マダガスカル旅行記(モロンダバ~モロンベ)

マダガスカル滞在2日目。午前9時半の飛行機でモロンダバを離れ、次の目的地のモロンベへ向かう。モロンダバ滞在が1日だけというのが何とも残念だが、フライトスケジュールの都合上、仕方がない。


朝6時過ぎに起床し、出発まで周囲を散策してみた。このホテルがある一帯はヌシ・ケリーという名前の砂州になっていて、前日は砂州の根元のほうに歩いたので、今度は逆に先端のほうへ歩くことにした。

ホテルから歩いていくと周囲は次第に人家がまばらになり、海が見えてくる。人家はどれも掘っ立て小屋のような質素なもので、ほとんど裸同然の子供たちが走り回ったりしていた。

砂州の先端まで来ると周囲は砂浜になった。対岸はベタニア半島というそうで、主に漁業で生計を立てているヴェズ族の小さな村が見える。もっと時間があれば対岸の漁村を訪問したいものだが、今回は仕方がない。

対岸の漁村と沖合いに浮かぶ漁船をズームで撮ってみた。近距離ではカヌーが主な移動手段のようだが、沖では片側にアウトリガーを付けた帆船をたくみに操っているようである。

周囲を1時間ほど散策したあと、ホテルに戻った。やはり早朝に散歩すると気分のいいものだ。


朝食後、やがてタクシーの運転手がやってきたので、フロントでチェックアウトして空港へ向けて出発した。わずか1泊だけの滞在だったが、かなりいいホテルだったと思う。モロンダバを旅行する際にはお勧めといえる。できれば1週間ほどゆっくりと滞在してみたいものだ。

昨日に続いてガタガタの道路を激しく蛇行しながら進み、空港に到着した。本当に、この国ではタクシー運転手は非常に疲れる仕事だと思う。ここで運転手とは別れたが、最後にタクシーの前で写真を撮ってみた。

とてもいい人だったので、モロンダバを旅行するときは雇ってやってほしい。

マダガスカル航空のカウンターでチェックインを行い、小さな待合室で待機していると6人ほどの日本人グループがやってきた。前日にバオバブ並木道で見かけた人たちだったので、少し話したところやはり同じ飛行機でモロンベへ向かうということだった。

このときはこのグループがどういう人たちなのかわからなかったが、後に写真家の吉田繁さんが企画した世界の巨木を見るツアーだとわかった。以下のサイトの「巨樹ツアー報告」のページに、このツアーの報告が載っている。

現地の日本語ガイドの人と一緒にマダガスカル中を回っている途中だそうで、ここでまったく偶然に一緒になったわけだが、このことが私にとって大変に幸運だったということを後になって思い知ることになる。

やがてやってきたプロペラ機は、アンタナナリボ~モロンダバで乗った飛行機よりも小型で、わずか15人乗り程度。今はモロンダバと比べてモロンベはマイナーな町なので、この大きさでも機内は満席ではなかったが、いずれモロンベの人気は高くなってくると思うのでそのときはチケットの取りにくい路線になるかもしれない。

機内は自由席なので、どこに座ってもいい。私は左側の前から2番目の席に座った。下の写真が操縦席と機内の様子で、操縦席との間のドアは飛行中も開け放してあったので操縦の様子を近くで見ることができた。セキュリティ上は問題なのだろうが、しかし誰も気にしていないようだった。

アンタナナリボ~モロンダバ間はまるで火星の表面のような赤茶けた大地の上を飛行したが、この区間は海岸に沿っての飛行になるため、見えたのは海と広大な干潟がほとんどだった。下を眺めていると次々と巨大な三角州が現れる。

10時10分にモロンベ空港に到着した。草原の中にある小さな空港で、窓から眺めると小さな建物がぽつんと建っているのが見える。あれが空港のターミナルビルらしい。

飛行機を降りるとモロンダバよりも気候はさらに暑い気がする。歩いてターミナルへ移動したが、しかしこんな小さな空港は初めて見た。私が今まで各地で見た空港の中でもダントツの小ささ。

