南部アフリカ旅行記(ケープタウン / テーブルマウンテン、ロベン島ツアー)

この日はケープタウン市内のスポットを回ることにしていた。行きたいと思っていたのはロベン島とテーブルマウンテンで、ロベン島にはツアーに参加しないと訪れることはできない。

前日に市内を一周する “City Sightseeing Cape Town” という観光バスのルートがあることは調べていたので、テーブルマウンテンへはそれを利用して訪れてきた。


朝8時半にホテルを出て、ウォーターフロント地区へ向かう。前々日の日曜日にこの道を歩いたときは周囲が少し怖いくらいに閑散としていたのだが、この日はビジネスマン風の人たちが多く歩いていた。ケープタウンでは平日と休日では街中の雰囲気は極端に変わるものらしい。

当初は、まずツアーに参加してロベン島へ行き、戻ってからケープタウン市内を回るつもりでいた。ところがチケット売り場へ行くとすでに最終5時のツアーしか残っていなかった。予想以上に人気のあるツアーらしい。

仕方がないので最終ツアーのチケット(150ランド)を購入し、それまで市内の各スポットを回ることにした。水族館の近くにあるバスのチケット売り場で1日券(100ランド)を購入し、オープンデッキのバスに乗り込んだ。

バスは “Red Route” と “Blue Route” があり、今回乗ることにしたのは “Red Route” のほう。決められたルートを30分おきくらいに周回していて、チケットを見せれば乗降自由になる。ウォーターフロントの時計台近くのバス停で停車した後、ケープタウン市街へ向かった。

デッキの上は観光客で満員になっている。ホテルから歩いてきた道をバスで戻り、ホテル前を通過してロングストリートへ。ロングストリートはケープタウンで最もにぎやかな通りで、レストランや土産物店が集まっている。今回はバスの上から見下ろしながら通ることになった。

ここで一番気になったのが下の写真の建物。かなりの高層ビルだが、ずいぶんと薄い上に窓らしきものが見えない。いったい内部はどうなっているのだろうか。

いくつかの博物館や観光スポットの前で乗客の乗降を行いながら、市街中心部を一回りしてケープタウン駅の近くへ戻ってきた。

キャッスル・オブ・グッドホープ

ロベン島ツアーの出発時刻を考えると、テーブルマウンテンの他にもう1ヶ所を見ることができる。そこで、駅に近くにある「キャッスル・オブ・グッドホープ」で降りてみた。ここは17世紀にオランダの東インド会社によって作られた城塞。

17ランドでチケットを買い、中に入る。

中に入ると広い中庭が広がっている。各種の言語によるガイドツアーもあるようだが、ここは自由に歩き回ることにした。

中庭には馬車があり、馬がつながれていた。かなりおとなしい馬で、観光客が大勢記念写真を撮っていた。

城塞内の風景。下の写真のようなきれいな場所の他、かつての牢獄もあったりする。ここは現在でも一部が陸軍司令部として使われているそうで、歩いていると軍服を着た人にたびたび出会う。

館内には絵画、家具、陶磁器などの展示室も作られている。一通り見たが、どれもかなり豪華なもの。

続いて城壁の上に上がってみた。

この城塞は函館の五稜郭のように五角形をしている。周囲を眺めながら、城壁の上をぐるりと一周してみた。天気も快晴だし、今は春先で気候もいいので、かなり気分がいい。テーブルマウンテンもはっきり見える。

やがてバスの時刻が近づいてきたので、城壁を下りて城塞を出ることにした。

テーブルマウンテン

キャッスル・オブ・グッドホープの前から再びオープンデッキのバスに乗り込む。バスは市街中心部を離れてテーブルマウンテン方面へ向かい、ロープウェイ乗り場前で下車した。さすがに有名観光地らしくチケット売り場には行列ができている。120ランドでチケットを買い、乗り場へ。

2台のロープウェイが観光客をテーブルマウンテン山頂に輸送している。テーブルマウンテンには登山道もあるのだが、きついので往復ともロープウェイを使うことにした。

このロープウェイは運行中に内部の床がゆっくりと回転するようになっている。そのため、どの位置に立っていても周囲すべての景色を眺めることができる。

山頂駅に着き、まずは駅近くのレストランで昼食にした。食べたのはハンバーガーだが、かなりのボリュームだった。

テーブルマウンテン山頂からの海側の眺め。ケープタウン市街が一望できる。

周囲の地形についての説明表示があった。下の写真はケープ半島方面を写したもので、天気がいいので前日にツアーで回ってきたケープ半島を遠くに見渡すことができた。

テーブルマウンテンというだけあって、山頂は平らになっている。ここにいると、なんだか下界とは隔絶された別世界という感じがする。

山頂には縦横に遊歩道が作られている。しばらく散策してみた。

遊歩道には特に柵も作られておらず、崖の縁まで行くことができる。人が落ちたりしないのだろうかという気になるが、ここではすべて自己責任ということなのだろう。崖の縁で下を見下ろして写真を撮ってみた。

1時間半ほど散策した後、テーブルマウンテンを下りることにした。本当に「下界と隔絶された天上界」という感じの場所だったと思う。テーブルマウンテンといえばやはりギアナ高地が有名だと思うので、いつかそちらのテーブルマウンテンにも登ってみたいものだし、エンジェルフォールも見てみたい。

