国内旅行編(熊本 / 弓削神社、弓削法皇神社、柴立姫神社)

インターネットで日本各地の珍しい神社などを調べているうちに、熊本県に「弓削神社」「弓削法皇神社」「柴立姫神社」という神社が見つかった。写真を見ているうちにぜひとも実際に見てみたくなったので、3連休を利用して訪れることにした。ここがどういう神社かは、当サイトの国内旅行編の傾向から想像できると思う。

今回の交通手段は自分の車。長距離の車の運転はあまり好きではないが、青春18きっぷが使える時期でもないし、それにバス等でも行きにくい場所にあるようなので今回は仕方がない。


朝10時に佐世保の自宅を出て、高速道路ではなく一般道路を使って熊本方面へ向かう。高速道路は金がもったいないし、それに景色が単調で眠くなることが多いので、個人的にはあまり利用する気にならない。佐世保から武雄~佐賀~柳川~大牟田~玉名を通り、佐世保から約5時間で熊本市内に到着した。

弓削神社

熊本市街から白川に沿って 5km ほど上流側、白川を挟んで北側に弓削神社、南側に弓削法皇神社がある。詳しい道路地図を持っていなかったこともあってちょっと道に迷ったりしたが、なんとかたどり着くことができた。

弓削神社という名前から想像できるとおり、ここは奈良時代の僧「弓削道鏡」に関係する神社。道鏡といえば孝謙天皇の愛人説や巨根説が有名と思うが、ここはそれらの伝説から想像できる通りの神社になっている。

下の写真は、鳥居をくぐってすぐのところにあった性器奉納の案内板。(クリックで拡大)

道鏡は、一般には失脚後に下野国(栃木県)に流されてそこで亡くなったと言われている。しかしながら、ここにはそれとは別の「道鏡が失脚した後この地を訪れて、そこで藤子姫という妖艶華麗な女性を見初めて夫婦となり、藤子姫の献身的なもてなしと交合よろしきをもって、あの大淫蕩をもって知られる道鏡法師がよき夫として安穏な日々を過ごした」という伝説が残されている。

というわけで、この弓削神社の御祭神は藤子姫、対岸の弓削法皇神社の御祭神は道鏡となっている。

そして、本堂の前にはもちろん大きな男根がある。

靴を脱いで本堂に入り、参拝してみた。本堂の中にも各種の木製男根が置かれていた。

この神社の効能は、もちろん子宝や下の病気などもあるが、一番の売りは「浮気封じ」になっている。男性であれば女性器、女性であれば男性器が描かれた絵馬に釘を打ち付け、奉納すると効果があるそうで(怖っ!)、神社の一画にはそれらが納められている。

よく見たら浮気相手の実名入りで「夫と○○○○の縁が切れますように」などというものもあったりして、かなり怖い。当事者にとっては切実な問題なのだろうが、なんだか怨念がにじみ出ているような感じがする。

本堂の中には、釘と金槌が用意されていた。

釘はすべて錆びていて、新しいものはなかった(使われたものを再利用しているのか?)。しかし、ここで黙々と釘を打っている光景を想像すると鬼気迫るものがある。

この神社では御守り等も売られていたが、特に男根型のような面白い形のものはなかった。それに窓が閉ざされていて誰もいなかったこともあって、これで次の目的地の弓削法皇神社へ向かうことにした。

弓削法皇神社

白川を挟んで弓削神社の対岸にある。弓削神社は集落の中だったのに対し、こちらは田んぼの中にぽつんとある神社だったのですぐに見つかった。

ここは無人の神社で、境内には誰もいない。ひっそりとした雰囲気の中、神社内を散策してみた。

ここにも、弓削神社と同様に性器奉納の案内板があった。(クリックで拡大)

まずは本堂に参拝する。こちらの神社には、本堂前に大きな木製の男根は見当たらない。

靴を脱いで本堂の中に入ると、奥には各種の木製男根が置かれていた。まずはここで参拝。

神社内は、大きな木製の男根があちこちに置かれているわけではなく、雰囲気は全体的に弓削神社と比べてちょっと控えめという感じがする。しかしながら、ここにはひとつだけ圧倒的にすばらしい石造りの奉納品があった。下の写真がそれで、様々な角度から眺めてみた。

いやあ、お見事!

いままでこの種の神社で様々な奉納品を見てきたが、石造りでこれほど迫力があるものは初めて見た。まるで戦車の砲塔みたい。実に素晴らしい!

