この日の予定は、午前中に戦争証跡博物館を見て午後は郊外にあるテーマパーク「スイティエンパーク」へ行くことにしていた。
戦争証跡博物館は名前の通りベトナム戦争に関する博物館で、ホーチミンへ来た旅行者のほとんどが一度は訪れる場所だと思う。
ホテルを出て、20分ほど歩いて戦争証跡博物館に到着した。たいした距離ではないのだが、なにしろ東南アジアは今が一番暑い季節なので、着いたときにはすっかり汗だくになっていた。入場料の1万5千ドンを払って中に入る。
わりと広い博物館で、屋外にはアメリカ軍の戦車やヘリコプターなどが置かれていた。これらは実際にベトナム戦争で使われたもので、ベトナムによって捕獲されたものだそうである。さすがに来訪者は多く、多くの欧米人や日本人が歩いていた。
アメリカ映画などで見るベトナム戦争は主にアメリカ側からの視点で描かれているのに対し、この博物館はベトナム側からの視点で「アメリカがどれだけ悪いことをやったか」が延々と展示されている。館内はアメリカ兵による拷問、虐殺、ナパーム弾による死者、枯葉剤の被害など凄惨な写真のオンパレードで、正視出来ないようなものがほとんど。枯葉剤の被害に関するコーナーには、奇形児の写真やホルマリン漬け標本なども展示されていた。
写真撮影禁止とは書かれていなかったようだが、あまり館内の写真を撮る気にはなれなかった。ここで撮ったのは下の2枚だけで、あのソンミ村事件で虐殺された村人の写真と、処刑したベトナム兵士の生首を持って記念撮影するアメリカ兵。
正直言って、館内の展示物について詳しく説明する気力はない。「戦争証跡博物館」で検索すれば多くのサイトがヒットするはずなので、詳しく知りたい人はそちらを参照するか、または直接訪れてほしい。
それにしても、ベトナムではこのところアメリカ人観光客も増えているようだが、彼らはこの展示を見ていったいどんな気持になるのだろうか。
下の写真は屋外に並んでいた各種砲弾。
敷地の一画には「虎の檻」と呼ばれる牢獄が再現されていた。内部はごく小さな独房に分かれていて、天井は高く、鉄格子がはめられている。つまり看守は上から捕虜を監視していたわけである。
ここでは各種拷問の具体的な方法が図解と人形で説明されていて、恐怖心が煽られる。
そして、ここにはギロチンがあった。本物なのかレプリカなのかはわからないが、ギロチンを見たのはこれが初めて。館内に生首を持って記念撮影するアメリカ兵の写真があったし、実際にギロチンを使った処刑が行われていたわけである。
この後1時間ほど、展示品を見ながら歩き回ってから博物館を出た。日本人旅行者が多いためか、館内には日本語の説明書きも多く、各写真や展示品の内容がよく理解できた。現在は市場に物があふれ、平和そのものという雰囲気のホーチミン市街だが、30年前にはたしかに戦争があったのである。
館内にはエアコンがなく、扇風機だけなのでちょっと暑いのだが、しかし展示内容があまりにも重いので暑いと感じる余裕がない。ベトナム旅行の際は、観光地めぐりや雑貨買いもいいが、やはりこの場所だけはぜひとも訪れてほしいものだ。