他の乗客はいずれも送迎の車が来ているようだが、私の方は歩かないといけない。空港からモロンベの中心部まで約1キロというのは旅行前に調べていたので、途中の景色を眺めながら歩いていくことにした。なお、モロンベの町には公共交通機関はなく、バスはもちろんタクシーもない。

空港から未舗装の道路が続いている。草原の中を一直線に続く道というのも、かなり絵になる景色だと思う。

道路の両側には広々とした草原が地平線まで広がっている。気候は暑いが、これだけ広々としていると気分がよく、風も涼しく感じる。

はるか遠くに大きなバオバブの木が見えたので、限界までズームアップして写真を撮ってみた。手前に人が座っているが、まさかピクニックではないだろうから、何かの仕事をしているのだろう。

空港から町へ向かう送迎の車に次々と抜かれながら、町まで30分ほどゆっくりと歩いた。遠くにバオバブが見えたり、小さな池に変わった形の葦(茎の先端がまるで麩菓子のような形をしている)がたくさん生えていたり、かなり面白かった。ここは車ではなく歩いて移動してよかったと思う。


やがてモロンベの町外れに到着した。そこから少し歩くと、おそらく町で一番の大通りに出たので、しばらく通りに沿って歩いてみたが周囲は閑散としている。日中の暑い時間帯なので地元の人たちは外には出ていないようだ。それに、このモロンベのという町が予想よりはるかに小さく、町というより小さな村という感じがする。

まずは泊まるところを探さないといけないのだが、大通りをかなり北の方向へ歩いてもホテルらしきものは見つからない。そこで海岸沿いならホテルがあるかもしれないと思い、大通りを離れて海岸よりにある未舗装の細い道に移り、今度は南の方向へ歩いてみた。

しかしながら、海岸沿いに並んでいるのは地元の漁民たちの小さな小屋ばかり。多少不安になりながらしばらく歩くと、ようやく「モザンビークホテル」というバンガロー形式の小さなホテルが現れたが、並んでいる各バンガローのあまりの汚さに到底入る気がしなかった。管理人室や敷地内の道路は多少清掃されていたので廃虚ではなさそうだが、これほど朽ちた感じのホテルは見たことがない。どうしようもなかったらここに入ることにして、さらに先へ進むことにした。

集落の外れまで歩いたところ、ようやく「ホテルバオバブ」というこれまたバンガロー形式のホテルがあり、こちらはかなりきれいそうだったので、ここに入ることにした。結局、大通りを北へ歩いたのとほぼ同じ距離を南へ戻ったことになる。大通りを歩かずにまっすぐ海岸沿いへ来ればすぐにこのホテルが見つかったわけで、歩き疲れたぶん損をした。

ところで、このホテルの近くを歩いていたときにすぐ前を若い女性が歩いていて、足元を見たら裸足だった。それ自体は特に驚くことではないが、その足で未舗装の石だらけの道を普通に歩いていたのには唖然とした。足の裏の皮膚が厚いから平気で歩けるのだろうが、このようなことはおそらく現在の日本人には不可能だろう。

下の写真がホテルバオバブの入口。

ホテルに入ると、飛行機で一緒だった巨木ツアーグループのガイドと出会った。どうやら、この人たちもこのホテルに泊まるらしい。ここでホテルのスタッフに泊まれるかどうか聞いたのだが、英語がまったく通じない。何を言ってもフランス語が返ってくるだけなので、埒が明かない。

これを見かねて、ガイドさんがスタッフに話してくれた。その結果、泊まれることがわかり、ここに3泊することにした。下の写真が私が泊まった8号棟の外観と部屋の様子で、この通りかなりきれい。シャワーはちゃんとお湯も出る。

宿泊料金は1泊31,000アリアリ(約1,900円)で、モロンダバより割安だった。天井で回っているファンの風を浴びながら、しばらく休憩。

1時間ほど休んでから、町を見るために外出することにした。フロントに鍵を預けてからホテルを出ると、外はまだ暑いので周囲は閑散としている。このあたりの民家にはトイレはないらしく、子供たちが外に出てきて用を足している光景を何度も見かける。

