国内旅行編(長崎 / 西海楽園再訪)

長崎県西海市に西海楽園というスポットがある。場所は西彼杵半島の先端付近、主要な観光ルートから外れた辺鄙なところで、観光地といえるのは七つ釜鍾乳洞くらい。

この鍾乳洞の前にある七つ釜観光ホテルに併設された仏教系のテーマパークが西海楽園になっている。

ここは、おそらく長崎県で最大級のB級スポットだと思う。4年半前の2003年4月に一度訪れたことがあり、そのときの記録は当サイトにも載せている。七つ釜観光ホテルが2007年9月17日で閉館になり、それに伴って西海楽園も閉園になるという情報を得たので、その前に再訪することにした。


佐世保から車で西海市方面へ向かう。西海橋を通り過ぎ、やがて七つ釜観光ホテルに到着した。相当に交通の便の悪いところで、公共交通機関だけでこの場所を訪れるのは至難の業だと思う。

駐車場に車を停め、西海楽園の入口へ向かう。前回来たときは、入口で入場料の800円を払い南国調にデザインされたバスに乗って園内に入ったので、今回もそうなるのだろうと思っていた。ところが、入口へ来てみると前回あった「西海楽園いのりの里」と書かれていた正門は無くなっていて「ご入場無料」という木の札が立っていた。現在は入場料は無料化され、自由に車で中に入れるようになっていた。

左の写真が前回(2003年)に来たときの正門で、右が今回の光景。

というわけで、いったん駐車場に戻って車で内部に入る。園内はアップダウンが大きく、前回来たときは歩き回るのがちょっときつかったのだが、さすがに車だとかなり楽。これで見納めと思って園内を3周してきた。

前回来たときは、バスで園内を一回りした後、休憩所のような建物でお茶のサービスがあった。それから再びバスで観音像の前へ行き、ここで解散して後は自由に園内を散策するようになっていた。今回は、まず一番奥にあるレジャーランドへ行ってみた。

前回来たときは、ずいぶんと立派な感じのメリーゴーラウンドと小さな公園に置いてありそうなブランコとシーソーという、あまりにアンバランスな光景にちょっと感動したのを憶えている。これらの他、さびが浮いたライドやタイヤがパンクした戦車などいくつかの遊具が置いてあったのだが、今回はすべてきれいに撤去されていた。

左の写真が前回(2003年)のレジャーランドで、右が今回の光景。

メリーゴーラウンドの基礎というのも、なかなか見られるものではないだろう。こんな形になっているのか。

噂によると、開園当時はこのレジャーランドもそれなりに賑わっていたらしいので、おそらくは子供たちが走り回っていたのだろう。その頃を知っているわけではないが、ここを歩いているとなんだか「夢の跡」という感じがする。

レジャーランドの端から、ウォータースライダーのスタート地点を見ることができる。まだ9月だが、すでにプールが閉鎖されているので誰もいない。かつて、夏の間は西海楽園内で最も賑わっていた場所だと思われるので、ちょっと哀愁を誘う風景といえる。

レジャーランドの近くに展望台があり、途中の通路が草に埋もれていたもののなんとか登ることができた。下の写真が展望台からの景色で、レジャーランド跡地の全景を眺めることができる。

かつてレジャーランドの隣に小さな動物園があり、リャマなどが飼われていたそうだが、現在は撤去されて畑に変わっていた。

この展望台からは観音像と小さな池も眺めることができる。続いて、この池へ行ってみた。

前回来たときは白鳥の形をした足こぎボートが置いてあったのだが、今回は撤去されていた。その代わり池に鴨の小屋が浮かんでいて、たくさんの鴨が岸辺を歩いていた。

続いて、観音像の近くにある四季の花園へ行ってみた。ここは四季によって咲く花が変わる広場で、パンフレットによればかなりきれいな景色を楽しむことができる場所ということになっている。しかしながら、手入れが行き届いておらず、ちょっと荒れた感じになっていた。

上の写真に写っている建物が前回来たときにお茶のサービスがあった休憩所で、現在は廃屋になっていた。(ここだけでなく園内の建物はほとんどが廃屋か物置と化していた)

続いて、園内中心地にある観音像へ。

こちらは健在だった。そして、意外だったのがここにいるとわりと頻繁に来訪者がやって来ること。私のようなB級スポットマニアではなく一般の家族連れで、そろって観音像にお参りしていた。入場料が無料化されたこともあり、案外ここはお参りスポットとして地元民には定着していたのかもしれない。次々と家族連れが車でやってきてお参りしていく光景には、かなり驚かされた。

