パナマ滞在記(MARSIM’09)

2009年8月17~20日にパナマで行われた MARSIM’09 という学会に発表者として参加してきた。英語での発表ということで相当に緊張したが、何とか無事に終えることができた。

MARSIM’09 のサイトはすでに消えているので、代わりに主催者のサイトを載せておく。

個人旅行で訪れたわけではないが、時間のあるときにパナマ市街を散策したり、また学会のテクニカルツアーでパナマ運河を通航したので、そのときの風景を載せることにする。パナマは中米で(エルサルバドルに次いで)2番目に見どころが少なく、パナマ運河以外は特に見るべきスポットはないといわれている。


盆休みをすべて潰して発表用の原稿を作成し、盆明けの16日午後に日本を出発。デルタ航空のアトランタ経由を利用し、同日の16日夜9時前にパナマシティのトゥクメン国際空港に到着した。パナマ入国にはビザは必要ないが、代わりにツーリストカードというものが必要で、空港到着時に5ドルで取得する必要がある。

無事にパナマに入国し、学会の送迎車の待ち合わせ場所へ。ここで、同じ飛行機に日本人の学会参加者が何人も乗っていたことが分かった。顔見知りの人に挨拶し、送迎車でパナマ市街へ移動。空港を出ると辺りは真っ暗になるので、周囲の様子はよく分からない。市街に近づくとようやく明るくなり、学会が行われるマリオットホテルに到着した。

学会参加者の多くはこのホテルに泊まるようだが、私は1泊225ドルもするような高級ホテルに泊まるわけではない。何しろ今回は5泊する必要があり、ここに泊まると約10万円ということになる。

楽天トラベルで調べたところ、パナマ市街にはそこそこに安いホテルも多くあり、今回はマリオットホテルからタクシーで5分くらいのところにある ARAMO HOTEL を予約しておいた。宿泊料金は1泊3,800円で、5泊で19,000円なのだからマリオットホテルの1泊分より安い。ここからマリオットホテルまでのタクシー料金は片道2ドルほど。(パナマは独自の通貨がなく、米ドルをそのまま使用している)

こちらが今回宿泊した ARAMO HOTEL で、これは翌日の昼間に撮ったもの。

部屋はこんな感じ。1泊3,800円という値段にもかかわらず、テレビ、冷蔵庫、エアコン完備で非常に快適だった。わざわざ225ドルも出して高級ホテルに泊まるより、こういうところのほうがすっとお得だと思う。

テレビをつけると、この番組をやっていた。映っているのはあの有名クイズ番組の司会者と出演者。

外国でこの番組を見るのは、エジプトで見たアラビア語バージョン、キプロスで見たギリシャ語バージョン、スロベニアで見たスロベニア語バージョンに続いて4回目ということになる。今後も旅行中にどこかの国で見ることがあるかもしれない。


学会が行われたマリオットホテル。ちなみに、”MARRIOTT” と R が2つ重なるので、スペイン語の発音では「リ」は巻舌になる。

宿泊したホテルには朝食は含まれていないが、マリオットホテルには学会参加者のための軽食(パン、ケーキ、パイ、コーヒー、紅茶、ジュースなど)が大量に用意されていて、好きなだけ食べることができたので朝食は必要なかった。さすが高級ホテルで行われる国際学会だけのことはある。(さらに昼食もビュッフェ形式で学会参加者は無料。まさに至れり尽くせり)

講演会場の様子。会場は3つあり、下の写真は私が発表することになった会場になる。周囲は偉い先生や研究者ばかりだし、その中で英語で発表と質疑応答を行うのは本当に緊張した。何も見ずに英語で説明するのは無理と思ったので、あらかじめ用意しておいた原稿を読みながら発表を行ったが、途中「はたして通じているのだろうか」と思ったりもした。もっとも、発表後に質問が2つあったので(韓国の人とインドネシアの人)、一応は通じていたらしい。

四苦八苦しながら質疑応答を終え、席に戻ったときは本当にほっとした。まあ、いい経験になったとはいえると思う。

しかしながら、MARSIM’09 について説明するのが当サイトの目的ではないので、学会の様子についてはこのくらいにしておく。詳しい内容について知りたいという奇特な人は、連絡を頂ければ論文を送ります。


学会のテクニカルツアーでパナマ運河を通航した。実は私は学生時代の遠洋航海の際、海王丸でパナマ運河を通航したことがあるので、今回が17年ぶりの再訪になった。

パナマ運河には太平洋側から「ミラフローレス」「ペデロミゲル」「ガトゥン」の3つの閘門があり、今回通航するのはミラフローレス閘門とペデロミゲル閘門になる。わりと小型の船に学会参加者が乗り、運河の通航を体験することになった。