先ほど延々と歩いた大通りに入り、ほとんど人が歩いていない大通りを歩く。おそらく町の中心部と思われる位置に集会場のような建物があり、その横に大きなパラボラアンテナが設置してあった。何のアンテナかは不明だが、おそらくテレビ受信用アンテナではないだろうか。

中を覗いてみるとは地元の老人たちが大勢集まって談笑しているようだったが、ときにはここでテレビの鑑賞会などがあるのかもしれない。モロンベの町でもかなりの高級ホテルと思われるホテルバオバブでもフロントや部屋にテレビはなかったし、もしかしたらモロンベでテレビがあるのはここだけかもしれない。

大通りを挟んでこの建物の向かい側にジュースや日用品などを売っている小さな雑貨屋があり、店の前に椅子がいくつか置いてあった。ここでペットボトルのサイダーを買い、閑散とした通りを眺めながらしばらく休憩。

街中には教会もあったが、閉まっていたので中に入ることはできなかった。下の写真はその教会と町外れに立っていた小さなバオバブ。

それにしても、外を歩いている人をほとんど見ない。町の外れまで歩いた後、大通りを離れて海岸へ移動し、ここからは砂浜を歩いてホテルへ戻ることにした。

海はきれいだが、ここは外洋に面しているので遊泳には向かないと思う。沖には漁船が何艘も出ていて、漁を行っていた。砂浜にもところどころに漁船が置いてあり、ほとんどはこのように片側にアウトリガーが付いたカヌーのような形状になっている。沖に出ると、この船をうまく操るのだろう。

このような漁船や網を繕っている漁民の人たちを眺めながら、ホテルに戻った。


ホテルに戻ると、ともかくも翌日以降の予定を決めないといけない。このモロンベという町にはタクシーもツアー会社もないため、郊外のバオバブを見るためには独自に車をチャーターする必要がある。その手配に関してホテルのスタッフと交渉しないといけないのだが、これが予想通り大変に難航した。

どのスタッフも「世界共通語はフランス語であり、英語のようなマイナーな言語など知らない」という認識を持っていて、片言の英語すら理解できないのである。一般人ならともかく、ホテルのフロントスタッフにここまで徹底して英語が通じないのは初めての経験だった。

話すほうはもちろん筆談もまったく通じないので、まるで埒が明かない。途中からスタッフが「ギード」という単語を連発するようになったので、どういう意味かと思って紙に書いてもらったら “guide” だった。これから推測した結果「昼間ここにいた日本語ガイドが夜になったら戻ってくるから、その人に通訳を頼んでほしい」ということを言いたいらしい。こちらもかなり疲れたので、そうすることにしていったん部屋に戻った。

それにしても、ここまでうまくいかないとは思わなかった。飛行機のフライトスケジュールの都合上、この町には3泊する予定だが、果たしてうまく郊外を回れるかどうか非常に不安になってくる。しかしながら夜までは考えても仕方がないので、涼しくなるまで休むことにした。


夕方5時ごろ、少し涼しくなってきたので再び外出した。さすがにこの時間になると、通りを歩いている人もかなり多くなっている。

昼に歩いたときは気付かなかったが、集会場横のパラボラアンテナの横を通り抜けると小さなマーケットになっていた。地元の人たちが多く歩いていたので、この付近を中心に歩き回ってみた。

マーケットといってもごく小規模なもので、食料品マーケットの他は日用品を売っている店が数軒あるだけ。まずは日用品店の中に入ったところ、衣料品、食器、靴、かばんなどが小さな店の中に雑多に置かれていた。それに混じってテレビやステレオなども数台置かれていたが、ほとんどは中国製のようだった。

せっかくなので何か土産になるようなものでも買おうと思い、テーブルクロス(マダガスカルのアリアリ紙幣が描かれている)を1枚購入した。値段は4,000アリアリ(約240円)。

