ジョージア旅行記(ノヴィ・アフォン / 前編)

アブハジア滞在2日目。この日はスフミ近郊にあるノヴィ・アフォンという町へ行き、鍾乳洞などを観光することにしていた。鍾乳洞内を走っている鉄道に乗ること以外に、かなりきれいな町らしいので景色も楽しみ。

なお、この Novy Afon という町は英語名のニューアトス New Athos でも通じるようだが、ここではノヴィ・アフォンと表記する。


朝7時半に起床。今日もいい天気で、ホテルの部屋からの眺めをパノラマ風につなげてみた。

朝食後、8時半にホテルを出発。街中には緑も多く、歩いていると気分がいい。

ただ、スフミで必ずやらないといけないことがある。それがビザの取得で、これがないと出国できない。そこで、まずは外務省領事館へ行くことにした。

場所は旅行前に調べていたので、迷わずにたどり着くことができた。しかし政府の建物というよりも金持ちの別荘という感じの建物だと思う。

ところが、敷地内に入ろうとすると柵が閉まっている。この日は平日(水曜日)なので、領事館がオープンしないとは考えられない。おそらく時間が早いからだろうと思い、9時過ぎにまた来てみることにした。

それまで少し散策することにして、スフミでぜひとも見てみたかった建物へ。街路樹に囲まれた道の先に見えてきた。

どうしても見たかった建物とは、旧国会議事堂の廃墟。旅行前にアブハジアのことを調べているときに、スフミの特徴的な建物として多くのサイトで紹介されていたため、廃墟好きとしてはぜひ見たいと思っていた。

実際にその廃墟を見てみてびっくり。なんと、大きな幕に覆われていた。

この年(2018年)がアブハジア紛争から25周年ということもあり、こういう幕で覆われていたらしい。国旗と同じ緑と白の幕に覆われた両側の建物には「1993」「2018」と書かれている。

すごくいい感じの廃墟が幕に覆われてしまい、廃墟感がなくなっていたのを最初は残念に思ったものの、考えてみれば今しか見られない光景と言える。なので、これはこれで貴重なのかも。それに、こんな大きな廃墟を幕で覆うのは大変な作業だったはず。

ここでようやく、スフミ到着時に旧国会議事堂の廃墟を見逃した理由がわかった。実をいうとマルシュルートカの中からこの建物を見ていたのだが、幕に覆われていることを知らなかったので、これが旧国会議事堂だと思わずにスルーしていた。おかげでスフミ駅まで乗ることになってしまったわけだが、いい感じの廃駅を見ることができたので、それはそれでよかったと思っている。

廃墟の探索は翌日に行うことにして、周辺を歩いていると各種ツアーの広告があった。いつか黒海でダイビングをやってみたいものだが、その機会はあるだろうか。

こちらの公園には、アブハジアの他に南オセチアや沿ドニエストルなどの未承認国仲間の国旗、さらにアブハジアを承認しているロシア、シリア、ベネズエラ、ニカラグア、ナウル、ツバル、バヌアツなどの国旗が掲げられていた。(ただしバヌアツとツバルは後に承認を撤回)

さらに歩いていると、鉄道駅があったので入ってみることにした。

駅舎の中はほぼ廃墟化していて、ホームも草だらけ。

線路も草ぼうぼうという感じだが、しかしレールは錆びていないので、ときどきは列車が通るものと思われる。この駅はすでに廃駅になっていると思ったが、正確なことはわからない。旅行後に調べてみたら、この駅は Baratashvili Railway Station という名前だった。

このあたりで散策を終えて領事館へ戻ったが、しかし9時を過ぎているというのにまだ閉まっている。旅行前にアブハジアの祝日については調べていて、この日が祝日ではないということは確認していたつもりだったので、なぜ閉まっているのかがわからない。

ちょっと不安になってきたが、しかし待っていても開きそうな気配はない。このため、この日の夕方に再度来てみることにして、それでも開いていなければ翌日また訪れることにした。翌日はアブハジアを出国する日なので最後のチャンスになるが、この状況では仕方がない。翌日も開いていなければ出国の日をずらす必要がある。

(領事館の詳しい場所については、当サイト別館の以下の記事を参照)

この時点で手持ちのルーブルが少なくなっていたので、いったんホテルに戻ってスマートフォンの Google 翻訳で「両替できる場所はありますか?」をロシア語に翻訳してフロントの女性に見せたところ、問題なく伝わった。近くの銀行を教えてくれたのでそちらへ行ったところ、窓口は大勢の利用客が並んでいる。これは時間がかかりそうと思ったので、屋外の ATM を操作したところ3,000ルーブルを入手できた。

続いて、近くの大通りからタクシーに乗り、マルシュルートカ乗り場があるスフミ駅へ。タクシー料金は150ルーブル。ここで周囲の人たちに「ノヴィ・アフォン」と声をかけると、その方面行きのマルシュルートカはすぐに見つかった。英語がまったく通じない地域でも、こういうことは地名を連呼すれば何とかなるもの。

10時半ごろ、スフミを出発。ノヴィ・アフォンまでの料金は100ルーブルだった。スフミ市街を抜けると、風光明媚な車窓風景が続く。

スフミから35分ほどでノヴィ・アフォンに到着した。マルシュルートカは町の中心まで行くようだが、最初の乗客が下りたときに山の中腹に修道院らしい建物が見えたので、自分もここで下りることにした。

