バングラデシュ旅行記(ショナルガオ)

朝9時に起床。ホテルをチェックアウトし、夕方まで荷物を預かってもらうことにして10時過ぎにホテルを出た。

近くにあるグリスタン・バスターミナルに歩いて移動し、ショナルガオ行きのバスを探したところ、車体に “Sonargaon Express” と書かれたバスがすぐに見つかった。この日は、丸1日かけてダッカ近郊のショナルガオを観光することにしている。


バスターミナルといっても建物があるわけではなく、道路が広くなったところにたくさんのバスが停車しているだけ。道路沿いには多くの露店が並び、大勢の人たちが歩いている。露店でパンとビスケットを買い、バスに乗り込んだ。

名前は「ショナルガオ・エクスプレス」と立派な感じだが、実際はわりと小型の薄汚いバス。

ほぼ満員になったところで出発した。運賃は30タカ。

バングラデシュの人たちには「ゴミは道路に捨てるもの」という認識があるので、バスの中で出たゴミを窓から投げ捨てている人もいる。これが現地の習慣ということはわかるが、やはりどうしても真似できない。

50分ほどで終点に到着した。大きな川に面した船着場の前で、ここから対岸への渡し舟が出ているようなのだが、目的地の「民俗博物館」へはどうやって行くのかわからない。運転手に聞いたところ、それなら少し手前の「モグラパラ」という場所で降りないといけなかったらしく、運転手も苦笑していた。折り返しのバスで戻ることにして、出発まで少し時間があったので船着場の小さな露店でミルクティーを飲んで休憩。

再びバスに乗り、数分でモグラパラに戻った。モグラパラは幹線道路沿いにあり、ミニバスや CNG(天然ガスで走る三輪タクシー)やリキシャで混雑している。

露店に立ち寄ってペットボトルのジュースを買い、CNG で民俗博物館へ向かう。細い路地をかなりのスピードで通り抜け、5分ほどで到着した。10タカでチケットを買い、中に入る。

ここはかつての領主の館で、現在は建物内が博物館になっている。建造は1901年。

少し歩くと池に面した建物が見えてくる。バングラデシュを紹介しているサイトやガイドブックには必ず載っている、定番の風景といえる。

旅行人ウルトラガイドには「バングラデシュの静謐」というタイトルが付けられているが、たしかにあらゆる場所が喧騒に満ちているバングラデシュでは、かなり落ち着いた雰囲気になっている。

では、建物内に入る。

内部は小部屋に別れていて、順路に沿って進んでいくようになっている。昔のバングラデシュの生活が人形を使って再現されている部屋が多く、他には楽器や工芸品などが展示されている。どれもよくできていて面白い。

ここは、ダッカから日帰りで行ける観光地として人気が高いという話通り、建物内はバングラデシュ人の来訪者が多い。もっとも、館内の展示品以上に外国人のほうが興味深いらしく、私が歩いているといろんな人たちから話しかけられる。ある家族連れなどは、母親がわりと英語を話せる人だったので家族全員の名前を紹介された上で私の名前や職業などをいろいろと聞かれたりした。ダッカ近郊の有名観光地といっても、バングラデシュ自体が外国人が少ない国なので、このときも外国人は私くらいしかいなかった。かなり目立っていたようである。

中庭を囲む回廊は、こんな感じ。装飾なども細かく作りこまれている。

建物内を一通り見てから、外へ出た。

少し歩くと、博物館がある。

展示されているのは伝統工芸品やかつて使われていた日用品など。建物は大きいが、かなりゆったりとした感じで配置されているので、展示品はそれほど多くはない。

建物は2階建てだが、階段はさらに上へ続いていたので、上ってみるとこうなっていた。いずれ3階を作る予定があるのかもしれないが、しかし普通こんな作り方はしないと思う。どういう意図なのかよくわからない。

博物館を出て、さらに周囲を歩いてみた。もともと領主の館だったので、面積はかなり広い。敷地内には池が多く、バングラデシュでは珍しく静かな雰囲気の中で散策できる。

敷地内に、ハンディクラフトの土産物を扱っている店が並んでいる一画があるということなので、そちらへ行ってみた。このゲートが入口になっている。

ハンディクラフト店は、いくつか見たがたいしたものはなかったので特に何も買っていない。それよりも、ここで印象に残っているのは遊具が幾つか並んでいる小さな遊園地。どれも木製で、この小型観覧車などは手作り感にあふれている。当然ながら回転は手動で、スタッフが2人がかりで回している。

回転中の動画。予想以上に揺れが激しく、かなりスリルがありそう。きしむような音からも、安全性に問題があるのは推測できるが、そういうことはみんな気にしない。

乗ってみようかとも思ったが、若者の団体がいなくなるとスタッフも休憩なのかどこかへ行ってしまったので、やめておいた。今思えば、スタッフが戻ってくるのを待ってから乗ってみればよかったという気もする。

