ポルトガル旅行記(ロンドン~リスボン)

朝8時半、長崎空港に到着。ここには銀行はないが、国際線の出発時には銀行の両替所が出店するので500ユーロを入手した。ここから出国するのは2002年に出張で上海へ行ったとき以来になる。国際線はソウル便と上海便しかなく、どちらも毎日の運航ではないため国際線ターミナルは簡素なものだが、長い行列ができることもなく出国は楽なもの。やはり出入国は成田ではなく地方空港のほうがずっといい。

午前10時50分に出発し、乗り継ぎ地のソウルへ。GWの初日だが、機内が満席ではなくところどころに空席があったのは意外だった。長崎~ソウルの路線がマイナーで知名度が低いことが原因かもしれない。

ソウルでの乗り継ぎ時間は1時間ほどしかなかったが、問題なく乗り継げた。大韓航空のソウル~ロンドンの路線に乗るのは、最初の海外一人旅だった1998年のアイルランド旅行以来になる。当時は機内に娯楽設備もなく12時間半のフライトが退屈だったが、今はすっかり変わっていた。エコノミーでも各座席にモニターがあり、様々な映画をオンデマンドで見ることができるので、まったく退屈しない。機内食の時間以外は「ヒューゴの不思議な発明」「ザ・ダーケスト・アワー」などを見てすごした。しかし「ヒューゴの不思議な発明」がジョルジュ・メリエスについての映画とはまったく知らなかったので、有名な「月に砲弾が刺さっている絵」が現れたときには「これってジョルジュ・メリエスの話だったの?」と少し衝撃を受けたが、しかしよくできた映画だったと思う。鉄道公安官役の俳優がいい感じ。


12時間半のフライトを終え、午後6時にロンドンのヒースロー空港に到着した。イギリスには3回入国したことがあるが、いずれも通過するだけで終わっている。(1998年のアイルランド旅行の際のロンドン → ホリーヘッドへの移動、2004年のスロベニア旅行の際の空港間の移動)

今回が4回目の入国だが、やはりルートン空港への移動だけになる。ただ、帰りはロンドンで半日ほど滞在時間があるので、初めてロンドンを観光する予定にしている。

銀行でイギリスポンドを入手し、ターミナル4駅からヒースローセントラル駅へ列車で移動した(この区間は無料)。大韓航空は少し離れたターミナル4に発着するので、こうやって移動しないといけないのが面倒。

ヒースローセントラル駅からヒースローエクスプレスでパディントン駅へ。所要時間は15分ほどだが、運賃は19ポンド(約2,500円)もする。今回のロンドン滞在では、様々な場面で異常なくらいの物価の高さを実感することになった。

パディントン駅から、ルートン空港行きのイージーバス乗り場があるベイカーストリート駅へ地下鉄で移動。ハマースミス&シティラインでわずか2駅目なのだが、ロンドンの地下鉄は初乗りが4.3ポンド(約560円)もする。日本の SUICA のようなチャージ式カードを使う場合はもっと安くなるようだし、7ポンドで1日乗り放題のトラベルカードが買えるのだが、今回はこの区間しか乗らないので現金で切符を買うしかない。しかし地下鉄の初乗りが4.3ポンドというのも、かなり異常という気がする。

「チューブ」という名称の通り、丸いトンネルからそのままの形の車両が出てくるのを見ると思わず笑ってしまいそうになる。ベイカーストリート駅(壁にシャーロック・ホームズが描かれている)で下りて地上に出ると、少し雨が降っていた。近くには有名なマダム・タッソー蝋人形館やシャーロック・ホームズ博物館もあるが、すでに夕方で閉まっているので、近くにあるバス乗り場へ移動した。

下の写真がバス停からの眺め。

実は、ここでバス停の場所を間違ってしまっていた。近接してバス停が2つあり、その片方で待っていたのだが、ここはスタンステッド空港行きのバスが停車するバス停だった。ルートン空港行きはもう1つのバス停で待たないといけなかったのだが、このことに気づいていなかった。

ルートン空港行きのイージーバスはほぼ30分おきの運行で、20時16分発のチケットを旅行前に購入し、印刷しておいた。そして、ほぼその時間に大型バスが目の前を通過して行ったが、行き先がルートン空港、さらにドアのところに “easyBus” と表示されているのが目に入った。

