ポルトガル旅行記(リスボン~サグレス)

ポルトガル滞在6日目。これまではリスボンを基点にして近郊各地を回ったが、この日でリスボンを離れてポルトガル南部へ向かう。目的地はポルトガル南西端にあるサグレスという町で、ここへ行くためにポルトガルを旅行先として選んだので今回で一番の目的地になる。


朝7時、5泊したホテルをチェックアウト。宿泊料金の188ユーロを支払い、主人に挨拶してから外に出た。今回宿泊した Estrela dos Santos ホテルは、部屋も快適だし交通の便もいいのでリスボンに滞在する際はお勧め。

前々日と同様、地下鉄を乗り継いでオリエンテ駅へ。今回乗るリスボン~ファロ間の路線はポルトガル国鉄の大動脈なので、こういう格好いい高速列車が走っている。アルファ・ペンドゥラール(ALFA PENDULAR)という全席指定の特急列車で、列車内は快適そのもの。

8時半、オリエンテ駅を出発。途中までは前々日に乗ったエヴォラ行きと同じ路線を通るので、テージョ川に架かる4月25日橋を再び渡った。ただし今回はもうリスボンへ戻ってくることはない。

きれいな田園風景を眺めながら列車に乗っていると、本当に楽しい。車内には現在の速度も表示されていて、最高時には約220キロになっていた。高架ではなく地上の線路を走っているため実感しにくいが、日本の新幹線並みの高速鉄道に乗っていることになる。

列車内のカフェ(上の写真で通路の奥に写っている)でコーヒーを飲みながら外を眺めてみたり(頭の中に流れる BGM は、ありきたりだが「世界の車窓から」)、本当に快適だった。このアルファ・ペンドゥラールはリスボン~ファロの他にリスボン~ポルトの路線でも運行しているということなので、ポルトガル旅行中に一度は乗ってみてほしい。

リスボンから約2時間半、10時50分にラゴスへの乗換駅になるトゥネス駅に到着した。

ここでラゴス行きの列車が来るのを待つことになる。時刻表がないのでどのくらい待つのかがわからないが、天気もいいし、周囲の雰囲気がのどかなので特に苦にならない。約15分待ったところでラゴス行きの普通列車がやってきた。

大動脈のリスボン~ファロとは違ってラゴスまでは非電化の単線区間になり、ローカルなディーゼル列車が走っている。先ほどの特急列車とはかなりの差があるが、これはこれで乗っていて楽しい。

トゥネスから約50分で、終点のラゴス駅に到着した。

翌日はここからファロへ移動する必要があるため、駅構内の時刻表でファロ行きの列車の時刻を調べてから外に出た。

駅を出るとマリーナがあり、たくさんのヨットが停泊している。橋を渡ったところがラゴスのメインストリートで、ここにバスターミナルがあることは調べていた。

バスターミナルでサグレス行きのバスの時刻を調べると、平日と比べて土曜日はかなり便数が少なくなっている。さらに、翌日(日曜日)はさらに便数が減り、サグレスからの帰りは朝10時25分の便しか選択肢がないことがわかった。

次のサグレス行きは20分後になっている。便数が少ないにもかかわらず、それほど待つ必要がなかったのは幸運だった。サグレスまでのバス料金は3.8ユーロ。

定刻の12時40分、ラゴスのバスターミナルを出発。若い日の沢木耕太郎は、デリーから路線バスを乗り継いでサグレスまでやってきて、ここで旅を終わりにすることを決意している。深夜特急の終点として、サグレスは旅行好きには有名な町だと思う。

沢木耕太郎の 深夜特急 については、初めて読んだのは2006年頃で、その時はすでに約20ヶ国を旅行していた。したがって、この本に影響されて海外旅行を始めたわけではない。

もちろん、この名著については知っていたのだが、それまでなぜか読む機会がなかった。たまたまテレビで見た「劇的紀行・深夜特急」がきっかけになって読んでみることにしたのだが、これが大変に面白かった。多くの人が影響されてユーラシア横断の旅に出たのも十分に理解できる。

できれば海外一人旅を始める前に読んでおきたかったという気持ちもあるが、一方である程度の旅行経験があるからこそわかる面白さもあると思う。特に好きなのが有名な以下の一節。

「人のためにもならず、学問の進歩に役立つわけでもなく、真実をきわめることもなく、記録を作るためのものでもなく、血湧き肉躍る冒険大活劇でもなく、まるで何の意味もなく、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴でなくてはしそうにないことを、やりたかったのだ」

