国内旅行編(鹿児島 / 涅槃城)

久しぶりの国内旅行。今回は年末休みを利用して鹿児島へ行くことにした。

目的地は宗教団体「平等大慧会」の2つの施設「寶台」と「涅槃城」で、寶台は2001年以来約8年ぶりの再訪、涅槃城は初訪問になる。あのムー大陸博物館を再び見ることができると思うと、高揚した気分になってくる。


今回の移動手段は自分の車。まだ乗ったことのない九州新幹線で鹿児島まで移動することも考えたが、今回は2つのスポットとも車がないと訪れることができず、レンタカーを借りることを考えると結局自分の車を使うのが一番安いということになる。長距離の車の運転はあまり好きではないが、仕方がない。

佐世保から西九州道を経て九州道を南下し、ところどころで休みながら半日かけて鹿児島へ移動した。やはり、ずっと運転を続けるのは疲れる。

多寶佛塔(ムー大陸博物館)

鹿児島市内で1泊した後、翌日の朝に指宿方面へ向かう。鹿児島 I.C. から指宿スカイラインを南下し、終点の頴娃 I.C. で一般道路に下りる。この頴娃(えい)というのは、日本でも有数の難読地名だと思う。

ちなみに「 頴」で「えい」と読み、 「娃」は発音しないというウンチクを語ると感心される。

頴娃 I.C. からそのまま進んでいけば、やがて池田湖に到着する。ここもムー大陸博物館を見たとき以来8年ぶりなので、かなり懐かしい。

池田湖畔の土産物店には、前回来たときにも見たイッシー像が健在だった。最近は目撃情報は聞かないが、地元の人たちはイッシーをまだ憶えているだろうか。

湖畔で少し休んだ後、さらに南へ進む。池田湖を離れると、やがて道路沿いに「多寶佛塔」「ムー大陸の謎」と書かれた大きな看板が現れる。

ここで右折し、山道へと入る。細い道をしばらく登ると、あの真っ赤な正門が見えてくる。門の前に車を止め、入り口へと向かう。この門も、久しぶりに見ると懐かしい。

早速入ろうとしたのだが、受付に誰もいない。門を見ると、そこに衝撃的な文字があった。

寶台寶物館休館のお知らせ

境内の工事に伴い、しばらくの間休館させていただきます。ご来場の皆様には、ご迷惑をお掛けします。何卒、ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

なんと休館中!

これはまったく予期していなかった。まさか中に入ることができないとは。

周囲に誰もいないので、再開予定がいつなのか聞くこともできない。しばらく待ってみたが、やはり誰も現れないので、今回は諦めることにした。

ムー大陸の謎、珍しい貝がら、石の不思議などを見たかったので、本当に残念。

旅行後にインターネットの掲示板を見ていると、この寶台については「多寶佛塔を除いて、後はすべて取り壊されている」という記述があった。もしこの情報が本当なら、もうムー大陸博物館は見られないことになる。しかし、ムー大陸博物館自体わりと新しい建物だったし、それが取り壊されるということがあるだろうか。

いろいろと調べても正確な情報がわからないので、ここには近いうちにまた来てみることにする。ムー大陸に関する展示物をまた見ることができると信じたい。

寶台を離れ、麓の道路を走っているとき、高台の上に多寶佛塔が遠望できた。

今回は残念だったが、いつかまた、寶台の中に入りたいものだ。


開聞町で国道226号線に移り、対岸の大隈半島側へのフェリーが出る山川港へ向かう。その途中、JRで最南端の駅になる「西大山駅」があったので立ち寄ってみた。

この西大山駅については、ときどきテレビ等でも取り上げられるので知っている人も多いと思う。かつては日本最南端の鉄道駅だったが、沖縄に「ゆいレール」が開業してからは「JR最南端」となっている。

駅自体はごく小さな無人駅で、ときどき観光客らしい人がやってくるものの、静かなもの。指宿枕崎線も鹿児島から指宿まではわりと頻繁に運行されているが、そこから先は過疎路線となり、この西大山駅に停車するのは1日8往復だけ。指宿枕崎線は指宿までしか乗ったことがないので、いつか鉄道で枕崎まで行ってみたいものだ。

ホームからは開聞岳がきれいに見える。記念写真の定番ショットといえる。

しばらく周囲を歩いた後、再び車で山川港方面へ向かう。フェリーターミナルに着くと、次の便は14時10分になっている。かなり時間があるので、このフェリーは諦めて指宿港へ移動することにした。指宿港からも対岸の大隅半島側にフェリーが出ている。

