ネパール旅行記(カトマンドゥ~ポカラ)

ネパール滞在3日目。この日でいったんカトマンドゥを離れ、ポカラへ移動する。

ポカラはトレッキングの拠点になる町で、行きはバス、帰りは飛行機で往復することにしていた。バスだと丸一日かかるが、途中の車窓風景も楽しみ。2007年の旅行のときもバスで移動したので、10年ぶりに同じ体験をすることになる。こういうのも楽しい。


早朝5時15分に起床。ホテルを出て、歩いてカンティ・パトへ。カンティ・パトというのは大通りの名前で、この通り沿いが長距離バスの発着場所になっている。これは10年前と変わっていない。

10年前はスニッカーズとキットカット1個ずつを買おうとしたら10ドルと言ってきた物売りがいたが、今回はそういうふざけた物売りには会わなかった。チケットに記載されていたポカラ行きのバスはすぐに見つかり、6時55分にカトマンドゥを出発。

早朝なので人通りの少ないカトマンドゥ市街を走りながら、少しずつ乗客が乗ってくる。

満員になったところでカトマンドゥ市街を離れ、ポカラへ向かって走り始めた。カトマンドゥは盆地にあるので、しばらくは上り坂が続く。途中、車窓に鎌とハンマーのマークが見えた。このときは共産党のマークなんて懐かしいと思っただけだったが、なぜこういう旗が掲げられていたのか、その理由は後ほどわかった。

上り坂が終わると、あとは山肌に沿って緩やかな下り勾配のハイウェイが続く。

このハイウェイはカトマンドゥからネパール西部への幹線道路らしく、大型バスやトラックがひっきりなしに通っている。一応、縁石は作られているものの、事故が起きて転落したら命はなさそう。

カーブと対向車が多いのでなかなかうまく写真が撮れなかったが、その中でもわりとよく撮れた1枚を大きなサイズで載せておく。山の斜面に沿って、こういうハイウェイが延々と続いている。

その後は田園風景の中をひたすら走る。かなりきれいな景色なので、眺めていると飽きない。

カトマンドゥを出発してから2時間、9時ごろに1回目の休憩。バスにトイレはないので、大体2時間おきくらいに簡素なドライブインのようなところで休憩があった。ここで今回利用したバスの写真を撮ってみた。

ドライブインといっても、最初の休憩地はこんな感じで掘っ立て小屋が数軒並んでいるだけ。これはこれでアジアらしい風景という感じがする。特に買うものもないので、ここではトイレに行っただけだった。

休憩を終えて出発。バスの車内はこんな感じ。10年前の旅行のときよりはグレードの高いバスに乗っているように思える。

風光明媚な山の中をひたすら走る。景色は単調ではなく変化があって面白いので、早朝起床だが車窓を眺めていると眠くならない。こういう景色を眺めることができるので、カトマンドゥ~ポカラは片道くらいバスで移動するのがお勧め。

午前11時前に2回目の休憩。川沿いに食事できる場所が作られていて、少し早いがここで昼食にしている人も多かった。1回目の休憩場所よりはちゃんとしたドライブインで、ここではパンを買って川を眺めながら休憩。

ここを出発すると、周囲の景色は次第に渓谷という感じになってきた。

ところどころに町が現れるが、どの町でも人が集まっていてデモや集会が行われていた。最初は何だかわからなかったが、後になって数日後に実施される選挙のための活動ということがわかった。

集会はこんな感じ。バスで走っていると頻繁に旗を掲げた集団とすれ違う。このときは選挙のことは知らなかったが、旗を見ると政治的な活動らしいということは想像できた。写真を撮るときは、ちょっと緊張する。

ちなみにネパールでは政党ごとに旗のデザインを決めているそうで、太陽や樹木や牛などの旗やポスターを何度も見ることになった。なぜデザインが重要なのかというと、日本のように全員が読み書きできるという前提では考えられていないため。

識字率が高くない場合、投票の際に候補者の名前を選んでもらうという方法は使えない。といって投票用紙に候補者の写真を印刷するのはコストがかかるし、また見た目だけで選ばれてしまう可能性もある。

このため、各政党がそれぞれデザインを決めて、候補者の名前ではなく「このデザインのマークに投票してほしい」と呼びかけるのがネパールでの選挙活動ということだった。考えてみれば合理的で、集会ではみんな旗を持っているのも納得。(カトマンドゥ出発直後に見た鎌とハンマーのマークも、つまり選挙活動の一環)

選挙活動の集団と何度もすれ違った後、午後1時過ぎに3度目の休憩。ここではトイレに行ってから菓子と水を買って周辺を散策。

出発後も、頻繁に旗を掲げた集団とすれ違う。他国のことではあるものの、これだけ活動が激しいと違う政党の支持者と小競り合いが起きるのではないかと心配になる。

カトマンドゥから8時間半、午後3時半に終点ポカラのバスターミナルに到着した。長い移動だったが、景色がきれいなので意外なほど疲れなかった。バスターミナルといっても10年前とまったく同じ未舗装の広場で、何だか懐かしい。


