
高雄到着翌日は、郊外にある佛光山を訪問することにしていた。ここへ来るのは2014年と2015年に続いて8年ぶり3回目。
仏教寺院というより仏教テーマパークという感じの広大な施設で、ここは何度来ても楽しい。
朝7時半に起床。9時にホテルを出て、MRTで左営駅へ。2014年は高雄駅前の高雄客運バスターミナル、2015年はMRT大東駅近くの鳳山バスターミナルから佛光山へ移動したが、今回は便数が多い左営駅前からバスに乗ることにした。
9時半に左営駅に到着。駅前のバスターミナルで佛光山行きを探すと、次の便は10時発だった。列に並び、時間通りに出発。佛光山までの運賃は70元。
なお、この路線は途中で高速道路を経由する。これが帰路で予想外の事態を招くことになるが、このときはもちろん何も気付いていない。
過去2回はいずれも佛光山の前でバスを下り、佛光山を見てから佛陀紀念館へ移動したが、今回は佛陀紀念館で下車することにしていた。これは後述する目的のため。
ちょうど30分で佛陀紀念館に到着。8年ぶりなので、禮敬大廰という建物前の広大な広場も懐かしい。

では、メインホールとなる禮敬大廰の中へ。

中に入ると、相変わらず「ここは本当に仏教寺院か?」と思うような風景が広がっていた。これはもう完全にショッピングモール。

スターバックスで休憩したいところだが、今回は目的があるのでカフェは後回し。

禮敬大廰の先に続くのが長さ240メートルの成佛大道。その終点にあるのが高さ108メートルの佛光大仏。

何度来ても、この空間の広大さには驚かされる。

成佛大道の両側に作られている通路を歩いて大仏のほうへ。途中、こういう恐竜のオブジェがあったが、これは見た記憶がない。おそらく、前回の訪問以降に作られたもの。

やがて、ブッダガヤの大菩提寺をモデルにしたという本館にたどり着いた。前回も思ったが、この建物はまるでエジプトの神殿みたいな感じ。

では、本館の中へ。

本館の内部もまた、何度来ても溜息が出るほどバブリー。本当に、この寺院はどれだけ金を持っているんだよ、と言いたくなる。

館内の豪華絢爛な雰囲気に浸る前に、まずはこちらの4Dシアターへ直行。

今回この本館へ急いだのは、ここで「佛陀の一生」を見るため。ここでは「佛陀の一生」と「貧女一燈」の2つの作品が上映されていて、案内表示からわかる通り午前中が「佛陀の一生」で午後が「貧女一燈」というスケジュール。
過去2回はいずれも午前中に佛光山を見てから佛陀紀念館へ移動したので、まだ「貧女一燈」しか見たことがない。なぜ交互に上映しないのか不思議だが、ともかくもこれで「佛陀の一生」を見ることができる。これが、今回ここへ急いだ理由。
11時から「佛陀の一生」を鑑賞。内容はもちろん釈迦の誕生から入滅までを描いたもの。4Dというのは「体感型」という意味だそうで、シアター内に風が吹いたり、なかなか面白かった。3回目にして「佛陀の一生」を見ることができ、満足。
上映室を出ると佛陀の生涯を紹介するジオラマのコーナーが続くが、これは後で見ることにして、本館を出て禮敬大廰へ戻った。ここのスターバックスで休憩。

カフェラテ、チョコレートスコーン、塩パンという、仏教寺院とは思えない軽食風景。値段は235元。
この後、いったん佛陀紀念館を離れて佛光山エリアへ。過去2回は佛光山 → 佛陀紀念館と移動したので、この方向に歩くのは初めてという気がする。

山門をくぐり、坂道を歩いていくとこういうオブジェが展示されていた。

祭りのパレードか何かときに使われるものだろうか。

近くで見ると、わりとかわいい。


坂道を上がって佛光山へ。こういう景色を見るのも8年ぶり。

集合体恐怖症(トライポフォビア)を引き起こしそうな建物も健在だった。

歩いていくと、この寺院の関係者しか入れない建物の前に大勢の人だかりができていた。どういう行事だったのかがわからないが、この日は信徒の人たちが集まっていたらしい。

このときは「珍しい日に立ち会うことができ、幸運だったかもしれない」と思ったのだが、これが後に予想外の事態を引き起こす原因となる。しかしながら、このときはもちろんまだ気付いていない。
こちらでは信徒の皆さんが馬のオブジェを運んでいた。何に使うんだろう。

続いて本堂の「大雄寶殿」に参拝。建物の全面は黄色一色で、近くで見ると細かい文字がびっしり。

大雄寶殿の中は写真撮影禁止。信徒の人たちが大勢参拝していて、巨大な「釈迦仏」「阿弥陀仏」「薬師如来」と併せて迫力ある眺めだった。
大雄寶殿の前には、広大な広場が広がっている。椅子が並んでいるので、おそらくここでイベントが行われるのだろう。

