国内旅行編(大分 / A級別府劇場)

安心院町の桂昌寺跡地獄極楽を後にして、別府方面へ。その途中、いくつかのスポットに立ち寄ったので小ネタとして紹介しておく。もっとも、この日一番印象に残ったのは夜に観賞したA級別府劇場。

楢本磨崖仏

桂昌寺跡地獄極楽から1キロほどのところにある。名前の通り岩壁に掘られた磨崖仏で、ついでなので立ち寄ってみた。

下の写真が楢本磨崖仏の全景。たしかによく見たら岩肌に仏像が刻まれているが、さすがにあまり有名ではない磨崖仏だけあってちょっとはっきりしない。

実は大分県は全国の磨崖仏の8割近くが集中しているという磨崖仏の宝庫。国宝の臼杵磨崖仏などは有名なので知っていたが、しかしこれほど集中しているとは知らなかった。臼杵磨崖仏もいつか見てみたいものだ。

福厳寺閻魔堂

これで安心院を離れて別府へ向かうつもりだったが、道路地図に「福厳寺閻魔堂」というのが載っていたので、寄ってみることにした。場所は安心院町のとなり、院内町にある。

福厳寺の駐車場に車を停め、少し歩くと民家に併設された本堂が見えてくる。この本堂の横にある崖の部分に閻魔堂が作られている。

桂昌寺跡に続いて、再び奪衣婆と閻魔大王に対面。

予想より小規模なものだったが、よく見ると奪衣婆などはよくできていた。この閻魔堂は江戸時代に作られたものらしい。

御沓橋

福厳寺の近くに「御沓橋」という案内板があり、これもついでなので行ってみた。なかなか重厚な感じの3連アーチ橋で、下の写真は川沿いに作られている展望スポットからの眺めと橋の上の様子。

周囲ののどかな景色とよく合っていると思う。

架設は大正14年で、説明書きによれば長さ59m、幅4.55m、高さ14.7m。この院内町はこのような石造りのアーチ橋が大小70以上もあるという「日本一の石橋の町」だという。橋めぐりをやっていたら1日かかってしまいそうだが、今回は御沓橋だけで院内町を離れることにした。

あと、御沓橋の近くで見かけた風景がこれ。

地面に接するように、ずいぶんと大きなカーブミラーが設置されている。こんな高さにカーブミラーを置いて、いったい何を確認するのか。今でもちょっと不思議に思っているので、わかる人がいたら教えてほしい。


国道500号線を南下し、別府方面へ向かう。考えてみれば、今回は安心院へ来たというのに安心院名物の「鏝絵」を見なかったので、またいつか来たいと思う。

途中で別府湾を一望できる展望所で休憩したりして、夕方別府市内に入った。かなり渋滞していた国道10号線を南下して別府駅前通りへ行き、この日は別府駅近くにある安いビジネスホテル(1泊3,800円)に泊まることにしていた。ホテルの駐車場に車を停め、部屋で少し休んだ後、外出して周囲を散策してみた。なお、別府駅近くの「エッチビル」は健在だった。

今回、町を歩いていて気付いたのは、ここでは外国人観光客がかなり多いということ。欧米からの旅行者のほか、中国語や韓国語も頻繁に聞こえてくる。7年前に来たときは気がつかなかったので、おそらくはここ数年で増えたものと思われる。

別府駅の中のレストランで大分名物「とり天定食」を食べた後、ある場所へ行くことにした。今回の旅行の主目的地のひとつになる。

A級別府劇場

訪れたのはA級別府劇場。ここがどういう場所かというと、下の写真を見ればわかると思う。つまり、ストリップ劇場である。

つげ義春のエッセイを元にした映画「蒸発旅日記」を見て以来、こういう温泉地にある小さなストリップ劇場に興味を持つようになった。インターネットで調べたところ別府にはストリップ劇場があることがわかり、今回初めてこういう場所に入ってみることにした。

この 蒸発旅日記 という映画は、DVDで何度も見返すくらい個人的にかなりお気に入りになっている。波長が合わない人にとっては眠くなる映画かもしれないが、旅や蒸発に興味がある人にはお勧めといえる。

では、料金の4,000円を払って中に入る。劇場の中は、奥のステージから中央の円形の舞台まで回廊が続いているという構造になっていた。30人も客が入ればいっぱいになるほどの小さな劇場で、私が入ったときは先客は6人ほどだった。当然ながら館内は写真撮影禁止なので、内部の写真はない。