バスターミナルには旅行店の客引きが何人もいるが、こちらはカトマンドゥでホテルとトレッキングの手配をしているので、寄ってきた客引きは断った。最近は中国人や韓国人が増えているのではないかというイメージを持っていたが、ここでは流暢な日本語を話す客引きも何人かいた。話を聞くと日本人客もまだ多いらしい。

ここでしばらく待っていると送迎の車がやってきたのでホテルへ移動した。今回ポカラで宿泊するのは Pleasant Home というホテル。

シャワーなどは簡素だが、部屋は快適。1時間ほど休憩した後、ポカラの町を歩いてみることにした。


ポカラはフェワ湖という人造湖に面した町なので、歩いていくとすぐに湖が見えてきた。もちろん湖は前回来たときと変わっておらず、10年ぶりに見る湖の眺めに感動。それに盆地のカトマンドゥと違って空気がきれい。

向こう岸の近くを船が移動していた。10年前は対岸から船で通学している子供たちを何度か見かけたので、この船に乗っているのも学校帰りの生徒たちだと思う。変わらない眺めに、ここでも感動した。

しばらく湖に沿って散策。地元の人たちにとっても憩いの場になっているようで、涼んでいる人も多かった。湖畔ではところどころで紫のジャカランダが満開になっていて、この眺めもきれい。

いったん湖畔を離れてポカラの街中を歩いてみた。大通りに沿ってツーリスト向けの旅行店やレストランが並んでいて、この様子も10年前と変わっていない。雑然としたカトマンドゥとは違って、何となく町並みもきれい。

ある旅行店の前にあったイェティのモデル。チープな作りが面白い。

ポカラの中心部を抜けると、再び湖畔に出る。地元の人たちが釣りをしていたり、のどかな雰囲気。

しかしポカラでも SUP をやる人がいるとは思わなかった。ちょっと意外だが、欧米人旅行者が持ち込んだんだろうか。

下の写真のあたりがポカラの町外れ。10年前は町の中心部を抜けるとツーリスト相手の店は無くなり、地元の人たちの小さな民家が並んでいた。家の前の畑に野菜が植えられていたり、にわとりが飼われていたり、原っぱで小汚い格好をした子供たちが楽しそうに遊んでいたり、まるで昭和のころの日本のような風景が広がっていて、何ともいえない懐かしさを感じたのを憶えている。

しかしながら、今回は町外れまでツーリスト向けのレストランなどが並んでいた。

ここだけは10年前と雰囲気が変わっていて、残念に思わなかったわけではない。しかしまあ、旅行者がとやかく言うことではない。

ここで引き返し、帰りは湖畔に沿って歩いてみた。途中、懐かしのヒッピー集団みたいな人たちがいて歌を歌っていた。正体はわからない。

前回はポカラの街中で何度も野良牛を見かけたが、今回はここで初めて見た。カトマンドゥと同様、ポカラでも街中では牛は減っているんだろうか。

牛とは対照的に犬は相変わらず多い。手漕ぎボートで漕ぎ出そうとしている欧米人旅行者の周りに群がっていた。

1匹がボートの後を追って泳ごうとしたが、すぐに足が着かなくなって戻ってきた。その微笑ましい様子を見て、周囲の人たちから笑い声が起きていた。

薄暗くなってきたころ、町の中心近くまで戻ってきた。桟橋があったので先端まで渡って湖を眺めてみた。

すっかり暗くなった午後7時、ツーリスト向けのレストランで夕食にした。注文したのはフライドライスとチョウメン(ネパール風焼きそば)、さらにパイナップルラッシー。この写真を見ると、よくこんなに炭水化物ばかり選んだものだと思う。

何とか完食し、食後にホットレモネードを注文して値段は全部で775ルピー。ちょっと食べ過ぎた。

レストランに入ってしばらくしてから激しい雨になり、傘を持っていないので不安になっていたが、30分ほどで完全に止んでしまった。山の中は天気が変わりやすい。

これで散策を終え、ホテルに戻るとフロントのスタッフが来客が来ているという。翌日からのトレッキングのガイドだそうで、併設されているレストランで待っているそうなので部屋に来てもらうように頼んだ。ガイドが来るとわかっていればもっと早くホテルに帰ったのだが、待たせてしまって申し訳ない。

トレッキングのガイドは Padam Yogi という若い男性で、10年前のトレッキングのときは日本語ガイドだったが今回の言語は英語。もっとも、今回のガイドはネイティブ並みの流暢な英語を話すわけではなかったので、かなり聞き取りやすい。こちらも完全に英語を話せるわけではないので、むしろ助かった。

翌日早朝のウルトラライトプレーンの送迎時刻と、トレッキングの出発時刻等を打ち合わせ、これでポカラに戻ってくるまでの日程が確定した。2泊3日のトレッキングで、特に2日目の山歩きがハードになりそう。30分ほどの打ち合わせを行い、このときに選挙が数日後ということを知って昼間の集団の意味が理解できた。

ガイドが帰った後、シャワーを浴びてこの日は11時に就寝。