キルギス旅行記(上海~西安~ウルムチ~ビシュケク)

朝10時、福岡空港を出発。旅行の数日前までとにかく多忙で、直前になってのキャンセルという最悪の事態も覚悟したが、なんとか無事に出発できることになった。

この日は上海~西安~ウルムチと中国を横断していくことになる。乗継ぎが多いが、エコノミーに長時間座っているのは疲れるので、それぞれのフライト時間は短くなるのは楽。福岡からだと上海は東京より近く、1時間半で到着した。

上海での待ち時間は4時間半。当初は空港内で待つつもりだったが、ターミナル内の “MAGLEV” という表示を見て気が変わり、せっかくなのでリニアモータートレインに乗って市街まで往復してみることにした。料金はさすがに高く、往復で80元。

改札では手荷物のX線検査もある。「そこまでやるか?」という気もするが、まあセキュリティ対策として必要なのだろう。ホームへ移動すると、すでに列車は入線していた。

リニアモータートレインに乗るのは今回が初めて。中国が誇る高速鉄道のはずなので、乗る前はさぞや内装にも凝っているのだろうと思っていた。ところが、乗ってみて座席の作りがずいぶんとちゃちなのにびっくり。リクライニングもできない。

中国人はメンツにこだわる人たちと思っていたが、なんでこんな簡素な作りにしたんだろう。

最高速度は 300km/h で、車内には速度も表示される。

日本のリニアと違って浮上する高さが低いため、わりと振動が大きいという話を聞いていたが、確かにそこそこに振動はある。乗り心地という点ではいまいちかもしれない。

10分ほどで、あっという間に終点に到着した。市街中心部へはここから地下鉄に乗り継ぐ必要があるが、今回はそこまでの時間はない。周辺を少し歩くだけにしたものの、いくつか店があるだけなので時間のつぶしようがない。ファミリーマートでパンとコーヒーを買い、店の中で食べてから空港へ戻ることにした。中国のコンビニは店の中にカウンターと椅子があり、買ったものを食べてもいいところが面白い。お湯も準備されているので、カップ麺を作って食べている人も多かった。

下の写真は駅付近の風景。

ホームで待っているとリニアモータートレインが入ってきた。さすがに外国人旅行者はさかんに写真を撮っている。

来た時と同様に約10分で空港へ戻った。降りる際、最後尾へ行ってみると運転席が見えたが、こちらもずいぶんと簡素なもの。しかも物置のように雑然としている。運転席の横にパイプ椅子が置いてあるというのも、かなりおかしな光景だと思う。

料金は高かったが、リニア初体験としてはなかなか興味深かった。上海で乗継ぎ時間がある場合は、市街まで往復しても面白いと思う。おそらく、ほとんどの人は意外と簡素な内装に驚くはず。


午後3時に上海を出発し、西安へ移動(フライト時間は2時間半)。西安はシルクロードの入口として日本人旅行者にも人気の町で、いつかしっかりと観光してみたいとは思っているが、今回は通過するだけ。せっかくなので、いったん空港の外に出て周辺の写真を撮ってみた。無駄にだだっ広いところが中国らしい。

福岡空港では西安までの搭乗手続きしかできなかったので、ここでウルムチへのチェックインを行った。空港内で夕食にした後、ゲートへ移動して搭乗が始まるのを待つ。そろそろ搭乗が始まるかと思った頃、急に表示が “Chech-in Deadlink” に変わり、多くの乗客が係員に詰め寄りだした。みんな中国語でまくし立てているので、何が起きたのか分からないのだが、どうも深刻そうな感じがする。「もしかして、フライトキャンセルか?」と、ものすごく不安に思ってきたころ、唐突に搭乗が始まった。いったい何があったのかよく分からなかったが、ともかくも機内に入ることができてほっとした。最悪の場合、ここからウルムチへ陸路で移動してウルムチから日本へ戻るような旅行に変更することも考えたので、とりあえず一安心。

