カンボジア旅行記(トンレサップ湖)

シェムリアップ市街を縦断し、市街から南へ約10キロの距離にあるトンレサップ湖へ。ここは「ボートピープル」と呼ばれる水上生活者が多く住んでいる湖で、アンコール遺跡と並んでシェムリアップの観光地となっている。今回はボートに乗って水上生活者の村を観光してきた。


シェムリアップ市街を離れて南に向かっていると、やがて政府の役人が駐在している案内所のような建物があり、外国人観光客はここで25ドルを払ってチケットを購入する必要がある。かつてはこういうシステムはなく、料金は船頭との交渉で決まっていたらしいが、今は政府が統一料金を定めているらしい。

ぼったくりなどの問題が多く発生したためかもしれないが、しかしガイドブックには「5ドル~」と載っているから25ドルという料金自体がぼったくりという気もする。このうち実際に船頭に渡るのは何ドルくらいだろう。ここでは “Pay No More” と何度も念を押された。

再びバイクタクシーに乗って南へ走り、やがてボートが何十隻も係留されている小さな船着場に到着。集まってきたボート関係者からジェイム君が適当に選んでチケットを渡し、そのボートに乗り込んだ。観光客に対してボートが供給過剰気味で、このボートに乗ったのは私1人。ボートを操縦しているのは子供たち3人で、いずれも小学生くらい。

下の写真は出発してすぐ、岸に現れた学校。服装などから考えて、ちょっと裕福な層の子供たちのような感じがする。このボートを操縦している3人と同年代のような感じで、なぜこの3人は学校へ行っていないのかという気もしたが、やはりそのあたりにはいろいろと事情があるようで…

出発してしばらくは細長い湾のような水路を進む。水上や湖岸の住居の様子から考えて、この湖には生活廃水が直接流れ込んでいるような気がするが、それでも水の中に入って何かの作業をしているらしい少年が何人もいた。

周囲には他の観光ボートや作業ボートが行き来しているが、突然エンジンが停止して漂流しながらなんとかエンジンを動かそうと四苦八苦しているボートがあったり、少しずつ浸入してくる水をバケツでかき出しながら通航しているボートがあったりと、眺めているとなかなか面白い。

やがて視界が開けて湖本体に到着。さすがに東南アジア最大の湖だけあって、水が泥色でなければ海と間違えそうなくらい広い(何しろ水平線が見える)。ただ、これだけ広い湖でも今は乾季なので水深は数メートル以内だという。

湖上をしばらく進み、主に漁業に従事している水上生活者の集落に到着した。

各住居は案外整然と並んでいる。右上の写真に写っている小さな小屋は理髪店で、ちょうど男性が髪を切っているところだった。理髪店の隣の青い建物は食料品などを売っている店。他にもボートの部品を売る店やエンジンのメンテナンス作業店など、予想以上にちゃんとした集落になっていた。

集落の中には土産物店もあり、ここには船を繋いで店に上がってみた。下の写真は土産物店の屋上(展望所になっている)からの眺め。

かなり広い範囲に住居が点在しているのが見える。子供たちの話によると、雨季には湖の面積は約4倍になり水上生活者たちは山へ避難するという。雨季が終わると周辺の浸水した地域から大量の水が湖に流れ込むため、魚も水流に乗って湖に集まってくることになる。その魚を目当てに、ここに大勢の水上生活者が住むようになったということだった。

1時間ほどのクルージングを終えて船着場へ戻る途中、私の乗ったボートもエンジンが停止した。子供たちの1人が奮闘して5分ほどで復旧したが、ちょっとスリルを感じた。なかなか優秀なエンジニアだと思う。

そして船着場に着く直前、子供たちが「チップが欲しい」と言ってきた。案の定という感じだったが、なかなか優秀なクルーでもあったので(役人には “Pay No More” と言われていたが)数ドルを渡してきた。

その後、船着場へ戻ってジェイム君と合流し、バイクタクシーに乗ってシェムリアップ市街へ戻った。


<シェムリアップ>

アンコール遺跡観光の拠点になるシェムリアップの町は、近年になって宿泊施設の建設が進み発展しつつあるそうである(注:2004年当時の話)。しかしながら、それでも幹線道路以外は未舗装の道路がほとんどで、かなり雑然とした雰囲気の町といえる。暗くなってから出歩くのはためらわれたので、明るいうちにホテルに帰った日の夕方、町を散策してみた。

熱帯地方は薄明の時間が短く、日が沈んだらすぐに暗くなるので、あまり遅くまで散策できなかったのは残念。散策の途中、小さな土産物店が集まったマーケットのような建物に立ち寄り(自分でも悪趣味とは思ったが)地雷がデザインされたTシャツを数枚購入した。


カンボジア滞在最終日、朝8時半にホテルを出て空港へ。空港前で2日間行動を共にしたジェイム君と別れた。

ターミナル内に入り、空港使用料の25ドルを払ってから出国ゲートへ。この国は物価は安いがビザが20ドルにアンコール遺跡のパスポートが40ドル、さらに空港使用料が25ドルと、案外金のかかる国だった。

カンボジアを出国し、10時40分のシルクエアー622便でプノンペンへ。この便はシンガポール~シェムリアップ~プノンペン~シンガポールと循環する路線なので、途中プノンペンに寄ることになる。下の写真は着陸前のプノンペン近郊の風景。

11時50分にプノンペンに到着し、いったん飛行機を降りてトランジットエリアへ。今回はプノンペンには滞在できなかったが、刑務所博物館やキリングフィールドなど訪れてみたい場所がいくつもある。いつになるかわからないが、この町はしっかりと旅行してみたい。

空港自体はごく狭く、特にすることもなかったためベンチに座って時間をつぶしてから再び機内へ。12時半にプノンペンを離陸し、夕方シンガポールに到着。


午後6時にバンコク経由関西行きのシンガポール航空68便でシンガポールを出発。シンガポール~バンコクの区間では、機内食で驚くほど分厚いステーキが出て乗客の多くが感激していた。こんな豪華な機内食は初めて。

バンコクでも、いったん飛行機を下りてトランジットエリアへ。ここからは乗客の多くが日本人になり、夜10時にバンコクを離陸した。バンコクからの乗客に「さっき豪華なステーキを食べたんですよ」と自慢したい気分。

早朝5時50分ごろ関西空港に到着し、全日空の国内便に乗り継いで福岡へ帰った。


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