台湾旅行記(麻豆代天府 / 前編)

台湾滞在3日目。この日で高雄を離れ台南へ移動することになる。

今回初めて滞在した高雄だが、驚くほど豪華な寺院もあるし、涙が出るほど感動する夜市もあるし、いい町だった。今回は行けなかった鳳山寺も見ないといけないし、おそらく数年以内に再訪することになると思う。


朝8時に起床。8時半にチェックアウトし、歩いて高雄駅へ。ここから台南までは列車で移動することにしていた。台湾の漢字はわかりやすいので、切符は自動販売機で簡単に買うことができる。台南までの乗車券は68元。

改札を抜けてホームに入り、待っていると9時9分発の普通列車がやってきた。

いつか、こういう列車を乗り継いで台湾を一周したいものだが、はたしてその機会はあるだろうか。

台南までの所要時間は1時間10分ほど。途中「中洲」なんていう駅名に驚いたりしながら車窓風景を楽しんだ。中洲といっても風俗街があるわけではない。

10時20分に台南駅に到着した。台南へ来たのは2005年の台湾旅行のとき以来、9年ぶり。このときの目的は台南ではなく近郊の麻豆代天府だったので、台南はあまり見ていない。今回も目的は麻豆代天府だが、夜は台南の夜市へ行ってみることにしている。

まずは泊まるところを決めておかないといけない。事前に駅近くのお勧め安宿として情報を得ていた「上賓旅館」へ行ったところ、問題なく泊まれるということだった。ただし部屋が使えるのは午後からなので、フロントに荷物を預けておくことにした。宿泊料金は700元。

これで身軽になり、歩いて台南駅へ。何しろ9年ぶりなので駅舎を見るとなんだか懐かしい。

目的地は麻豆代天府なので、バスで麻豆へ移動しないといけない。2005年の旅行のときは台南駅近くに興南バス乗り場があり、そこから麻豆行きのバスが出ていた。そこで今回もその場所へ行ってみたのだが、周辺をいくら探してもバス乗り場が見つからない。

今はバス乗り場が移転したのかもしれないと思い、台南駅へ戻って観光案内所に入ってみた。前回の旅行のときは日本語教育を受けたらしいおじいさんが丁寧な日本語で教えてくれたが、今回はそういう人はいなかった。日本語教育を受けたような人は、さすがにかなりの高齢になっているので今は静かに余生を送っているのだと思う。台湾旅行中にそういう人に出会う機会は年々減っているという。

今回は若いスタッフに麻豆への行き方を聞いたところ、やはり観光客で麻豆へ行く人はほとんどいないらしく、スタッフもパンフレットを見ながら調べていた。その結果、麻豆へ直接行くバスはないらしく、台南市バスで香里という町へ行き、そこで別のバスに乗り換える必要があるということだった。

ということは今は興南バスの麻豆路線は廃止になったのかもしれない。そう思いながら指定された駅前のバス乗り場へ行くと、台南市バスの時刻表に混じって興南バスの時刻表も貼ってあり、そこに麻豆行きの時刻も載っている。この状況がしばらく理解できなかったが、結局のところ興南バス乗り場がこちらへ移転していて、さらに観光案内所のスタッフは市バスのことしか把握していなかったらしい。

というわけで11時30分発のバスで無事に麻豆へ向かうことができた。なお、この路線は2005年の旅行のときは通常のバスだったが、今回はマイクロバス程度の小型バスになっていた。麻豆へ行く人は意外と少ないのかもしれない(もちろん、どのガイドブックにも載っていない町だし、ここへ行く旅行者はすべて麻豆代天府が目的だと思う)。麻豆までの運賃は122元。

途中、こういう店があったので写真を撮ってみた。「茶の魔手」という店名が面白い。(旅行後に調べたところ、茶の魔手とはドリンクスタンドのチェーン店ということだった)

台南から1時間ちょっとで麻豆の街中に到着したが、ここで予想外の事態になった。2005年の旅行のときは、麻豆の町外れに興南バスターミナルがあり、ここから歩いてすぐのところに麻豆代天府があった。このため、市街地図などの情報はまったくなかったものの、目的地の麻豆代天府には容易にたどり着くことができた。

