モルドバ&ルーマニア旅行記(岩窟修道院)

モルドバ滞在最終日。この日の夜行列車で隣国のルーマニアへ移動することになる。

せっかくマイナーな国に来ているのだから、もっとあちこちを見て回ればいいと思うかもしれないが、そもそもモルドバには見所はほとんどない。

未承認国の沿ドニエストル共和国潜入という体験以外に、観光スポットといえるのは岩窟修道院とワイナリー巡りくらい。最終日は、ほぼモルドバ唯一の観光地になる岩窟修道院に行ってみた。


朝6時半に起床。朝食後、チェックアウトの際に宿泊料金を精算しようとしたら(このホテルは事前決済ではなく現地での支払い)、ユーロは不可でモルドバレイのみ。このときは十分なレイを持っておらず、さらにホテルの両替所もオープンは午前10時になっている。基本的には現金払いだが、仕方がないのでクレジットカードでの決済を了承してもらった。

フロントで荷物を預かってもらい、ホテルを出発。昨日も訪れたバスターミナルに行き、今回は岩窟修道院方面のバスを探すことにした。

岩窟修道院があるのはキシナウから北へ50キロほどのオルヘイ・ヴェキ(Orheiul Vechi)というところで、Vechi が「古い」という意味なので「オールド・オルヘイ」と言っても現地では通じる。

ここではトレブジェニ(Trebujeni)行きのミニバスに乗ればいいということは事前に調べていたが、しかし該当するバスが見つからない。そこで、前日ティラスポリ行きのチケットを買った窓口でトレブジェニ行きを聞いたところ、少し離れた場所から出発するということだった。後は、その方向へ歩きながら次々と人に聞き続け、ようやくミニバスを見つけることができた。ほっと一安心。

近くの窓口で聞いてみたら、チケットは窓口ではなく運転手から直接買うということだった。なお、この区間は1日5往復程度なので、事前に運行時刻を調べておくほうが無難。今回は旅行前にネット上で調べることができたので助かった。ミニバスに乗り、8時半に出発。

キシナウからオルヘイ・ヴェキまでの所要時間はちょうど1時間ほど。風光明媚な景色の中を走るので、周囲を眺めていると飽きない。

車内には欧米人旅行者も数人乗っていて、運転手が「ここが岩窟修道院」と教えてくれたので間違わずに下りることができた。バス料金は25レイ。

バスを下りたのは道路沿いに店が1軒あるだけの場所。岩窟修道院は丘の上にあるので、まずはそちらへ歩くことにした。

しかし修道院以外は特に何もなさそうな場所なのに、近くにホテルがあったのが意外。いったいどういう人が泊まるんだろうと思ったが、こういう何もないところでのんびりと過ごすことを好む人も多いのかもしれない。

丘の上に来ると、周囲の景色に感動した。ここからの眺めは本当に見事なので、この場所へ来る価値は十分ある。

少し歩くと墓地があった。花輪が目玉みたいで面白い。

坂道を上ってくると、周囲はさらに広々とした景色が広がるようになった。

ここで撮った写真をパノラマ風につなげてみた。足元を流れる小川、地平線まで続く緑の大地と、開放感のある景色が素晴らしい。ただ、この風景の迫力は写真では十分に伝わらないので、見たい人は直接訪れてほしい。本当に感動する眺め。

崖の上に鐘楼が見える。そちらへ歩いてみた。

鐘楼の近くには石の十字架もあった。ここは観光客の記念撮影スポットになっていたので、人が途切れたときに写真を撮ってみた。地平線をバックにした十字架というのも SNS 映えしそうな眺め。

岩窟修道院は鐘楼の下にあるのだが、そこは後で入ってみることにして、さらに丘の上を歩いたところにある教会へ向かうことにした。教会の敷地内は中庭がきれいに整備されていて、観光客もそれなりに歩いている。

教会の建物自体は新しい。中に入ってしばらく休憩した後(教会の中は椅子がたくさん並んでいるので休憩する場所としては最適)、壁画などの装飾品を見学してから外に出た。さすがに教会内部の写真は撮っていない。

教会横の建物に土産物店があり、キリスト教関連のグッズが販売されていたが、特に岩窟修道院独自のものは見当たらなかったので何も買わなかった。

このとき、土産物店の中で日本語が聞こえてきたので驚いたが、この人たち(年配の女性2人)がモルドバで唯一見かけた日本人だった。声は掛けていないので、どういう理由でモルドバを旅行しているのかはわからない。

教会の敷地を出ると、その先はこういう眺めになっていた。ここからしばらくはトレッキングできそうな感じだったが、帰りのバスの時刻もあるので、ここで引き返すことにした。

上の写真は3枚の写真をパノラマ風につないでいるので川が曲がって流れているように見えるが、実際はほぼ直線状に流れている。

教会に戻り、もうここには来ない可能性が高いのでもう一度見学してみた。こちらは内部に貼ってあったキリスト受難の図。

これで新しい教会を出て、岩窟修道院へ向かうことにした。中庭で熟睡しているチワワともお別れ。

鐘楼と十字架があるところまで戻る途中、崖ぎりぎりのところまで近寄ってみた。十字架が本当に垂直の崖の縁に建っていることがわかる。

十字架の横で、下を見下ろしてみた。日本だったら間違いなく柵が設置されるところだろうが、ここには何もない。今まで人が落ちたことはないのだろうかと思ったが、ここでは自己責任ということなのだろう。こういう割り切った考え方は好き。

鐘楼の少し下に、こういう入り口がある。一見すると奥行きはなさそうに思えるが、ここが岩窟修道院への入り口。

ここ先が岩窟修道院。なんだかゾクゾクするような眺め。

狭い通路を歩いていくと、その先には別世界が広がっていた。この修道院が作られたのは13世紀以前だそうで、岩を掘りぬいてこれだけの空間が作られていることに驚く。ロウソクの光が幻想的。

