インドネシア旅行記(ボロブドゥール)

ジョグジャカルタ滞在2日目。この日は今回の旅行最大の目的地、ボロブドゥール遺跡を見ることになる。ちょうどインドネシアの連休期間だったこともあり、ものすごい人出だったが、想像以上に大規模な遺跡を楽しむことができた。


朝7時半にホテルを出て、マリオボロ通りにあるトランスジョグジャの乗り場へ向かう。トランスジョグジャというのは専用の乗り場から発着する路線バスのことで、ジョグジャカルタ市内を6路線が走っている。一般の路線バスよりもルートがわかりやすく、空港やバスターミナルといった要所も経由しているので、旅行者にも利用価値の高い交通手段といえる。

乗り場は周囲よりも一段高くなっていて、ガラスで囲まれたブースになっている。バス料金は乗り場に入る際に係員に払うことになる。料金は一律で3,000ルピア。

マリオボロ通りからトランスジョグジャの 3A 線に乗り、市街を南下してバスターミナルへ向かう。車内は空調も効いて快適そのもの。

20分ほどでギワガン・バスターミナルに到着した。わりと規模の大きいバスターミナルだが、さすがに有名観光地だけあってボロブドゥール方面行きの乗り場はすぐに見つかった。

バスは頻繁に出ているようなので、特に急ぐ必要はない。そこで、バスターミナル内の食堂で朝食にした。並んでいる食堂はいずれも小汚いが、それほど気にすることもないだろう。ここでは「ナシ・クドゥッ」というジョグジャカルタの郷土料理を注文してみた。鶏肉とジャックフルーツを煮込んだものだそうで、味はまずまず。

では、バスでボロブドゥールへ向かうことにする。わりと小型のバスで、車内は満員。

やや渋滞している市街を走っていると、ときどき流しのミュージシャンが乗り込んできて、曲を披露した後にチップを集めて回っている。意外にもかなり実力を持っている人が多く、私も多少チップを渡してきた。

郊外に出るとスムーズに流れるようになり、ジョグジャカルタから1時間半でボロブドゥールのバスセンターに到着した。


バスを降りるとベチャの運転手が寄ってくるが、遺跡の入口がすぐ近くというのは調べていたので、歩いてそちらへ向かうことにした。バスセンターから数分で広い駐車場が見えてきて、駐車場を横切ったところにゲートがある。

この日もインドネシアの休日ということで、チケット売り場には長い行列ができている。最初はその列に並んだのだが「外国人はここではない」と指摘され、別の建物に向かった。地元インドネシアの人たちが並んでいるゲートの近くに小ぎれいな白い建物があり「VIP および外国人」と書かれている。どうやらここから入場するらしい。

中に入るとチケット売り場があり、ここで12万ルピアでチケットを購入した。先ほど並んでいたインドネシア人窓口と比べて約10倍の値段だが、こういう遺跡で外国人料金が設定されているのはよくあること。遺跡の管理に結構な費用がかかるだろうから、これは喜んで払うことにする。

さすがに VIP と書かれているだけあって、建物内にはコーヒーの無料サービスがある。ここでコーヒーを飲んで少し休憩し、建物を出て遺跡エリア内に入った。


周囲はとにかく人が多い。外国人観光客もときどき見かけるものの、ほとんどは地元インドネシアの人たち。最初は遺跡観光がそんなに人気があるのかと不思議に思ったが、歩いているうちに理由がわかってきた。

このボロブドゥールはメインはもちろん仏教遺跡だが、エリア内には熱気球などのアトラクションが並んでいて、一大レジャーランドになっていたのである。このことはまったく知らなかったので、大勢の家族連れがレジャーを楽しんでいる光景には驚かされた。

アトラクションは後で見ることにして、まずは遺跡へ向かう。木立の間の道を歩いて行くと、やがて遠くに見えてくる。

この距離からでも遺跡の巨大さがよくわかるが、さらに近づいていくと迫力に圧倒される。建造されたのは8世紀ごろと考えられているそうで、よくもまあこれだけ巨大な建造物を作ったものだ。

この遺跡は18世紀に発見されるまで久しく忘れられていて、土に覆われた丘になっていたという。発掘によって土が取り除かれ現在のような姿になっているが、これだけ巨大な遺跡が忘れられていたというのも不思議。

まずは周囲を一周してみた。しかしすごい人波で、遺跡の上層へ登る階段は渋滞が起きている。

では、遺跡に登ってみることにする。ボロブドゥールは全9層の階段ピラミッド状になっていて、下層には正方形の回廊が続いている。一周しながら一段ずつ上がっていくことにした。