このため今回も同じ場所に着くのだろうと思っていたのだが、街中の「一商前」というバス停で「ここが終点」と伝えられ、バスを降ろされてしまった。どうやら終点のバス停が移転したらしいが、しかし麻豆の市街地図などはまったく調べていなかったので、ここが麻豆のどの辺りかがまるでわからない。

仕方がないので、ここから代天府まではタクシーを使うことにしたものの、この町にはタクシーがほとんど走っていない。あまりにもタクシーを見かけないのでかなり不安に思ってきたころ、1台のタクシーが路地に入っていくのが見えた。すぐに追いかけると、どうやら昼食のために家に帰ってきたところだったらしく、運転手が車を下りようとしていた。この人が走ってきた私に気付き、何とかタクシーに乗ることができた。ほっと一安心。

目的地の代天府には5分ほどで到着した。なので歩けない距離ではないが、しかし麻豆の市街地図が頭に入っていないとたどり着くことは難しいかもしれない。これから麻豆代天府へ行ってみようと考えている人は、事前に一商前のバス停からのルートを調べておくほうがいいと思う。2005年当時と比べて行き方がちょっとややこしいスポットになっていた。

では9年ぶりに麻豆代天府へ入ることにする。

前回来たときは偶然にも祭りが行われていたので相当に賑わっていたが、今回は静かなもの。こういう麻豆代天府は初めて見るので、なんだか新鮮だった。

まずは入ってすぐのところにある観音堂へ。まるでイースターエッグを半分埋めたような建物。

大きな観音像の周りを金色に輝く円柱タワーが取り囲むという、なんとも豪華絢爛の風景。よく見ると円柱は小さな仏陀でびっしりと覆われていて、いったい全部で何体になるのか想像できないほど。呆れるほど手が込んでいて素晴らしい。

門の正面にある本堂は後で紹介することにして、ともかくも麻豆代天府の目玉といえる地獄風景を見ることにした。本堂の裏手にある巨大な龍は健在で、9年ぶりの再会に嬉しくなった。龍が吐く水は天堂から下りてくる階段になっている。

では十八地獄へ。入口に功徳箱が置いてあり40元と書かれていたが、ここは少し多めの50元を入れてきた。入口の上の鬼も前回から変わっていない。

しかし前回の旅行の時も感じたことだが、こういう姿はどこかで見たことがある。こんな風に「上半身だけを突き出した鬼」という格好がかすかに記憶に残っていて、なかなか思い出せずにいたが、最近になってようやく遠い記憶の中から浮かび上がってきた。これは 十面鬼ゴルゴス だった。

ここで、ちょっとした思い出話をひとつ。十面鬼の顔の中で、子供心にも不思議だったのがこの顔。

いったい、どうやって葉巻を咥えたのか?

それでは地獄の中に入る。

9年前にここの地獄風景を見て以来、タイの地獄寺など各地で様々な地獄風景を見てきたが、久しぶりに見た麻豆代天府の地獄風景はまったく色あせていなかった。電動アトラクションの動きは本当に見事というしかない。

特に特徴的なのが、どの場面もいきなり責め苦が始まるのではなく、最初に亡者の弁明が入ること。必死の弁明も結局は聞き入れられずに「面倒だからお前は地獄行き!」と宣告されて(もちろん中国語はわからないが、多分こんな感じ)責め苦が始まるところが面白い。責め苦もロードローラーで轢かれたりノコギリで切られたり石臼で挽かれたり蒸し器に入れられたりと、バラエティに富んでいる。

鬼と謝将軍(一見大吉の帽子と長い舌が特徴的)のアップ。

それから、地獄の中に「吸血鬼洞」という場所があり、こんなのがいた。9年前は見た記憶がないので、新しく作られたものらしい。笑い声を上げながらこっちへ近づいてくる姿は意外と不気味。

では地獄風景の動画を下に載せておく。人が近づくとそれを感知して地獄風景が動き出すという仕組みで、歩いていると本当に面白い。それに、これだけ動くアトラクションがあればメンテナンスも大変だと思うが、ほとんどがきっちりと動くように整備されているはすごいと思う。

地獄の最後にあるのが輪廻転生を示す場面。左奥から登場した亡者が、真ん中まで来ると役人のほうに向かってひざまずき、次の生まれ変わり先を宣告されて右側のドアから出て行く。上手く動画が撮れなかったのでここには載せていないが、この一連の人形の動作は実に見事という他ない。

かなり長くなったので、続きは次のページで。