ブルガリア旅行記(ソフィア~サニービーチ)

朝5時に起床。この日でいったんソフィアを離れ、半日ほどかけて黒海沿岸のサニービーチという町へ移動することになる。前日はリラ修道院を見たし、残っている目的は黒海で泳ぐこととトップレスを見ることなので、次の滞在地が今回のブルガリア旅行の主目的地になる。

ブルガリアの黒海沿岸にはサニービーチとゴールデンサンズという2大ビーチリゾートがあり、どちらに滞在するかかなり迷ったのだが、今回は世界遺産のネセバルに近いサニービーチを選んだ。しかしネット上のブルガリア旅行記を見てもサニービーチへ来る人はかなり少ないようだし、実際に日本人はまったく見なかった。ここの滞在記は意外と希少かもしれない。


2泊したホテルをチェックアウトし、タクシーを呼んでもらってソフィア駅まで移動した。まだ真っ暗なので、こういうときはホテルでタクシーを呼んでもらうほうが安心。タクシー料金は6レヴァ。

早朝なので、重厚な感じの駅構内にはあまり人はいない。

今回乗るのは6時半発のブルガス行き。下の写真の8611番の列車になる。

改札口などはないので、直接列車に乗り込むことができる。3番乗り場へ行くと、すでに列車は入線していた。まずは自分が乗る車両を探さないといけない。

列車内を覗き込みながら歩くと、どの車両もコンパートメント形式になっている。定員6人が1等、定員8人が2等ということは調べていたので、とりあえず空いている6人部屋に座っておくことにした。念のため他の部屋の乗客に「この列車はブルガス行き?」ということを確認し、出発まで待機。

ブルガリア国鉄については、旅行前に得た情報では「出発時刻は」かなり正確ということだった。その情報通り、ぴったり6時半に列車が動き出した。

出発してすぐ車掌による検札があり、その後はひたすら車窓風景を眺めながら過ごした。列車内は、片側に通路がありコンパートメントがずらりと並ぶという日本では見られない形式。

途中で他の乗客と相席になるだろうと考えていたが、1等車両の乗客自体が少なかったこともあって、部屋には最後まで誰も乗ってこなかった。ブルガリアでは長距離の移動はバスが主流だそうで、あえて鉄道を利用するのは私のように列車に乗ること自体が目的の旅行者くらいだと思う。結局、ブルガスまでコンパートメントを貸切り状態で、優雅な移動を楽しむことができた。

かなり長大な編成を機関車が引っ張っているため、上り勾配では目に見えてスピードが遅くなる。

この後も、本当に急行列車を名乗っていいのかと思うほどゆったりとしたスピードで東へ進む。もっとも、特に急いでいるわけでもないし、今日中にブルガスへ着けばいいので焦ることはない。

ブルガリアの鉄道路線図を見ると、ソフィアからブルガスへはバラ祭りで有名なカザンラクを通る北側の路線と、中部の主要都市プロブディフを通る南側の路線がある。北側の路線のほうが明らかに距離が短く、当然こちらを通るものと考えていたら、ソフィアを出発して3時間でなんとプロブディフ駅に到着した。

主要都市のプロブディフを無視はできなかったのかもしれないが、かなり遠回りの南側経由だったというのはショック。道理でブルガスまで(予定では)8時間もかかるわけだ。

プロブディフ駅に15分ほど停車してから出発。そして、ここからの車窓風景が本当に見事だった。下の写真のように、まさに地平線まで続く大平原の中をほぼ一直線に進む。何よりすごいのが、ごくまれに羊飼いらしい人たちを見るものの、建物がまったく見えないこと。こんな景色は、おそらく日本では見られないと思う。

下の写真は、ここで撮った車窓風景の中でも特に気に入っているもの。初夏から盛夏の季節には、もしかしたら モラビアの大草原 のような景色が見られるのかもしれない。(このモラビアの大草原は、いつか実際に見てみたい風景のひとつ)

地図を見ると北側のルートでは平原の真ん中は通らないようなので、むしろ南側のルートだったのは幸運だったのかもしれない。大平原の景色を眺めていると本当に飽きなかった。

ただし、この列車には食堂車はなく、また車内販売もまったくない。途中で止まる駅のホームにも売店などはないし、終点まで食料品を買い込むことはできなかった。偶然、前日にパンなどを買っておいたからよかったが、そうでなかったらずっと空腹を我慢することになったと思う。まさか長距離を走る急行列車に車内販売がないとは思わなかったが、これも鉄道の利用者が減少していることが理由かもしれない。これからブルガリア国鉄に乗る機会のある人は、事前に食料品を買っておくことを勧める。

大平原を抜けると、再び町が現れるようになる。途中、列車が速度を落として通過する区間があり、いったい何が起きたのかと思ったらこういう景色が見えた。

最初に見たときは「事故現場か?」とも思ったが、単に車両の解体工場なのかもしれない。しかし横の線路が見事に波打っているし、車両がこんな無造作に放置してある解体工場というのも考えにくいような気がする。本当に事故が起きた現場かもしれないが、詳しいことがわからない。何か知っている人がいたら教えてほしい。

その後、とある小さな駅に停車していると、横を蒸気機関車が通過していった。もちろんこれは観光列車で、3両編成の客車に観光客たちが乗っているのが見えた。ブルガリア国鉄もこういう観光列車を走らせているらしい。