ところが、指宿港に着いてみると、フェリーがかなり小型ということで強風のため運航中止になっていた。仕方がないので、再び山川港に戻ることになった。

戻る途中、せっかくなので指宿市内を回ってみたところ、有名な砂蒸し温泉をあちこちで見ることができた。もっとも、それら並んでいる温泉の中に堂々と「ソープランド・秘宴」という建物があったのには驚かされたが。

山川港からフェリーで対岸の根占(ねじめ)港に渡る。船内に、ちょっといい感じの人形があった。

根占港から海沿いに南下し、本土最南端の佐多岬方面へ向かう。途中の伊座敷という集落で国道を離れ、「本当にこの道でいいのか?」と不安に思うほど細い山道を登ったところに今回の鹿児島旅行の主目的地、涅槃城があった。

涅槃城

山道を抜けると、突然視界が開けて異様なくらいに立派な門が現れる。これが、涅槃城の入口になる涅槃門。写真で見たことはあったが、これほど豪華な作りとは予想していなかった。

以下、様々な角度から撮ってみた。

涅槃門には、平等大慧会の金色の紋章が取り付けられている。8年前、薩摩半島側の寶台にあるムー大陸博物館を見たとき、ムー大陸の地図として円形、ハス型、三日月形の大陸が描かれていたが、この紋章はおそらくそのハスと三日月に由来するのではないかと思われる。

門は閉まっているので、ここを通り抜けることはできない。門の横を通り、先へ進むことになる。

車で坂道を下りていくと、かなり広い駐車場があり、その周りにいくつかの建物が建っている。駐車場に車を停め、近くに海を見るための展望所があったので建物を見る前にそちらへ行ってみた。この日は風が強く、海はかなり荒れている。

展望所の端に立つと飛ばされそうなくらいの強風なので、しばらく景色を眺めてから建物の中に入ることにした。まずは「展示館」と書かれた建物の方向へ。

何かの格納庫のような四角形の建物があり、その前に2体の白い象と金色の仏像がある。なかなか個性的な造形だと思う。

建物の上には、涅槃像があるのが少し見える。

この四角形の建物には、平等大慧会の信者以外は入ることができない。聞くところによると、建物の上の涅槃象は内部が空洞になっていて、建物の中から見ると凹凸が反転した像を見ることができるらしい。そのため、建物の中では「どこにいても寝釈迦様が自分のほうを見ている」という状態になるという。

陽刻と陰刻を錯覚するとこういう現象が起きるというのは騙し絵などで経験したことがあるが、これを大きな涅槃像でやってしまうというのは画期的な演出だと思う。一度見てみたいものだが、信者になるつもりはないので諦めざるを得ない。

手前にある展示館には、信者以外も入ることができる。

入口の横には、以下のように記載されていた。

四天王・七福神を始め三十二体の神佛像がお祀りされてあり、涅槃城を始めとする諸の施設教義の説明が展示されています。

中に入ろうとすると、遠くから私の姿を見つけたらしく、説明員らしい女性が駆けつけてきた。そして、館内のパネル表示を見せながら平等大慧会のことなどを簡単に解説してくれた。「普通の宗教団体とは違う」ということをうっとりとした口調で何度も説明してくれたが、私は基本的に無宗教人間なので、正直言って違いはよくわからなかった。

私は今まで日本各地の珍スポットをいくつも回ってきたが、その中でも宗教関係のスポットの場合は「関係者がうっとりとした感じで説明してくれる」というのが共通した特徴のように思える。

1階のパネルの説明が終わると、地下の廊下に仏像が並んでいるそうなので、こちらは1人で見学した。館内は写真撮影禁止なので、ここの写真はない。一直線の廊下に仏像が並んでいるだけなので、そう見所はなく、奥まで行ってすぐに引き返し、説明員の方に挨拶してから展示館を出た。

地下に下りる前にノートに記帳しておいたところ、この説明員の方と偶然にも同姓であることがわかり、この奇遇をかなり喜んでくれていた。(今思えば、この説明員の方に寶台の再開予定がいつなのか聞けばよかったのだが、なぜかこのときはまったく考えなかった。なぜ思いつかなかったのか、自分でも不思議)

