台湾滞在記(高雄 / 紅毛港保安堂)

高雄市の郊外に「紅毛港保安堂」という寺院がある。インターネットでこの寺院のことを知り、本堂の中にあまりにも驚異的な風景が広がっていたので、ぜひとも一度見てみたいと考えていた。このため、台湾出張中の自由時間に行ってみることにした。


紅毛港保安堂があるのは、地下鉄の草衛駅から2キロほどの住宅地の中。高雄では地下鉄の駅など主要な場所にレンタサイクルがあるというのはわかっていたので、最初は草衛駅から自転車で訪れる予定だった。

しかしながら、レンタサイクルの場所はすぐに見つかったものの、出払っているらしく自転車がない。待っていても自転車が戻ってくるかどうかわからないし、歩くには少し遠いし、どうしたものかと考えた結果、いったん高雄空港へ行くことにした。高雄空港はここから地下鉄で1駅だし、さすがに空港なら自転車が出払っているということはないだろう。

地下鉄で高雄空港へ移動し、地上に出るとレンタサイクルの場所はすぐに見つかった。そして、予想通りここには自転車が10台以上置いてある。クレジットカードを登録して鍵を外し、返却時に時間に応じて課金されるというシステムで、外国人でも簡単に自転車を借りることができた。これは便利なシステムだと思う。

では、高雄空港を出発。

途中の幹線道路はバイクや自転車などの二輪車用の道路が車道とは別に作られているので、安全に移動できる。バイクが多い台湾だからこそ、こういうインフラ整備が可能になっているとも言えるが、これは日本も見習ってほしいと思う。自転車に乗っていると危険な思いをすることがよくあるので。

鈴鹿サーキットパークまで戻り、ここで幹線道路を離れて住宅地方面へ。保安堂の詳しい場所は調べていなかったが、走り回っていると見つかった。

本堂の横に自転車を止め、中に入ることにした。

その前に、最初に驚いた風景がこちら。台湾の国旗と旭日旗が堂々と並んで掲げられるという、韓国人が見たら泡を吹いて卒倒しそうな景色が普通に存在している。ここがどういう寺院か、これで想像できると思う。

本堂に入り、まずはこちらの本尊に参拝。目的の風景は本堂の端にあるのだが、最初は中央の本尊に参拝するのが筋だと思う。

参拝を終え、続いて目的の場所へ。それが、本堂の端に作られているこちらの場所。

少し近づいてみると、こんな感じ。何が置かれているか、わかるだろうか。

その正体は、なんと日本の軍艦。ここは日本の軍艦が祀られているという、驚異の寺院なのである。しかも「神艦」「にっぽんぐんかん」の下に大きな旭日旗が描かれるという、韓国人が見たら泡を吹いた挙句に痙攣を起こして失神し、最終的に発狂しそうな風景が台湾では問題なく存在しているというのがすごい。

なぜここに日本の軍艦が祀られているのかというと、それには以下のような経緯がある。

1946年に漁師の網に頭蓋骨がかかりました。漁師たちは頭蓋骨を寺院に祀って弔うことにしました。すると、これまででは考えられない豊漁が続いたため、漁師や地元の人たちは漁猟祈願として頭蓋骨を祀るようになりました。

その後、ある漁師の夢に頭蓋骨の本人だと名乗る者が現れました。彼は夢の中で「帝国海軍38号哨戒艇艦長、太田」と名乗り、「部下を日本に連れて帰れなかったのが残念」と語ったそうです。それをきっかけに帝国海軍38号哨戒艇の模型を御神体として祀るようになったそうです。

哨戒艇が軍艦なのかは置いておくとして、こういう話を聞くと台湾の人たちの親切が本当に嬉しい。(なお、第38号哨戒艇が高雄近くのバシー海峡で沈没したのは事実らしい)

軍艦自体も、細かいところまで作り込まれていて本当によくできている。万国旗が飾られているが、当然ながら旭日旗にアレルギー反応を示す国の国旗はない。

ミニチュアの船員さんたちもそれぞれ格好が違うし、ここまで作り込んだ細かさに感動。

さらにすごいのは、砲台などが電動で動くこと。感動しながら軍艦を眺めていると、寺院の人がスイッチを入れてくれた。ここで撮った動画を載せておく。

これはもう、涙が出るほどの感動もの。この軍艦の動きは、ぜひとも直接見てほしい。よくここまで作ってくれたと思う。

ここには絵馬も掛かっていて、文面を読むとこちらも感動する。

この後、寺院の人たち(年配の男性)に挨拶し、土産物を買ってからもう一度軍艦を眺め、保安堂を後にすることにした。土産は小さなバッグで、「保安堂」の他に「パッケージのボランティア」という謎の言葉が書かれている。

それにしても、本当に驚異の寺院だった。おそらく、日本を含めて、こういう場所は世界のどこにもないだろう。台湾ではこういう寺院が普通に存在していることが驚きで、ますます台湾が好きになった。ぜひとも多くの日本人に訪れてほしいものだし、自分もいつかまた再訪したい。


目的地は保安堂だったが、自転車で走っていると近くにもいくつか寺院があったので簡単に紹介することにする。まずは、遠くから見てもかなり目立っていた寺院。

この寺院の名前は「飛鳳寺」。装飾も内部も豪華絢爛。

飛鳳寺のすぐ近くにあったのが「朝鳳寺」で、こちらもかなり巨大な寺院。形式が似ているし、鳳という字が重なっていることから飛鳳寺と対になっている寺院かもしれない。レリーフが見事。

こちらは「姓蘇仔朝天宮」という寺院。豪華絢爛が続くので、もう満腹状態。

しかし台湾は市街地を自転車で走っているだけでも満艦飾の寺院が次々と現れるので、寺院好きにはたまらない国だと思う。保安堂へ行く際は、これらの寺院も見逃さないように。


次第に薄暗くなってきた午後5時半、草衛駅に戻って自転車を返却。借りたのは高雄空港だが、返すのはどのレンタサイクルスポットでも構わない。鍵をかけた時点で料金が確定し、後にクレジットカードの明細を見てみたら35元(134円)だった。外国人にもわかりやすいシステムなので、高雄に滞在するときはレンタサイクルはお勧め。

いったん鈴鹿サーキットパークに戻り、夜まで散策。その後、この日は六合観光夜市に行ってみた。続きは次のページで。