トルコ旅行記(エフェス)

午前2時ごろ、セルチュクに到着した。ここは都市遺跡があるエフェスから 3km ほど離れていて、エフェス観光の拠点となる町。オトガルでバスを降りると、ゲストハウスの客引きが1人だけいたので、その人についていってみることにした。

案内されたのは “All Blacks” というゲストハウスで、トイレとシャワー付きの部屋で1泊10ドルということだったので、すぐにここに泊まることに決めた。”All Blacks” といってもニュージーランド人が経営しているわけではなく、トルコ人の3人兄弟が切盛りしているゲストハウス。なかなかいい人たちだったので、セルチュクでの滞在の際はかなりお奨めといえる。

しばらく部屋で休んだ後、セルチュクの町を歩いてみることにした。


小降りにはなったというものの、まだ雨は降り続いている。ところが、町を歩いている人たちが誰も傘を使っていない。ちょっと不思議な光景だが、もしかしたら傘を使うのは格好悪いと思っているのかもしれない。

それからカンガルー・ゲストハウスやらキウィ・カーペットショップやらホテル・キャンベラやら、セルチュクではオーストラリアやニュージーランドに関する名前がやたらと目に付く。泊まっているゲストハウスも “All Blacks” だったし、この町はオセアニアと何らかのつながりがあるのかもしれない。

さらに町中にこんな看板があった。

「オーストラリア風ペンション・ニュージーランド」というのもすごいネーミングだと思う。見たときはちょっと笑えた。

エフェス博物館

町中にはエフェスからの出土品を展示した博物館がある。それほど広い博物館ではないが、興味深いものが多数展示されていて、一通り見るのに結構時間がかかった。入館料は300万リラ。

館内はいくつかの区画に分かれていて、様々な出土品の他、昔の生活を再現した蝋人形などが展示されている。ここで一番有名なのは、やはりこのアルテミス像だろう。館内では写真は撮らなかったので、代わりに館内で買った絵葉書の画像をアップしておく。

実物は高さが2メートルほどで、なかなか威圧感がある。体の表面を覆っているのは豊穣と多産のシンボルで、一般には乳房といわれているが、生贄になった牛の睾丸という説もあるそう。

そして、展示品の中で一番面白かったのがこれ。

いやあ、素晴らしい。よく見ると細部まで精巧に作られている(尿道など)。実はこういう出土品があるとはまったく知らなかったので、見たときには衝撃的だった。高さは30センチほどで、部屋に飾っておくには最適。

(実はこの後、土産物店でこの石像の形をしたガラス製の置物を見つけたのだが、ちょっと高かったので買わなかった。後になって、買っておけばよかったと猛烈に後悔することになってしまった)

アルテミス神殿跡

博物館を出ると雨は止んでいた。次に訪れたのはセルチュクの町外れにあるアルテミス神殿跡で、ここは世界7不思議のひとつとして有名な場所。もちろん現存はしておらず、現在は柱が1本復元されているだけで広い空き地になっている。なお、ここは入場無料。

世界7不思議とは、一般的には以下の7つ。

  • オリンピアのゼウス像
  • ロードス島のヘリオス像
  • エフェスのアルテミス神殿
  • ハリカルナッソスの霊廟
  • アレキサンドリアの灯台
  • バビロンの空中庭園
  • ギザのピラミッド

もともとは「7つの眺めるべきもの」という意味で大きな建造物が選ばれており、「不思議」という意味はない。うろ覚えだが、たしか他の言語に翻訳する際に間違って、それが広まったために「7不思議」と言われるようになったらしい。

これらのうちギザとロードス島には昨年の旅行で訪れたので、ここが私にとって3番目となる。

紀元前300年ごろ、ここには巨大な神殿があったわけである。正面55m、奥行115m、そして高さ19mの大理石の円柱が127本使われていたというから、大きさは相当なもの。その場所を今歩いていると思うと、かなり高揚した気分になってくる。昨日の雨の影響で地面がぬかるんでいたものの、30分ほど散策を楽しむことができた。

アルテミス神殿の後は、鉄道駅周辺を中心にセルチュク市街を散策してみた。1日8本程度、デニズリやイズミール方面への列車が発着するローカルな感じの駅で、散策中に運よくデニズリ行きの普通列車を見ることができた。もっと日数に余裕があれば、こういう普通列車にも乗ってみたいものだが。

夕食後、ホテルへ戻り、フロントで翌日のイスタンブール行き夜行バスのチケットがどこで購入できるか聞いたところ、その場で電話予約してくれた。それからフロントに置いてあったエフェスについての日本語のガイドブックを借り、部屋に戻った。

エフェス都市遺跡

翌日は、天候は昨日とは一転して晴れ。私の場合、旅行中(特に外を歩き回る予定の日)にはほとんど雨が降ることがなく、自分でも運のいい人間だと思う。

ゲストハウスの屋上で朝食を取った後、夜まで荷物を預かってもらうことにしてエフェスへ。ゲストハウスの人にチケット売り場まで車で送ってもらい、午後まで都市遺跡内を歩き回ってみた。入場料はちょっと高く、1500万リラ。観光客はかなり多い。