しかしながら、全員の搭乗が終わっても今度は飛行機が動き出さない。どうやら、先ほどの騒ぎは飛行機の整備に時間がかかるという知らせだったらしい。いつ出発するか分からないまま機内に待機することになったが、ウルムチでの乗継ぎが翌日の朝なので、まだ焦ることはない。乗継ぎ時間が短かったら大変だが(何しろ、ウルムチ~ビシュケクは別の航空会社なので、待ってはくれない)、今回は余裕があった。

結局、30分遅れで飛行機が動き出し、ウルムチへ向けて出発した。フライト時間は3時間半で、定刻より30分遅れの深夜2時10分、ウルムチの地窩堡国際空港に到着した。この時の着陸がいつ着地したのかわからないほどスムーズで、まったく衝撃を感じなかったのが驚きだった。おそらく、この時の着陸は機長にとっても一世一代の芸当ではなかったかと思う。


ウルムチではビシュケク行きのチェックインが始まるのが朝6時過ぎなので、ホテルには泊まらず空港で夜明かしする予定にしていた。旅行前にインターネットで調べたところ、この空港は「深夜になると閉まるので、ターミナルの外に追い出される」という情報と「24時間オープンなので、夜明かしできる」という情報が見事に錯綜していた。ネット上の情報を分析すると「国際線ターミナルは24時間オープン」「国内線ターミナルは深夜に閉まる」ということのような感じがしたが、どうもはっきりしない。いくら調べても埒が明かないので、追い出されたらその時はその時ということで、実際はどうなのか自分で確かめることにした。

到着したのは、少し薄暗い感じのターミナル2。外に出ようとすると「乗継ぎ客のための待合室」という表示があったので、行ってみたが閉まっていた。いったん外に出て、歩いて5分くらいのところにあるターミナル3(国際線ターミナル)へ移動すると、こちらは最近完成したらしいきれいな建物になっていた。

ターミナルの1階にある出入り口の前に着いたが、到着便の乗客らしい人が次々と出てくるだけで、入ろうとする人はいない。警備員のおじさんに聞いたところ、何を言っても中国語が返ってくるだけなのでよく分からないのだが、どうやらここからは入れないらしい。どうも「深夜に追い出される」という情報が正しかったような気がしてきた。

まあ、そうなったらターミナルの外で夜明かしするつもりだったので、その準備をしようとしたらタクシーの運転手らしいおじさんが声を掛けてきた。最初は「ホテル?」と聞かれたが、こちらがEチケットを見せると(英語はまったく通じなかったが)早朝まで待つつもりということは通じたようだった。

この人が「ついてこい」という感じで歩きだしたので、ついていくと別の入口に案内された。この入口には荷物のX線検査装置が置かれていて、ここに荷物を通してターミナル内に入ることができた。要は、先ほどの警備員のおじさんは「ここは出口専用だから別のところから入れ」と言っていたということが、ここへ来てやっと理解できた。

この運転手のおじさんについて2階に上がると、広い出発ロビーとなっていた。この時間でもいくつかのカウンターでチェックインが行われていたので、ここは24時間オープンということが分かった。

おじさんは「あの辺に椅子が並んでいるから」ということをジェスチャーで伝えてから1階に下りていった。チップ等を要求されることはまったくなかったので、純粋に親切心から教えてくれたらしい。この運転手のおじさんがいなかったら本当にターミナルの外で夜明かしをすることになったかもしれないので、この人には心から感謝している。

下の写真が、出発ロビーの様子と夜明かしすることになった椅子エリア。

本当は空港泊というきついことはやりたくなかったのだが、ここは空調がいい具合で暑くも寒くもなかったので、それほど疲れなかったのは幸運だった(2008年の香港国際空港での夜明かしでは、とにかく寒くて帰国後に風邪をひいたので)。4人分の座席を使って横になり、深夜3時に仮眠。


