マダガスカル旅行記(モロンダバ)

モロンダバはマダガスカル南西部にある町で、おそらくマダガスカルを訪れる旅行者のほとんどが立ち寄る町だと思う。

旅行者の目的はもちろん「マダガスカルといえばこの景色」というバオバブ並木道を見ること。この景色はぜひとも見たかったので、今回の旅行ではどうしても外せない目的地だった。


空港で声を掛けてきたタクシー運転手と少し話をして、このタクシーで町へ向かうことにした。マダガスカルは(旧フランス領にありがちな)「世界共通語はフランス語」という感じで英語の通用度がかなり低い国ではないかと予想していたが、この運転手はわりと英語が話せる人だった。この後も、ホテルのスタッフやメナベ公園の管理人など英語が話せる人に何人も出会ったことから、さすがに世界各地からの観光客が増えたため英語に対する認識も変わってきたのかもしれないという気がした。私はフランス語は話せないので、今回の旅行では困難な思いをすることがあるかもしれない、などと考えていたが、これならわりと安心できそうという気持ちになった。(もっとも、この安心感は次に滞在したモロンベの町で完全に崩れることになる)

壊れそうな感じの小さなタクシーに乗り(実際、スピードメーターが壊れていて針はゼロのままだった)、モロンダバの町へ向かう。ここで驚かされたのが、この町の道路状況。下の写真が街中を走っているときに撮ったもので、この通り道路はガタガタ。運転手は少しでも平らなところを探して走るため、車は左右に大きく蛇行することになる。私はもともと乗り物には特に酔わないほうなので大丈夫だったが、車に弱い人はすぐに酔ってしまいそうな感じがする。それに、対向車も大きく蛇行しながら近づいてくるため、ときどきぶつかりそうになる感じがして落ち着かない(運転手は余裕の表情だったが)。

この道路状況は、モロンダバの次に滞在したモロンベでも同様だった。首都のアンタナナリボはさすがにまともだったが、おそらくこの国では首都など一部の大都市中心部を除いて道路はほとんどがガタガタの悪路のようである。各都市間の移動にかかる時間を見ても、「乾季は約15時間、雨季は2日以上」「乾季は2日、雨季は1週間」などと書いてあったりするし、確かにこれでは雨季になれば滅茶苦茶な状況になることは予想できる。

宿泊先を決めていなかったので、運転手が紹介してくれるというところへ行ってみることにした。街中で降りて自分で探せば安いところが見つかるのかもしれないが、飛行機のフライトスケジュールの都合上、この町には1泊しかできないので、探す時間を節約したかったというのがその理由。

タクシーは街中を通り抜け、さらに先へ進む。やがて、”Hotel Le Renala” というホテルに到着した。

フロントで値段を聞くと1泊53,000アリアリ(約3,200円)だという。とりあえず部屋を見ることにして中に入ると、ここは各部屋がバンガロー形式になっているホテルだった。

部屋を見ると、かなりきれい。エアコンとホットシャワーもあるし、これで3,000円ほどなら十分だろう。この設備を見て、ここに泊まることに決めた。

ベッドの上で結んであるのは蚊帳。

先ほどのタクシー運転手がバオバブ並木道についての営業をしてきたので、バオバブ並木道と、その途中にあるメナベ公園への送り迎えを頼むことにした。この運転手は、私がモロンダバに滞在するのが1日だけと聞いてかなり残念がっていたが、私ももう1日あればモロンダバ北部にあるキリンディー自然保護区に行けるし、さらに数日あればベマラハ国立公園でツィンギー(石灰岩が雨に侵食されてできたもので、無数の細く尖った岩が連なる地形)を見られるだけに残念。もっとも、この運転手の場合は客を確保できるのが1日だけなのが残念だったのだろうが。

バオバブ並木道では夕焼けを見るのが定番なので、出発は午後3時ということにして、しばらく近くを散策することにした。海のほうへ歩くとすぐにビーチに出る。この通り真っ白なビーチがずっと続いていて、予想以上にきれいな海に驚かされた。もっとも、ここは外洋に面していて流れが速そうなので、遊泳には向かないと思う。

少し歩いてみると、あちこちで地元の漁民たちが手漕ぎのボートの整備をしていた。

このホテルの周囲には特に食堂などはないので、ホテルのレストランで昼食にした。せっかくなので豪華にステーキを食べた後、デザートにマダガスカル名物らしいバナナフランベを注文してみた。これはバナナにラム酒と砂糖をからめて焼いたもので、外見から予想できる通りかなり甘い。

