台湾旅行記(麻豆代天府 / 十八地獄、天堂)

12時10分、エバー航空2105便で台北へ。台北の中正国際空港に午後1時半に到着し、バスで台北駅へ移動した。

この空港は市街地から離れているので、駅までは1時間ほどかかる。3時すぎに台北駅に到着。

この日のうちに鉄道で台南へ移動し、台南で1泊。翌日朝、バスで麻豆へ行くことにしていた。


台湾国鉄には、特急に相当する「自強号」、急行に相当する「艸/呂光号」(艸/呂は草かんむりに呂)、準急に相当する「復興号」、それに各駅停車などの種類があり、自強号、艸/呂光号、復興号は全席指定になっている。

台南までは最速の自強号で4時間弱。まず、窓口で4時発の自強号の切符を買おうとしたが、すでに座席は満席だった。その次の自強号や艸/呂光号の状況を聞いたところ、なんとか17時04分発の艸/呂光号の切符を購入することができた。

しばらく台北駅周辺を歩いて時間をつぶし、艸/呂光号で台南へ。しかし全席指定だというのに通路が人であふれている。どうやら、座席指定がない「立席券」という切符があり、さらに「人が座っていない席にはとりあえず座っていてもかまわない」という暗黙のルールがあるらしい。私の席にも人が座っていたが、切符を見せるとすぐに開けてくれた。それにしても、全席指定の列車でこれだけ立っている人がいるというのは日本の鉄道では考えられない。

客車列車の艸/呂光号はさすがに自強号より時間がかかり、約5時間後の夜10時50分に台南に到着した。

麻豆代天府

翌日の朝、台南駅の案内所で麻豆(発音はマートウ)への行き方を聞いたところ、かつて日本語教育を受けたらしいお爺さんが丁寧な日本語で教えてくれた。礼を言ってから、駅近くの興南バス乗り場へ行き、10時半のバスで麻豆へ。約1時間で麻豆の小さなバスターミナルに到着した。

特に看板もないので最初は麻豆代天府への行き方がわからなかったが、幸いにも近くにセブンイレブンがあり、そこで教えてもらうことができた。バスターミナルからそう遠くはなく、10分ほどで到着した。

門の前に広場があり、本堂、観音堂、5階建ての大きな建物(会議室や図書室があるらしい)が広場を囲むような構造になっている。本堂の裏手に大きな龍の建造物があり、このあたりに十八地獄、天堂、水晶宮というアトラクションがある。しかし、この龍は予想以上の規模だった。

龍の口から続いている階段は、龍が吐く水を現しているらしい。

では早速、十八地獄へ。入場料は決まっておらず、入口横の箱に寸志として好きな額を入れるようになっている。硬貨を適当に数枚入れてから、地獄の中に入る。

内部はちょっと薄暗い。十八地獄という名前の通り、十八種の地獄風景が再現されていて、人が近づくとそれを感知して動き出すような仕掛けになっている。

まず最初は閻魔大王の裁きの場面。閻魔大王の前で必死になって様々な言い訳をするものの、結局「地獄行き」と宣告される様子が面白い。(中国語はわからないが、大体そんな感じだったはず)

以下、下の写真のように様々な地獄風景が続く。私が日本一の地獄風景だと思っている徳島県牟岐の正観寺と比べても、やはり規模は数段上と言っていい。

正観寺の地獄風景と違う点は、どの地獄も最初に亡者の弁明から始まるところ。亡者が地獄の役人(?)に向かって様々な懇願をするが、結局は聞き入れられずに責め苦が始まり、亡者の悲鳴が響くという展開になっている。

責め苦も、のこぎりで挽かれたり石臼で挽かれたり蒸し器に入れられたり、バラエティーに富んでいる。中でも面白いと思ったのは亡者がまるで道路工事で使うロードローラーのような車両(鬼が操縦している)に踏み潰されている場面。「地獄にもこんな車両があるのか?」と思って、ちょっと笑えた。

それにしても、各地獄をじっくり見ているのは私くらいで、ときどき見物客がやってくるもののよほど怖いのか足早に去ってしまう。実にもったいないという気もするが、これが一般の反応なのかもしれない。

地獄の最後は、生まれ変わりを宣告される場面。左奥から登場した亡者が、真ん中まで来ると役人のほうに向かってひざまずき、次の生まれ変わり先を宣告されて右側のドアから出て行く。この一連の人形の動作は、実に見事という他ない。

ここで十八地獄は終わり、出口へ。なかなか素晴らしい出来映えだった。私が見た限りでは、世界一と言っていいだろう。地獄めぐりに興味のある人にとっては必見のスポット。

続いて天堂へ。こちらはその名の通り天国を現している。十八地獄と同様に入場料は決まっておらず、入口の箱に硬貨を数枚入れてから中に入る。

天堂では、天国の様々な光景が再現されている。そして十八地獄と同様、人が近づくとそれを感知して中華風の音楽が大音響で鳴り響き、人形が動き出すような仕掛けになっている。皇帝(?)に向かって一斉にお辞儀をしたり、人形の動きは実によくできている。なお女性の人形は美人ぞろいで、これは地獄とは大違い。

それにしても、上の写真のように宴会の風景が多いのだが、天国ではこんなに宴会ばかりやっているのだろうか。もっとも、飲んでいるのは酒ではなくお茶のようだが。

天堂を抜けると、そこは龍の口の中になっている。つまり天堂は龍の胴体部分にあり、ずっと龍の体内を歩いていたことになる。下の写真は、龍の口の中からの眺め。

階段を下り、地上へ。続いて水晶宮へと思ったのだが、こちらは残念ながら閉まっていた。一時的な閉鎖なのか、あるいはもう再開されないのか、そのあたりはよくわからなかった。

上の写真は水晶宮の出口。「水中に潜った龍の体内を歩く」という趣向になっていたらしい。他の旅行記サイトによると、どうやら水中世界がテーマになっていたようで、入れないのが残念。


水晶宮に入れなかったのは残念だったものの、十八地獄と天堂だけでも十分に素晴らしかった。当初の予定では、この後しばらく本堂周辺を散策してから台南へ戻るつもりだったが、しかしどうにも帰れないような事態になってしまった。

結局5時ごろまで麻豆代天府に釘付けになってしまった「奇祭」については、次のページで紹介する。