まず、第4回廊までは壁にさまざまなレリーフが作られている。

これら膨大な量のレリーフは仏陀の生涯を表しているそうである。ひとつずつしっかりと見ていくと大変な時間がかかるので、主だったものを見ながら回廊を上がっていくことにした。

どのレリーフもかなり手が込んでいて、これだけのものを作り上げるのにいったいどれだけの時間がかかったのか、ちょっと想像できない。

大量のレリーフの他に、仏陀の坐像もあちこちに置かれている。伽藍に収められたものやむき出しになったものがあるが、首が落ちてしまったものも多い。正面から見るとちょっと不気味に思える。

仏像の視線の方向を眺めてみた。

第4回廊の上に上がると急に視界が開け、ここからはストゥーパが並ぶ広々としたエリアになる。中央の大ストゥーパの周囲に72基の小ストゥーパが並んでいて、周辺から中心に向かうに従って格子窓の形がひし形から正方形に変化していく。

それにしても、このエリアはとにかく人が多い。

各ストゥーパにはそれぞれ釈迦牟仁像が収められていて、ストゥーパに開いた格子窓から覗くことができる。インドネシア人の間では、この釈迦牟仁像に触ると願い事がかなうと言われているそうで、多くの人が手を伸ばして仏像に触ろうとしていた。

私もやってみた結果、何とか肩の先に触ることができた。

これらストゥーパの中に、ひとつだけ半壊したものがある。釈迦牟仁像がよく見えるので、多くの人がここで記念写真を撮っていた。

そして、ボロブドゥールの中心になる最上層には巨大なストゥーパがある。このストゥーパには格子窓はなく「無の世界」を表しているそうである。

このストゥーパの根元に女の子が座っていたので、モデルにして写真を撮ってみた。

私もこの位置に座り、下界を見下ろしながら休憩した。それにしても巨大な遺跡で、これだけのものが1000年以上も忘れられていたのというのが本当に不思議。これについては火山の噴火による埋没やイスラム教徒の破壊を恐れて埋めたなどの説があるそうだが、はっきりしたことはわかっていないらしい。

しばらく周囲の雰囲気を楽しんだ後、相変わらず大渋滞している階段を下り、地上に戻った。


ボロブドゥールを後にして、続いて遺跡エリア内を歩いてみた。ここは一大レジャーランドになっているので、さまざまなアトラクションが並んでいる。宗教遺跡のレジャーランド化については、いろいろと批判もあるようだが、これは部外者がとやかく言う問題でもないだろう。「イスラム国家にある仏教遺跡」ということで、このようなことが可能になったという面もあると思う。

しかしすごい人出で、大勢の子供たちが走り回っていた。

園内を周回している列車タイプのミニバスにも乗ってみた(料金は5,000ルピア)。ボロブドゥールを大きく一周するので、四方から遺跡を眺めることができる。

ミニバスに乗っている途中、象を眺めることもできた。そこで、園内を一周してミニバスを降りた後、象の近くまで歩いてみた。このときはやっていなかったが、ときには園内で人を乗せたりするのだろう。

土産物店エリアに行くと屋台のような小汚い食堂が並んできたので、ここでインスタントラーメンを作ってもらった。暑い中、大汗をかきながら遅い昼食を終え、さらに夕方まで周囲を散策してみた。

遺跡エリア内には高級ホテルもある。ここに泊まり、夜明け前にボロブドゥールに登って日の出を見るのもいいものらしい。

その高級ホテル前から見たボロブドゥールの遠望。

遺跡エリア内をもう一回りした後、名残惜しかったがこれでボロブドゥールを後にしてジョグジャカルタへ戻ることにした。園内がレジャーランド化していたのは意外だったが、遺跡自体は十分楽しむことができた。今まで見た遺跡の中では、アジアではなんと言ってもアンコールワットがトップだが、このボロブドゥールもそれに次ぐくらいの迫力があった。いつかまた来たい。


午後3時すぎにバスセンターを出発。しばらくはボロブドゥール帰りの車で激しく渋滞していたが、やがてスムーズに流れるようになり、午後5時すぎにジョグジャカルタのバスターミナルに到着した。

トランスジョグジャに乗り換え、マリオボロ通りへ移動。休日ということで市街はかなり渋滞している。前日と同様、マリオボロモールのフードコートで夕食をとり、しばらく散策してからホテルへ戻った。