敷地内をもう一回りしてから領主の館の前にある池のほとりで休んでいると、地元の若者が記念写真を撮るために近くへやってきた。邪魔にならないようにと思って場所を移動しようとすると、「そのままいていいから」ということで一緒に並んで写真を撮った。要は、外国人と一緒に写真を撮りたかったらしい。こういうところも、外国人が少ないバングラデシュらしいという気がする。

これが、そのときの写真。せっかくなので私もカメラを渡して同じ写真を撮ってもらった。(白いシャツのほうが私)

その後、もう少し散策してから外へ出ることにした。ダッカ近郊の定番観光地なので、おそらくバングラデシュを旅行する数少ない外国人のほとんどがこの場所を訪れると思う。街中の喧騒に疲れたら、ここで静かな散策を楽しんでほしい。


民俗博物館を出て、続いてリキシャで「ラズバリ」という地区へ行くことにした。5分ほどで到着。

ここは、かつてこの地域がイギリス領インドだった時代に裕福なヒンドゥ教徒たちが住んでいた地区だそうである。ベンガル地方がパキスタンの一部として独立した際、イスラム教徒による支配に危惧を感じたヒンドゥ教徒たちが次々にインドへ移住し、それにより廃墟になってしまった。(周知の通り、その後1971年に東パキスタンがバングラデシュとして分離独立)

建物は廃墟だったり、あるいはバングラデシュ人が住んでいたりするが、今でも当時の建物を見ることができる。

ほとんどが廃墟だが、建物の雰囲気はなかなかいい。

リキシャ引きによると、この地区をさらに先のほうへ進むと中を見ることができる家があるということなので、連れて行ってもらった。この建物の中に入ることができる。

しばらく敷地内を散策。敷地内は意外と広く、わりと大きな建物がいくつか建っている。左下の写真に写っている建物の2階には人が住んでいるようだが、それ以外は廃墟になっている。

完全な廃墟になっている建物に入り、中庭に面した部分の写真を撮ってみた。アーチ型の窓が並び、かつてはかなり優雅な生活が送られていたことが想像できる。インドに移住した住人の子孫は、今はどういう生活をしているだろう。

建物を出て、リキシャで民俗博物館方面へ戻ることにした。その途中、リキシャ引きが「シヴァ寺院があるが、そこへは行ったのか」と話しかけてきて、その方向を見るとたしかに遠くに尖塔がある。森の中なのでリキシャでは行けず、歩いて行くしかないということなので、一番近いところで降ろしてもらった。

クリケットの練習が行われているグラウンドの横を通り抜け、森の中に入って少し歩くとシヴァ寺院に着いた。

シヴァといえばヒンドゥ教の神様なので、ここがインドの一部だった時代に建てられたものだろう。入口は閉ざされているので、中に入ることはできない。かなり古そうに思えるが、建てられてから何年くらい経っているのだろうか。

シヴァ寺院を後にして、クリケットが行われているグラウンドのほうへ戻る。バングラデシュなどの南アジアではクリケットが非常に人気のあるスポーツだそうで、日本の草野球と同様、こちらでは草クリケットがよく行われているという。

テレビでも試合中継を何度も見かけたが、(大抵の人はそうだと思うが)私もクリケットには縁がないので「野球の原型になったスポーツ」「試合終了まで非常に時間がかかる」「イギリス発祥なので試合中にティータイムがある」といったことは知っているものの、試合を見てもルールがよくわからない。熱心に練習している姿をしばらく眺めてから、民俗博物館方面へ戻ることにした。

途中、バングラデシュのスイーツ「ミスティ」の店があったので、立ち寄って2個注文してみた。牛乳と砂糖から作られる白い団子をシロップ漬けにしたもので、味は驚くほど甘い。まるで砂糖の塊という感じで、甘いものが苦手な人はおそらく一つ食べるのも苦労すると思う。

そして、このようなミスティ専門店はハエの数がものすごい。バングラデシュの衛生状態を考えれば、そこに砂糖やシロップが大量にあればこのような状況になることは十分予想できる。このミスティ店を見つけたとき、ガラスケースやテーブルにたくさんの黒い斑点があり、何かと思って近づいてみたら全部ハエだった。衛生状態が気になる人は、こういう店ではミスティを食べないほうがいいと思う。(上の写真は、ハエを追い払って撮ったもの)

民俗博物館の前に戻り、CNG でモグラパラへ移動。CNG の運転手にダッカ方面へのバスが着く場所を教えてもらい、そこで待っているとすぐにバスがやってきた。来た時と同様、1時間ほどかかって午後5時にダッカに戻った。


到着したのは、グリスタン・バスターミナルではなく少し離れた別の場所だったので(地区の名前はわからない)、リキシャでグリスタンへ移動。いったんホテルに寄って荷物を受け取ってから、この日の宿泊先であるダッカ・シェラトンホテルへ向かうことにした。