未読の人は、ぜひ一度読んでみて欲しい。本当に面白いのだから。

バスの車内はこんな感じ。沢木耕太郎が乗った頃はこんなきれいなバスではなかったと思うが、それでも「深夜特急と同じ路線に乗っている」と考えるのは感慨深いもの。

そういう感慨は別にしても、小さな集落をあちこち経由しながら走るので、バス路線としても魅力は高いと思う。周囲の景色は本当にきれいだし、車窓風景を眺めていると楽しい。

快適な移動を終え、ラゴスから約1時間でサグレスに到着した。バスの終点は漁港なので、その前に町の中心にあるレプブリカ広場で下車し、とりあえず泊まるところを探すことにした。

サグレスでの宿泊先については、ちょっと悩んでいることがあった。かつて沢木耕太郎が宿泊した Casa de Cha(茶の家)について調べてみると、現在はオーナーが変わって Casa de Sagres という名前になっているという。ここを探して泊まってみたいという気持ちもあるが、一方でプライベートルームにも興味がある。プライベートルームとは一般の民家の空いている部屋を旅行者に提供しているもので、今回の旅行ではプライベートルームに泊まる機会はサグレスしかないと思う。

というわけでバスを降りたときはどちらにするか決めていなかったが、バスを降りるとすぐにプライベートルームの客引きの女性が声をかけてきた。話を聞くと「料金は15ユーロ、場所は歩いて15分のところ」ということだったので、少し遠いと思って断った。同じバスでやってきた欧米人男性(一人旅)はここに泊まることにしたらしく、女性と一緒に歩いて行った。

その後、声をかけてきた別の女性に聞くと、料金は20ユーロ、場所は歩いて5分だという。ここで Casa de Sagres は諦め、女性についていくことにした。なお、この時バス停で見かけた客引きの女性はこの2人だけで、かなり閑散としていた。おそらく夏のシーズン中は多くの客引きが現れるのだろう。

この女性の自宅まで一緒に歩く。

ここが今回泊まることになった民家。なかなかいい感じの家だと思う。

建物の脇を通って中庭のようなところへ行くと、ここに部屋の入口があった。目の前に洗濯物が干してあるところなど、生活臭が感じられるところがプライベートルームらしい。

こちらが泊まることになった部屋。予想よりもずっときれいで、これで20ユーロはお得だと思う。奥にトイレとシャワーもあるし、初のプライベートルーム滞在は本当に快適だった。

冷蔵庫の上に「JUCILIA DE JESUS SILVA」と書かれた紙が貼られていて、これがおそらくは先ほどの女性の名前だと思う。

少し休んだあと、屋根の上の物干し台に上がって中庭を見下ろしてみた。部屋の鍵を渡されているので外出は自由。

泊まるところも決まったので、外出してサグレスを散策することにした。バス停に戻ると、周辺は公園になっていてエンリケ航海王子像が建っている。

近くに小さな観光案内所があり、ここでレンタサイクルができる店を聞いてみた。最南西端のサン・ヴィセンテ岬へは約6キロの距離があり、自転車がないときつい。

ところが、若い男性職員に聞いても自転車を借りられるような店はないという。事前にインターネットで調べた情報ではサグレスにはレンタサイクルが何軒もあるということだったので、ちょっと信じられない。もしかしたら私の英語が通じていないのかもしれないが、埒が明かないので諦めて観光案内所を出た。

自分でレンタサイクルを探すことにして、公園の周囲を歩いていると、あの Casa de Sagres が見つかった。ここがかつての Casa de Cha で、沢木耕太郎が宿泊した建物になる。1階はレストランになっているが、2階は現在でも宿泊できるようになっていた。

沢木耕太郎は深夜にサグレスに到着し、翌日の朝、ここのテラスで「これで終わりにしよう」と思っている。その場所を実際に見ることができ、なんとも感慨深いものだった。

さらに周囲を歩いていると、店の前に自転車が3台ほど並んでいる雑貨屋のような店があった。中に入り、自転車が借りられるか聞いたところ、全く問題なく借りることができた。料金は1日15ユーロで、借りる際はパスポートを見せるだけで特に手続きも必要ない。

この後、自転車でサグレスの街中を走っていると同じように店の前に自転車が数台並んでいる雑貨屋を何軒も見かけた。いったいあの観光案内所の職員は何だったのかという気持ちになったが、意地悪をしているような感じはしなかったし、私の説明がうまく通じていなかったのかもしれない。

無事に自転車も借りられたので、まずは最初の目的地のサグレス要塞に向かった。

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