続いて、坂を上った高台にあるペット供養碑へ。「人」というデザインが素晴らしい。

供養碑の横に「悲之供養塔」というペット供養塔がある。こちらのデザインもなかなかのもので、基部に何枚もレリーフが埋め込まれ、横には犬もいたりする。

しかし風が強く、本当に飛ばされそうな感じなので、ここは写真を撮ってすぐに引き上げた。

駐車場の前に土産物店が入った大きな建物があり、その前にガラス張りの夢殿がある。中を覗いてみたのだが、特に何も入っていないようだった。

土産物店に入り、並んでいる商品を見てみると鹿児島の特産品がほとんどで、涅槃城オリジナル商品といえるのは「涅槃城」という焼酎くらいだった。しかしながら、さらに探すと嬉しいことに多寶佛塔が描かれた寶台のペナントが置いてあった。聞いてみると、これは売り物ではなく、何か土産物を買った人に無料で進呈しているということだった。さすがに、いまどきペナントを買うような物好きはほとんどいないだろう。売れ残って久しいらしい。

そこで、焼酎「涅槃城」を買ってペナントを1枚もらおうとしたところ、押し付けられるように3枚ももらってしまった。3枚持っていても仕方がないので、欲しい人がいれば連絡いただければ差し上げます。

土産物店の窓からは「慈之供養塔」という塔も見えるが、こちらは信者以外は近づけないということだった。

これで信者以外が入れる場所は一通り見たので、引き返すことにした。涅槃門へ戻る途中、建物の上の涅槃像が遠くに見える場所があったので、写真を撮ってみた。

それにしても、この涅槃像を内側から見てみたいものだと思う。信者以外も入れるような時代になったら、また来たいものだ。

この後、再び涅槃門の周囲を散策してから、涅槃城を後にした。

ねじめ陽石

涅槃城から海沿いに北上し、鹿児島市へ戻る途中、ガソリンスタンドにこういうものがあった。思わず車を停め、近くで見てみた。

説明書きによると、この石は「ねじめ陽石」という名前だそうである。さらに説明書きには以下のように記載されていた。

この陽石は、昭和61年に施工中の大鹿倉林道開設工事現場より発掘されたもので、まったくの天然石であります。大隅山系の奥深く人里離れた山間部になぜこのような自然石が埋もれていたのか、いまだによく解っておりません。花崗岩の硬度の違いから柔らかい部分が風化していってこの形になったのではないかという説や、あるいは古代人が神々への信仰に供したのではという説など様々でありますが、いずれにせよ見る人に不思議と力を与えてくれる陽石であります。

こういうものがあるというのは事前にはまったく知らなかったので、偶然見つけることができて幸運だった。この石については、インターネットで検索しても情報がほとんどないので、見たことのある人は少ないと思われる。このようにひっそりと存在している陽石は日本にまだたくさんあるはずなので、今後もライフワークとして探索していきたい。

この後、大隅半島をさらに北上し、垂水港からフェリーに乗って鹿児島市へ移動した。この日も鹿児島市内で1泊。

桜島

翌日の朝、鹿児島港からフェリーで対岸の桜島へ渡る。この日のうちに長崎へ帰ることにしているが、その前に見てみたい場所があった。桜島港から車で5分ほどのところに、その「桜島自然恐竜公園」がある。

ここは決してB級スポットというわけではないようだが、恐竜の造形が面白そうだったので来てみた。朝ということもあって人はおらず、閑散とした中に各種の恐竜が並んでいる。

アロサウルスが尻尾を地面に着けて直立していたり、すでに名前が消えてしまったブロントサウルスがいたりするが、これは作られた時期を考えれば仕方がないだろう。なお、ブロントサウルスは現在はアパトサウルスという名前になっている。

ディメトロドンの腹にはきれいに穴が開いているが、こういう光景を見ると駕籠真太郎の 駅前穿孔 を思い出す。

園内にはアスレチックコーナーや長い滑り台もあるし、家族連れには楽しめる公園だと思う。


公園を後にして、せっかくなので桜島の展望台へ行ってみた。桜島を周回している道路を離れ、展望台方面へ上っていくと外国人旅行者4人がヒッチハイクをしていた。予想しない光景だったので思わず停まってしまい、4人を乗せることになった。

話してみると、グループではなくそれぞれ一人旅の途中だそうで、前日に鹿児島市内のゲストハウスで初めて会ったという。国もそれぞれ違い、カナダ、イギリス、イタリア、アルゼンチンということだった。

雪が降り始めた中、湯之平展望所に到着し、雲に覆われているが桜島を眺めることができた。

展示物と桜島を眺めた後、出ようとすると例の外国人たちは軽食コーナーでコーヒーを飲んでいた。話しかけると、まだしばらくここにいるそうなので、私のほうはこれで出発することにした。おそらく、帰りは他の車をヒッチハイクするつもりなのだろう。

桜島を後にして大隅半島側を北上し、溝辺鹿児島空港 I.C.から高速道路に乗って長崎へ戻った。ちょっと慌しかった鹿児島旅行は、これで終了。

(2009.12.29~31)