国内旅行編(奈良 / 斑鳩、飛鳥、天川)

1999年のGWは会社が4月29日から5月5日まで7連休なので、とりあえずどこかに行こうと思ったものの、この時期の国際線の航空料金は高い。そこで、学生時代以来の各駅停車の旅をすることにした。

行き先については、以前から能楽の神様である奈良県天川村の天河弁財天に行ってみたいと思っていたので奈良県にした。現地では天川の他、斑鳩、飛鳥を各1日ずつ回ることにして、GW期間中は青春18切符が使えないので周遊きっぷ(京阪神ゾーン)を購入した。


ところで、なぜ天河弁財天なのかというと内田康夫の「天河伝説殺人事件」を読んで興味を持ったから。ただし誤解のないように言っておくが、私は内田康夫のファンではなく内田作品はこの1作しか読んでいない。映画化されたときに話題になったから文庫本で読んでみたのだが、どうも私とは波長が合わない(何しろ内容が薄くて軽い。あっという間に読めてしまうので物足りない。大体、上下2分冊にする必要があるのか?)。というわけで推理小説としては好みではないのだが、作中にある能楽や天河弁財天に関する記述は確かに面白く、天河に行きたくなるのも事実。この機会に行ってみることにした。

宿泊先については、奈良のホテルは高いうえにGW期間中は満室だろうと思ったので毎日大阪まで戻ってカプセルホテルに泊まることにした。ここなら予約なしでもほぼ確実に泊まれるし、何より安い。それに入浴施設もなかなか充実している。大阪のカプセルホテルは難波付近に多いが、奈良方面行き快速の多くはJR難波駅始発であり、奈良観光には便利。

時刻表を見ながら計画を立てるのも各駅停車の旅の楽しみのひとつ。本来なら出発地から目的地まですべて各駅停車か快速を使うのが王道なのだが、大阪到着が夜遅くなるので邪道だが小倉まで特急で行くことにした。というわけで計画は下の通り。約12時間の旅程になる。(弁解しておくと帰りは各駅停車と快速のみを使った)

佐世保07:10博多09:05特急みどり2号
博多09:10小倉09:50特急ソニック5号
小倉09:58下関10:17
下関10:23岩国13:26
岩国13:37福山16:00
福山16:02姫路18:02快速チボリ(臨時列車)
姫路18:13大阪19:14新快速

12時間あれば飛行機ならヨーロッパまで行ってしまうわけだが(笑)、各駅停車の旅もなかなかいいもの。特に、昼下がりの列車内にはのどかな雰囲気が充満している。乗客の方言が少しずつ移り変わっていくのも面白い。未経験の方はぜひどうぞ。(ただし気の短い人にはお勧めしない)

4月30日~5月2日に斑鳩、飛鳥、天川をそれぞれ見て回った。天候は3日とも良かったのだが、法隆寺を除いて人はそれほど多くはなかった。訪れた主な場所は順番に以下の通り。

法隆寺

まずは初日の斑鳩。最初に訪れたのは説明するまでもなく有名な法隆寺。JR法隆寺駅から歩いて20分ほどの場所にある。かなり広い寺で、全部見て回るのに時間がかかった。世界遺産に登録されているだけあって、寺の中は国宝と重要文化財の山。拝観料(西院伽藍、大宝蔵院、東院伽藍共通で1,000円)も他の寺とは格が違う。

南大門から寺に入り、まっすぐ行くと西院伽藍がある。ここにあるのが金堂と五重塔。ちょうど扉が開いている時期で、内部の本尊を見ることができた。金堂の内部はかなり広く、釈迦三尊像、薬師如来座像、阿弥陀如来座像などがある(見ただけで名前がわかるほど仏像に詳しいわけではない。ここはパンフレットを見ながら書いている)。五重塔最下層の内部も同様で多くの仏像があるが、上の方の階がどうなっているのか気になる。登ってみたいものだ。

大宝蔵院にあるのが玉虫厨子や百済観音といった一度は名前を聞いたことがあるような国宝と文化財。百済観音は大きさにも驚いたが、8頭身というのが実に奇抜。こんなスマートな仏像は見たことがなく、他の仏像と違って異様な感じさえする。

東院伽藍に夢殿がある。聖徳太子が夢想していた場所かと思っていたのだが、実際は死後に建てられたものだそうだ。この時期は開扉されていて、中の救世観音を見ることができた。

何しろ広い寺なので、うろうろと歩き回っていたらあっという間に2時間くらい経ってしまった。ただ、入れない区画も多く、内部がどうなっているのか気になる。やや欲求不満。

中宮寺

法隆寺のすぐ横にある小さな寺。もともとは少し離れた場所にあったらしいが、戦国時代にここへ移ってきたという。ここの目玉は本尊で国宝の弥勒菩薩半跏思惟像。首を傾けて少し笑みを見せているあの有名な仏像になる。

本尊はわりと新しい本堂に安置されていて、すぐ近くで見ることができる。入り口で靴を脱いで、畳に座って見るようになっているのだが、人も少なくゆっくりと見ることができた。さすがに国宝の仏像をガラス越しではなくこれだけ近くで見ると感動する。

ただ、本堂内に本尊を説明するテープがずっと流れているのがどうも興醒め。静かに見られるほうが良かった。それに、本堂の建物(昭和43年建造)がいかにも「最新式」という感じがして古い仏像には合わない気がする。まあ、完全耐火耐震設計ということなので仕方ないか。拝観料は400円。