ミラフローレス閘門の遠望。

次第にミラフローレス閘門に近づいていき、やがて中に入る。

後ろの水門が閉まる。

やがて水が流れ込み、上昇開始。

上昇中の動画。水が流れ込む速度はかなり速い。

後ろを見ると、水位が完全に上昇したことが分かる。

やがて前方の水門が開き、機関車による曳航開始。

これが曳航用の機関車。

次の水門内に入る(ミラフローレス閘門は2段階)。

後ろの水門が閉まり、先ほどと同様に上昇を行う。上昇が終わると、前方の水路と同じ水位になっている。

後ろを見ると、上昇した高さが実感される。

パナマでは運河が最大の観光資源でもあるので、ミラフローレス閘門の横には展望所がある。このときも大勢の人たちが眺めていた。

ミラフローレス閘門を過ぎると、ミラフローレス湖という小さな湖を航行する。周囲の風景は完全にジャングルになっている。

やがて2番目のペデロミゲル閘門に到着した。ここでの上昇は1段階で、これは動画を載せておく。まるでエレベーターのように船が上昇し、岸壁の向こうの風景が見えてくるのがわかると思う。

ペデロミゲル閘門を通過するとゲイラード・カットという細い水路が続き、やがてガトゥン湖に至る。ガトゥン湖を横切り、ガトゥン閘門(ここは3段階)で下降するとカリブ海に到着する。私は学生時代の遠洋航海でパナマ運河を両方向に1回ずつ通航しているので、船が上昇する様子などを見ると懐かしかった。

それにしても、船が1回通航するたびに大量の水が海へ流れ出していくのが実感される。ガトゥン湖の水が無くならないのが実に不思議で、同乗していた日本人の学会参加者は「これは世界七不思議のひとつだ」などと話していた。

今回の通航体験はペデロミゲル閘門を通過したところで終了。近くの岸壁で船を下り、待機していたバスでパナマ市街方面へ戻ることになった。

途中、運河が眺められる丘の上の公園に立ち寄った。ここからはミラフローレス閘門が見渡せる。

ちょうど MOL(商船三井)のコンテナ船が通航していた。こうして見ると、まるで船が陸上を通航しているようにも見える。

ミラフローレス湖と通航する船舶の遠望。さすがに世界の海運の大動脈だけあって、ひっきりなしに船が通航している。通航量の増大や船舶の大型化により通航能力の限界が予測されたため、現在は運河拡張工事が行われているそうである。

公園を後にしてコンベンションセンターのようなところに移動し、パナマ運河拡張計画についての説明を受けた。実施されるのは既存の閘門の近くに新たに大型の閘門を増設するものであり、かつて計画されたことのある第2パナマ運河計画とは異なる。

この後、バスでパナマ市街のマリオットホテルへ移動し、テクニカルツアーは終了。


パナマ新市街の様子。新市街については、通りを歩いている人も多く治安は特に問題ない。大きなスーパーマーケットもあり、土産物等の買い込みはすべてここで行った。

夜の新市街。夜も周辺を歩いてみたが、特に危険そうな感じはしなかった。

パナマシティでは派手にペイントされたボンネットバスが多く走っていて、道路ではかなり目立っていた。次々と現れるバスを見ているだけで面白い。

今回は出張なので乗る機会はなかったが、個人旅行で来ることがあればこういうバスで移動してみたいものだ。

そのボンネットバスの中で、ちょっと驚いたのがこれ。「なぜ毛沢東?」と思ったが、後で知ったところによると中米諸国は華僑が多いらしく、そういう縁で毛沢東が描かれていたらしい。

これらの写真から分かる通り、新市街については出歩いても特に問題ない。しかしながらパナマ旧市街はスラム化していて、中米一と言われるほど異常に治安が悪いとされている。今回は旧市街へ行く機会はなかったが、再びパナマを訪れることがあればタクシーをチャーターして行ってみたいと思う。


無事に学会を終え、21日の早朝にパナマを出発。来たときと同様にアトランタを経由し、翌22日の夕方に成田空港に到着した。この日の福岡便がいずれも満席で事前に予約できなかったので、この日は成田空港近くのホテルに宿泊した。長い移動で疲れていたので、このときはいったん宿泊できることを嬉しく思った。

翌日の朝、成田空港へ移動し、午前中の便で福岡へ移動。昼過ぎに福岡空港に帰着した。