そこから少し歩いたところに池があり、水上レストランみたいな建物がある。

ここから修道院まで、いい雰囲気の集落の中を歩いていく。こういう生活感のある景色は好き。

途中に停めてあった車。いったい何があったんだろう。エンジンは大丈夫そうだから、所有者はこの状態で乗っているんだろうか。

この背の高い木の間を歩いていくと、修道院があるらしい。

坂道を上がっていくと、両側に土産物店が並ぶようになった。外国人だろうとお構いなしにロシア語で攻め込んでくる露店主たちをかわしながら、先へ進む。

ただ、早口でまくし立てるおばさんだけは突破できず、昼食用と思って菓子とピロシキ(このときはそう思っていた)を買うことになった。値段は300ルーブル。

やがて、修道院が見えてきた。かなりきれいな建物。

修道院に入る前に、景色を眺めてみた。丘の中腹なので、遠くの黒海まで見渡せる。天気がいいので気分がいい。

ベンチに座って、さっき買ったものを食べることにした。細いロープを編み込んだように見えるのが焼き菓子で、丸いのがピロシキ(だと思っていた)。

読んでいる人もオチに気付いていると思うが、一口食べてみたら2つとも思い切りチーズだった。つまりチーズを2つ買ってしまったわけで、こんな勘違いをした自分に苦笑い。「匂いで気付けよ!」と自分に突っ込んだが、このチーズは2つともあまり強い匂いはしなかったので。

さすがにチーズだけを食べるわけにはいかず、この2つは日本に持ち帰った。細かく刻んでシチューに入れると濃厚な味わいになって非常においしく、しばらくはアブハジアを思い出しながら食事を楽しめた。勘違いはあったものの、ここでチーズを買ってよかったと思っている。

では、一口だけかじったチーズをしまって、修道院へ。

この修道院は1870年代にロシアの修道士によって建てられたもの。クリーム色とえんじ色の外観と、金色のドーム型の屋根がきれい。門の中にはアブハジアの国旗が下がっている。

中庭に入ると、中央に教会が建っている。中庭を囲む建物もいい雰囲気で、高い尖塔が見事。

こちらが、修道院の中央にある教会。中庭を囲む建物とは色が違っていて、こちらは白い外観がきれい。

修道院の中はフレスコ画が本当に見事だった。なんというか、まるで宇宙空間にいるような気分。

敬虔な信者たちの邪魔にならないように見学し、修道院の外に出た。手入れが行き届いているので、こういうきれいな写真も撮れる。名前は知らないが、黄色い花がきれい。

ここからは、先ほどロシア語の波状攻撃を受けた土産物店が並ぶ小道と、遠くには黒海も見える。それにしてもいい天気。

しばらく修道院周辺を歩いた後、露店でマグネットを2個買い、丘を下りることにした。このマグネットはそれぞれアブハジアの地図と国旗がデザインされたもので(各50ルーブル)、今でも自宅の机に貼ってアブハジアを感じている。

途中にあった廃墟。さすがにここでは廃墟探索はできない。

次の目的地はノヴィ・アフォンの公園なので、そちらへ歩いていくと旅行会社の露店が並ぶ通りがあった。各種ツアーの宣伝が貼ってあったので、ロシア語がわかる人であればツアーに参加するのも面白いかもしれない。乗馬やラフティングなど、ワイルドなツアーを楽しめそう。

やがて公園の入口に到着した。ここがノヴィ・アフォンの中心地なので、平日だが歩いている人はそれなりに多い。

川に沿って歩いてみた。小川のせせらぎの音がいい感じ。

上流へ歩いていくと滝の音が聞こえてきた。このあたりが公園の中心で、家族連れがのんびりと歩いていた。

滝は意外と迫力がある。

ノヴィ・アフォンで検索すると必ず表示される定番スポットだったので来てみたのだが、この公園は本当によかった。市民の憩いの場という感じ。

滝の横にある階段で、上に上がることができる。

この滝の動画を載せておく。

滝の上は静かな湖になっていた。

湖畔に道が続いていたので、歩いていくと何か建物が見えてきた。

近づいてみると、これは鉄道駅だった。スフミ市街の駅に続いて、この日2回目のプラットホーム散策。

駅舎は廃墟化していないし、ホームもきれい。なので廃駅ではないように思ったが、あるいは観光用に整備されているだけで駅としては使われていないのかもしれない。

レールは錆びていないので、列車はときどき通っていると思う。しかし、今回はアブハジアで列車が走っているところを見る機会はなかった。

駅の両側はトンネルになっている。そして、これはおそらく意識して人の顔に見えるようなデザインになっていると思う。はっきりわかるシミュラクラ現象。

駅のホームからの眺め。ここまで来ると、湖というより川という感じ。

駅を散策した後、滝のあたりまで戻ってきた。ジュースを飲みながら、しばらく休憩。

これで公園を後にしたが、この滝を再び見る機会はあるだろうか。

次はノヴィ・アフォンの観光スポットになっている鍾乳洞へ行きたいのだが、詳しい場所がわからない。とりあえず近くを歩き回っているとき、こういう記念碑のようなものがあった。

中に入れるとは思わず通り過ぎただけだったが、後で調べたら紛争の犠牲者の写真などが展示されていたらしい。もっと近づいてみればよかったと後悔。

ビーチに下りる階段があったので、黒海の風景も撮ってみた。夏には海水浴で賑わうのだろう。

しかし鍾乳洞の場所がわからない。さらに歩き回っているときの風景。

さっきの旅行会社の露店が並んでいる通りに戻り、スタッフのおばさんに「CAVE」という文字を見せたが、ここでは英語はまったく通じない。そこで、いったん昼食にしてカフェみたいなところに入ったところ、この店に WiFi があった。パンとカフェオレの昼食の際にネット検索したら鍾乳洞の公式サイトが見つかり、この画面を保存しておいた。

昼食後、旅行会社の露店に戻って画面を見せると、今度はすぐに通じた。ほっと一安心。

長くなったので、鍾乳洞については次のページで。