「もしかして、あのバスか?」

と思ったときにはすでに遅く、バスは走り去っていった。旅行前に easyBus で検索するとミニバスの写真ばかりが出てきたので、ミニバスしか注意していなかったのだが、ルートン行きは通常のバスだったのだろうか。

イージーバスは購入したチケットより前の時間なら空きがあれば乗れるが、時間を過ぎたら無効になると聞いていたので、乗り遅れたとしたら面倒なことになる。不安に思っていると、やがて easyBus と大きく書かれたミニバスがやってきた。

ほっとして乗り込もうとすると、運転手がスタンステッド空港行きだという。そして、ルートン空港行きはすぐ近くの別のバス停に停まること、ミニバスではなく通常のバスであること、チケットを見て「おそらく、このバスは行ってしまったね」と教えてくれた。ここで、本当に乗り遅れてしまったことがはっきりした。

ミニバスを見送り、どうしようかと考えたが、結局は30分後のイージーバスに乗るのが一番早い。バスの中で直接チケットを購入するとかなり割高になるらしいが、この場合は仕方がないだろう。

寒い思いをしながら(南欧のポルトガルが目的地なので防寒対策はしていない)、バスが来るのをひたすら待つ。ようやくバスが到着し、運転手にだめもとでチケットを見せると「OK」と言って問題なく乗せてくれた。時間が過ぎていることを指摘されたら「実は乗り遅れて…」などと説明するつもりだったが、あっけなくて拍子抜け。

さすがに大型バスは暖房も効いて快適で、うとうとしているうちに1時間ほどでルートン空港に到着した。バスを降り、いったんターミナル内に入ると、この時間でもわりと人は多い。おそらく早朝の便に乗るためにここで夜明かしをするという旅行者も多くいるのだろうが、私はそんなきついことはしたくない。予約してあるホテルへタクシーで向かうことにした。

ターミナル前からタクシーに乗り、夜10時にイージーホテルに到着。空港からの距離は3キロほどで、タクシー料金はチップを含めて約9ポンドだった。イギリスの物価の高さをここでも実感。

フロントでバウチャーを見せてチェックインを行い、部屋へ移動。ホテル内はイージーグループのシンボルカラーであるオレンジ色がふんだんに使われている。しかし壁一面がオレンジ色というのも、何だか斬新な感じ。

部屋は機能重視一辺倒という感じで、椅子やテーブルもない。「ベッドがあれば十分だろ」というところだと思うが、これだけ開き直っていると逆に好感が持てる。

長い移動で疲れていたし、日本時間だとすでに早朝になっている頃なので、シャワーを浴びてすぐに就寝。


翌日、朝5時に起床。フロントでタクシーを呼んでもらい、空港へ向かうことにした。下の写真はタクシーを待つ間に撮ったイージーホテルの外観。

早朝だと料金が高くなるのか、空港までのタクシー料金はチップを含めて約11ポンドだった。LCCといえば早朝出発が定番なので、6時前だというのにターミナル内は乗客たちが大勢歩いている。イージージェットのカウンターで荷物を預け、別のカウンターで搭乗券にスタンプを押してもらい(EU以外の国民はパスポートを見せて搭乗券にスタンプを押してもらう必要がある)、搭乗口へ移動。

免税店があるエリアから延々と歩いてリスボン便の搭乗口に着くと、すでに長い行列ができていた。機内が自由席なのはわかっていたので「これでは窓際に座れそうにないな」と考えながら列に並んだところ、しばらくして列に並んでいた人たちがいっせいに来た方向へ戻りだした。何が起きたのかと思ったら、どうやら搭乗口が変更になったらしい。その人たちに混じって免税店があるエリア近くまで延々と戻り、新しい搭乗口に並ぶことになった。結局、最初の搭乗口で後ろのほうに並んだおかげで、次の搭乗口では前のほうに並ぶことができたことになる。自分にとっては運が良かったと言えるのかもしれない。

やがて搭乗時間になり、小雨が降る中、外に出てタラップから飛行機に乗り込む。タラップには屋根がなく、乗り込むときは乗客は濡れ放題。いくらLCCとはいえ、「おいおい、ここは本当に先進国のイギリスか?」と言いたくなる気持ちだった。

