スロベニア旅行記(シュコツィアン鍾乳洞)

朝9時半、リュブリャーナ駅から列車に乗り11時にディヴァチャ駅に到着した。ここがシュコツィアン鍾乳洞の最寄駅で、駅から5キロほどのところに鍾乳洞がある。

ここは世界遺産に登録されているほどの鍾乳洞だというのに、バス路線はなく公共交通機関を使って訪れることはできない。私のようにレンタカーを使用しない旅行者は、駅から5キロの道を歩いていくしかないのである。ここが今回の旅行の主目的地なので、歩いて訪れてきた。


駅前は閑散としていて案内板もないので、どちらへ歩いていけばいいのかもわからない。幸い、よく探したらプラットホームに実に大雑把な地図があり、駅からどの方向へ向かえばいいのかだけはわかった。駅からは所々にある “Skocjanske Jame” という表示(”Jame” はスロベニア語で鍾乳洞という意味)を頼りに車道を延々と歩き、何とかシュコツィアン鍾乳洞にたどり着くことができた。

ここでディヴァチャ駅のちょっとした小ネタを紹介。鍾乳洞に向かう前に駅のトイレを使おうと思い、プラットホームのトイレに行ったら入口にそれぞれ白色とピンク色の板が貼ってあった(文字、絵、模様などは無し)。

当然、白色が男性用だろうと思って入ったら個室ばかりで男性用小便器がない。まさかの女性用トイレだったので、慌てて飛び出したら欧米人女性2人がピンク色のほうに入っていくところだった。

そちらも飛び出してきたので入口の前で鉢合わせ。お互いに苦笑いだったが、国によって色のイメージが違うということを実感した。これは旅行中のちょっと面白い思い出。

なお、これは2004年当時の出来事なので、今はどうなっているかわからない。ディヴァチャ駅へ行く機会がある人は、駅のトイレがどうなっているか教えてほしい。

ディヴァチャ駅からシュコツィアン鍾乳洞への行き方については、ガイドブック等にもほとんど記載されていないようである。そこで、今後訪れる人のために行き方についての簡単なページを作ってみた。参考にしたい人は見てほしい。

車がないと訪れるのが難しいだけあって、ポストイナ鍾乳洞と比べると観光客は圧倒的に少ない。ここではガイドツアーに参加しないと鍾乳洞に入ることはできず、私が参加した回は30人ほどだった。入場料は2,000トラール。観光できるのは約2キロで、所要時間は1時間半ほど。(このガイドツアーは私が訪れた9月はほぼ1時間おきに行われていたが、冬季には回数が減り1日3回ほどになる)


ガイドツアーの出発まで時間があったので小さなカフェでしばらく休憩し、1時に鍾乳洞へ出発した。下の写真は、鍾乳洞の入口で説明するガイドとそれに聞き入るツアー参加者。前に立って話している背の高い女性がガイド。洞内は出口付近を除いて残念ながら写真撮影禁止。(ガイドはそう言ったように思えたのだが、もしかしたら「フラッシュ禁止」だったのかもしれない。しかしまあ、他の参加者も写真は撮っていなかったし、いずれにしても地底の峡谷は1枚の写真に収まるような規模ではなかった)

洞内に入ると「大広間」「沈黙の洞窟」などの広い空間が続き、一行はその中を黙々と歩く。「沈黙の洞窟」はその名の通り声を出すのが憚られるほど静まり返っていて、空間の広さは日本の鍾乳洞では見たことのないくらいの規模。ところどころでガイドが立ち止まって説明するが、ガイドは4ヶ国語で説明している(らしい)。

「沈黙の洞窟」から、一転して細く狭まっている部分を通り抜けると、やがて目の前にとんでもなく広大な空間が現れる。ここからが、シュコツィアン鍾乳洞のクライマックスといえる地底の大峡谷である。ここと比べたら「沈黙の洞窟」さえ小さく感じられてしまう。

写真は撮っていないので、代わりにパンフレットの写真を左にアップしておく。

まさしく「絶景」といっていいだろう。はるか 150m ほど下を地底の川が音を立てて流れていて、天井までの高さもおそらく 100m 以上。断崖に沿って細い道がずっと先まで続いているのが見える。言葉を無くしてしまうほどの迫力と言っていい。この景色を見るためにわざわざスロベニアまで来たわけだが、十分にその価値はあったといえる。

ここから出口まで峡谷に沿って歩いていくわけだが、ここのハイライトは左の写真にも写っている高さ 150m の峡谷に架かる橋。すぐに渡ってしまうのがもったいなくて、橋の上で周囲を眺めているうちに私が最後尾になってしまったが、ここからの眺めはすごい迫力だった。鍾乳洞めぐりが好きな人なら一生に一度は訪れてほしい。

峡谷を流れている川には、「レカ川」という名前がついている。このシュコツィアン鍾乳洞を流れた後、いったん地上に出るものの再び地下河川になり、イタリアで地上に出て最後はアドリア海に流れ込んでいるという。ちょっと不思議な川である。

峡谷を抜けると洞窟の出口があり、ここで洞内ツアーは終わりとなる。ここだけは写真撮影可なので、ツアー参加者は写真を撮りまくっていた。

洞窟の出口というより、ここでレカ川が洞内に流れ込んでいるのでむしろ入口となる。下はその洞口の写真で、深い渓谷の中にある。

ここからケーブルカーで一気に上に戻り、そこでガイドツアーは解散した。


このまま小さなカフェや土産物店がある出発地点に戻ってもいいが、”MUSEUM” という案内板があったのでそちらへ行ってみることにした。意外と距離があり、歩き疲れていたが意地で進んでいくと(ツアー参加者の中には、途中で引き返した人も多かった)、やがて小さな集落に到着した。下の写真は、その中の小さな展示館。

展示内容はこの付近一帯の自然環境に関するものがほとんど。集落には教会や農家らしい建物が並んでいたが、どれも生活臭があまり感じられなかったので観光客用に復元された建物群だったのかもしれない。ここからはかなり深そうなドリーネが見えたりして、景色はなかなかいい。しばらく散策。

ツアーの出発地点に戻る途中、今度は “PANORAMIC VIEW POINT” という案内板があったのでそちらへ行ってみたところ、そこからの眺めも息を飲むほどの絶景だった。

遠くに見える教会は先ほど歩き回っていた小さな集落のもの。断崖の下に洞口が開いていて、洞内を流れていたレカ川が流れ出しているのが見える。1枚の写真には入りきらないくらいの広大な眺めだったので写真では迫力はあまり伝わらないと思うが、しばらく見とれてしまうほどの景色だった。シュコツィアン鍾乳洞を訪れる際は、ここからの眺めだけは見逃さないようにしてほしい。

(2020年10月追記)

この旅行当時はまだフィルムカメラの時代だったので写真をつなぎ合わせてパノラマ写真を作るのはうまくいかなかったのだが、今は Microsoft ICE というソフトがある。それを使って9枚の写真を合成してみた。このパノラマ写真なら迫力が伝わるだろうか。

パノラマ写真の作り方については、別館のコラムを参照。


ツアーの出発地点に戻り、しばらく土産物店を見た後、シュコツィアン鍾乳洞を後にして歩いてディヴァチャ駅へ。帰りは山の中の道を通ったので来たときよりは時間はかからなかったものの、それでもかなり疲れた。

ディヴァチャ駅で列車を待っていると、なかなか格好いい列車がやってきた。

この列車に乗りたいと思ったのだが、残念ながらこれはディヴァチャ駅止まりだったので乗ることはできなかった。代わりに夕方5時の各駅停車に乗り、7時ごろリュブリャーナに到着した。