国内旅行編(福岡 / 霊巌寺、成田山久留米分院)

2005年の体育の日。普段、土日は競馬をやっているわけだが、祝日はやることがない。暇だし天気もいいので、ちょっと面白そうなスポットへ行ってみることにした。

まずは「日本三大奇岩」のひとつ(と主張している岩)がある福岡県八女郡黒木町の霊巌寺へ。これがどんな形の岩なのかは、これまでの当サイトの国内旅行編の傾向から予想できると思う。その後、久留米市の成田山久留米分院へ行ってみた。

霊巌寺

佐世保から車で福岡方面へ。私の実家がある福岡県筑後市を通り過ぎ、国道442号線を八女の山奥へ向かう。黒木町で県道797号線に入ると、急に細い山道になった。

やがて霊巌寺の前に到着。近くにあった駐車場に車を停め、歩いて霊巌寺へ向かっていると、問題の岩が見えてくる。

これが日本三大奇岩のひとつとされている珍宝(ちんぽう)岩。別名「男岩」ともいい、見ての通りの形をしている。宮崎の陰陽石ほどはっきりとした形をしているわけではないようだが、まあ奇岩といってもいいだろう。私が好んで訪れるのは、大抵こういう場所。

やがて霊巌寺が見えてきた。本堂、鐘楼の他、八女茶についての小さな資料館のような建物がある。珍宝岩についての案内板を見たりしながら、しばらく休憩することにした。ここには珍宝岩の他に女岩、仲人岩、座禅岩、地蔵岩などの岩があり、奇岩地帯になっているらしい。

ところで「日本三大奇岩」というからには他に2つの奇岩が存在するはず。ところが、境内の案内板を見ても、その2つが何なのか記載されていない。さらにインターネットで「日本三大奇岩」で検索してみてもヒットするのは霊巌寺の珍宝岩だけで、どうしてもあとの2つを探し出すことができない。

まあ、こういった「日本三大○○」などというのは、どこかが「これが日本三大○○のひとつだ」と言い出し、他の2つは言い出した人たちが勝手に決めるというのが大抵のケースだろう。

例えば「世界三大奇勝」のひとつと主張している場所として福井県の「東尋坊」、徳島県の「阿波の土柱」、群馬県の「鬼押出し」がある。それぞれ他の2つはどこかというと、東尋坊は韓国の金剛山とノルウェー西海岸、阿波の土柱はアメリカのワイオミングとオーストリアのチロル、鬼押出しはイタリアのベスビオ火山と鹿児島の桜島ということになっている。

主張している場所がちょうど3ヶ所なのだから、お互いに話し合ってこの3ヶ所に決めてしまえばいいという気もするが。

このあたりのことに文句を言うつもりはないが、「日本三大奇岩」の場合、霊巌寺は他の2つを決めていないらしい。そこで私が勝手に決めてみると、まず宮崎県小林市の陰陽石は当確だろう。あとのひとつは、個人的にいつか訪れたい場所ということで与那国島の 立神岩 としたい。(異論がある方、他にすごい岩を知っているという方はメールをください)

境内から山の中へ遊歩道が続いている。珍宝岩を近くで見ることができそうなので、行ってみることにした。

しばらくは急な上り坂が続く。息を切らせながら登っていくと「座禅岩」の上に出る。ここからの眺めはすばらしく、奇岩群や集落や棚田を一望できる。先ほどは見上げていた珍宝岩をこの角度で見下ろしているのだから、かなりの高さを登ってきたことになる。

この座禅岩には周瑞(しゅうずい)という僧侶の銅像がある。応永年間 (1394~1427) の出羽の国の僧侶で、明からの帰途にこの地に留まり、この岩の上で座禅を組んでいたという。それを見た庄屋の松尾太郎五郎久家が寺を建てて周瑞に寄進したのが霊巌寺の創始で、その際に周瑞が松尾太郎五郎久家に明から持ち帰った茶の実を与えたのが、八女茶の起源ということだった。

地元の名産品でありながら、恥ずかしながら八女茶資料館で八女茶の起源について初めて知った。

しばらく景色を眺めた後、遊歩道を先へ進んでみることにした。今度は下りの階段になり、途中にこういう石碑があった。この遊歩道は「愛の道」というらしい。なかなかいいネーミングだと思う。

