国内旅行編(佐賀 / 嬉野武雄観光秘宝館)

かつて日本には数十軒の秘宝館があったという。しかしながら、それらの秘宝館は次第に閉館し、現在はわずか5軒ほどになってしまった。後世に伝えるべき日本の文化だと考えているだけに、残念なことだと思う。

九州には、大分県の別府と佐賀県の嬉野にそれぞれ秘宝館がある。別府秘宝館にはこの年の春に行ったのだが、嬉野は「いつでも行ける」という距離にあることもあり、今まで行く機会がなかった。天気のいい日曜日、思い立って嬉野へ行ってみた。


佐世保から車で嬉野方面へ。一般に「嬉野秘宝館」といわれているが、正式名称は「嬉野武雄観光秘宝館」であり、その名の通り嬉野と武雄の中間にある。

秘宝館の詳しい場所については実はよく知らなかったのだが、嬉野市街を通り抜け武雄方面へ向かっていると、国道沿いに金色の観音像と「魅惑に満ちた愛のひとときを、大人の遊艶地・あなたのラブファンタジー」という看板が見えてきた。なかなか立派な施設らしく、かなり広い駐車場に車を停めて秘宝館へ。

私の車は下の写真に写っている青のインプレッサ。

入り口横の案内板には、次のように書かれていた。

当館は最新のエレクトロニクスの粋を集めた大セックスワンダーランドとして開館いたしました。

エレクトロニクスの最新技術を取り入れた「動き」「音」「光」「映像」をフルに活用し愛性エキゾジムファンタジックなエロティシズムの数々を立体的パノラマチックに表現した魅惑の施設です。特に光り輝く宮殿内にくりひろげられる王侯貴族美女たちによるこの世の大セックスパノラマコーナーは日本一の規模と内容を誇っています。

「エキゾジムファンタジックなエロティシズム」というのがすごい。「エキゾジム」は「エキゾチック」ということか? ただ「最新のエレクトロニクス」というのは開館した昭和58年当時のことだろう。今見たらそれほどでもないかもしれない、などと思っていたのだが、この予想は大きく外れることになった。

秘宝館の入り口には下の写真のようなオブジェがある。入場料1,500円を払い、館内へ。なお、館内は写真撮影禁止。

私の分類によれば、秘宝館は「資料館系」と「テーマパーク系」に分けられる。「資料館系」とは各地の風俗や風習、民具などを丹念に収集展示したものであり、「テーマパーク系」とは性をテーマにしたアミューズメント施設が主になっているものをいう。この嬉野秘宝館は「テーマパーク系」の代表といっていいだろう。何しろ、パンフレットによれば 総工事費5億円、展示品の総額が2億円 なのだから。

館内にはさまざまなアトラクションがあり、人が近づくとそれを感知して動き出すようになっている。まず最初に現れるのが「長崎オチンチ祭り」で、これは言うまでもなく「長崎おくんち」のもじり。花火の音が大音響で轟き、それに混じって天井付近で追いかけっこが始まる。頭が女性器になった竜が、手足のついた男性器を「もう1回!、もう1回!」などと言いながら追い回すというもの。いきなり金のかかった設備に驚く。

以下「スーハーマン」(スーパーマンではない)だの「アラビアのエロレンス」だの「有明夫人」だの、「よくこんなの考えたもんだよ」というようなアトラクションが続く。どれもかなり金のかかったものだが、私のつたない文章力ではとても迫力を伝えられないので、実際に訪れるか、または他の秘宝館紹介のサイトを参照してほしい。

ただし、館内でもっとも金をかけた場所「ハーレム」だけは触れなければならない。総額2億円のうち7千万円が使われているというだけあって、規模はすごい。噴水のある広い池の向こうに大きな宮殿があり、スルタン皇帝が大勢の女性をはべらせている。明るい音楽とスルタン皇帝の笑い声が響く中、噴水や宮殿の2階から流れ落ちる水など、大量の水がふんだんに使われている。鑑賞時間は約10分だそうで、その間に昼になったり夜になったり(つまり周囲が明るくなったり暗くなったり)する。あまりのすごさに呆然としてしまった。さすがは「日本一の規模と内容」だ。入り口横の案内板の説明は決して誇張ではない。実に素晴らしい!

結局、約10分間見入ってしまった。途中で壁際にある椅子に座って眺めようとしたのだが、この椅子に仕掛けがあり、座るとブルブルと振動するようになっていた。こういう細かい部分が故障せずに作動しているあたり、メンテナンスがきっちりしていて嬉しい。

館内にはこれら各種アトラクションの他、秘宝館の定番ともいえる「珍宝神社」もあった。写真撮影禁止なのになぜ写真があるのかと不審に思われるだろうが、これは念写したものです。

出口付近には、これも秘宝館の定番、ポルノショップがある。売っているものの大半はいわゆるアダルトグッズで、秘宝館オリジナルグッズがあれば買ったのだが、そういうものはないようだった。出ようとすると、ショップのおばさんが「このポルノショップが目的なら、受付でそう言えばここだけはただで入れるからね」と教えてくれた。興味のある方はどうぞ。

敷地内には金色の大きな観音像がある。名前は「嬉野成就観音」といい、説明書きによれば北海道秘宝館にある観音像の妹らしい。いつか必ず北海道へ姉を見に行きたいものだ。

私がこれまで訪れた秘宝館と比較して、この嬉野秘宝館はひとつひとつの展示物に金がかかっているだけでなく、それらがよくメンテナンスされている。日本各地の秘宝館には、メンテナンス不良で動かなくなっている展示物も多いようなので、この点にはかなり好感が持てた。

この嬉野秘宝館は、東京から見れば最も遠くにある秘宝館ということになるだろう。なかなか訪れる機会はないかもしれないが、ハーレムなどの豪華な展示物は一見の価値は十分にある。秘宝館の常としていつまで存在しているかわからないので(今のところは大丈夫のようだが)、興味のある方はぜひ早めに訪れてほしい。

この秘宝館の他、佐賀県で行ってみたいスポットとしては「中富記念くすり博物館」(鳥栖市)や「羊羹資料館」(小城町)などがある。いつか訪れてみたい。

(2001.10.13)


7年後の2008年9月に再訪を果たした。再訪記はこちら。