国内旅行編(大分 / 桂昌寺跡地獄極楽)

安心院ICから国道500号線を別府方面へ4キロほど走ると「桂昌寺跡地獄極楽」という看板が現れる。ここで左折し、実にのどかな田園地帯の中を少し走るとやがて駐車場が見えてくる。わりと広い駐車場に車を停め、歩いて桂昌寺跡地獄極楽へ。


石段を上がると、小さな本堂がある。まずは本堂の中に入って参拝し、続いて洞窟へ向かうことにした。

この桂昌寺跡地獄極楽については、本堂前の案内板に次のように書かれていた。

桂昌寺(室町中期開墓)は江戸の頃には無住荒廃となったが、江戸の天台僧午道法印という傑僧が江戸後期の文政三年(1820)頃、大衆教導のために作った全国にも珍しい遺跡です。(以下略)

というわけで、ここはとある僧が江戸時代に廃寺を再建し、洞窟を掘って地獄と極楽の風景を作り上げたという、いわば当時の仏教テーマパーク的な場所。個人的に地獄めぐりはかなり好きなので、今回訪れてみた。今は再び廃寺になったため「桂昌寺跡」と呼ばれているらしい。

本堂の前に、洞窟内の案内図がある。それによると、地獄を進んでいくとループして元に戻り、そこから極楽へ進むようになるらしい。

本堂に「拝観料100円、ご協力ください」とあったので、賽銭箱に100円を入れてから洞窟のほうへ進む。洞窟内の入口は下の写真のような感じで、ちょっと怪しげな雰囲気になっている。夜間に一人で入るのはちょっと怖いような気もする。

では、いよいよ洞窟内に入る。

内部に入ると、まずは閻魔大王に迎えられる。閻魔大王を始め、両側の従者などなかなかよくできているが、ここでは「人頭憧」というのが印象に残った。

先へ進むと、すぐに地獄方面と極楽方面の分かれ道がある。まずは地獄へ進む。

洞窟内はかなり狭く、かがんで歩かないといけないようなところもある。前日が雨だったこともあって洞窟内はかなり湿っぽく、ところどころに水たまりができていたりして、ちょっとした探検気分を味わえる。

濡れないように注意しながら歩いていくと、やがて様々な石像が現れる。まずはお馴染みの三途の川の奪衣婆。

この奪衣婆は、なかなか不気味な感じで作られている。この地獄内でも屈指の出来栄えだと思う。

奪衣婆の近くには「胎内めぐり」の入口もあるが、下の写真のように水がたまっていたことと、奥が完全に真っ暗だったこともあって入るのはやめておいた。懐中電灯でも持っていないかぎり、ここに入るのは危険という感じがする。

血の池地獄と赤鬼青鬼。赤鬼青鬼の足元が血の池地獄と書かれているが、単なる小さな水たまりだった。水も別に赤くはないが、この地獄が作られた当時は赤い染料か何かを流していたのかもしれない。

以下、地獄内の主な風景を載せておく。カメラの感度を上げているために明るく写っているが、実際の洞窟内はかなり暗い。

それにしても、これはすべて江戸時代に人力で掘られたもの。当時はかなり大規模なテーマパークとしてにぎわっていたのではないかと思われる。

この地獄風景が作られた当時は当然ながら電球などはなかったわけで、おそらくは松明や蝋燭などを使って地獄めぐりをしていたのだろう。それだと、暗闇から現れる石像がかなり効果的だったと思われる。

地獄を一周し、今度は極楽方面へ向かう。こちらの洞窟はわりと広く、菩提坂という名前が付けられている。しばらく歩くと先のほうが明るく光っているのが見えてきて(これも演出と思われる)、やがて地上に出る。ここでほっと一息。

出口付近には、たくさんの石像が作られている。そして、右下の写真に写っている穴(石像の下側)が、地獄にあった胎内めぐりの出口になっている。ここまで這って歩いてくるのはかなり大変だと思う。

洞窟の出口付近が極楽風景になるわけだが、実はこの上の山の斜面にはさらに「極楽浄土」がある。下の写真に写っている穴の奥に、極楽浄土に通じる縦穴がある。

極楽浄土へ行くためには、この細い縦穴をよじ登っていかないといけない。このくらい苦労しないと極楽浄土へは行けないという教えなのかもしれない。

とりあえず縦穴の登り口に行き、上を見上げるとこんな感じ。登る人のために鎖が設置されている。鎖をつたわって登ろうと思ったが、途中で諦めた。

こんなもん登れるか!

縦穴の途中にも足を掛けるようなところはないし、それなりに装備してこないとちょっと無理。次回ここへ来るときはロッククライミングの準備をしてくることにする。

というわけでこの縦穴を登るのは諦めたが、実は現在は別の場所に階段が作られていて極楽浄土へは簡単に登ることができる。しかしながら、このときは通路の途中が一部が崩れていて通行禁止になっていた。

したがって正規のルートで回ることはできないが、反対回りに極楽浄土を回ることができる。この向きに歩くと下り坂に「あぶない! おりられない!」という表示が見えるが、下りられないことはない。

ら抜き言葉を使っていないところが個人的には好き。

これが極楽浄土の風景。山の斜面にたくさんの石像が並んでいる。

縦穴の極楽浄土側出口を見に行ってみた。かなり狭い。

覗きこんで下を見下ろすと、こんな感じ。ここから降りるのも 、 ちょっと危険という感じがする。

横から見ると、この縦穴の全体像はこんな感じになる。昔は階段はなかったわけだから、みんなこの縦穴を登って極楽浄土に到達していたのだろう。

再び階段を使って下に下り、周囲を見渡すと岩壁にもたくさんの石像が埋め込まれていた。

これで地獄極楽を一通り見たことになる。地獄めぐり好きとしては、かなり面白いスポットだった。いつかまた、縦穴を登る準備をして再訪したいものだ。

本堂前の樹木には、白いつぼみができていた。植物には詳しくないので、何の樹かは知らない。極楽浄土を背景にして、つぼみの写真を撮ってみた。

駐車場で次の目的地「楢本磨崖仏」の場所を確認し、桂昌寺跡を後にした。


桂昌寺跡のすぐ近く、稲刈りが終わった田んぼに藁を使って様々なオブジェが作られていた。楢本磨崖仏へ向かう途中に見つけ、車を降りてゆっくり見てみることにした。

「第9回 全国藁こずみ大会展示会場」とあるので、これは全国大会の出品作品らしい。なかなか面白い造形が多いが、この中で好きなのは右上の写真の作品(鳥?)。左下の写真の作品はおそらく「人」、右下はよくわからないが九州東海大学の作品ということだった。周囲を一回りした後で離れることにしたが、珍しいものを見られて幸運だった。

(2008.1.13)