台湾旅行記(麻豆代天府 / 後編)

地獄風景を見た後は、続いて天堂で天国の風景を見てみた。9年前にみた風景と特に変わってはいなかったが、しかし電動アトラクションは本当によくできていて、どれもメンテナンスがしっかりと行われているのは好感が持てる。


十八地獄と同様、入口に40元と書かれた功徳箱が置いてあり、ここにも少し多めの50元を入れてきた。天堂に入って最初にあるのがこちら。

主人が話している間は頭を下げてそちらを向き、話が終わると頭を上げて前を向くという一連の動作は本当に見事。これは機械好きの人も一度は見てほしい。

続いて宴会の風景がいくつも続く。この女性がなかなか美人だったので、アップで撮ってみた。

地獄風景と比べても明るいし、女性は美人が多いし、さすがに天国だと思う。住人の表情も穏やかだし、ここならずっと住んでいても楽しそう。

しかし前回の旅行の時も思ったが、天国ではいつもこんな風に宴会ばかりやっているのだろうか。飲んでいるのは酒ではなくお茶のようだが。(風紀が乱れるから天国では酒は禁止なのかもしれない)

ここで撮った動画を下に載せておく。これだけのアトラクションに故障がなく、9年前とまったく同じように動いているというのは本当にすごい。特に来訪者が多いというわけでもないのに、メンテナンスの手間を惜しんでいないところは素晴らしい。

ここまではずっと龍の体内を歩いてきたわけだが、頭のあたりで外に出られる場所があった。そこから寺院を見ると本堂の横にある7階建ての大きな建物が目立っている。これを見ても相当に資金力のある寺院ということがわかる。

屋内に戻り、階段を上がると「八仙過海」というレリーフがあった。そして、なぜかここに樹木希林がいた。

樹木希林を通り過ぎて少し歩くと天堂の出口に着いた。ここが龍の口で、ここから地上まで階段が続いている。

2人の天女に見送られながら天堂を後にすることにした。書かれている文字は「萬事如意」と「祝君快楽」。

龍が吐く水に沿って地上に下りる。眺めもいいし、ちょっと気分がいい。

こちらが龍の口から続く階段の全景。しかし見事な造形だと思う。

麻豆代天府には、ここまで歩いた十八地獄と天堂の他に、かつて水晶宮というスポットもあった。しかしながら、ここは9年前の旅行の時点でも閉鎖されていたため内部を見たことはない。今回はもしかしたら再開しているかもという淡い期待も持っていたのだが、やはり閉まっていた。かつて見たことのある人の情報によると小さな水族館風の展示があったそうだが、すでに水が濁っていて放置気味だったという。機械類のメンテナンスは得意だが、生き物のメンテナンスは止めてしまったということかもしれない。

おそらく、水晶宮は今後も見ることができないと思う。この中に入れないのが残念。

これで龍エリアをひと回りしたので、本堂の方へ行ってみることにした。本堂の裏手にも様々なオブジェがあって気が抜けない。

本堂の正面と本堂内の様子。前回の旅行の時は偶然にも奇祭が行われていたので本堂の周辺は人で溢れていたが、今回は静かなものだった。こういう麻豆代天府は、なんだか新鮮に感じる。

ちなみに前回の旅行の時に見た祭りだが、この年(2014年)は5月4日に行われたらしい。参考サイトはこちら。

この日が4月28日なので、実に惜しいところで見逃してしまったことになる。あの血まみれのシャーマンをまた見たいものだが、前回見た時が3月だったことを考えると、毎年同じ時期に行われているというわけでもないらしい。祭りの開催時期が事前にわかれば、それに合わせて旅行したいものだが、果たしてその機会はあるだろうか。

本堂内にもいくつか展示室がある。その中の「太歳殿」には、たくさんの神像が並んでいた。

ここに並んでいたのは「六十甲子六十太歳」像。

ということは、あの「甲子太歳神金辨」様もいらっしゃるはずなので、探してみたら端の方で発見。

目から手が!!!