この日出演していた踊り子さんは、霞紫苑(かすみしおん)嬢、南かずさ嬢、ちさと嬢、深津みゆき嬢の4人。ステージは「踊り子さんそれぞれ単独のショー」「4人が一緒に出演するショー」「花電車」という順番で行われていた。

温泉地にあるストリップ劇場については、訪れる前は失礼ながら「あまり若い踊り子さんはいないだろうし、雰囲気もちょっとうらぶれた感じだろう」などと考えていたのだが、そういう予想は見事に外れた。みんな若いし、踊りにしても全員が180°の開脚や完全な前屈(いわゆる股割り)ができたりと(!)、かなりうまい。照明やミラーボールもよくできているし、感動しながら眺め続けることになった。

圧巻だったのがちさと嬢による「花電車」のショーで、演じられたのは「客席に向かってのタバコ飛ばし」「リンゴの皮むき」「オロナミンCの栓開け」「吹き矢を飛ばして風船割り」「クラッカー割り」などなど。生で見ると本当に感動もので、いったいどういう訓練をすればそんなに強くなるのだろうか。

それに、タバコや吹き矢にしても3メートルくらい飛ばしているし、あそこからどうやって空気を出すのか、本当に不思議。多くの人に一生に一度は見てほしい芸だと思う。(花電車が何のことかわからない人は、わからないままでも構いません。どうしても知りたい人はウィキペディアあたりで調べてください)

あと、各ショーの終わりにはポラロイド写真による撮影タイムがある。1枚1,000円で、希望者は客席から手を上げて合図をし、写真を撮るというシステムになっている。私も4人のショーのときにステージに上がって全員と一緒に写真を撮り、さらに南かずさ嬢(これは踊り子さん単独の写真)、深津みゆき嬢(私もステージに上がってツーショット写真)を撮った。こんな写真はそうは撮れるものではないので、かなり貴重な記念品といえる。南かずさ嬢は清楚な感じのする美人、深津みゆき嬢はいつも歯を見せてニコニコと笑っている人で、どちらももう一度会いたい踊り子さん。

観客は最初は6人ほどだったが、入れ替わりながら少しずつ増えてきて最後は20人ほどになっていた。中には女性客もいたが、さすがに女性だけで来ている人はおらず、50歳代くらいの夫婦と、あとは男性グループについてきたという感じの若い女性が2人だった。この2人はストリップ劇場は初めてらしく、かなりキャーキャーと騒いでいた。

この劇場は入れ替え無しなのでいつまでいてもいいのだが、一通りのショーを見たところで出ることにした。時刻を見たら10時半で、入ったのが7時半だからいつの間にか3時間も経っていたことになるが、本当にあっという間だった。こんな風に、今まで自分と縁のなかった世界にこれほど素晴らしいものがあったと知るのは本当に楽しいものだ。多くの人に見てほしいと思うし、私もいつかまた訪れたい。

(2008.1.13)


翌日、別府市街を離れる前に、もう一度昨日のストリップ劇場へ行ってみた。下の写真が早朝のA級別府劇場。

当然ながらシャッターが閉まっていて、張り紙には「スタッフ一同風邪のため本日はお休みさせて頂きます」と書かれていた。昨日は誰も風邪を引いているような感じはしなかったので不思議に思ったが、もしかしたらこの業界では店を休むときに「風邪のため」とする慣習でもあるのだろうか。詳しい人がいたら教えてほしい。

この後、次の目的地の別府民族資料館がある鉄輪温泉方面へ向かった。

この1年半後の2009年6月、A級別府劇場は閉館になってしまった。賛否はあると思うが、洗練された大人の文化の一つと思っているだけに、全国的にストリップ劇場が衰退していくのは残念なものだ。ぜひとも再訪したいと考えていたが、結局その機会はなかった。このときの4人の踊り子さんは、今はどうしているだろうか。


A級別府劇場はその後「別府永久劇場」と名前を変えて一般の貸し劇場になっていたが、こちらも現在は閉館している。この旅行のちょうど10年後、2018年1月に偶然別府に滞在していて「別府永久劇場サヨナラ興行」に立ち会うことができた。そのときの記録は以下のページを参照。