コソボ&アルバニア旅行記(プリシュティナ)

コソボ到着日の午後は首都プリシュティナを散策してみた。コソボというと多くの人は今でも紛争をイメージするらしく、危険な町と思う人もいるかもしれない。しかし実際に歩いてみると雰囲気は平和そのもので、治安もまったく問題なかった。


旅行前に調べたところ、マザーテレサ通りという歩行者道路がプリシュティナの中心ということになっている。このため、ホテルを出てそちらの方向へ歩いてみた。マザーテレサはマケドニア生まれのアルバニア人なので、コソボでも非常に人気が高い。

大通りに出て少し歩くと、ロータリーの中心に噴水があった。

やがてマザーテレサ通りの入口に着いた。ここからがプリシュティナのメインストリートと言えるマザーテレサ通りで、歩行者専用道路なので安心して歩ける。しかし予想よりもずっと広い通りだった。

通りの入口に建っているのはコソボの初代大統領イブラヒム・ルゴヴァの像とアルバニアの英雄スカンデルベルクの騎馬像。

この通りを歩くと、日本人が一般的に持っているコソボのイメージが変わると思う。今でも紛争のイメージを持っている人が多いと思うが、何と言うことのない平和な町並みで、治安もまったく問題ない。

通りの名前の由来になっているだけあって、途中にマザーテレサ像があった。

通りには雰囲気のよさそうなレストランが並んでいたり、普通のヨーロッパの町並みという感じ。

こちらはコソボ解放軍の英雄(ただしセルビア側から見ればテロリスト)の像。わかりやすく例えると、つまり安重根みたいな人。

地元の人たちがハトと戯れていたり(私はハトが大嫌いなので近づきたくもないが)、旅行関係のイベントが行われていたり、本当に平和そのものだった。今ではコソボは普通に旅行できる国になったことを実感。

マザーテレサ通りを端まで歩いたが、この先にプリシュティナでどうしても見たいと思っていたスポットがある。少し距離があるが、周囲の景色を見ながら歩いていくことにした。

歩道を歩いていくと、見えてきたのがマザーテレサ教会。しかしこの国では何にでもマザーテレサの名前を付けたがる。

マザーテレサ教会の先にある交差点を右に曲がると、アパートらしい大きな建物が並んでいるのが見える。後姿美人の女性の後を歩き、坂道を下る。

それにしても、ここに並んでいるアパート群は規模が大きい。いったい何部屋あるのかという感じだが、どれも無機質な感じはせず生活臭にあふれている。こういう風景は好き。

ちなみに、この通りの名前は「ビル・クリントン通り」で、由来はもちろんアメリカのクリントン元大統領。コソボでは独立に尽力したクリントンは英雄視されているそうで、こうやって通りの名前にもなっている。そして、この通りに面して、どうしても見たいものがあった。

やがて、目的の物件が見えてきた。これがアメリカ国旗をバックにしたビル・クリントン像。プリシュティナの隠れた観光スポットになっているようで、写真を撮っている人も多かった。

クリントン像のアップ。「ちょっとケネディが混じってないか?」という気もするが、まあよくできている。

しかし、いくら独立に尽力し、独立宣言後すぐに承認してくれたからといって、よその国の大統領の像を作ったのはここくらいだと思う。そういう意味でも貴重な物件といえるので、プリシュティナに来る機会があれば見てみてほしい。話のネタになるはず。


歩いてマザーテレサ通りへ戻り、昼食にした。「オーロラ」というあまり高くなさそうなレストランに入り、注文したのはキョフテ(トルコ風ハンバーグ)、ネクター、コーヒー。これで値段は5ユーロ。この値段でも味はうまい。

昼食後、散策を続けることにして今度は通りの途中から横道にそれて別の通りへ出てみた。ここに、クリントン像と並んでプリシュティナで見てみたかったものがある。そこがこの NEWBORN のオブジェ。

有刺鉄線が巻きついたデザインから、おそらくは「セルビアから解放された」という意味だと思う。つまり、このオブジェは完全にアルバニア人の視点に立ったもので、セルビア人からすると不快感しか感じないものだろう。

ここで写真を撮っていると、オブジェに上っていた若者たちから「自分たちを撮ってくれ!」とせがまれた。そこで、アップで撮ると笑顔で「Thank You!」と挨拶してくれた。アルバニア人にとっては、これは独立を象徴するオブジェなのだろうと思う。セルビア人に恨みはないが、ここではアルバニア人の側に立ってこちらも笑顔で手を振っておいた。旅行者なんてそんなもの。

NEWBORN オブジェの後ろに大きな建物がある。こちらは建物の前にコソボとアルバニアの国旗がずらりと並んでいた。コソボとアルバニアの国旗が同列に扱われているあたり、コソボが実質はアルバニア人の国ということがよくわかる。

これはスポーツセンターみたいな建物だそうで、ちょうど学生らしい人たちが大勢出てきていた。その人たちがみんな手話で意思の疎通を行っていたので、聴覚障害者の大会が行われていたのかもしれない。

NEWBORN のオブジェを裏側から見ると、向こうにきれいなビルがいくつも並んでいるのが見える。コソボが急速に発展しつつあることがよくわかる風景。

この日はこれから郊外のグラチャニツァへ行くことにしていた。世界遺産に登録されている修道院があり、この日しか行く時間がない。NEWBORN オブジェの前からタクシーに乗り、市街から少し離れたところにあるバスターミナルへ向かった。