やはり、この姿は強烈だ。しかし2008年に台湾の金剛宮で最初に対面して以来、台湾や香港やタイの寺院でときどき見かけるようになってきたので、最近はなんだか親近感を持つようになった。今後も寺院めぐりの際はできる限り甲子太歳神金辨様を探してみたい。

これで麻豆代天府を一通り見たので、本堂横の食堂でアイスクリームを買って休憩。土産物店もあったが、一般的な仏教グッズが並んでいて、麻豆代天府オリジナルグッズはなさそうだったので何も買わなかった。

この後、もう一度本堂や龍エリアを散策してから、これで台南へ戻ることにした。9年ぶりに見た麻豆代天府は、最初に見た時と同様、大変に感動した。金剛宮と違って台北から気軽に行けるスポットではないのが難点だが、十八地獄と天堂は台湾一の素晴らしさだと思う。行きにくいというのはつまり「行った人は希少価値がある」ということなので、地獄めぐりが好きな人はぜひ訪れてみて、周囲の人に自慢してほしい。


代天府からの帰りは、かつて路線バスの終点だった興南バスターミナルが無くなってしまったのかを確かめるためにそちらへ歩いてみることにした。その方向にはいくつか寺院もあるようなので、ついでに見てみることができる。

歩き始めてすぐに見えてくるのが、こちらの永浄寺。本堂の中にも大きな弥勒仏があったりして面白かった。

永浄寺を見たときは「ずいぶんごちゃごちゃと飾り立てた寺院だな」と思ったのだが、そこから少し歩いたところに永浄寺を上回る寺院があった。この「文衡殿」という寺院の飾り立てぶりは尋常ではない。

屋根の上にはすごい数の龍がいるし、全部の柱には龍が絡みついているし、日光東照宮の陽明門を上回るレベルだと思う。(もっとも、私はまだ陽明門は見たことがないのだが)

バスターミルへ歩いてみようと考えなかったら、これらの寺院は見ることがなかったので幸運だったと言える。麻豆代天府を見た後、もし時間があればこれらの寺院を見ることもお勧め。


2005年の旅行のとき、麻豆代天府の場所を尋ねたセブンイレブンは健在だった。せっかくなので立ち寄ってパンと缶コーヒーを買った後、少し歩くと「興南客運」と書かれたバスターミナルが見えてきた。記憶していた通りの建物で、特に廃墟化もしておらず、さらにバスが何台か停まっている。「なんだ、やっぱりここから乗れるのか」と思い、ベンチに座ってバスを待つことにした。台南から乗ったバスは、たまたまここまでは運行しない便だったのかもしれない。

ただし、前回は係員が座っていた切符売り場は閉まっている。10分ほど待っていると運転手がやってきてバスの出発準備を始めだしたが、このバスの行き先は台南にはなっていない。そこで、この人に「ここから台南へ行くバスはありますか?」と聞いたところ、全部中国語で返ってくるのでよくわからないが、どうやら「ここからはバスに乗れない」「台南へ行くのなら市街中心部のバス停から乗るように」と言っているようだった。ここでようやく、このターミナルは現在はバス乗り場としては使われておらず、単に車庫になっているらしいということがわかってきた。

ということは、また一商前のバス停まで戻らないといけない。どうしようかと考えていると、この運転手が見かねて「このバスに乗りなさい」と言ってくれた。紙に「鉄道 → 台南」と書いて見せてくれたので、このバスは鉄道駅まで行くらしい。バスの中でチケット(61元)を買うと「真理大学 → 隆田駅」になっていて、しばらく田園風景の中を走って真理大学に到着した。わりと規模の大きな大学で、ここで学生たちが大勢乗り込み、ここからは通常の路線バスとして隆田駅へ移動した。

本来は車庫から真理大学までは回送扱いなので客は乗れないものの、私が困っているのを見て運転手が特別に乗せてくれたらしい。親切な人に助けられてほっとしていたので、運転手に「謝謝!」と何度も礼を言ってバスを降りた。下の写真が国鉄隆田駅。

駅の中に入ると、何というか、かつての日本の鉄道駅そのままという感じ。最近はこういう味のある駅舎が減ってきたので、なんだか懐かしい。

自動販売機で台南までのチケット(38元)を買い、ホームに移動した。この駅はなぜかピンク色が多用されている。

17時54分発の普通列車で台南へ移動。台南までの所要時間は30分ほど。

夕方6時半、台南駅に戻った。麻豆代天府を見るために麻豆へ行くと丸1日かかってしまうが、それだけの価値はある。最近はインターネット上でも台湾の珍寺訪問記(金剛宮など)を見るようになってきたが、さすがに麻豆代天府の訪問記はまだ少ないと思う(ここでちょっと自慢させてもらうと、金剛宮への行き方を詳しく記述したのは、おそらく私のサイトが最初)。台南に滞在するときは1日を麻豆行きに費やすのもいいものなので、興味があれば台湾一の地獄風景と天国風景を見てほしい。