今回の旅行前、バングラデシュでのホテルを調べていたときにシェラトンホテルに166ドルで泊まれることがわかり、お得に思えたので旅行最終日に予約しておいた。旅行中は安宿ばかりだったので、最後に贅沢をすることになる。なお、今回最も安かったクミッラのホテル(1泊130円)と比べて、約100倍の値段になる。

CNG に乗ってシェラトンホテルへ移動すると、さすがに門の中に入ったときから雰囲気が違う。大抵の客がタクシーやツアーバスで訪れる中、ちょっと場違いな感じで CNG を降り、フロントでバウチャーを見せてチェックインを行った。ホテル内は、敷地の外と比べるとまさに別世界になっている。

これが宿泊した部屋。コーヒーメーカーでコーヒーを作り、しばらく休憩。

シェラトンホテルといえば言うまでもなく有名ホテルチェーンだが、私はまだシェラトンホテルには宿泊したことがないので、今回が初体験になる。部屋は申し分なく快適だが、ロビーを歩いているときなどは自分がなんだか場違いなところに来たような感じがしてしまう。金は十分に持っているのだから堂々としていればいいのだが、ホテルに大勢宿泊している欧米人たちのようにスマートに金が使えない。どうも高級な場所の雰囲気に慣れないというのも困ったものだと思う。

それにしても、これまで7日間旅行した間に見かけた外国人は10人もいないというのに、このホテル内には欧米人が大勢いるというのも驚きで、この人たちはバングラデシュのどこを見て回っているのかと不思議に思った。あるいは、大半は仕事でダッカを訪れた人たちで、旅行者はほとんどいなかったのかもしれない。


午後7時半、夕食のために外出することにした。このホテルは前日訪れたボシュンドラシティから2キロほどの距離なので、そこまで歩こうとしたのだが、玄関前に待機していたタクシーの運転手たちが何とかしてタクシーに乗せようとする。「街中は治安が悪い」「歩くと危ない」などと言ってくるが、こちらは前日の夕方にボシュンドラシティ付近を歩いたため、雰囲気はわかっている。勧誘を断って外に出たが、さすがに歩いて外へ出ようとする人がほとんどいない高級ホテルなので、守衛さんが私のほうを不思議そうに見ていた。

すでに薄暗くなってきているが、ホテルからボシュンドラシティ方面へ向かう道路沿いはバスを待つ人たちなどで混雑している。歩道をまっすぐに歩けないほど人が多く、スリには一応注意しておく必要があるかもしれないが、むしろ人ごみの中を選んで歩くほうが安全という気がする。また、薄暗いとこちらが外国人ということが目立たなくなるので、周囲からそれほど注目を浴びなくなるのも助かる。特に問題なくボシュンドラシティに到着し、入口の検査を受けてから中に入った。

まずは最上階に上がり、フードコートで夕食にした。イスラム国なので飲み物にアルコール類はないが、私は特に困らない。さらに、並んでいる各店のメニューを見ているとデザートがあったので注文してみた。

各種フルーツとゼリーが入ったヨーグルト風味のデザートで、かなりうまかった。ファルーダ(Faluda)という名前だったので、バングラデシュで見かけたら食べてみてほしい。

ボシュンドラシティを出ると、前日と同様、前の道路は大渋滞している。ホテル方面へ歩いて戻ると、やがてシェラトンホテルが見えてきた。夜景を見ると、別世界という感じがますます強くなる。

部屋に戻る前に、ダッカの空気が悪いせいか、前日あたりからかなり喉の痛みを感じていたので、フロントで喉の薬について相談してみた。フロントでは常備していなかったが、通りの向かい側に薬局があるそうなので、そこまでスタッフが案内してくれた。地元民用の小さな薬局でスタッフが交渉し、現地の薬なのでかなり強力ではないかという不安はあるものの、錠剤タイプの喉の薬を購入することができた。値段はやや高く、300タカ。ホテルに戻り、案内してくれたスタッフにチップを渡してから、部屋に戻ることにした。(このときの薬については、服用しても特に副作用などはなかった)

薬局からホテルに戻ったとき、ちょうど玄関にミニバスが到着し、十数人の日本人らしい旅行者が降りてきていた。この後、エレベーターで一緒になった際に話してみるとやはり日本人のツアー客で、バングラデシュのツアーがあるということに驚かされた。「こういうマイナーな国のツアーも、探せばいろいろとあるんですよ」と話してくれたが、その人たちは私が1人でバングラデシュを旅行していることのほうに驚いていたようだった。

部屋に戻り、先ほど買った薬を服用した後、しばらく優雅な雰囲気の中でコーヒーを飲みながらテレビを楽しんだ。クリケット中継をやっているチャンネルもあるが、見ていてもルールがさっぱりわからない。その後、シャワーを浴びてから就寝した。