ポルトガル旅行記(ファティマ / 聖教会)

蝋人形館を出て、バジリカと三位一体教会がある広場のほうへ歩く。その途中にあったファティマショッピングセンターは平衡感覚がおかしくなりそうな建物になっていた。

やがて広場が見えてきた。毎年5月13日と10月13日には、ここでファティマ大祭が行われ10万人近いの群集で埋め尽くされるという。この日(5月3日)はその直前だが、広場は閑散としていた。大勢のキリスト教徒が集まるのは大祭付近のほんの数日のことらしい。

それにしても、この広場が人で埋め尽くされている光景を想像すると、かなりの迫力だと思う。

まずは三位一体教会に入ってみた。2007年に建てられた新しい教会だそうで、外見を見ると教会という感じがしない。

教会内部の様子。あまりにも整然としすぎていて、教会というより教室や会議室という雰囲気。テレビのニュースでよく見る、大学入試センター試験が行われる会場のような感じ。

こちらが祭壇のアップ。後ろが金屏風のように見える。顰蹙を覚悟で言えば、かなりバブリー。

椅子に座って少し休憩した後、教会を出て広場へ。しかしまあ、よくこんな広い空間を作ったものだと思う。広場を縦断してバジリカへ向かう。高さ65メートルの塔が見事。

その途中、広場の脇にこういう場所がある。知らなかったらここが何なのか分からないが、実はこの場所は「出現の礼拝堂」で、奥に見える白いチャペルが聖母マリアが最初に現れた場所になる。先ほどの蝋人形館で森の中に聖母マリアが現れているジオラマが作られていたが、それがまさにこの場所で、かつての森の中が今ではこれだけ開けていることになる。

さすがにキリスト教徒にとっては最も重要な場所らしく、司祭が礼拝を行っていた。

礼拝をしばらく眺めた後、バジリカの中に入る。予想通り内部の作りは見事なもので、先ほどの三位一体教会と比べても荘厳な感じ。

写真撮影は禁止されていないので、参拝者は自由に写真を撮っている。こちらも少し椅子に座って休憩した後、熱心なキリスト教徒に混じって写真を撮って回った。ちなみにバジリカとは教会内の2辺以上が列柱によって分けられた側廊になっている建築様式のこと。このバジリカも側面のアーチが見事。

祭壇の横に人だかりができている。ここがフランシスコとヤシンタの墓。いったんは共同墓地に埋葬されたそうだが、現在はバジリカ内に改葬されている。

他の参拝者の邪魔にならないようにバジリカ内を歩いた後、外に出ることにした。私はキリスト教徒ではないが、周囲が熱心に祈っているので、なんとなく感化されて敬虔な気持になる場所だった。

バジリカの前にはオベリスクのような塔の上にキリスト像が立っている。この根元からは泉が湧き出していて、この水は「聖なる水」と呼ばれているという。飲むこともできるそうだが、ここでは手を洗うだけにしておいた。

続いてバジリカの横にあるロウソクを燃やす場所へ。

大きさ別に各種のロウソクが並んでいる。せっかくなので0.5ユーロのロウソクを買ってみた。

ロウソクに火をつけ、燭台の上に置いてみたのだが、下から吹き上げる風の勢いが強すぎてすぐに火が消えてしまう。何度か火をつけ直してみたが、結局諦めた。他のロウソクも火が燃えることで短くなっていくというよりも下からの熱で溶けていくという感じ。

しかしグニャグニャのロウソクが絡み合っている光景も、なんだか異様。

この近くにはロウソク型の電球が並んでいる場所もあった。硬貨を投入するとどこかの電球が一定時間だけ点灯するというもので、たしかにこれは合理的だと思う。

というわけで0.5ユーロを投入してみたのだが、明かりが弱すぎていったいどれが点灯したのかまったく分からなかった。

こちらはロウでできた供え物。自分が気になっている体の部位を供えるという習慣があるそうで、周囲の土産物店では様々な部位が売られていた。おそらく、これらは後にまとめて燃やされることになると思う。

とある部位のアップ。やはり女性の悩みは世界共通ですね。

近くには土産物店がたくさん並んでいた。キリスト教グッズの他、供え物のロウ細工もたくさんある。

どれもよくできていたので、内臓や胸を土産に買ってみようかとも考えたのだが、かなりかさばるようだし、壊れないように日本に持ち帰る自信がなかったので諦めた。しかし今思えば片乳などは買ってみてもよかったかもしれない。ネタ的にも面白いし。

この後、広場周辺とファティマ市街をしばらく散策。

散策していると「ファティマ博物館」という案内板が見つかった。先ほど入った蝋人形館とは別の博物館で、これはガイドブック(今回使用したのは地球の歩き方2012-2013年版)にも載っていない。興味があったので、矢印に従って歩いていくと小さな商店が集まっている一画に入口があった。

周囲が閑散としていたので少し躊躇したが、思い切って中に入る。チケットは3.5ユーロで、窓口の女性に「イングリッシュ?」と聞かれたので、とりあえずそうだと答えておいた。何が英語になるのか分からずに適当に答えていたのだが、これは館内に流れる音声ガイドの言語だった。

木製のドアを開けて中に入ると、最初の場面の明かりがつき、その場面について音声での説明が始まる。説明が終わると、次の場面の明かりがつき、再び説明が始まる。説明が終わらないと次の場面の明かりがつかないので、先へは進めない。また、説明が終わると前の場面の明かりも消えて真っ暗になっていくので、元に戻ることもできない。

つまり、各場面での音声での説明を最後までじっくりと聞かないと、博物館から出ることはできないことになる。他に来館者はおらず貸切状態だったため、通路の前後は完全に真っ暗で、ちょっと怖い博物館という気にもなった。

もっとも、ファティマ蝋人形館ほど精巧ではないにしても各ジオラマはよくできているし、雨の場面では実際にシャワーのように水が落ちてきたりして臨場感がある。内容は聖母マリアの出現譚についてなので、ファティマ蝋人形館と同じような感じだが、ここはここでかなり面白かった。ガイドブックにも載っていないので、おそらくは最近できた博物館だと思う。ファティマでは蝋人形館の他にこの博物館もぜひ見てみてほしい。この内容で3.5ユーロはお得。

バスターミナルに戻り、小さなカフェがあったのでコーヒーを飲みながら休憩。ここでポルトガル滞在中に一度は食べてみたいと思っていたタラのコロッケがあったので2つ注文してみた。

コロッケといっても衣は付いていないので、サクサク感はなく、どちらかというとしっとりとしている。味はどうかというと、期待していたほど美味しくはなかった(冷えていたというのもあるが)。しかし日本のコロッケのように衣を付けて揚げるほうがずっと美味しくなるような気がするのだが、まあ調理方法は国それぞれか。

午後3時、やってきたバスに乗りリスボンに戻った。このファティマという町は、ぜひ見たいと思っていた蝋人形館も期待通りの面白さだったし、もう一つの面白い博物館や教会の供え物など予想外の物件にも出会えたし、かなり楽しめる町だった。リスボンから日帰りで行くことができ、B級スポット的な楽しみ方もできる町なので、ポルトガル旅行の際は立ち寄ってみてほしい。