台湾旅行記(故宮博物館)

台湾滞在3日目。この日は前日のようなB級スポットめぐりではなく、普通の観光をすることにしていた。最初の行き先は台湾旅行の目玉といえる故宮博物館。

多くの人は台湾へ来て最初に訪れるのだろうが、私は2回目の台湾旅行でようやく中に入ることになった。


朝10時にホテルを出て中山駅へ。ここから地下街を歩いて台北駅へ移動した。これは、メールのチェックと馬券の購入を行うためにインターネット店を探す必要があり、台北駅周辺ならすぐに見つかるだろうと思ったため。この日は土曜日なので、JRA のレースが行われている。

駅の近くを歩いていると、雑居ビルの地下にインターネット店が見つかった。ここでメールをチェックした後、IPAT(JRA のインターネット投票システム)に接続して馬券を購入した。外国に来てまで日本の競馬をやることはないと言われるかもしれないが、一応、世界各地で馬券が買えるかどうか確認しているという大義名分がある。

無事に馬券も購入でき、いったん台北駅前の新光三越に入ってフードコートで朝食を取った後、故宮博物館へ向かうことにした。この日は台湾総統選挙当日で、合わせて台湾の国連加盟を問う住民投票も行われるので、台北駅には「加入聯合國」「UN for TAIWAN」という横断幕が見える。「聯合國」とはもちろん「連合国」のことで、United Nations を国際連合と訳すのは日本くらいのもの。

12時に、ここから MRT で士林駅へ。ここが故宮博物館の最寄り駅で、博物館行きのバスが出ている。大きく「故宮」「National Palace Museum」と表示されているので外国人旅行者にもわかりやすい。バス料金は15元だった。

ところで、バスのマークがなんだか JR バスのマークに似ているような気がするのは気のせいか。

15分ほどで博物館前に到着した。160元でチケットを買い、館内に入る。

故宮博物館の展示品については、ここで触れるまでもないだろう。周知の通り北京の紫禁城にあった中国歴代王朝の収蔵品がここに移されているわけで、ものすごく豪華な展示品の山。ルーブル、メトロポリタン、エルミタージュと並んで世界四大博物館のひとつとされている。

館内は当然ながら写真撮影禁止なので、展示品の写真はない。館内の様子については、故宮博物館の公式サイトやインターネット上にたくさんある旅行記を参照してほしい。個人的に展示品の中で面白いと思ったのが「肉形石」という豚肉の角煮のような形をした石(なんと自然石)と「翠玉白菜」という翡翠で作られた白菜の置物(かなり精巧な出来ばえ)で、どちらもまるで本物のようだった。

これらの収蔵品については、当然ながら中国政府は返還を求めているようだが、今のところ台湾は応じていない。もし中国本土にそのまま残されていたら文化大革命のときに多くが破壊されていたという意見もあることから、蒋介石が台湾へ持ち込んだのは正解だったのかもしれない。

多くの外国人観光客に混じって館内を見学した後、2階の出口から博物館を出た。ここはちょっとした広場になっていて、正門に向かって広い道が続いているのが見える。

周囲の景色を眺めながら正門まで歩くと、博物館の全景が見渡せる。

正門付近で10人ほどの団体がキャンペーンをやっていた。すっかり世界でもおなじみになった法輪功で、メンバーの一人と少し話をした後、日本語のパンフレットをもらってきた。

中国政府にも言い分はあるだろうが、やはり弾圧は良くないね。

(2021年9月 追記)

この旅行当時は同情的に見ていた法輪功だが、2020年のアメリカ大統領選挙で印象が大きく変わることになった。このときの大統領選(民主党候補がバイデン、共和党候補がトランプ)で「不正選挙であり、本来はトランプが勝っていた」とする陰謀論が猛威を振るったことは記憶している人も多いと思う。アメリカでは「Qアノン」と呼ばれる人たちが中心だったが、その陰謀論を日本で強烈に発信していたのが、法輪功が中心となった「大紀元エポックタイムス」という YouTube チャンネルだった。

他にも宗教団体が関わっているチャンネルや、本気で信じているのか広告収入目当てなのかわからない有象無象(タレントのフィフィなどもひどいものだった)が盛んに陰謀論を拡散していたが、このときは日本で「トランプ教」というカルトが生まれて勢力を拡大していく過程を知ることができた。YouTube のコメント欄がものすごいことになっていて、読んでいて恐怖を感じたのを憶えている。典型的なエコーチェンバー現象の実例だった。

「フランクフルトでの銃撃戦」やら「オバマとペロシはすでに逮捕されていて、テレビに映っているのはCG」やら「カナダの国境地帯に中国の人民解放軍が集結している」やら「ディープステートと光の戦士の戦い」やら、こんな話を本当に信じている人が驚くほど大勢いて、さすが宗教系チャンネルはマインドコントロールに長けていると逆に感心させられた。

私も見かねて YouTube やヤフーのコメント欄に何度か書き込んでみたが、すぐにトランプ教信者から中共の工作員扱いされてしまった。2021年の後半になってもまだ、洗脳が解けていない人が多いことにも驚かされる。こういう人は、そのまま夢を見させておくのが慈悲なのかもしれない。

わりと同情を感じていた法輪功が、結局はただのカルトにすぎないことがわかってがっかり。中国共産党は支持しないが、今は法輪功を支援する気はなく、関わらないことにしている。


続いて、故宮博物館の隣にある「至善園」という庭園に入ってみた。敷地面積7000坪という広大な庭園で、博物館チケットの半券を見せると無料で入ることができる。

かなり本格的な中国庭園で、大きな池、東屋風の休憩所、庭園の奥には小さな山も作られている。他の観光客が鯉のえさを投げているのを見ながら、少し休憩。

まだ3月中旬だが、桜が開花していた。さすが南国。

園内にはさまざまに起伏が作られていて面白いので、1時間ほど散策してみた。ここで見かけるのは地元台湾の観光客がほとんどで、故宮博物館ではあれほど見かけた外国人観光客も、なぜかここではほとんど見ない。台湾のパックツアーでは故宮博物館へは必ず来ると思うが、至善園には入らないのだろうか。無料だというのにもったいない。

午後4時、博物館の前からバスに乗り、MRT の士林駅へ戻った。