マーケット内を歩いていると牛車がやってきた。この国では牛車や馬車が現役で大活躍している。

マーケット内で遊んでいた子供たち。ここでは小さな子供はほとんど裸同然だった。なんだか昔の日本という感じ。

マーケットの中心はやはり食料品を扱っているコーナーで、ここだけは掘っ立て小屋ではなくコンクリート製の建物になっている。野菜のコーナーにはイモ類(おそらくサツマイモと思ったが、もしかしたら違うかもしれない)とオレンジ色のトマトがたくさん並んでいた。

この隣りには肉類を扱っているマーケットがあり、たくさんの生肉が売られていたが、その外ではバーベキューのような感じで肉を焼いている人たちがいた。売り物らしく、かなりいい匂いが立ち込めていたが、買うのはやめておいた。

少し歩くとすぐにマーケットのエリアから出てしまい、地元の人たちの簡素な家が並ぶようになる。そこに、椅子の上にサモサを置いて売っていた女性がいたので買ってみた。値段は4個で200アリアリ(約12円)で、味はなかなかうまい。

写真を撮っていいかどうか聞くと、家の中から娘さんらしい人まで出てきてくれた。

その近くにあった店では油で揚げたイモやバナナが売られていたので、バナナフライを買ってみた。ハエがたかっていたが、それほど気にすることはないだろう。値段は2個で100アリアリ。

バナナには生食用と料理用と醸造用(バナナ酒用)の3種類があると聞いたことがあるが、これは料理用のバナナなのだろう。甘みはそれほどなく、味はサツマイモの天ぷらのような感じだった。

マーケットの周囲には下の写真のように簡素な家が並んでいる。写真を撮っていると子供たちが興味深そうに覗き込んできた。

午後6時半、次第に薄暗くなってきたので、これでホテルへ戻ることにした。このマーケットはあまり外国人が来るような場所ではないらしく、歩いていると周囲の人たちから興味津々で見つめられたりするが、しかし面白かった。今はまだモロンベを訪れる旅行者自体がそう多くはなく、そのほとんどは郊外のバオバブ目当てなので、こうやって町中を歩く人はほとんどいないと思われる。

ホテルへ戻る途中、夕焼けの中にきれいに並んだ雲が見えた。

ホテルに戻り、スタッフに聞いたところ巨木ツアーの人たちはまだ戻ってきていないということだった。そのため、しばらく部屋で休憩した後、先に夕食を取ることにした。

夕食のメニューは、魚のグリル、蒸したカニ、皿に山盛りのご飯。カニはなかなかうまい。米もインディカ米ではなく日本の米に近いので、かなり食べやすいと思う。魚のグリルについては、このときはうまかったのだが、翌日と翌々日の夕食に加えてアンダバドアカでの昼食でも出たので正直言って飽きてきた。モロンベを発つ頃には、この地域には魚のグリルしかないのかという気持ちにもなっていた。

食事中、巨木ツアーの人たちが戻ってきたので、挨拶してから日本語ガイドの人と話してみた。マダガスカル人だがほぼ完璧な日本語を話す人で、この人に助けてもらい、何とか翌日以降の車のチャーターを行うことができた。ガイドの人が値切ってくれて、2日間のチャーター(翌日はモロンベ郊外のバオバブ森林地帯、翌々日はアンダバドアカ)で料金は30万アリアリ(約18,000円)。道路事情等から4WD車でしか行けないので、チャーター料金は高くなる。ガイドの人に言わせるとこれでもまだ少し高いということだったが、無事に車をチャーターできた安心感から、この値段で妥協した。

それにしても、ここでこのツアーの人たちと偶然一緒になったのは、本当に幸運だった。もし私1人だったら、モロンベで何もせずに過ごすことになったかもしれない。食事を始めた巨木ツアーの人たちと日本語ガイドの人に御礼を言ってから、夜9時に部屋に戻った。マダガスカル滞在2日目は、これで終了。