ロープウェイで降りる途中、地面に細い道が続いているのが見えた。これが登山道かどうかはわからないが、ここを登っていくのはかなりきついと思う。

テーブルマウンテンから下山し、バス停で待っているとやがてオープンデッキのバスが見えてきた。ここからは海岸沿いへ下りていき、あとは砂浜を眺めながら市街中心部へ戻る。外洋に面しているためか、ものすごい波が打ち寄せているのがわかる。ここを流れているのは寒流のベンゲラ海流だし、このあたりの海岸は泳ぐというより日光浴をする場所という感じがする。

午後4時にウォーターフロント地区に戻ってきた。

ロベン島ツアー

夕方5時にウォーターフロント内の桟橋から船に乗り、ロベン島へのツアーに出発した。最初は船尾に立ってテーブルマウンテンが遠ざかっていく景色を眺めていたが、かなりの高速船で振動も激しいため船内では酔う人が続出しているらしい。外の空気を吸うために船尾に次々と人が集まってくるので、邪魔にならないように船内の座席に移った。

ウォーターフロントから約30分、5時半にロベン島に到着した。船を降りて歩いていると、やはり酔った人が多いらしく足元がふらついている人がたくさん見られた。

島内では単独行動はできず、ここからバスで出発することになる。2台のバスに分かれて乗り込み、少し走ると収容所跡が見えてくる。

この島には、かつてアパルトヘイト時代に政治犯の収容所があり、ネルソン・マンデラもここに収容されていたことがある。現在は収容所は閉鎖され、こうして観光スポットとして整備されているわけだが、アウシュビッツや原爆ドームなどと同様に「負の遺産」として世界文化遺産に登録されている。

島から眺めた本土側のテーブルマウンテン。潮流も激しそうだし、この距離と海面状態では脱獄は無理だろう。

次第に薄暗くなっていく中、柵の中に入る。有刺鉄線が威圧的。

柵の中の様子。ここに作られている収容所に入り、ガイドから説明を聞くことになっている。

収容所の雑居房のようなところで、かつてここに収容されていたという人が約30分にわたって当時の体験談を説明してくれた。あまりに悲惨な話に言葉を無くすような気持ちだった…と言いたいところだが、いかんせん英語が流暢すぎてほとんど聞き取れない。

それにしても、はるか昔ではなくつい十数年前まで人種隔離政策が堂々と行われていたというのが驚き。周知の通り、アパルトヘイト下では日本人は台湾人や韓国人とともに「名誉白人」だったわけだが、しかし名誉白人なんて言われて嬉しいのかねえ。

ここで、ツアー参加者の中に日本人らしき女性2人組がいるのに気づいた。見渡したところ、アジア系の人間は私を含めてこの3人だけのようだった。

部屋を出たところで、この女性2人組に「日本人ですか?」と声を掛けられた。前日に続いて女性旅行者の2人組に出会ったわけだが、こちらは日本人同士ではなく日本人と韓国人のペアということだった。

「今の英語の説明はわかりました?」と聞かれたので「いいえ。まったく」と答えたところ、2人ともちょっと笑っていた。流暢すぎて自分たちもよく聞き取れなかったらしい。韓国人女性には「すごくシリアスな顔をしていたから理解できているのかと思っていた」などと英語で言われたが、実は単に理解できているような顔をしていただけ。

続いて中庭のようなところへ移動したが、暗くて何があるのかよく見えない。このツアーは明るい時間に参加したほうが良さそうに思う。

このあと、ネルソン・マンデラが収監されていたという独房を見て、歩いて船に戻ることになった。明るければ周囲を少し散策することもできたのだが、真っ暗なので何も見えない。

夜8時に出航。8時半にツアー出発地のウォーターフロントに戻ってツアーは終了した。


日韓女性2人組にウォーターフロント内で安く食事ができる場所を聞かれたので、前々日に利用したフードコートへ行くことにした。大型スーパーマーケットで少し買物をしてからフードコートで2人と合流し、一緒に食事することになった。

タイ料理を食べながら少し話をしたところ、2人とも数ヶ月に渡ってアフリカ南部をあちこち回ってきたそうだった。日本人女性のほうは数日後に長期旅行を終えて帰国するということだったが、韓国人女性はまだ旅を続けるらしい。どの国が良かったのか聞いてみたところ「マダガスカルが本当に素晴らしかった」ということだったので、私もマダガスカルに行きたくなった。いつか、私もこういう長期旅行をやってみたいものだ。

ジンバブエのビクトリアフォールズにも行ったそうで、やはりハイパーインフレの国らしく滞在中に店から次第に品物がなくなっていくという経験をしたという。「街中にセブンイレブンがあったんですよ!」という話も聞いたが、このときはまさかあんな奇妙なセブンイレブンとは想像していなかった。

その後、一緒にタクシーで市街へ戻った。2人はロングストリートにある “Cat and Moose” というゲストハウス(長期旅行者がたくさんいるらしい。中には1年以上という人も)に泊まっているそうなので、私のほうが先にホテル前で降り「無事に日本へ帰ってください」と言ってから別れた。今は無事に帰国していると思う。

翌日は早朝7時半の飛行機でケープタウンを離れることになるので、フロントでモーニングコール(午前5時)と空港へのシャトルバス(午前5時半)を頼んでから早めに就寝。