この後、自転車で天満池、斑鳩神社、法輪寺、法起寺などを回ったが、特に法輪寺の周辺は曲がりくねった細い路地が入り組んでおり、なかなかいい雰囲気だった。

キトラ古墳

ここからが滞在2日目の飛鳥周辺。近鉄飛鳥駅前からレンタサイクルで1日中走り回ってみた。

最初に訪れたのが、ファイバースコープで壁画が発見され話題になったキトラ古墳。近鉄飛鳥駅から約2キロの距離だが、上り坂が多く結構疲れた。古墳の内部に入れるわけではなく、外から見るしかない。内部を想像しながらしばらく休憩。

ちなみに人はほとんどいなかった。

高松塚古墳

壁画で有名な古墳。現在は内部は密閉されているので、外を歩き回るだけ。古墳自体はそう大きいものではないが、周辺一帯が公園として整備されているので歩き回れる範囲は広い。

壁画の模写は近くの壁画館で見ることができる。

石舞台古墳

ここが飛鳥のメイン。古墳の土が無くなって石室が露出したもので、数十個の岩が組み合わされており、石室の中に入ることもできる。内部は天井が高く、予想外に広かった。もともと土に埋もれていたわけだから、石組みはインカの遺跡のようにナイフも通さないということはなく隙間だらけ。土が無くなった理由については、どこにも説明はなかった。周辺は広い公園になっていて、しばらく休むことができた。

ここは蘇我馬子の墓という説が有力。確か、石の表面にシュメールの神が描かれているというトンデモ説があったような気がするが、よく憶えていない。

酒船石

飛鳥寺近くの林の中にある。幾何学的な溝や窪みが掘られた岩で、用途は不明。酒や薬品の調合に使ったという説などさまざまな説があるが、現在は庭園の一部として使われた岩という説が有力だそうで、言われてみればそういう気もする。

飛鳥には、他に亀石、猿石、鬼の雪隠、鬼の俎などという正体不明の石がいくつかある。

飛鳥寺

蘇我馬子が596年に建立した日本最古の寺。当初は大規模だったらしいが、現在はごく小さな寺になっている。鐘を自由についていいのが珍しい。また、本堂の前にベンチがいくつかあるので休むのにちょうどいい。

本堂には飛鳥大仏があるが、中には入らなかった。寺の裏には蘇我入鹿の首塚があるが、この付近にはレンゲ草が多く、また明日香村が一望できてとてもいい雰囲気。

ここの前の土産物店で、今は亡き雑誌「ボーダーランド」で紹介されていた古代のチーズ「蘇」を発見。見た目は柔らかいキャラメルのようなもので、試食品を食べてみたが味は確かにチーズだった。買うかどうか迷ったが、要冷蔵だったのでやめた。

「ボーダーランド」

かつて存在した雑誌。「超常世界の謎とタブーに挑戦するラディカルマガジン」として1996年4月に創刊された。編集長は荒俣宏。各号の特集の内容は「オーパーツ」「アトランティス」「前世への扉」「シャンバラ」「死後の世界」「大予言の真相」「不老不死伝説」など。超常現象に盲信的な記事はわりと少なく、あの「ムー」などよりははるかに面白い雑誌だった。

好きな雑誌の1つだったが、意外にも売れ行きが悪かったのか、あるいはムーには勝てなかったのか、もしくは別の理由があったのか1997年9月号で休刊。蘇に関する記事は1997年3月号に掲載されている。

天河弁財天

今回の旅行の主目的地。JRと近鉄を乗り継いで下市口駅まで行き、そこからバスで1時間半ほどかかる。大型のバスでしかも満席だったが、途中の天川川合で8割くらいの人が降りたため、南日浦で降りた人は5人くらい。大阪からはかなり距離があり、南日裏バス停到着は昼過ぎだった。

バス停からしばらく歩いて天川弁財天に到着。鳥居の先の石段を上ったところに本殿がある。本殿内に能舞台があるが、本殿も能舞台も予想したよりは小さなものだった。近年はヒーリングスポットとして人気が高いと聞いていたが、観光客はまばらで閑散としていた。まあ、このほうが雰囲気がいい。

能舞台の前にあった椅子に座り、本殿を見ながらしばらく休憩。涼しい風が気持ちいい。訪れる人も皆静かにしているので、瞑想できそうな雰囲気。30分ほど休憩した後、本殿をしばらく近くで見てから石段を降りた。しばらく神社周辺を散策した後、五十鈴のお守りを買い、帰ることにした。今度は能舞台で能楽が奉納されるときに来てみたい。

南日裏からのバスの便は少ないので、帰りは3キロほど離れた天川川合まで歩くことにした。渓谷に沿ってしばらく歩いていると吊り橋を発見。渡ってみたが、川面からあまり高くないので迫力はなかった。わりとよく揺れる橋だったから、もっと高ければ面白かったのだが。

道の起伏が少ないので、そんなに疲れずに天川川合に着いた。ここから別の道を行けば、みたらい渓谷を通って洞川温泉まで行けるのだが、今回はやめておいた。次にここへ来るときには天川から十津川一帯を集中的に歩き回ってみたい。

天川川合から下市口までは、かなり小型のバスだった。往きとは経路が違うらしく、かなり細い道を通る。途中「松本宅前」というバス停があり、どういう場所かと思ったら一軒家の前だった。松本家専用のバス停といったところか。山の景色を楽しみながら約1時間半で下市口に着いた。


酒船石の近くで見つけた、とある物置。ご覧のように古い看板で一杯。内容はキンチョール、オロナミンCなどの定番の他、三菱電機洗濯機、フエキ糊、金紋ミズホ酢、アンティーク雑貨の昔屋(いまでもあるのか?)など。なかでも目を引くのが5つある映画の看板で「示談屋」「サムライの子」「渚を駈ける女」「行方不明」「愛、その奇跡」というタイトル(いつの映画だ?)。

べつに飛鳥とは関係ないが、旅先でこういう変わったものを見つけると嬉しくなる。

(1999.4.29~5.3)

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