国内旅行編(栃木 / 簀子橋堆積場)

この日の目的地は足尾銅山観光だったわけだが、インターネットで調べているうちにちょっと面白そうな場所が見つかった。

訪れるにはちょっとリスクがありそうな場所ではあるものの、かなり珍しい風景を眺めることができそうなので、今回行ってみることにしていた。


足尾銅山観光を出て、遠くの山を眺めると砂防ダムのような堰堤とつづら折れの道路が見える。行ってみたいのは、あの場所。

しかしながら、あの道路は一般人は立入り禁止。なので訪問は不可能なのだが、ある場所へ行けばあの堰堤の向こう側を眺めることができる。

森高千里の曲で有名な渡良瀬川に沿って、風光明媚な景色の中を歩く。川のせせらぎの音が気持ちいい。

わたらせ渓谷鉄道の線路を渡り、山の中への入口を探す。

インターネットで調べていた入口は、探していると容易に見つかった。

ここからは山道を歩くことになる。この日は午前中から小雨が降っていて、天候が悪ければ中止するつもりだったのだが、午後から晴れてきたので助かった。

ただ、登ってみて足場が悪そうであれば、そのときは引き返すことにしていた。注意しながら歩いていくと、こういう祠があった。この祠の存在も事前に調べていたので、ここで道が間違っていないことが確認できた。

祠の中に安置されていたのは牛に乗った人物の石像。首がない姿にドキッとするが、ともかくも道中の安全を祈願してから先へ進む。

幸い、足場もそれほど悪くなっておらず、スムーズに登っていくことができた。途中、周囲を見晴らすことのできる場所があり、午前中に訪れていた足尾銅山観光方面を眺めてみた。

しかしながら、スムーズだったのはこの辺りまで。といっても足場が悪くなったというわけではなく、山道がなくなってしまった。正面がすべて灌木に遮られていて入れそうな隙間がなく、獣道さえ見つからない。

ここで引き返すことも考えたが、目的地まで遠くなさそうだし、行く手を阻む灌木の中に思い切って突入してみることにした。気持ちとしては、こんな感じ。

出典:メイドインアビス コミックス12巻より(竹書房)

マニアックなネタですみません。

ここからは道なき道を進んでいくという感じ。後になって考えると無謀なことをやったのかもしれないが、このときはとにかく夢中だった。おかげで途中の写真も撮っていない。

かなり登ってきたところで、樹木の間からつづら折れと堰堤が見えるようになった。いつの間にか、堰堤よりも高いところまで登ってきていたことがわかった。

あの堰堤の向こうに見える赤い池が、今回どうしても見たかった風景。

さらに登っていくと視界が開け、広大な景色が眺められるようになった。ここは、あの赤い池の横にある尾根の上。後で調べたところ「金龍山」という名前の山だった。

ここで撮った写真をパノラマ風につなげると、こんな感じ。

それにしても異様な感じの池だと思う。ネット上で「伝説の赤い池」などと呼ばれているのも納得。

あの赤い池の正体は「簀子橋(すのこばし)堆積場」。足尾銅山で発生する鉱滓を沈殿させるための「鉱滓ダム」という施設になっている。

鉱滓ダムについては Wikipedia あたりを参照してもらうとして、足尾銅山が閉山したのは1973年なので現在は精錬などは行われていない。この当時で約40年が経つというのになぜ沈殿させる必要があるのかというと、長さ1200キロにおよぶ坑道を埋め戻すわけにはいかず、坑道から未だに鉱毒が染み出してきているからだという。

あのダムで鉱滓を沈殿させ、上澄みだけを流すことで環境を守っていることになる。やがてダムが鉱滓で一杯になると、ダムごと埋めてしまって別の場所に新たなダムを設けるそうで、過去の清算は本当に大変。

アップで見るとダムについての説明書きが設置されているようだが、観光施設ではないので立ち入るのはほぼ不可能。聞くところによると、議員などの有力者であっても許可を得るのは困難だという。

ここから尾根を下りていけばもっと近くで見られるのかもしれないが、そもそも足場が危険だし、不法侵入になるかもしれないようなことはやめるべき。ここから眺めるだけで満足しておきましょう。

ここから見ると、あの堰堤が決壊したら下流は大惨事になることがよくわかる。もちろん、そうならないように万全の対策が取られているはず。

赤い池の上流を見ると、わりと水は澄んでいるように思える。このダムが鉱滓で一杯になるまで、あと何十年かかるんだろう。

ちなみに、これらの風景が見渡せる場所から下を見るとこんな感じ。整備された登山道ではないので、落ちたら死ぬのは確実。ここを訪れる場合は、必ず自己責任で。

ここで撮った動画を下に載せておく。ダム以外にも、雄大な景色が楽しめるはず。

では、伝説の赤い池も眺められたことだし、そろそろ下山することにした。繰り返すが、この尾根を下りてダムに近づくようなことはやめましょう。捕まっても当サイトは責任を負いません。

再び、獣道もないような灌木の中を突っ切って下山開始。斜面を下りる際は滑らないように細心の注意を払う必要があり、かなり大変だった。おかげで写真を撮る余裕もなかったが、今思えば困難さを示すための写真を残しておけばよかったと後悔。

ようやく灌木エリアを通り抜け、林の中に出てきた時の風景がこちら。

ここからはわりとスムーズに下山。麓のほうまで下りてくると庚申塚の石碑が倒れていた。

無事に下山を終え、わたらせ渓谷鉄道の踏切まで戻ってきたときはほっとした。登山開始から下山終了までの時間はちょうど1時間ほど。

自分でも、今回はかなり貴重な体験だったと思う。伝説の赤い池まで道なき道を辿ってきた感想は、こんな感じ。

出典:メイドインアビス コミックス12巻より(竹書房)

再び、マニアックなネタですみません。

このページを見て興味を持った人は、トレッキングの準備をして登ってみてほしい(スニーカーだと厳しい)。なお、今回は7月だったため灌木が生い茂っていたのかもしれない。ここの訪問記はネット上でいくつか見つかるが、冬に登った人はわりとスムーズだったような記述がある。

なので、灌木に突進するのが嫌な人は冬場を選ぶのがおすすめ。ただし、あまりに真冬だと雪の問題が出てくるかもしれない。いずれにしても、あくまで自己責任で。


通洞駅へ戻り、間藤行きの列車を待つ。最初に来たのは反対方向行きなので見送り。

次にやってきたのは間藤行きだが、観光列車の「トロッコわっしー号」。乗車券の他にトロッコ整理券が必要なので乗車は見送り。

いつか、桐生から間藤まで乗り通す際には利用してみたい。渓谷の景色はきれいそう。

次にやってきた列車で間藤へ。ここからバスで日光へ移動した。こちらが東武日光駅。

ここから東武宇都宮駅へ移動し、この日は宇都宮市内で一泊。

(2014.7.20)