焼いたバナナは初めて食べたが、味はさすがにうまい。甘いものが好きな人にはたまらないだろうと思う。


昼食後、ホテル周辺を散策することにした。タクシーで通過したモロンダバ中心部は雑然とした雰囲気だったが、このあたりは町外れになるので、なんとなく落ち着いた感じがする。

地図で見ると、このホテルがある地域は「ヌシ・ケリー」という砂州のような形をした半島になっている。半島の先端付近へ行けばヴェズ族という部族が漁をやっている風景が見られるらしいが、こちらは翌日の朝に見ることにして、半島の根元の方向へ歩くことにした。

周囲には観光客向けの小さなホテルが何軒か並んでいるが、かなり静かなもの。地元住民の家はどれも掘っ立て小屋のような感じで、小汚い格好をした子供たちがときどき走り回っている。ずいぶんと簡素な作りの家だが、このあたりにはサイクロンなどは来ないのだろうか。

途中、こういうものがあったので写真を撮ってみた。(クリックで拡大)

意外と日本からも行きやすい国ということもあって日本人旅行者も多いのだろうと考えてはいたものの、ここで日本語を見るとは思わなかった。「いつかんほんにいきたいです」に見えなくもないが、これはたいした問題ではない。

1時間ほど周囲を散策し、やがて出発時間が近づいてきたのでホテルの部屋に戻った。


メナベ公園

やがてタクシーの運転手がやってきて、午後3時に出発した。雑然とした感じの市街中心部を通り抜けると、周囲には広々とした水田が広がるようになった。マダガスカルの主食は米で、運転手の話によると温暖な気候のため年に3回は収穫できるという。おかげで米に関してはなんとか自給できているそうで、あと魚介類も豊富そうだし、実はマダガスカルは食糧に関しては案外豊かな国なのである。水田だけでなく川の中にまで稲が植えられていたりして驚かされる。

しかしながら道路状況は相変わらずで、いったい何十年前に舗装したのかと思うほど穴だらけになっている。運転手は穴をよけながら走るため、移動中は蛇行と振動が激しい。

モロンダバ市街から40分ほどで、最初の目的地のメナベ公園に到着した。ここは広い敷地内にマダガスカルの代表的な動植物が飼われている公園になっている。

最初に見たのが、おそらくマダガスカルの動物の中で一番有名なワオキツネザル。ロープにつながれているものの、檻の中ではなく近くで見ることができるのがいい。触ることもできる。

この通り尻尾に輪があることから「輪尾キツネザル」という。すぐ近くで見ることができて感動。

下の写真は、檻の中で飼われていたハイイロネズミキツネザルと何かの動物(ガイドの説明を聞いたのだが忘れてしまった)。知っている人がいたら教えてほしい。

ハイイロネズミキツネザルは小さくて可愛い感じ。

これらの動物の他、この公園の隠れた名所といえるのが、下の写真。これは、このあたりの部族「サカラヴァ族」の墓のレプリカである。案外知られているものらしいが、私は旅行前にマダガスカルについて調べているときに初めて知った。

かつては本物の墓が観光スポットになっていたそうだが、こういう珍しいものを好む人たちによって大部分が盗難にあってしまい、現在はごく一部の人しか知らない場所に隠されてしまっているそうである。というわけでレプリカを見るしかないわけだが、しかし世界中どこでもこういうものはあるものだということを実感した。

それぞれのアップ。自分の死後にこういうものに見下ろされたいと思うかどうかは人それぞれだと思う。

子供のバオバブ。これで樹齢何年かは聞きそびれたが、これがあの並木道に立っているバオバブになるわけである。この段階では普通の針葉樹のような感じで、「木を引き抜いて逆さに植えたような姿」ではない。

ここにはナミビア生まれのダチョウもいる。マダガスカルにはダチョウは生息していないため、アフリカ大陸から連れてきたという。マダガスカルにはかつて「エピオルニス」という巨大な鳥(「千夜一夜物語」のロック鳥のモデル)が生息していたが、現在は絶滅している。このダチョウは「エピオルニスは残念ながら見せられないので、代わりにこれを見てくれ」という意味なのかもしれない。(マダガスカル特有の動物ではないため、ダチョウの写真は撮っていない)

このあと、カメレオン、大型ヘビ、ワニ、各種のきれいな鳥などを見て回った。バオバブ並木道に行く途中にあるというのに、あまり訪れる人はいないらしく、園内は閑散としていた。しかしまあ、そのぶんガイドの説明を聞きながらゆっくりと回れたのでよかったといえる。

この後、案内してくれたガイドに別れの挨拶をして、次の目的地のバオバブ並木道へ向かった。