いや、ここはすごい。今まで世界各地でいろんな風景を見てきたが、これほどまで幽玄な雰囲気の場所は滅多にない。感嘆しながら内部を見学したが、宗教関係の聖地を見るのが好きな人はぜひここに来てみてほしい。あと、パワースポット巡りが好きな人もぜひ。これほどの雰囲気は他では味わえない。

そして、ここには驚異的な存在感を放つお方が。

調べてみたところ、旧ソ連時代は無人になっていたそうだが、1997年から1人の修道士が住むようになったという。中世からそのまま来たような方で、本物の魔法使いといっても通用しそう。

ここで1人で修業をしている方だが、昼間は観光客相手にいくつか土産物を売って生活の足しにしているそうで、せっかくなのでマグネットを買ってみた(30レイ)。これは今でも自宅の冷蔵庫に貼って岩窟修道院の雰囲気を思い出している。

修道院の端に見落としそうな階段があり、下りていくとこういう空間が広がっていた。いくつかの空間が規則的に並んでいて、奥には絵が飾られている。おそらく、ここはかつての修道士たちの寝床だったと思われる。ロールカーテンを取り付けたら現代のカプセルホテルみたいな感じ。

先ほどの魔法使いの方の居住スペースはこちら。

岩窟修道院の奥からは、外に出ることもできる。ただし、ここは崖の中腹にあるちょっとしたテラスのような場所なので、下に下りることはできない。今は観光客の展望スポットになっている。

ここからの眺め。3枚の写真をつなげたので川が曲がって見えるが、実際はほぼ一直線に流れている。本当にのどかな景色。

ここは崖の中腹にあるのだが、柵などは一切ない。なので崖の縁に立って下を覗きこむこともできる。子供たちも平気で歩き回っているが、今まで人が落ちたことはないのだろうか。

ただ、こういう自己責任に任されているような考え方は好き。

修道院に戻り、しばらく散策。「モルドバ唯一の観光地」などと少し揶揄されているような場所だが、しかしこういう素晴らしい雰囲気の修道院があるのはすごいこと。この幻想的な雰囲気はぜひ一度体験してほしい。自分もいつかまた来たいものだが、その機会はあるだろうか。

では、名残惜しいが修道院を出ることにする。

外に出て、崖の上から景色を眺めてみた。こののどかな眺めも、これで見納め。

川と反対側のほうに斜面を下りていくと墓地があった。

放し飼いになっている馬や山羊を眺めながら、さらに下に下りる。

振り返ると、先ほどの鐘楼が丘の上に見える。

丘の麓まで下りると小さな集落があった。ここを歩いてバス停まで戻ることにする。

途中、こういう井戸があった。電線があるので電気は来ているようだが、水に関しては共同井戸が現役で使われているらしい。試しに水をくみ上げてみたら、透き通ったきれいな水だった。なんとものどかな集落。

そして、ここがホテル。いったいどういう人が泊まるんだろうと思っていたが、中に入ってみたら意外と宿泊客は多いようだった。修道院以外には何もなさそうな集落だが、のんびりするにはいいかもしれない。

ホテルの中庭にカフェがあったので、ここでコーヒー(10レイ)を飲みながら休憩した。雰囲気がよく快適そうなホテルで、ここに宿泊する人が多いことに驚かされた。モルドバ各地の教会を巡礼するような人が多いのかもしれない。

ホテルを出て、こういう彫刻作品などを眺めながらバス停へ。これはいったい何だろう。

バス停に戻り、しばらく待機。欧米人旅行者も数人集まってきて、ちょうど12時にキシナウ行きのミニバスがやってきた。ここに滞在していた時間は2時間半ほどで、なかなか雰囲気が良くて楽しめる場所だった。修道院自体も幻想的な場所だが、周囲ののどかな眺めも素晴らしい。モルドバに滞在する際は、ぜひオルヘイ・ヴェキに来てみてほしい。ここはお勧めスポット。


オルヘイ・ヴェキを出発し、ブドウ畑が並んでいる景色を見ながらキシナウへ。モルドバはワインが有名だけあってブドウ畑が多い。

来た時と同様に1時間ほどでキシナウのバスターミナルに戻ってきた。ミニバスを下り、バスターミナル内のファーストフード店でハンバーガーとペプシの昼食にした(30レイ)。その後、バスターミナルがあるマーケットエリアをしばらく散策。

土産物を買うための十分なモルドバレイを持っていなかったので、散策の途中に両替所で30ユーロを両替した。これでモルドバワインを買うことができる。


この日の夕方に出発する夜行列車でブカレストへ移動するので、それまでの時間にモルドバの土産を買うことにしていた。歩いてホテル付近へ戻り、近くにある FOX MART へ。ただ、ここではよさそうな土産物が見つからなかったので、カフェでコーヒー(17レイ)を飲んで休憩してから近くにある VEL MART という大きなスーパーマーケットに入ってみた。ここには各種モルドバワインが揃っていて、帰国後に配る菓子類の他にワインとブランデーを購入した。ブランデーは馬の形のボトルに入っていて、ちょっと珍しかったので選んでみた。

キシナウのスーパーマーケットではペットは大丈夫だが拳銃の持ち込みは禁止。

この後 FOX MART で夕食にし、そろそろ出発の時刻が近づいてきたのでホテルに戻って預けていた荷物を受け取った。ワインを買ったのでかなり重くなった荷物を背負い、歩いてキシナウ駅へ。夜行列車でのブカレストへの移動は、次のページで。


岩窟修道院の詳細な場所や行き方については、当サイト別館の記事を参照。