このあたりからは、珍宝岩を下から見上げることができる。天に向かって屹立しているような感じの写真を撮ることができた。明るい空との対比が面白い。

遊歩道はここで二手に分岐していて、片方は山の中に入っていく本格的なルートのようだが、疲れていたし時間もないため寺へ戻るルートを進むことにした。

霊巌寺に戻り、景色を眺めながらしばらく休憩した後、八女茶資料館を見てから霊巌寺を後にした。

景色もきれいだったし、寺自体も静かで雰囲気のいいところだった。欲を言えば日本三大奇岩の他の2つを霊巌寺のほうでちゃんと決めてほしい気もする。境内の鐘楼に参拝者が自由に書き込める雑記帳が置いてあったので、次回訪れるときは要望として書いてみることにしたい。

成田山久留米分院

黒木から山を降りて八女市街へ。ここで国道3号線に移り、久留米方面へ向かうと大きな慈母観音像が見えてくる。ここが次の目的地「成田山久留米分院」になる。

地元に近いこともあって、この慈母観音像は子供のころからよく見ていたのだが、一度も訪れたことはなかった。今回初めて内部に入ることになる。

到着したのが既に夕方だったため、あと40分ほどしか時間がない。拝観料の500円を払って中に入り、まずは「平和大仏塔極楽殿」というパゴダ風の建物へ。内部は回廊になっていて、釈迦の生涯が様々な絵画によって説明されている。

予想以上に見事な出来だったが、残念ながら写真撮影禁止だったので内部の写真は撮っていない。写真を見たい人は下のほうでリンクしている公式サイトを訪れてほしい。

続いて慈母観音像の内部へ。1階には「全地球帰依人物拝仏の像」というらしい大きなジオラマが2ヶ所に作られていた。いずれも手を広げた仏様(かなり手が長い)の前に、片方は様々な動物、もう片方は様々な人種が群がっているというもので、おそらくは世界平和を表しているのだろう。ただ、よく見ると「様々な人種」というだけあってキリスト教徒やイスラム教徒やユダヤ教徒やヒンドゥ教徒らしき人までが仏様を拝んでいる。世界平和はわかるが、ちょっとまずいんじゃないのかという気もしなくはない。

観音像の内部は、肩のあたりまで階段で登ることができる。内部は殺風景で特に見るものもないので、一気に上まで上ってしまうといくつかの仏像が奉られている小部屋があった。ここから久留米市街を眺めることができるようになっているが、それほどきれいな景色というわけでもない。写真右下の丸い物体は、おそらく抱かれている子供の頭。

観音像の説明書きには「白毫には直径30cmの純金の板に3カラットのダイヤモンドが18個ついています。又、胸の瓔珞には直径10cmの水晶とその周囲には56個の翡翠が散りばめてあります」と書かれている。今まで知らなかったが、実は意外と豪華な観音像だった。

慈母観音像を下り、次は地下洞窟(という名前だが、実際はコンクリートむき出しの単なる地下トンネル)を通って歴史館へ。このトンネルの壁面には「親孝行壁画」というタイトルで昔話や何やらの風景がたくさん描かれている。

トンネルを抜けると展示室があり、日本史上の名場面「天の岩戸開き」「八頭大蛇退治」「源平合戦」などのジオラマが展示されている。ここはサクッと見て外へ出るつもりだったのだが、しかしこの一画に予想もしないものがあった。

八大地獄!

なんとここには、すべて電動アトラクションの地獄めぐりがあった。このことは事前にはまったく知らなかったので、驚喜しながら中に入ってみた。

仕掛けは徳島県牟岐にある正観寺の地獄めぐりと同様で、人が近づくとそれを感知して動き出すようになっている。等活地獄から始まり、焦熱、叫喚、阿鼻地獄へと進んでいくうちに、責め苦も厳しくなってくる。私の後に入ってきた家族連れなど、子供が怖がって途中で出てしまったくらいで、亡者や鬼の動き、大音響で響く悲鳴など、なかなかよくできている。私が日本一の地獄風景と思っている正観寺と比べると小規模だが、それでも十分に楽しめた。

しかしながら、写真撮影禁止なのでここの写真は撮っていない。地獄風景は以下の公式サイトでも見ることはできるが、電動アトラクションを体感したい人は直接訪れてほしい。

建物の外に出ると、すでに拝観時間終了間際で正門も半分閉まっていた。これで外へ出ることにして、しばらく周辺を散策した後、久留米を後にした。

それにしても、私の地元のすぐ近くにこんな地獄めぐりができる場所があるとは知らなかった。それを知ることができたのが今回の小旅行で一番の収穫といっていいだろう。近いうちに再訪したい。

(2005.10.10)