その先にある山門には「佛光山2023萬緣水陸法會」と書かれていた。偶然、こういうイベントの日に遭遇したらしい。

さらに歩いていくと、かつて佛光山で最大の見どころだった「浄土洞窟」の跡地がある。

この浄土洞窟は、2015年の訪問のときに激しく感動した場所。その後、改装のために一時閉鎖されたという情報があり、再開したらぜひとも見てみたいと思っていた。
しかしながら、どれだけ待っても再開したという情報がなく、それどころか逆に「閉鎖されたらしい」という噂が入ってきた。あれだけ見事なスポットがなくなるとは信じられなかったが、今回来てみたらこの通り、浄土洞窟という文字も消えていた。

本当に、なんでここをなくしてしまったんだろう。どういう事情があったのかはわからないが、実にもったいない。ここが一番素晴らしかったというのに。
浄土洞窟内の超濃密風景については、2015年の台湾旅行記を参照してほしい。かつて、この中にそれはそれは煌びやかで豪華絢爛の風景が広がっていた。当サイトがその記憶を後世に伝える場になると嬉しい。
閉鎖された浄土洞窟に落胆しながら歩いていくと、五百羅漢が並ぶ庭園がある。


この羅漢さん、耳がどうなってしまったんだろうか。

しかしこういう石像は放っておくとすぐに薄汚れてしまうので、頻繁に手入れされていることがよくわかる。さすが大勢の信徒を抱える大規模仏教寺院。
続いて、雛壇に金色の阿弥陀如来がずらりと並ぶ大佛城へ。

階段を上がると、ここにも金色の阿弥陀如来がたくさん。


ここは高台になっているので、景色を眺めながらしばらく休憩。
この寺院の凄いところは、「佛光山電視中心」という独自のテレビ局を持っていること。英語名は「BEAUTIFUL LIFE TELEVISION」。

続いて「佛光縁美術館」へ。前回来たとき、ここを見た記憶がない。おそらく、その後に開設された美術館だと思う。

展示内容は絵画や仏像など。どれも手が込んでいる。


本当に、金がかかってますねえ。あらゆるものが豪華絢爛。


感嘆しながら美術館を出て、さらに寺院内を散策。その途中、例の集合体恐怖症を引き起こしそうな建物に入れることがわかり、館内へ。過去2回の訪問では、どうしてここに入らなかったんだろう。
エレベーターの表示を見ると女性しか入れないフロアがあるようなので、それ以外の階へ上がってみた。展示室みたいなスペースがあったので、中に入ってみる。

この寺院の歴史、信徒が世界にどれだけ広がっているか、どれだけ世界に貢献しているかといった資料がたくさん展示されていた。

資金力だけでなく、かなりの影響力も持っている寺院らしいことを改めて実感。

本当に、過去の訪問ではどうしてここに気付かなかったんだろう。
これで建物を出ようかと思ったが、最上階まで上がると説法が行われる大きな部屋があった。信徒以外でも参加できそうだったので、後ろのほうに座って法話を聞いてみることに。
坊さんによる説法の時間は14時30分から15時10分まで。40分も続くとは予想していなかったので、最後のほうは眠気を我慢するのが大変だった。歩き疲れていたし、言葉がわからない話を聞いているとどうしても眠くなってしまう。
休憩にはなったものの寝落ちしそうだった説法を終え、これでようやく建物を出た。その後、寺院内にあった土産物店でいくつか記念品を買い(ペンダント80元、メダル90元)、これで佛光山エリアを離れて佛陀紀念館へ戻ることにした。
禮敬大廰から成佛大道の横を歩いて本館へ。ここの名物、喋る弥勒仏とも再会。

2014年の訪問時に撮った動画がこちら。
この弥勒仏、何度見てもプロジェクションマッピングにより喋らせるという発想に感動する。
さらに豪華絢爛の展示物を鑑賞。


こちらはこの寺院の創設者、星雲大師。本人の写真といっても信じる人もいると思うが、これは蝋人形。近くで見ると、相当にリアル。

この方、2015年の訪問時は存命だったが、2023年2月に96歳で亡くなられていた。葬儀には台湾総統も参列し、国葬並みの規模だったそう。
午前中に続いて、4Dシアターで「貧女一燈」を鑑賞。過去2回の訪問でも見ているので、今回が3回目。普通なら悪役になる側にも悪い人間はいないので、後味のいい内容。最後に、星雲大師による解説がある。
上映室を出ると、佛陀の生涯を紹介するジオラマのコーナー。


