東地中海旅行記(キプロス / レフコシア)

夕方5時半ごろレフコシアのバスセンターに到着した。レフコシアはキプロスの首都で、以前は「ニコシア」と呼ばれていた。1995年に昔の名称に戻したということだったが、ニコシアという名称は現在でも広く使われていて、乗ってきたバスの行き先も「ニコシア」になっていた。

レフコシアの中心部に旧市街(かつては城壁で囲まれていたそうだが、今は城壁はなくなっている)があり、この旧市街の中をグリーンラインが通っている。つまりレフコシアはかつてのベルリンのように町が完全に二分されているわけで、ドイツ統一後に残った最後の分断都市となっている。


首都のバスセンターといってもかなり小規模のもので、場所は城壁跡のすぐ外側にある。ここでバスを下り、とりあえず泊まるところを決めようと思ってホテルを探しながら旧市街を散策。そんなに高くなさそうなホテルが見つかったので、入る前に手持ちのキプロスポンドの額を確認しようと思って財布を出そうとしたのだが、ポケットにあったはずの財布がない。リュックサックの中に入れておいたかと思って探してみたのだが、どこにも見つからない。非常用に100ドル札1枚をリュックサックの中にとっていたのだが、それ以外の現金とクレジットカードが入った財布を落としてしまったらしい。

自分でも顔が青ざめていくのがわかったが「バスの中で落としたのかも」くらいしか思い当たることがない。街中で落としていたらアウトだが、バスの中ならまだ見つかるチャンスがある。

そこで、急いでバスセンターに戻ってみると、乗ってきたバスがちょうど折り返しで出発するところだった。運転手に合図をしてバスを止め、乗り込んで「財布を落としたかもしれないから捜させてほしい」と言うと、すぐに運転手が「これだろう」といって財布を差し出してくれた。どうやら運転手が車内点検の際に見つけて拾っておいてくれたらしい。自分の財布を見たときには心底ほっとして、何度も礼を言ってからバスを下りた。

今思えば面倒なことになる前に短時間で解決していることになるわけだが、このときは相当に慌てていた。バスセンターへ走って戻っているときが今までの海外旅行の中でもっとも慌てた時間だったと言っていいだろう。それに、財布を拾っていても「知らない」と言われたらそれまでなので、このときの運転手が本当に神に見えた。


無事に財布も見つかり、旧市街の中にある “HOTEL RIMI” というホテルに泊まることにして、しばらく部屋で休憩。宿泊料金は29ポンド。そのあと旧市街を散策することにした。

レフコシア旧市街は11の門がある円形の城壁跡によって囲まれている。そして、グリーンラインによって見事に二分されている。

旧市街の大通りを歩いていくと、最初は両側に大きな店が並んでいるが、グリーンラインに近づくにつれて人がまばらになってくる。そしてグリーンラインで通りは行き止まりになる。

大通りとグリーンラインがぶつかる地点には監視所があり、国連平和維持軍の兵士が銃を持って監視している。TVでは何度も見たことがあるが、実際に “UN” と書かれた車両を見たのは初めて。

監視所には北側を眺めることができる「展望所」がある。右下の写真で人が並んでいるところがその展望所で、私も向こう側を眺めてきたが(ただし北側の写真撮影は禁止)、南側と違って廃墟のような感じだった。

分断後、北側は経済的に立ち遅れ、南側と格差が広がっているという。政治レベルでは統一の動きはあるものの、それほど進んではいないようである。ドイツや朝鮮半島の場合は同じ民族が2つの国に分断されたのに対し、キプロスでは民族が違うため(南側はギリシャ系、北側はトルコ系)、国民はそれほど統一を望んでいないのかもしれない。


翌日は昼過ぎまで旧市街を散策。

旧市街を歩いていると頻繁にグリーンラインにぶつかる。グリーンラインは、ちゃんとした「壁」になっている所もあるが、一方で単なる「バリケード」のような場所もある。壁には “NO PHOTO” と書かれているものの、それほど緊張感はなく、すぐ近くまで近づくことができる。散策の途中、キプロス考古学博物館、レベンティス博物館、聖ジョン教会、ビザンティン美術館などを訪れた。

キプロス考古学博物館は、紀元前から中世までのたくさんのコレクションが展示してあるキプロス最大の博物館。石器やブロンズ像やテラコッタや銀製品など、たくさんの展示品が並んでいた。アフロディーテの頭部や全身像などは見事なものだった。

聖ジョン教会の裏手にあるビザンティン美術館は、予想よりもかなり規模が大きく、充実したイコンや絵画コレクションは素晴らしかった。下の写真は聖ジョン教会の鐘楼。

下の写真はレフコシア中央郵便局。首都の郵便局でも、かなり規模が小さい。ここで絵葉書用に切手を何枚か買った。

その後、午後2時半のバスで次の目的地のレメソスへ。