キルギス旅行記(ビシュケク~カラコル)

キルギス滞在2日目。首都ビシュケクをいったん離れ、イシククル湖の近くにあるカラコルへ移動することになる。

カラコルはトレッキングの拠点になる町で、翌日はアルティン・アラシャンという渓谷へ1泊2日のトレッキングに出ることにしていた。このアルティン・アラシャンが今回のキルギス旅行の主目的地になる。


朝7時半に起床。天候は、雲は厚いが雨は降っていない。オーナーの疋田さんのところへ行って宿泊料金を払い「カラコルへ向かいます」と伝えてから別れた。出発前に日本人旅行者と出会ったので「こんなに雨が降るとは思いませんでした」「これからカラコルへ向かいますが、天候は大丈夫でしょうかねえ」などと少し立ち話してからゲストハウスを後にしたが、結果的にこの人がキルギスで出会った唯一の日本人旅行者ということになった。

ゲストハウス前の路地を抜けて大通りに移動し、113番のマルシュルートカで西バスターミナルへ。前日にトクマクへ行ったときは東バスターミナルだったが、長距離路線は西バスターミナル発着となる。マルシュルートカの料金は10ソム。

さすがに長距離路線のターミナルだけあって、東ターミナルよりも建物は立派だった。しかし人はほとんど歩いていない。

天候は回復し、少し晴れ間が見えるようになってきている。バスターミナルの横にあるミニバス乗り場へいくと、こちらは多くの乗客が歩いていた。ターミナル内が閑散としているのを不思議に思っていたが、通常のバスよりミニバスのほうが便が多く、人気があるということだったらしい。

カラコル行きのミニバスはすぐに見つかり、乗り込んで出発するのを待つ。次第に乗客が乗ってきて9時50分に出発した。カラコルまでの料金は300ソム。

ビシュケクの街中を抜けると、あとは道路の両側に広々とした草原が広がるようになる。いかにも中央アジアという感じがして、景色を見ているとなんだか楽しくなってくる。

カザフスタンの旧首都アルマティ(キルギスでは旧名のアルマアタのほうが一般的に使われているようだった)への分岐点を過ぎ、さらに東へ進む。遠くに見える天山山脈と、工場の煙をアップで撮ってみた。

ビシュケクから離れるにしたがって、緑の多い草原から次第に荒涼とした景色に変わってきた。羊の群れがいい感じ。

途中から道路の横を線路が併走するようになった。ビシュケクからイシククル湖畔のバルックチュという町までの路線で、1日に数往復だけ列車が走っているという。興味はあったが、速度が遅く時間がかかりすぎるということだったので、今回の旅行では乗ることは諦めた。いつか再びキルギスへ来ることがあれば、そのときは乗ってみたい。

このあとバルックチュまで列車とすれ違わないかと期待していたのだが、結局列車を見かけることは一度もなかった。

ビシュケクから約2時間、12時に道路沿いのドライブインのような場所で休憩があった。ここで、乗ってきたミニバスの写真を撮ってみた。

建物の中はレストランになっているようだが、そんなに長く停車するとも思えないので、ベンチに座ってビシュケクのバスターミナルで買っておいたパンを食べるだけにしておいた。

下の写真がドライブインから道路を眺めた風景。

休憩時間は20分で、再び出発。相変わらず荒涼とした景色が続くが、途中にキルギス国旗が山肌に描かれている場所があった。外国ではときどきこういう景色を見ることがある。

さらに、こういう場所を通過したので写真を撮ってみた。壁画と羊のオブジェとピラミッド型の建造物という、いかにもB級スポットという感じの場所だったが、当然ながらここでミニバスを降りるわけにもいかないので正体は分からない。この壁の向こうにどういう光景が広がっているのか、もし知っている人がいたら教えてほしい。

バルックチュの町を通り過ぎると、やがて前方に広大なイシククル湖が見えてきた。琵琶湖の9倍の面積を持ち、琵琶湖と同様に 古代湖 に分類される湖である。この湖を見ることも今回のキルギス旅行の目的のひとつなので、最初に湖が見えたときは感動した。

ここからカラコルへは、イシククル湖の北岸を通るルートと南岸を通るルートがある。距離はほとんど変わらないが、北岸にはチョルポン・アタという大きな町があることもあり、ほとんどの便は北岸ルートということは調べていた。そこで湖がよく見えるようにと思って右側の席に座っていたのだが、湖の前で大きく右折したことから、このミニバスはどうやら南回りらしいということがわかってきた。ビシュケクでは何も考えずにカラコル行きに乗ったのだが、偶然にも1日に3便しかない南岸ルートだったらしい。

というわけで車内からは湖の写真がうまく撮れなくなってしまったが、カラコルからの帰りは北岸ルートに乗るので、結果的にキルギス滞在中にイシククル湖を一周できることになったのは幸運という気もしてきた。おそらく湖の南側を通ったことのある旅行者は少ないと思うので、貴重な体験だったかもしれない。

南岸には小さな村が点在していて、集落が現れるたびに停車して乗客の乗り降りが行われる。下の写真はそういう集落のひとつで、ミニバスを降りた乗客が歩いていくところの写真を撮ってみた。

