台湾旅行記(高雄 / 佛陀紀念館)

佛光山を縦断し、その奥にある佛陀紀念館へやってきた。ここが旅行前にインターネットで見た豪華絢爛の仏教テーマパークになる。ここの風景を意識しすぎたせいで浄土洞窟を見逃すという失敗をやってしまったが、しかし佛陀紀念館も全部見るのに半日はかかる一大観光スポットになっていた。

佛光山を下り「佛陀紀念館」と書かれた大きな門をくぐって正面の建物へ。これは「禮敬大廰」という名前だそうで、確かに旅行前にインターネットで見たのはこの建物だった。両脇のライオンと象も、かなり巨大。

中に入ると、スターバックスやらセブンイレブンやら各種土産物店やら高級そうなレストランやら、もはやここはショッピングモール。仏教寺院がこんな場所を作っていいのかという疑問が浮かぶが、まあ部外者がとやかく言うこともない。先ほどまで歩いていた佛光山とは違い、人気の観光スポットらしく大勢の来訪者が歩いている。

では、スターバックスでマフィンとワッフルとカフェラテの昼食。およそ仏教テーマパークとは思えないメニューに、なんだか異世界に来たような不思議な気分。

土産物店などは帰りに見ることにして、禮敬大廰を抜けるとその先に広大な空間が広がっていた。

調べたところ、この佛陀紀念館は10年以上の年月をかけて2011年12月25日に完成したそうで、広さは4000坪、禮敬大廰から本館へ続く成佛大道という通路の長さは240メートル、本館にある大仏の高さは108メートルだという。また、成佛大道の両側には7層建ての寶塔が4塔ずつ並んでいる。

この時点ですでに規模の大きさに唖然としているが、ともかくも遠くに見える大仏のほうへ歩くことにした。といっても成佛大道を歩くわけではなく、その両側に通路がある。日陰なので歩きやすく、たくさん並んでいる壁画も楽しめる。

やがて本館に近づいてきた。しかし仏教寺院というよりも「これは神殿か?」という斬新な形をしている。後ろの大仏がなかったら本当にエジプトにありそうな神殿。(なんてことを思ったのだが、後で調べてみたらモデルはブッダガヤの大菩提寺だった)

それでは、まるでホテルのエントランスという感じの入口から本館の中に入る。横の坊さんのイラストによる注意書きでは、館内はフラッシュは禁止だが写真撮影は可になっている。館内で写真を撮れるのは嬉しい。(ただし展示室によっては写真撮影禁止の場所もある)

館内に一歩入った段階で、すでに溜息が出た。この旅行の2ヶ月前に見たマカオのグランド・リスボアとまでは言わないが、とんでもなくバブリーな感じ。しかも館内が全て無料で見られるのだから、この寺院の資金力は想像を超えている。

館内はいくつかの展示室にわかれていて、どの部屋にも様々な仏像や美術品が置かれている。どれも相当に金がかかっていそうで、早くも満腹状態。

そして、一番感動し、腰が抜けるほど驚いたのがこれ。一見すると台湾や東南アジアの仏教寺院でよく見かける弥勒仏だが、横から見ると顔の部分が平坦になっていることがわかると思う。この展示室に入ると、それを感知して驚愕の変化が起きた。

この弥勒仏の動画を撮ったのだが、これをサイトに載せることについてはかなり躊躇していた。写真撮影可なのだから動画もいいだろうと考えて撮っていたところ、実は動画は NG だったらしい。このため動画を載せないことも考えたが、そうするとこの弥勒仏のすごさが伝わらない。それに YouTube を見てもいくつか弥勒仏の動画がアップされているので、やはり載せることにした。下の動画の最後に「ニイハオ~」という女性の声が入っているが、これは動画撮影を注意する女性スタッフの声。

ただし、いずれは削除するかもしれないので、驚愕の姿を早いうちに見てほしい。

それにしても「喋る弥勒仏」などというとんでもない姿を堂々と紹介できないのが残念。もし上の動画が消えていたら、Youtube で「佛陀紀念館、弥勒仏」で他の動画を探してみてほしい。

もっとも、顔の部分がスクリーンになっている仏像は、もしかしたら今後の流行になっていくかもしれない。そのときは、この弥勒仏は最初の例として記録に残ることになるはず。

別の展示室では、床下にタイムカプセルが埋められているそうで、その内容がガラスケースの中に並んでいた。将来こんなものが掘り出されるらしい。

館内には 3D を超えた「4D シアター」というものがある。上映作品は「佛陀の一生」と「貧女一燈」の2種類で、今回は時間の都合で貧女一燈だけを鑑賞してきた(上映時間は15分)。

中国語なのでもちろん完全には理解できないが、内容はおそらく「裕福な老女と貧しい孤児の少女がいて、いつも同じ寺院に参っていたが、寺院は老女を優先していた。ある日、いつものように老女が参ると激しい突風が起き、代わりに少女が参ると風が収まった。これで少女の純真さに周囲が気付き、老女の支援を受けることになった。そして、ある夜に生き別れていた親と再会を果たした」というもの(違っていたらすみません)。この話の救いは、裕福な老女が決して悪い人間ではないということ。というわけで後味の悪い話を予想していると肩透かしを食らう。

4D というのが何かと思って帰国後に調べたら「体感型」という意味らしく、たしかに上映中に館内に風が吹いたりしていた。それにしても笑えるのがパンフレットに載っている下の写真。袈裟を着た坊さんたちがみんな 3D 眼鏡をかけているのが、なんだか異様。