ここは紀元前4世紀ごろに建設され7世紀ごろまで栄えた都市の跡で、現在ではかなり広い範囲に数々の遺跡が点在している遺跡地帯になっている。かなり雰囲気がよく、遺跡を見ながら歩くだけで十分楽しめる場所だった。

最初は小規模な円形劇場形式の音楽堂へ。

都市遺跡内にはなぜか猫がたくさんいて、この音楽堂でもあちこちを歩き回っている。観光客が食べ物をやるのだろう。

ここで日本人観光客の団体と遭遇した。この後も、都市遺跡内を進むスピードが同じくらいだったこともあり、ところどころで日本語の説明を便乗して聞くことができた。

音楽堂の近くにも、ドミティアヌス神殿や市役所など遺跡が点在している。しばらく周辺を散策した後、クレテス通りへ。下の写真はクレテス通りの遺跡の上の猫とクレテス通りに面したパドリアヌス神殿。

このクレテス通りは両側に住居跡や公衆浴場跡などが並んでいて、入ってみると迷路のようでなかなかおもしろい。ここには娼館跡もある。

下の写真は古代の公衆トイレで、一応私も座ってみた。みんなここに並んで世間話でもしていたのではないかと思われる。この下の溝はかなり深い。

クレテス通りの突き当たりにあるのが、当時世界第3位の図書館だったというセルシウス図書館跡。最初に作られたのは117年だそうで、この遺跡からも当時は相当に立派な建物だったのだろうということが想像できる。

図書館跡から大理石通りを歩いていくと、ここで最大の遺跡、山の斜面に作られた収容人数2万4千人という大劇場跡がある。パムッカレのヒエラポリスで見た円形劇場と比べても格段に規模が大きい。現在でもコンサート等に利用されている現役の劇場。

下の写真は大劇場の最上段からの眺め。

奥へ延びているのがアルカディアン通りで、古代にはこの先に港があったそうだが、現在では海は遠くに去ってしまっている。そして、この町が栄えていた当時はエフェスの入口として何百軒もの店とイルミネーションが並ぶ大通りだったという。景色がいいので、ここでセルチュクで買っておいたチョコレートを食べながら休憩。ただし、ここで何かを食べているとすぐに猫がやってくる。

最上段で休憩していると、昨日パムッカレのホテルで出会った女性2人組に再会した。しばらく話しただけで別れたが、女性2人旅というのも今まで出会ったことがないので、案外珍しいのではないかと思う。名前などは聞いていないが、別れる際にこのサイトのアドレスを教えておいたので、このページを見ているかもしれない。

アルカディアン通りの先は立ち入り禁止になっていたため、ここで都市遺跡から出ることにした。


小さなレストランで昼食としてドネルケバブを食べた後、歩いてセルチュク方面へ。途中「7人の眠れる聖者の洞窟」というのがあり、寄ってみたのだが柵が閉まっていて誰もいなかった。ただ、入口の柵にたくさんの布が結び付けられていたので、かなりの聖地なのかもしれない。

田園風景の中ののどかな道を歩いてセルチュクに戻り、イーサ・ベイ・ジャーミイというモスクを見た後、聖ヨハネ教会を訪れてみた。聖ヨハネが埋葬されている場所ということで、教会というより教会の遺跡という感じだった。このあたりがセルチュクで一番の高台になり周囲の田園風景を一望できた。

下の写真は聖ヨハネ教会から見える城塞。”CLOSED” という表示があったので行かなかったが、後で聞いたところ自由に入れるらしい。中にはモスクがあるということだった。

午後6時ごろ、ゲストハウスに帰着。まだ夜行バスが出るまで時間があったので、夕食後、ゲストハウスのスタッフに薦められた土産物店 “MOON LIGHT” に行ってみた。ユリさんという20代の若いトルコ人女性がやっている土産物店で、「個人旅行」には載っていなかったが「地球の歩き方」には載っているらしい。日本人が好きというかなり活発な性格の女性で、日本人旅行者が書き込んだノートが何冊もあり、日本人の間では結構有名な人のようだった。

ここでは、土産物を見るよりも、ユリさんが「送信メールに画像ファイルを添付する方法がわからなくて困っている」ということだったのでそれについて教えるほうが主になった。ウェブ上で操作するホットメールは私も使ったことがなく、最初はやり方がわからなかったが、しばらくやっているうちにわかったので方法を教えたところ予想以上に感謝されてキーホルダーをいくつかプレゼントしてくれた。

この後、みかんを食べながらしばらく雑談。こちらが独身ということがわかると「新婚旅行でまたトルコに来なさい」などと言われてしまった。来店した日本人と写った写真もたくさん見せてもらったが、そのうちの何人かとは今でもメールのやり取りをしているという。もう少し話したい気もしたが、バスの時間が近づいてきたので “Good Bye” ではなく “See You” と言って別れた。

ゲストハウスに戻り、預かってもらっていた荷物を受け取ってから、ここでも “Good Bye” ではなく “See You” と言って別れた。このゲストハウスのスタッフと、それから “MOON LIGHT” のユリさんに会いに、またエフェスに来たいものだ。

イスタンブールへのバスはわりと便数が多いらしく、乗客が結構集まっている。カウンターでチケットを受け取り、午後9時15分発の夜行バスでイスタンブールへ。