国内旅行編(島根 / 益田競馬観戦記)

(注)益田競馬は2002年8月で廃止になりました

2002年1月の3連休は各駅停車の旅を行ってみたのだが、今回は今までとは趣向が違い、いわゆる「旅打ち」。

学生時代の私を知る人は意外に思うかもしれないが、1年ほど前から競馬に凝っている。ただし、好きなのは競馬だけで他のギャンブルはやらない(特にパチンコは嫌い)。

「馬の能力指数」を使う必勝方法を日夜研究しているのだが、まだ試行錯誤の段階。今後研究を重ね、そのうち競馬予想のホームページ開設を考えている。いずれは大儲けしてマンションでも買うつもりなのだが、まあうまくいくかどうか。

こういう競馬ファンである私だが、以前から一度見てみたいと思っていた競馬場がある。それが「日本一小さな競馬場」を宣伝文句にしている益田競馬場で、島根県益田市という山陰地方の小さな町にある。


佐世保から佐世保線~鹿児島本線~山陽本線~山口線と普通列車を乗り継ぎ、午後5時ごろ益田駅に到着した。この日は駅近くのビジネスホテルに宿泊。

翌朝、競馬新聞を見ながら予想に熱中しているおっさんたちと一緒にバスに乗り、競馬場へ向かう。益田駅前から競馬場へは、石見空港方面行きのバスで10分ほど。特定の時間帯のバスに乗る場合、競馬場へ行く人は無料になるというサービスがあるため、運賃を払う必要はなかった。

バス停から少し歩くと益田競馬場の観客席が見えてくる。入り口付近で予想紙「シーホース」を買い、競馬場の中へ。まだレース開始前ということもあり、人はまばらにしかいない。しばらく写真を撮りながら場内を歩き回ってみた。

さすがに「日本一小さな競馬場」だけのことはある。私は今までに中央競馬(JRA)では中山と東京と小倉、地方競馬では佐賀と荒尾(熊本県)に行ったことがあるのだが、中央は言うに及ばず、地方の佐賀や荒尾と比べてもかなり規模が小さい。

下の写真はパドックなのだが、それにしてもパドックの小ささには驚かされた。掲示板の向こうに見える木造の小屋が騎手の控え室であり、ここから騎手が登場する。

場内には、たくさんの写真が貼りこまれたボードがあちこちに設置してある。過去の益田競馬の名馬たちやレース風景、ファンの写真などが主なのだが、その中に堂々と馬の交尾シーンがあるのはどうかと思った。

下の写真は観客席から見たコース全景。1周は1,000メートルでコーナーのカーブがきつく、速い馬は外側へ飛んでいってしまいそうな気がする。そして、なんと観客席とコースの間を一般道が通っている。そのため、ゴール前の接戦で思わず身を乗り出したら宅配便のトラックが前を横切っていったり、おばあさんが孫を抱いて「ほら、お馬さんだよ」という感じで歩いていたりする。実にのどかな風景。

午前11時40分、いよいよレース開始。場内の実況放送を行うのは女性で、これは荒尾でも同様なので地方競馬では珍しくないのかもしれない。

各レースは6枠までで、最大頭数は8頭。馬券の種類は、単勝、複勝、枠番連勝単式の3種類。単勝と複勝はほとんど売れていないので(単勝が120円、複勝が370円などというレースもあった)枠連単が中心になる。しかしながら、私はどうも連勝単式は苦手で、佐賀競馬で何度か買ったことがあるが一度も当たったことがない。そこで、主に連勝複式(つまり表と裏の2通り)で買うことにした。

レースの傾向としては、小回りなコースだけにやはり先行馬が有利なように思える。中央競馬ではよく見られる大外一気の追い込みなどは、このコースでは難しいだろう。配当的にも堅い決着が多く、一度4千円台の配当が出たときには観客席が大きく沸いた。

さて、肝心の競馬成績についてだが、これが全敗だった。連複形式で買っているから組み合わせは15通り程度しかないのだが、これが当たらない。ほとんど1点勝負だから仕方ないともいえるが、それでも全10レースやって一度も当たらないのだから自分でも呆れてしまう。しかしまあ、賭け金は1レース500円程度だし、今回は儲けるためではなく楽しむために来ているのだから、そう気にすることはないだろう。

ところで、予想紙を見ると他の競馬場(園田、福山、佐賀、荒尾、中津などの他、JRAもある)からの転入馬が多いことに気づく。なかでも中津競馬(平成13年6月で廃止)からの馬が元気に走っているのを見たときには「馬肉 乗馬にならなくてよかったね」と思わずにはいられなかった。

第9レースはメインレースの日本海特別。1着の賞金は80万円になっている(他のレースは10~11万円)。距離は2,200メートルで、観客席の前を3回通るため、少し得した気分になる。このレースでは、ちょっと面白い名前の馬がいたので6番「イッテンヨカイチ」の単勝を500円と5枠を頭にして枠連単を200円ずつ何点か買ってみたのだが、最終的に6番の単勝は700円しか売れていなかった。(インターネットで調べてみたところ益田競馬には「ビバビバ」「ムテキダッチューノ」という名前の馬がいるらしいが、この日は出走していなかった)

話は変わるが、世の中には「珍名馬ファン」という人たちがいて、変わった名前の馬の単勝馬券(中央競馬の場合、単勝馬券には馬の名前が入る)を集めているそうである。(珍名馬券の例

以前は珍名馬は地方競馬に多いという感じを持っていたのだが、最近はむしろ中央競馬に多い。例えば、「オソレイリマス」「ゴメンアソバセ」「オミゴトデス」「マチブセ」「ウラギルワヨ」「オメデトウ」「オモシロイ」「オシャレジョウズ」「ナゾ」「ホンモノ」「ヒナタボッコ」「アシデマトイ(ひどい名前!)」「サスガ」「ユレルオモイ」など。最後の「ユレルオモイ」という馬は、私が初めて万馬券を的中したときの1着馬であり、個人的に大変思い入れがある。(平成14年1月5日の京都8レース。馬連16,600円)

そういえば、以前佐賀競馬に「サイレンスアスカ」という馬がいて、当然逃げ馬だろうと思ったら差し馬だったのは笑えたが。

レースのほうは1番人気の「ニホンカイマリノ」が勝利。「イッテンヨカイチ」は5着か6着ぐらいだったと思う。この時間には観客席はあらかた埋まっていて、大きな歓声があがっていた。

表彰式は観客の目の前で行われる。これだけ近くで行われると、さすがに観客からは拍手が沸き起こる。アットホームでいい雰囲気。

最終10レースもはずれ、結局10戦全敗で競馬場を後にした。この日の収支は約6,000円のマイナス。一度も払戻し機の前に並べなかったのは残念。

地方競馬の大半がそうであるように、この益田競馬場も多額の累積赤字を抱え、廃止が検討されているという。収支改善の見込みがなければ廃止は仕方ないのかもしれない。


翌日、朝9時過ぎに益田駅を出発。益田駅で買ったスポーツ新聞によると、前日の益田競馬入場者数は1254人、売上げは3206万7100円だったそうである。往路とは逆に山口線~山陽本線~鹿児島本線~佐世保線と普通列車を乗り継ぎ、夕方佐世保に帰着。

この益田競馬の他、日本各地には小さな競馬場がいくつもある。また、北海道には「ばんえい競馬」という独特の競馬がある。いつか訪れてみたい。

(2002.1.12~14)