移動時間は長いが、天山山脈を背景にしたのどかな農村風景を眺めていると飽きない。カラコルの町中に入ると建物と交通量が多くなり、ビシュケクから約7時間、午後4時20分にカラコルの中心部に到着した。


カラコルには町の北側にバスターミナルがあるが、南岸ルートのミニバスはそこではなく町の中心部が降車場になっていた。おかげで、バスターミナルからマルシュルートカ等でさらに移動する必要がなかったのは助かった。

下の写真が、町の中心にあるデパートとその前の交差点。

まずは泊まるところを決めないといけない。当初は町の中心部にはホテルやゲストハウスがあるだろうと思っていたのだが、周辺を歩いてもそれらしい建物は見つからない。そこで、終点に着く少し前にミニバスから見えたホテルへ行ってみることにした。

ミニバスで通った道を歩いて10分ほど戻ると、その建物が見えてきた。キリル文字表記がほとんどのキルギスでは、「HOTEL」「CAFE」「SUPERMARKET」という英語表記を見ると、なんだかほっとする。

中に入るとフロントに年配の女性がいて、「ガスティニーツァ」(私が知っている数少ないロシア語で、ホテルという意味)と言うと、泊まりにきたということは伝わったようだった。

しかしながら、ここでは「明日はアルティン・アラシャンへ1泊2日のトレッキングに出かけるので、持って行く必要のない荷物をここで預かってほしい。2日後の夕方、カラコルへ戻ってくるので、その日はまた宿泊したい」ということを伝えないといけない。英語はまったく通じないようだったので、どうしようかと考えていたところ、この女性が「ちょっと待っていてくれ」という感じで外へ出て行った。少し待っていると、おそらくは娘さんだと思う二十歳くらいの若い女性が一緒にやってきて、この人がわりと流暢な英語を話す人だったので、こちらの意図を問題なく伝えることができた。さすがは英語表記のあるホテルだけのことはある。

荷物は問題なく預かってくれるということなので、ほっと一安心。娘さんに礼を言い、部屋に移動するとなかなか快適そうな感じだった。なお、ホテルの名前は「MADANUR」(マダヌール)で、宿泊料金は朝食付きで1泊800ソム。

浴室を見ると、トイレの横にこういうものがあった。陶器製の円柱のようなもので、触るとかなり熱い。内部がどういう仕組みになっているのかはわからないが、どうやら暖房器具らしい。おかげで浴室内は非常に暖かく、快適だった。ただし、トイレに座っていると足が当たって火傷しそうになるところが少し怖い。

窓から外を見ると老人が薪割りをしていた。先ほどのフロントの女性の父親かもしれない。なんだか牧歌的な風景。

少し休んだあと、散策に出かけることにした。


ホテルから町中へ向かう途中、ものすごい造形の建築物があったので写真を撮ってみた。

それにしても、こんな痛い入口を作ったオーナーの勇気には心から感服する。塀の中に、この龍(?)の体が続いていたら面白い。

カラコルは道路がやたらとだだっ広く、碁盤の目状になっているところが旧ソ連式という感じがする。このため、どの道路を見ても先のほうに山並みが広がっているのが見える。町中から見る景色としては、かなりきれいだと思う。

町中にあった土産物店。まさかこんなところで日本語を見るとは思わなかった。ただ、この日だけでなくアルティン・アラシャンから帰ってきたときも閉まっていたので、中に入れなかったのが残念。

散策の途中、インターネット店があったので入ってみた。PCが5台ほどしかない小さな店だが、日本語が表示できたのでメールのチェックと日本のニュースの確認ができた。最近はどんな小さな町でもメールが読めたりするのだから、便利な時代になったと思う。喜んでいいのかどうかはわからないが。

その後、下の写真の店で夕食にした。キリル文字で「カフェ」と書かれているが、旧ソ連地域では「レストラン」は生バンドの演奏があったりする高級レストランを指し、「カフェ」が一般的なレストランになる。

注文したのは2年前のウズベキスタン旅行の時にも何度も食べたラグマン(この地域ではおなじみの中央アジア風うどん)とステーキ。このラグマンは、具だくさんでかなりうまい。ただ、ステーキはかなり硬く、食べるのに苦労した。メニューにいくつか並んでいた中から適当に注文したのだが、結果的には失敗だったと思う。例えるなら、焼きすぎて硬くなった表層に覆われたハンバーグという感じ。

料理は硬かったが、とりあえずは満腹になった。値段は上の2品にパンとチャイを加えて320ソム。

夕食後もしばらく散策を続け、やがて薄暗くなってきたので午後7時半にホテルに戻った。フロントとは別の入口になっているスーパーマーケットに入ってみたところ、レジにいたのは先ほどの英語が堪能な娘さんだった。普段はこちらにいて、英語が必要なときだけフロントに呼ばれているらしい。ここではペットボトルの水と粉末タイプのコーヒーを買い、部屋に戻った。

部屋に備え付けられている電気ポットで湯を沸かしてコーヒーを飲み、テレビをしばらく見た後、シャワーを浴びて夜11時に就寝。