ヨルダン旅行記(アンマン / ローマ劇場)

夕方6時45分、福岡空港を出発して関西空港へ。今回の旅行では日本を夜に出発することになる。私が普段拠点にしている福岡空港では国際線の出発は午前中に集中しているため、こうやって夜に出国するのはなんだか新鮮な気がする。

関西空港では、デジタルカメラの予備の乾電池とアカバでのシュノーケリングに備えて防水タイプの使い捨てカメラと日焼け用ローション等を買い込み、旅行の準備を整えた。この関西空港は福岡空港よりは各店の品揃えが充実している上に成田空港ほどごちゃごちゃとしていないので、なかなか便利な空港だと思う。関西の中心部から離れているのが難点なのだろうが、私のように地方空港から直接飛行機で来る者にとっては大きな問題ではない。

午後11時、関西空港を出発。エミレイツ航空には初めて乗ったが、さすがに評判のいい航空会社だけあって、各座席にモニターがあったりと設備はかなりいい。もっとも、この時間だというのに出発直後に食事が出て、寝ているときにちょっと胃がもたれる。それから機内には日本人の他はやはり中東系の人が多いのだが、多くの人が出発前に自由に携帯電話を使っていたのには驚かされた(さすがに機体が動き出したら電源を切っていたが)。飛行機には乗り込む際に電源を切るのが当然と思っていたが、世界はそうでもないらしい。座席に座って声高に携帯電話で話している人がいても特に注意しない客室乗務員というのも初めて見た。


早朝4時半、経由地のドバイに到着。予定では5時半に到着となっていたのだが、使用する航空機材が変更になったということで1時間早く到着した。

ドバイへは2002年のトルコ旅行のとき以来6年半ぶりに来たが、当時もトランジットのみだったので、まだアラブ首長国連邦には入国したことがない。砂上の楼閣的な都市にも興味はあるものの、ヨルダン滞在を長くしたかったため今回もドバイには入国しないことにしている。

トランジットエリアで時間をつぶし、すっかり明るくなった午前7時半、アンマンに向けて出発した。アンマンまでの飛行時間は3時間ほど。

下の写真は着陸直前の飛行機からの眺め。地平線まで砂漠が続いている。

9時40分、アンマンのクイーン・アリア国際空港に到着した。入国審査はかなりスムーズに流れていて、私にとって区切りの30ヶ国目となるヨルダンに入国した。なお、事前に得ていた情報では日本人はヨルダン入国にはビザが必要で、ビザは入国審査時に無料で取得できるという話だったのだが、パスポートを見てもこれはビザではなく単なる入国スタンプ。ということは今は日本人はビザが不要になったのかもしれない。

空港の両替所でヨルダンの通貨ディナールを入手したところ、1ディナールは約140円だった。ターミナルの外に出ると、すぐ前にエアポートバスが停車していた。

これからアンマン市街へ向かうわけだが、エアポートバスは1時間おきの運行になっている。ターミナルを出たのが10時過ぎだったので、11時の出発まで50分ほど待たないといけなかった。なお空港から市街までの所要時間は1時間ほどで、運賃は3ディナール。

空港を出ると、砂漠の中のハイウェイを市街方面へ飛ばす。移動中、外の景色を眺めていて気付いたのがあちこちに立っているヨルダン国旗の多さ。今回のヨルダン旅行では本当に頻繁に国旗が掲揚されているのを見てきた。私が今まで入国した30ヶ国の中でも、ヨルダンは国旗を見かけるのが最も多かった国といっていいと思う。理由はよくわからないが、あるいはイスラエルへの対抗意識だろうか。

12時にアンマン郊外にあるバスターミナルに到着した。アンマンには方面別にいくつかのバスターミナルがあり、長距離バスはこれらのバスターミナルまでしか行かないため、ここからはローカルバスかタクシーに乗り換える必要がある。

ローカルバスはよくわからなかったため、ここからはタクシーを利用した。20分ほどでダウンタウンに到着し、タクシー料金は1.75ディナールだった。

これから宿泊先を探すわけだが、アンマンでは宿泊先として “PALACE HOTEL” を考えていた。ここはインターネットでアンマンの安宿について調べているときに見つけたホテルで、わりと評判がよかったので入ってみることにしていた。

下の写真がパレスホテルの外観。

少し歩くと路地の中にホテルの入口があった。入口付近の様子はいかにも安宿という感じ。

階段を上がると2階にフロントがあった。ここで泊まれるかどうか聞いたところ、トイレとシャワーが共同の部屋なら空きがあるということだったので、ここに泊まることにした。宿泊料金は1泊11ディナール。なお欧米人バックパッカーの間で人気のある安宿という噂どおり、ここに2泊する間、日本人旅行者はまったく見なかった。

部屋は簡素でベッドと机以外は特に何もないが、安宿としては十分だろう。笑えたのが机の上に置いてある扇風機で “KENWOOD” と記されている。ケンウッド製の扇風機など初めて見た。