窓際の座席を確保し、騒いでいた若者グループが女性客室乗務員に注意されると急にしゅんとなっている様子に微笑ましさを感じながら、出発を待つ。機内は満席で、出発時刻の7時20分になったとき、窓の外に信じられない景色が見えた。

上の写真ではよく見えないかもしれないが、タンクローリー車が飛行機に横付けになり、翼の下にホースをつないで給油を始めている。機内に乗客が全員乗ってから給油を始めるなど、今まで聞いたこともない。

もちろん何らかのトラブルでこうなったのだろうが、機内アナウンスがよく聞き取れないので原因はわからない。このおかげで出発が1時間以上遅れ、8時半にリスボンに向けて出発した。LCCにはこういうリスクが付き物というところだろうが、しかし乗客を機内に1時間以上も待機させておくというのも、さすがLCCという感じ。

リスボンまでの飛行時間は2時間20分。約1,600キロの距離で航空料金は約9,200円なのだから、まあ安いといえるだろう。機内では飲み物などはすべて有料なので、利用はしなかった。午前10時50分にリスボン空港に到着。ポルトガルは世界標準時を使用しているため、イギリスとは時差はない。

タラップを下り、飛行機の写真を撮ってみた。

イギリスはシェンゲン協定に加盟していないので、ロンドン便の乗客は入国審査がある。といっても特に何も聞かれることもなく、私にとって37ヶ国目となるポルトガルに入国できた。パスポートに入国スタンプが押されるので、少し得した気分。

ポルトガルの通貨はユーロなので、両替する必要はない。空港のカフェでパンとコーヒーの昼食にして(6.15ユーロ)、空港内のツーリストインフォメーションへ。

ここで「リスボンカード」を購入した。リスボン市内と近郊の交通機関が乗り放題になり、さらに多くの観光スポットも無料または割引になるというもので、旅行者なら買っておいて損はない。1日券~3日券の3種類があり、ここでは3日券を購入した。最初に使用した時刻から72時間有効で、値段は39ユーロ。

ツーリストインフォメーションの職員に宿泊先は決まっているのかと聞かれたので、バウチャーを見せると最寄り駅までの行き方を教えてくれた。さらに「翌々日の5月1日はメーデーなので、多くの観光地が休みになる。それを考慮して計画を立てるほうがいい」と教えてくれたので、礼を言って窓口を離れた。日本ではメーデーを気にする人などほとんどいないだろうが、考えてみればポルトガルは社会主義政権が長かった国だ。

帰りはファロから出国するので、この空港へはもう来ないことになる。ターミナル内をしばらく散策した後、市街へ向かうことにした。


ターミナル前から22番の路線バスに乗り、最寄りの地下鉄駅へ。アレエイロでバスを降りると雨が降り出したので、濡れないように軒下を伝って歩き、地下鉄アレエイロ駅に入った。それにしてもリスボンカードは非常に便利。

リスボンの地下鉄は4路線あり「青」「黄」「緑」「赤」に色分けされている。ここを通るのは緑線で、やってきた列車に乗って4駅先のインテンデンテ駅へ。下の写真はインテンデンテ駅で撮ったもので、反対側のホームに停まっている列車は出発直後ではなく乗客の乗降が行われているところ。この通り、この駅は列車と比べて駅のホームが異常なくらいに長いのが不思議だった。それに駅の入口はホームの両端にあるというのに、わざわざ片方の端に列車が停まるのもどうかと思う。

地上に出ると雨は止んでいた。周囲は郊外の住宅地という感じ。

バウチャーは持っていたものの地図を印刷していなかったので、小さな食料品店で尋ねた結果、ホテルを見つけることができた。ここが今回リスボンで5泊することになる Estrela dos Santos ホテル。

フロントに座っていた初老の主人にパスポートを渡してチェックインを行った。英語はほとんど離せない人だったが、日本人の宿泊客は少ないらしく、珍しがっている様子はわかった。

ここが今回宿泊した部屋で、写真からわかるとおり快適なものだった。エアコン、テレビ、ホットシャワーつきで1泊あたり37.6ユーロなのだから、リスボン滞在の際はお勧めのホテルといえる。

20分ほど休憩した後、リスボン市内の観光に出かけることにした。