4D 映像としてはなかなかよくできているので、一見の価値はある。

こちらは佛光山を開いた初代住職の星雲大師(1927年生まれ)が運営していた幼稚園の風景(これも中国語は読めないので間違っていたらすみません)。なお初代住職といってもあくまで住職を退いただけで、この旅行当時も存命中。

なぜか飛行機の座席が作られているコーナーもあった。初代住職は世界中を飛び回っていたということを示しているのかもしれない(多分)。

各地で起きた災害の際に佛光山が支援してきたということを紹介するコーナー。もちろん日本の震災でも支援は行われているので、これについては感謝している。

そして、こちらが初代住職の星雲大師。本人の写真といっても通用するほどリアルだが、もちろんこれは蝋人形。このリアルさはポルトガルのファティマ蝋人形館で見たヨハネ・パウロ2世に匹敵する。

館内には、他にもタイから贈られたという金仏座像が安置され部屋中が金色の「金佛殿」、千手千眼観音菩薩像がホログラムの明鏡にぐるりと囲まれた「普陀洛伽山観音像」などがあるのだが、これらは写真撮影禁止。見事な風景だったので、見たい人は実際に訪れてほしい。もう1ヶ所、本館の目玉ともいえる「玉佛殿」については後で触れることにする。

本館の屋上に出ると高さ108メートルの佛光大仏が見える。なかなかの迫力だが、しかし屋上は日差しが強くて暑い。

とりあえず本館の屋上を一周。四隅に「四聖塔」というものがあって、観音像や普賢菩薩が安置してある。これらは一通り見てきた。

下の写真は本館屋上から成佛大道の眺め。

あまりにも暑いので館内に戻った。館内ではもう1ヶ所「玉佛殿」を見ていないが、ここは自由に入ることはできず1時間おき(だったと思う)に行われる参拝に参加しないといけない。カウンターで「I can’t speak Chinese. But can I join ?」と聞いたところ、問題ないということだったので午後3時からの参拝に参加してみた。

指定された時間に集合場所へ行き、参加者しか入ってはいけない通路を通って未知のエリアへ。こういうのは本当にわくわくする。途中で靴を脱いで玉佛殿に入ると、ここはまさに別世界だった。

写真撮影禁止なので実際に見たい人は直接訪れてもらうしかないが、ミャンマー産の白玉に彫ったという大きな涅槃像(まさに純白)やヒスイ製の壁画(西方極楽世界図、東方瑠璃世界図)が並び、なんとも荘厳な雰囲気。部屋の広さは数百人が入れるほどで、床の上に等間隔に座る場所が作られている。ここに座って待っていると、佛光山の僧侶の方が入ってきて説法が行われる(ただし中国語なのでもちろん内容はわからない)。

説法が終わると、あらかじめ参加者に配られていたパンフレットを開いて、そこに書かれていた文章を僧侶の方が読んでいく。中国語だが、台湾の漢字はわかりやすいので(中国本土の漢字は簡略化されすぎていて日本人にはわかりにくい)、なんとかついていくことができる。この読み合わせで中国語では仏陀を「フォトー」のように発音するということを初めて知った。頻繁に「フォトー」という言葉が出てくるので、漢字を見ずに聞いていたら写真の話でもしているのかと思ったかもしれない。

40分ほどで参拝が終わり、参加者たちが立ち上がって出口へ向かい始めた。言葉はわからなかったが、荘厳な雰囲気を味わえたし、貴重な体験だったと思う。玉佛殿の部屋自体も見る価値は十分あるので、ぜひこの参拝に参加してみてほしい。

興味深い体験だった玉佛殿を出て、館内を歩いていると2階から歓声が聞こえてきた。急いで行ってみると、何かの式典が行われているようだった。このときは気付かなかったが、写真を見てみると左側の袈裟を着ている僧侶の方はもしかして星雲大師か?

本館内には土産物店が何軒かある。ここでは「悉達多太子」という人形を買ってみた。今は自宅の本棚に飾っている。

この後も本館内をしばらく歩き、これで戻ることにした。写真をわりとたくさん載せてみたが、これでも本館内を半分も紹介できていない。他にもすごい風景はたくさんあるので、興味のある人はぜひ直接訪れてみてほしい。

本館から禮敬大廰へは、成佛大道の両側にある寶塔に入りながら歩いてみた。佛光山に関する書籍が置いてある書店や佛光山の紹介映像が流れているミニシアターなどがあるが、面白かったのはレゴでできている佛光大仏と寶塔。

禮敬大廰に戻り、ここでも土産物店を見てみた。面白い工芸品がたくさんあって迷ったが、ここはかさばらない土産物ということで柿の形をしたガラス製の文鎮を買ってみた。

今回の台湾旅行の主目的地だった佛光山だが、かなり歩き疲れたものの、予想以上に楽しめるスポットだった。うっかり浄土洞窟を見逃したのは残念だが、佛陀紀念館の規模と豪華絢爛さは本当にすごい。大人気の仏教テーマパークなのでB級スポット好きには物足りないかもしれないが、しかし訪れる価値は十分ある。私も次回(多分、数年以内)の高雄旅行の際はぜひとも再訪したい。

禮敬大廰の前のバス停で高雄行きのバスの時刻を調べ、到着までバス停前の店でおでんを食べながら休憩。やがてやってきたバスに乗り、高雄へ戻った。