動作させたときに音でも出れば面白かったのだが、まあ普通の扇風機だった。

部屋の外はちょっとしたベランダになっていて、町が見渡せる。アンマンは起伏の大きい町なので、街中にはこういう丘や深い谷があちこちにある。地図上では近いと思っても、実際にはかなり遠回りになることもあるので注意が必要。

部屋でしばらく休憩した後、フロントで翌日の死海ツアーの申し込みをすることにした。ヨルダンの有名観光地にもかかわらず死海周辺は交通の便が悪く、公共交通機関で回るのはかなり難しい。アンマンからツアーで訪れるのが一般的なので、多くの安宿はツアーのアレンジを行っている。

このパレスホテルでも日帰り~1泊程度の各種ツアーの手配を行っていて、ここで死海1日ツアーについて聞いたところ、今のところ私が最初の参加者らしく人数が集まらないと実行できないということだった。そこで夜になったら結果を聞きに来ることにして、いったん部屋に戻った。


午後2時、散策に出かけることにした。もっとも、初日は暑い気候に体を慣れさせるため、あまりハードに歩き回ることはせずダウンタウン周辺だけを歩くことにしていた。

まず向かったのは歩いて10分ほどのところにあるローマ劇場。2世紀に作られた円形劇場で、タクシーでダウンタウンに向かう途中に少し眺めることができたのだが、保存状態はかなりいい。

喧騒に満ちた大通りを過ぎ、ダウンタウンから少し東へ歩いたところにローマ劇場がある。観光地として整備されていて入場料は1ディナール。入口の近くにあるオフィスでチケットを買い、中に入る。

かつてローマ帝国の支配地域だったところにあちこち残されているのが半円形のローマ劇場。私は今までトルコ、キプロス、チュニジア等でいくつか見てきたが、このローマ劇場は保存状態はかなりいい。

気候が暑いので疲れるが、とりあえず最上段まで登ることにする。

最上段からの眺め。もともと入場者はそれほど多くはないが、その多くは地元ヨルダンの人たちらしく外国人観光客はまったくいない。アンマンの観光スポットと思っていたので意外だったが、考えてみればこの暑い時間に日陰がないような場所を観光する物好きも少ないだろう。

ここからは丘の頂上にアンマン城が見える。アンマンの観光スポットのひとつで、考古学博物館には死海文書も展示されているが、この日はアンマン城へは行かないことにしている。ここはヨルダン南部を回ってからアンマンへ戻ってきたときに訪れるつもり。

ローマ劇場には「ヨルダン伝統文化博物館」と「ヨルダン民俗博物館」の2つの博物館が併設されている。最初にヨルダン伝統文化博物館に入ったところ、各種モザイクが展示されていた。

続いてヨルダン民俗博物館に入ると、こちらは古代~中世のヨルダンでの生活の様子が人形を使って再現されていた。これらの人形の表情が抜群だったので、いくつか写真を撮ってみた。

どの人形もずいぶんとリアルな表情をしている。特に右上の写真の疲れたような表情など、これらの人形を製作した人は天才的だと思う。

ローマ劇場を出て、しばらく周辺を散策した。ローマ劇場の前は木陰のある小さな公園になっていて、コーヒー等を売っている店もある。ここでジュースを買い、ベンチに座って少し休んだ後、気候が暑くて予想以上に疲れたこともあっていったんホテルへ戻った。


夕方、涼しくなってから再び外出し、ダウンタウンを散策してみた。パレスホテルが面しているキング・ファイサル通りは人も車も多く、喧騒に満ちている。

ダウンタウンにあるキング・フセイン・モスク。ダウンタウンの中心にあるモスクで、イスラム教徒以外は内部に入ることはできない。高いミナレットが特徴的。

ダウンタウンには、あちこちに安食堂がある。この日は「イラキ食堂」という日本語のシールが貼られていた小さな食堂でケバブの定食を食べてみた。料金は3ディナールで、味はまずまず。なお日本語のシールが貼られていても日本語が通じるわけではない。

かなり暗くなった午後6時半、散策を終えてホテルへ戻った。街中の治安状況はどうかというと、これが驚くほど良好だった。暗くなってからダウンタウン中心部を歩いてもまったく問題ない。さすがに中東で最も旅行しやすい国と言われているだけのことはあるが、イスラエルとイラクの間にあるというのに、この治安の良さは驚異的だと思う。アンマンだけでなく今回のヨルダン旅行中は何か危険を感じることなどまったくなかった。


ホテルに戻り、フロントで翌日の死海ツアーが実行できそうか聞いたところ、まだわからないということだった。私の他にもう1人参加者が現れたそうだが、最低でも3人が必要らしい。翌日の朝になればわかるということなので、参加者がさらにもう1人現れることを願いながら部屋に戻ることにした。

部屋に戻る途中、そのまま階段を上っていけばホテルの屋上に出られることを発見し、夜景を撮ってみた。

キング・ファイサル通りは相変わらず喧騒に満ちていて、多くの人たちが歩いている。この翌日は暗くなってからもダウンタウンを歩いてみたが、安全上の問題はまったく感じなかった。

部屋に戻り、シャワーを浴びてから翌日の予定を考え、寝ることにした。ヨルダン到着初日はこれで終了。