下は観音像の前にあった石碑で、西海楽園の由来が刻まれていた。ここは七つ釜観光ホテルのオーナーが「天の啓示」を受けて作られたものという噂を聞いていたが、実際にその通りだったらしい。(クリックで拡大)

たしかに「卒然、天の啓示を受け~」という言葉がある。平成2年に開園ということだから、考えてみればまさにバブル真っ最中という時代。当時は、まさか17年後に閉園になるとは予想しなかったと思うが…

下の写真は観音像付近からプール方面の眺めで、ちょっとアングルが違うが左が前回(2003年)、右が今回の光景。モノレールが撤去されているのがわかる。

観音像から坂道を下りていくと、ここの一番の売りともいえる「日本一の石灰藻化石群」が広がっている。

鉱石関係についてはそれほど詳しいわけではないが、前回来たときにもらったパンフレットに「石灰藻がこれだけ集中して見られるのは世界的にも珍しいことです」と記載されていたことから、おそらくは貴重なものなのだろう。せっかくなので奇岩の上にも上ってみた。

続いて、十二支・七福神の像が並んでいる円形広場へ行ってみた。この広場に面して金色の五百羅漢がずらりと並んでいた釈迦三尊堂(下の写真の金色の建物)があり、前回来たときには笑顔を見せている仏像を見ることができたのだが、今回は扉がかたく閉ざされていて中に入ることはできなかった。

十二支と七福神は健在。四季の花園がちょっと荒れている現在、この西海楽園内で最もきれいな場所と言えるかもしれない。ここにある梵鐘は自由につくことができるので、私も何回か鐘の音を響かせてみた。

釈迦三尊堂の前にあった、ちょっと生々しい慈母観音像も健在だった。こちらはアップで写真を撮ってみた。

続いて楽園鍾乳洞へ。ごく短い鍾乳洞で、最奥部には小さな仏像が置いてある。

中に入ると、道はすぐに行き止まりになる。鍾乳石などの造形はまあまあ。

楽園鍾乳洞を出ると、ちょうど南国調にデザインされたバスがやってきた。前回来たときはこのバスで園内を回ったので、なんだか懐かしい感じがする。乗っていたのは七つ釜観光ホテルの宿泊客らしい団体で、これから円形広場前で記念写真を撮るようだった。このバスは現在は団体客専用になっているらしいが、まあ一般客はほぼすべて車で訪れるだろうから、バスは必要ないということかもしれない。

これで園内をほぼ一回りしたことになり、正門からの道に合流する。ここまで歩いて回ればかなり疲れると思うが、車だと楽なもの。せっかくなのであと2周し、園内各所をしっかりと見てから、名残惜しかったが西海楽園を出ることにした。

七つ釜観光ホテルに寄ってみると、ロビーは意外と宿泊客で賑わっていた。インターネットでいろいろと調べてみても、このホテルは従業員の対応についての評判もよく、かなり好感度の高いホテルらしいことがわかる。宿泊者数は減少していないがずっと赤字が続いていることなので、やはり場所が辺鄙すぎるのが最大の問題点だったのだろう。

宿泊客以外も自由に入ることのできる土産物コーナーで西海楽園グッズを探してみたが、残念ながら見つからなかった(まあ当然か)。そこで、これで西海楽園再訪を終え、佐世保に戻ることにした。

(2007.9.9)


西海楽園を再訪した翌週、10日間の日程で南アフリカ、ジンバブエ、ザンビアを旅行してきた。この旅行の記録は当サイト内の南部アフリカ旅行記のページを見てもらうとして、帰国後にもう一度西海楽園の様子を見に行ってみた。

ホテルに着くと、入口のガラス戸に「閉館のお知らせ」という紙が貼られていた。西海楽園の入口に行ってみると、ロープが張られていて中に入れないようになっていた。

リニューアル再開という可能性もゼロではないかもしれないが、おそらくはこのまま廃墟化が進行していくのだろう。貴重なB級スポットが、またひとつ消えてしまった。時代の流れでは仕方がないのかもしれないが、やはり寂しいものだ。合掌。


2003年の訪問記はこちら。


(2022年 追記)
閉園から15年後の2022年3月、「さいかい里山の春まつり」という西海市のイベントで西海楽園の一部を再訪してきた。そのときの風景は当サイト別館の以下の記事で紹介している。