しかし、どの展示内容も豪華絢爛。相当に金がかかっている。


改めて、星雲大師の権力と影響力の大きさを実感。
本館の屋上に出て、成佛大道を眺めてみた。

見上げると、高さ108メートルの佛光大仏。

過去2回の訪問では、本館内の「玉佛殿」で1時間おきに行われる説法に参加し、荘厳な雰囲気を堪能してきた。そこで、今回も参加してみようと考えていたのだが、受付に誰もいない。待っている人もいないし、どうやらこの日は説法は行われていないようだった。
残念に思いながら本館内を歩いていると、2階から歓声らしい声が。なぜかまったく気付いていなかったのだが、この日は2階の大ホールでオペラが行われていた。ヨーロッパから著名なオペラ歌手が来訪していたようで、本館内には案内も書かれていたというのに、どうして気付かなかったんだろう。
オペラを見るには本館内で配布されていたチケット(太っ腹なことに無料)が必要で、おそらくは早い段階で配布終了になっていたはず。ただ、こちらは午前中に本館へ来ていたわけで、知っていれば入手できたかもしれない。オペラなど滅多に見る機会はないと思うので、気付かなかった自分が残念。
この日、玉佛殿での説法が行われていなかったのは、このオペラが理由かもしれない。次回、ここへ来る際は案内書きに注意することにして、これで本館を出て禮敬大廰へ。
過去2回の訪問では、禮敬大廰の土産物店でガラス製の置物(柿とスターフルーツ)を買っている。他にもいくつか果物の形をした置物があり、来訪の度にひとつづつ増やしていこうと考えてた。
ところが、今回は果物の置物が見つからない。さすがに8年も間隔が開くと、製造が終わってしまったのかもしれない。
そこで、代わりに卵型のきれいな置物を買ってみた。値段は220元。

今後は、来訪の度にいろんなガラス製の置物を増やしていきたい。
外に出ると、すでに真っ暗。

こういう時間まで滞在したことがないので、ライトアップされた禮敬大廰を見るのは初めて。


正門のライトアップもきれい。

左営駅行きの最終バスは18時33分発。それに合わせてバス乗り場で待ち始めたが、バスが来たのは20分遅れ。そして、ここで困った事態になった。
この路線は佛光山が始発で、佛陀紀念館を経由してから左営駅へ向かうというルートになっている。佛陀紀念館では多くの人がバスを待っていたのだが、すでに佛光山で座席がほぼ埋まっており、新たに乗れる人数は10人もいない。
では車内で立っていればいいかというと、この路線は途中で高速道路を通るため、着席が義務付けられているという。結局、このバスに乗れたのは列の先頭付近に並んでいた人だけで、かなりの人数が取り残されてしまった。
実は左営行きのバスの20分ほど前に鳳山行きのバスが来たのだが、ここでは左営行きに乗るつもりだったので見送っていた。あのバスに乗ればよかったと後悔したものの、今さら遅い。
取り残された人のうち、地元の人は電話で知合いを呼んでいるようだった。というわけで、最終的に残ったのは外国人のみ6人。
バスに代わる交通手段はタクシーだけ。といっても流しのタクシーが通るような場所ではない。正門のところに守衛さんの詰所があり、ここでお願いしてタクシーを呼んでもらえることになった。この対応には感謝。
タクシーを待つ外国人の国籍はフィリピンやイタリアなど様々だったが、驚くことに私以外は観光客ではなく高雄科技大学に留学中の人で、道理で英語が流暢なのも納得。左営駅ではなく大学に近い後勁駅のほうが都合がいいそうで、私はMRTの駅であればどこでもいいので「後勁駅で構わない」と伝えておいた。
守衛さんにタクシーを呼んでもらったものの、空きが少ない時間帯だったのか、やってきたのは1時間以上経った8時15分で、しかも1台だけ。日本だったら6人はとても乗れないが、台湾では融通が利くらしく、無理やり乗ることになった。
乗る場所は助手席に1人、後部座席に4人、トランクに1人。トランクに人が乗るなど聞いたことがないが、ここでは警察に見つからなければ大丈夫らしい。一番小柄な若い男性がトランク役を買って出て、私は窮屈な思いをしながら後部座席に乗ることに。
なかなか珍しい体験かも、などと思いながらタクシーで移動し、30分で後勁駅に到着した。料金は600元で、これは一人100元ずつ払った。留学生たちと挨拶して別れ、駅のホームへ。
最後にちょっとしたアクシデント(今となっては面白い思い出だが)があった3回目の佛光山訪問を終え、MRTで次の目的地の瑞豊夜市へ向かった。
佛光山から乗っていた乗客の服装を見ても、こうなったのは「佛光山2023萬緣水陸法會」の参加者が利用していたため。さすがに、通常であればこんなことにはならないはず。
もちろん、ほとんどの参加者は貸切バスを手配していたのだろうが、それをケチった参加者がいたせいで、こんな事態になってしまったと思われる。こうなることは十分に予測できただろうに、まったく迷惑なものだ。