それから、横に階段が作ってあるが、これは上に登ってもいいということなのだろうか。ここでまたがって記念写真を撮っている光景を見てみたいものだ。

しばらく神社内を散策した後、熊本市街へ戻ることにした。この神社は、弓削神社と比べて道鏡との関係を強く宣伝することもなくひっそりと存在している観があるが、この奉納品は一見の価値は十分ある。熊本市を訪れたときには、ぜひ時間をとって参拝してほしい。

柴立姫神社

熊本市内で1泊し、翌日の朝、球磨村方面へ向かう。八代市を過ぎると、ずっと球磨川に沿って走るようになった。目的地の柴立姫神社は、球磨村の中心部、一勝地駅と球泉洞駅の中間くらいにある。

観光鍾乳洞として有名な球泉洞の駐車場で少し休憩してから、再び球磨川沿いを上流へ向かう。2km ほどで球磨川に架かる橋が現れ、ここで対岸に渡ると一勝地駅がある。

ここから、線路沿いの細い道を球泉洞駅方面へ向かう。球磨川を眺めながら走ると、やがて川沿いに小さな神社が見えてくる。小さな駐車スペースに車を停め、神社へ。

下の写真は神社の横にあるトーテムポールのようなシンボル。かなり新しい感じがするので、最近建てられたものらしい。

この神社には、次のような悲しい伝説が残されている。

「昔、旅を続ける公家の父娘がいた。疲れた父娘は、ある晩親子の一線を越えてしまった。すると娘はみるみる元気になった。次の日、また娘は疲れ果て『父上、また元気になるよう私を…』とせがんだ。昨日のことに良心の呵責を覚えていた父は、怒って娘を切り捨て、埋めて柴を立てて去っていった。哀れに思った村人は、お堂を建て娘の霊をなぐさめたという」

…うーん、なんだか理不尽な話だ。父親が切腹するならまだしも、娘を切り捨てるとはどういうことなのか。それで村人も哀れに思ったのかもしれないが。

続いて、神社に参拝した。本堂の中には無料のロウソクと線香が置いてあった。下の写真が本堂内部の様子で、各種の奉納品が置かれている。

神社には手を洗うための手水場があるものだが、ここの手水場は下の写真のように実にナイスな構造になっていた。

これはいい!

いやー、よくこういうものを作ったものだと感心する。最初は、この手水場のために作られたものかと思ったのだが、本堂内に置いてあった芝立姫神社のパンフレットにこれと同じ形の「夫婦とっくり」の写真が載っていた。なので、この夫婦とっくりをうまくはめ込んだものらしい。いずれにしても素晴らしい一品。

神社の背後には球磨川が流れている。ときどき、ゴムボートやカヌーで川を下っている人たちが現れる。

なかなか風光明媚な場所だったので、球泉洞を訪れる際にはついでに参拝してみてほしい。また、パンフレットには旧暦3月4日に祭礼が行われると書かれている。写真を見たところひなびた感じの祭りのようなので、いつか見に来たいものだ。

しばらく周囲を散策し、続いて「夫婦とっくり」を売っているところを探すことにした。まずはパンフレットに載っていた「球泉洞駅前・川口商店」へ行ってみたが、ここには置いてなかった。店の人に聞いてみたら、一勝地駅の近くにある温泉施設「かわせみ」の物産館ならあるかもしれないということだったので、行ってみたところ見つけることができた。

下の写真が物産館で買った夫婦とっくり。

普通の日本酒ではなく、濁酒や甘酒のように白い酒を入れておいたら、盃に注がれた人は仰天するかもしれない。値段は2,100円だった。

無事に夫婦とっくりも入手でき、これで熊本を離れることにした。それにしても、今回は3ヶ所ともかなり興味深い神社だった。佐世保からはそう遠くはないし、いつかまた訪れたい。


球泉洞の土産物店を少し見た後、佐世保へ帰ることにした。球泉洞に入ることも考えたが、入場料金が高かったので(1,050円)やめておいた。

八代へ戻り、熊本港へ。往きの佐世保~熊本のルートがちょっと単調だったので、帰りはフェリーに乗ることにした。1時間かかって有明海を渡り、島原港から諫早~大村~東彼杵を通って夜9時に佐世保に帰着した。

(2007.10.6~7)


2016年に柴立姫神社を再訪しました。再訪記は当サイト別館に載せています。