ここで撮った動画を下に載せておく。

予定では午後2時半にブルガスに着くはずだが、その時間になっても一向に到着する気配がない。仕方がないので、ひたすら車窓風景を眺めながら過ごした。

前に書いた通り、ブルガリア国鉄はあくまで「出発時刻は正確」だそうで、時間通りに到着するという情報はあまり出てこない。なので遅れるケースも多いだろうとは予想していたため、定刻を大きく過ぎても「まあ、こんなものだろう」と不安に思うことはなかった。今日中に黒海沿岸のホテルへ着けばいいので焦ることはない。


夕方4時、予定より1時間半遅れて、ようやく終点のブルガス駅に到着した。結局、ソフィアから9時間半も列車に乗っていたことになる。夜行列車を除けば、同じ列車に乗り続けた時間としては最長記録だと思う。

こちらが9時間半も走り続けた機関車。「よく頑張ったねえ」と声を掛けながら機関車に触ってきた。

ブルガス駅のプラットホームにあった店でパンとコーヒーを買って休憩。下の写真がブルガス駅の正面の眺めで、時計台のあるきれいな建物になっている。ここが路線の終着駅なので、この先には線路は延びていない。

ここからはバスでサニービーチへ向かう。駅前にバス乗り場があり、それぞれの乗り場に行き先と時刻がわかりやすく表示されているので、サニービーチ行きのバス乗り場はすぐにわかった。サニービーチ行きは20分おき程度の運行で、チケット売り場で聞いたところサニービーチ行きの場合はチケットはバスの中で買うということだった。午後4時半、ブルガスを出発。


さすがにサニービーチは人気のある町らしく、車内はほぼ満員。車掌からチケット(6レヴァ)を買い、車窓からずっと外を眺めていたが、海からは少し離れたところを通るため黒海は遠くのほうに見えただけだった。

ブルガスからちょうど1時間でサニービーチのバスターミナルに到着した。しかし宿泊するホテルはまだ先にあるので、さらに移動しないといけない。市街には路線バスもあるが、ホテルの正確な場所がわからないのでタクシーを使うことにした。5分ほどでホテルに到着。

下の写真が予約しておいた Victoria Palace Spa Hotel の外観。予想通り、かなり大規模なホテルだった。

5ツ星ではなく4ツ星のホテルだが、エントランスにもこの通りシャンデリアがある。

チェックインを行うと、手首にビニール製のテープが巻かれた。宿泊コースごとに色が違うそうで、ホテルのスタッフはテープの色を見て無料か有料かを判断するということだった。つまり、このテープは滞在中は外してはいけないものだが、それにもかかわらず着脱式にはなっていない。チェックアウトまで付けっぱなしになり、人によっては手首に違和感を感じて外したいと思うかもしれない。私は3泊なので我慢できたが、長期滞在者などはどうしているのだろう。

部屋へ移動すると、室内はかなり広いし設備も申し分ない。年齢的なものか、最近はときどきこういう高級な部屋に泊まりたいと思うようになってきた。以前のように安宿ばかりを泊まり歩くのはきつい。

それにしても、これだけのホテルが1泊7,000円弱で、3泊で約2万円なのだから(しかも朝夕の2食付き)、ブルガリアは旅行者にとっては嬉しい国だと思う。実は宿泊料に食事が含まれているということを知らずに予約していて、それに気付いたのは出発前だった。バウチャーを確認していたら「Half board」という見慣れない言葉が記載されていて、意味を調べてみたら「2食付き」だった(ちなみに「Full board」が3食付きという意味)。朝食はともかく、こういうホテルで夕食まで含まれるのは珍しいと思う。

シービューの部屋(さすがに黒海なのでオーシャンビューではない)を予約しておいたので、ベランダに出ると待望の黒海沿岸ビーチを眺めることができた。

トップレスはどこだ。

思わず前のめりになってビーチを凝視してしまったが、しかし焦ってはいけない。ここには3泊するので、ゆっくりと探せばいい。(ただ、黒海沿岸の海水浴シーズンが6~9月ということだったのでこの時期を選んだのだが、旅行直前になって「現地では9月中旬になると急に気温が下がり、海水浴客が減るらしい」という情報が入ってきた。なので目的の風景が見られるかどうか多少の不安もあるが、こればかりは焦っても仕方がない)

少し休憩し、ビーチのほうへ歩いてみることにした。ホテルのビーチ側にはプールが作られていて、橋を渡ってビーチに出ることになる。

ビーチ側から見たホテルの眺め。今回泊まっている部屋も、ここから見える。

ホテルの前に道路があり、両側に土産物店などが並んでいた。その先が広い砂浜になっているが、もう夕方なので海水浴客はほとんど残っていないようだった。

この通りをかなり先まで歩いてみたが、ブルガリアでも人気のビーチリゾートだけあって相当に賑わっていた。土産物店やレストランだけでなく、カジノやアクティビティや少し怪しげな店などもあって歩いていると楽しかったのだが、ここの風景については次のページに載せることにする。

ホテルに戻り、レストランで夕食。ビュッフェ形式で、好きなだけ食べることができるので助かる。内容も非常に豊富で、メインの肉料理や魚料理の他にフルーツやアイスクリームなども各種揃っているし、約7,000円の宿泊料金でここまでの食事が付いているというのが信じられない。ブルガリアが特にヨーロッパで非常に人気の高い旅行先というのも理解できる。(ただし日本ではマイナーな国なのか、今回の滞在中に見かけた日本人は5人だけだった)

部屋に戻り、ベランダから外を見ると夜景もきれい。

サニービーチにはあと丸2日滞在するので、1日はネセバルへ行き、1日はビーチでゆっくりと過ごすことにしていた。翌日どうするかは天候を見てから決めることにして、この日は0時に就寝。