朝6時に起き、中国南方航空のカウンターでビシュケク行きのチェックインを行った。その後、空港内のトイレで見たのがこの表示。これはウルムチだけでなく上海や西安でも見たので、中国各地でこういう運動をやっているようだった。

朝8時10分、ウルムチを出発。ビシュケクまでのフライト時間は2時間だが、中国とキルギスの時差も2時間なので、同じ時間に到着することになる。

中国とキルギスの国境地帯には有名な天山山脈があり、飛行機からは雪に覆われた山並みがずっと眺められる。途中、眼下に大きな湖が見え、まさかイシククル湖を上空から見ることができるとは思っていなかったのでなんだか得した気分になった。

イシククル湖の上空までは快晴だったが、湖を過ぎると急に地表が厚い雲に覆われるようになった。この感じだと、どうも雲の下はかなりの雨になっているような感じがして、少し不安になる。もっとも、キルギスでは4~5月が雨の多い季節というのは事前に調べていたので予想外というわけではないのだが、しかし雨がひどいようだと移動にも支障が出てくるので、ちょっと心配。

朝8時10分、ビシュケクのマナス国際空港に到着した。天候は小雨で、予想していたほど雨がひどくないのは幸運だった。

キルギスは中央アジア5ヶ国で唯一日本人のビザが免除されている国で、入国カードもないためきわめてスムーズに入国できた。私にとって中央アジアは2年前のウズベキスタン以来2ヶ国目になる。空港で100ドルを両替したところ、受け取った額は4,700ソムで、目安としては1ソムが約2円という感じ。

ターミナルではタクシーの運転手がいっせいに声を掛けてきたが(一番安い額を言ってきた人で、市街まで200ソム)、ここはマルシュルートカで市街へ向かうことにする。外に出ると380番という番号を掲示したミニバンが停まっていたので、運転手に確認すると市街のオシュバザールまで行くということだった。マルシュルートカは満員になったら出発するというシステムだが、すでに多くの乗客が乗っていて、私が乗り込むとすぐに出発した。下の写真がマルシュルートカ車内。

空港から市街までは意外と距離があり、約30分で終点のオシュバザール近くに到着した。なお、マルシュルートカの運賃は40ソム。

オシュバザールはビシュケクの定番観光地だが、ここはキルギス滞在最終日に見ることにしていたので、まずは市街中心部のツム百貨店へ向かう。その前に付近を少し歩いたところ、予想以上に緑が多いことに感心した。中央アジアというと砂漠地帯を想像する人も多いと思うが、キルギスは主に山岳地帯に位置する国なので水は豊富なのだろう。

ここで135番のマルシュルートカに乗り換え、ツム百貨店前で下車(運賃は10ソム)。このあたりが市街中心部で、多くの市民が歩いていた。

まずは泊まるところを決めないといけないが、初日はあらかじめ考えているところがあった。ここから歩いて20分ほどのところにある「桜ゲストハウス」で、名前から分かるとおり日本人経営の安宿になる。ビシュケクの名物ゲストハウスとして日本人だけでなく欧米人バックパッカーの間でも有名だそうで、どんなところなのか実際に見てみたいと考えていた。

ゲストハウスは細い路地の奥にあり、ちょっと分かりにくかったが何とかたどり着いた。赤い戸を開けて中に入る。

中に入るとテーブルで欧米人の女性旅行者たちが談笑していた。オーナーは家の中ということなので、呼び鈴を押して出てきてもらい、泊まれるかどうか聞くと部屋は空いているということだった。シングルルームの宿泊料金は600ソムで、ドミトリーならもっと安いとは思うが、ここはシングルにしておいた。

オーナーの疋田さんは、旅行前にイメージしていた通りの飄々とした感じの方だった。下の写真が泊まることになった部屋で、シングルと聞いていたが実際はツインだった。なお、トイレとシャワーは共同。

1時間ほど休憩し、11時半に外出することにした。