿らしき建物の廃墟へ。こちらはほとんど人がおらず、しばらく神殿内を散策。

神殿跡から見た海の眺め。この神殿跡は海に面した崖の上にあり、ここからの眺めもなかなかのもの。

それにしても、景色も雰囲気も素晴らしい場所だった。ぜひもう一度訪れてみたいものだ。

その後、2時50分発のバスでレメソスへ戻った。(このレメソス~クリオン間の路線バスは、確か1日3往復か4往復程度だったので、帰りのバスに時間に注意しておく必要がある)

レメソス到着後、夕方まで海岸沿いを散策。ホテルから約 2km の市民公園まで往復したが、海岸沿いがすべて公園になっていて涼しい時間帯には大勢の市民が散策していた。

トロードスツアー

翌日、朝9時ごろホテル前からバスに乗りトロ-ドスツアーに出発。トロードス地方はキプロス中央部の山岳地帯で、それほど大きな島ではないのに標高は 1,000m 以上あるため冬にはスキーリゾートになる。ここはバスの便がかなり少ないため、訪れるためにはバスツアーに参加するほうが無難。バスは大型の観光バスで、車内はほぼ満席だったが欧米の観光客がほとんどでアジア人は私1人だった。

最初の目的地はレメソス近郊にあるコロッシ城。

13世紀に建造されて15世紀に改築された城で、上の写真からわかるように軍事用の作りになっている。屋上へ上がる階段がすれ違えないくらい狭くて急になっているが、これも防衛上の理由なのだろうと思われる。城の内部はがらんとしていて特に何もない。

コロッシ城を出発してトロードス山中へ。途中のカフェテリアで軽食を取った後、キプロス共和国の初代大統領「マカリオス3世」の墓地へ。マカリオス3世は1960年のキプロス独立で大統領に就任し、1974年のクーデターで殺害されかけたという人。

ギリシャとの併合を目指す勢力を、当時は軍事政権だったギリシャが支援してクーデターが発生。官邸から脱出しようとしていた大統領を専用車ごと爆破したものの、乗っていたのはあらかじめこうなることを予想して作らせておいた蝋人形だったという、まるで映画のようなことが実際にあったらしい。

殺害したと思っていた大統領が生きていたため、クーデター勢力側は大混乱になりクーデターは失敗、これが結局はギリシャ軍事政権の崩壊にまでつながったという。そして、この混乱の中で「トルコ系住民を守るため」という名目でトルコが軍事侵攻して島の北側を占領、現在まで分断国家が続いているということになる。

この元大統領はキプロス人にとっては英雄のような人物らしく、墓では銃を持った兵士が警備していた。

墓地の周辺は公園として整備されていて、その一画にたくさんの紙片が結び付けられた木があった。日本のおみくじと同じようなものかもしれない。

続いて、ツアーの主目的地キッコー修道院に到着。ここはキプロスで一番有名な修道院になる。最初に建てられたのは11世紀だそうだが、現在の建物は19世紀以降のもの。写真は撮らなかったが礼拝堂の規模もかなりのものだった。下の写真は修道院の中庭。

中庭に面した回廊には隙間なく宗教画が描かれている。私はキリスト教徒ではないので壁画に描かれている天使や人物の名前はよくわからないのだが、他の観光客の多くはさかんに十字を切ったりしていて興味深かった。

修道院では1時間半ほど自由行動となり、修道院内とその周辺をゆっくりと散策することができた。今までのヨーロッパ旅行では、教会には入ったことはあるが修道院を訪れたことはなかったため、立地や内部の構造など興味深いものだった。

キッコー修道院を出発し、最後に訪れたのはオモドス村。古い建物が多く残されているということで観光コースになっている。ワインの産地ということもあって、あちこちで「コマンダリア」というキプロスワインが売られていた。下の写真は村外れの路地。

夕方5時半ごろレメソスに帰着。しばらくホテルで休んだ後、昨日に続いて海岸沿いを散策し、ホテル1階のレストランで食事。ナスとチーズとマカロニとミートソースを重ね焼きした「ムサカ」というキプロス料理がなかなか美味しかった。


翌日は土産物店を何軒か見た後、郵便局で小包用の箱を買って荷物の一部を日本に発送した。エジプトとキプロスの土産物が増えていたので、これで荷物が大分軽くなった。

その後、バスでラルナカへ行くことにしていたのだが、郵便局で少し手間取ったためバス停到着が遅れてしまった。ぎりぎりで間に合ったと思ったのだが、バスが見当たらない。近くにいた初老の男性にバスはもう出たのかどうか聞いてみると、数分前に出たばかりだということだった。

がっかりして、少し公園で休もうと歩き出したところ、その男性が「君は日本人か」と聞いてきた。そうだと答えると「TVで見たが、最近日本で多数の子供が殺される事件があったらしいな」と話してくれた。そのときは何のことかよくわからなかったのだが、帰国後に池田小学校の児童殺傷事件であることがわかった。さすがにキプロスでもニュースで流れていたらしい。

公園でしばらく休んだ後、午後1時のバスでラルナカへ。