国内旅行編(北海道 / 網走監獄博物館)

網走の観光地といえば、流氷の他は監獄博物館くらいしか思いつかないと思う。定番観光地ということで来てみたが、ここは予想以上に面白い博物館だった。


バスを下り、雪道に注意しながらチケット売り場へ。何しろ九州在住者なので、坂道などでは注意していないと滑りそうになる。道の駅にあった割引券を使用して940円でチケットを買い、中に入った。

わりと広い範囲に建物が点在している博物館で、冬の間は雪に埋もれてしまうため近づけないエリアもいくつかある。入れる建物は一通り見てきたが、網走監獄についての詳しい説明はしないので、それについては Wikipedia あたりを見てほしい。受刑者が突貫工事で作った道路が開拓に役立ち、北海道をロシアに取られずに日本の支配を確立できたという話だから(館内の展示による)、現在では感謝していいだろう。

最初に見えるのが赤レンガの正門。なかなか重厚な感じで、特に雪景色の中で見るときれいに見える。

正門の前にあった人形。見張りの看守はともかく、掃除している人を作るというのは面白い。

実はこの博物館、建物自体ももちろん興味深いのだが、再現風景に使われている人形がえらくリアルなのである。こういう人形は結構な値段がすると思うのだが、手抜きをせず一体一体丁寧に作ってあるところは好感が持てる。

正門の中に家族との面会室が作られていて、そこにあった人形がこの通り。奥さんの肌がずいぶんときれいで、なんだか艶かしい感じ。多分、それぞれの人形にはモデルがいると思う。

先へ進むと、ちょっと場違いな感じで氷の迷路が作られていた。

「巨大迷路」というほどの規模ではないので、簡単に外に出られる。まあ、壁が氷というのは珍しいかもしれない。

こちらは受刑者の休憩所。受刑者が刑務所の外に出て、日帰りできない作業をする場合はこういう仮小屋で寝泊まりしていたという。

極寒の地で、こんな薄い布団で寝ていたのでは大変だっただろう、と普通は思うところだろうが、私は人形のほうが面白かった。寝ている受刑者たちの顔や寝相もそれぞれ変えてあるし、こんなところまでこだわっているのはすごい。

看守に監視されながら、受刑者が食事している風景。

それにしても、この看守のリアルさは見事。モデルがいなかったら、こんな顔は作れないと思う。

この建物は「釧路地方裁判所網走支部法廷復原棟」。

名前の通り、法廷の風景がいくつか再現されている。

どの人形もリアルだが、ここで目立っていたのが書記らしい女性。

ちょっとたんぽぽの川村似。

おそらく、新たにここへやって来たらしい受刑者が説明を受けているところと、別室で待機している母親。

いやあ、この悪そうな人相が見事。この博物館全体に言えることだが、リアルさの追求ぶりは本当に素晴らしい。これらの人形を見るためだけでも、ここを訪れる価値はあると思う。

外を見ている女性看守については、窓のほうを向いているので顔がよく見えない。そこで、いったん外へ出て窓の外へ行ってみることにしたが、ルートから外れているので雪に埋もれている。ひざの上まで雪に埋まりながら、ようやくたどり着いて撮った写真がこれ。

何も大変な思いをしてまで写真を撮ることはなかったか。

「行刑資料館」には、明治時代から現代までの刑務所の変遷が展示されている。現在の雑居房は中を覗くことができるが、人付き合いが苦手な人にとっては、こういうところで生活するのは苦痛だと思う。むしろ独居房のほうが楽。

最近の刑務所ではニュートンが読まれているらしい。

館内には複数の大型紗幕スクリーンを使った映像コーナーもあるが、ちょっと場違いな感じ。かなり金がかかっているのはわかるが「無理に作ることはなかったのでは?」という気持ちにもなった。

この建物は、おそらくこの監獄博物館で一番有名だと思う「五翼放射状舎房」。

中に入ると中央見張りがあり、5棟の細長い獄舎が放射状に並ぶという構造になっている。廊下の先まで見渡せるので、ここからの眺めは壮観。

廊下の両側には、ずらりと小部屋が並んでいる。説明書きによれば雑居房(6畳)が126室、独居房(3畳)が100室あるという。いくつかの独居房には、懲罰として正座させられている人や、何かの作業をやっている人がいた。

それにしても、雑居房よりは1人でいるほうがいいと思うのだが、まあ人それぞれか。

こちらは雑居房での食事風景。食事の内容もリアル。

館内には一応暖房もあるが、真冬にはマイナス30℃にもなるという極寒の地では、このストーブではとても足りない。このため獄舎内も氷点下になり「屋外よりはまし」という程度だったという。政治犯として収容されていた人の「寒さだけは本当に大変だった」という内容の手記が残されていた。

廊下の先の方には脱獄風景も作られていた。 白鳥由栄 という有名な脱獄犯らしい。

こちらは受刑者の浴場。建物だけを見ると、雪が積もっていることもあって秘湯という雰囲気。

浴場内の風景。毎日入浴できたわけではないとは思うが、しかし湯船も広いし気分がよさそう。

それにしても、受刑者の刺青がリアル。

こちらは「煉瓦造り独居房」という建物で、この付近に何棟か建っている。問題のある受刑者への懲罰として、しばらく閉じ込めるために使われていたという。

その風景も再現されていたが、中は相当に寒そうだし、1人でいる方が好きな人にとってもこれはちょっとつらいかも。

こちらは教誨堂(講堂)。驚くほど広く、先には祭壇も作られている。慰問公演や体育館としても使われていたそうで、小学生のころの講堂を思い出して少し懐かしい気分になった。

これで博物館内の建物を一通り見たので、入口へ戻ることにした。夏の間は観光客でにぎわうのかもしれないが、今は観光客はそれほど多くはなく、ゆっくりと見ることができた。

この後、土産物店で定番土産の監獄せんべい(「出所おめでとうございます」と書かれている)を買い、バスで近くにあるオホーツク流氷館へ向かった。この監獄博物館は網走の定番観光地ということで来てみたわけだが、人形のリアルさが今でも印象に残っている。ちょっとしたB級スポット的な楽しさもあるので、網走へ来る機会があればリアルな人形を見てみてほしい。

(2012.2.5)