キルギス旅行記(チョルポン・アタ~ビシュケク)

キルギス旅行も終わりが近づいてきて、この日で首都ビシュケクへ戻ることになる。イシククル湖の遊覧船は乗れなかったが、ルフ・オルドというB級スポットも発見できたし、さらにフランス海軍の2人にも出会えたし、チョルポン・アタ滞在はなかなか充実したものになった。


朝8時半に起床。ほぼ同時に起きたフランス人たちに「ボンジュール」と挨拶し、いったん外に出てみた。天気がよく、かなり気分がいい。

宿泊料金に朝食は含まれているので、9時から朝食。内容はプロフ、パン、トマトサラダ、コーヒーなどで、ウズベキスタン旅行のときはほぼ毎日食べたプロフだが、今回のキルギス旅行では初めて食べる。かなり量が多く、フランス人たちと「これは昼食はいらないね」などと話しながらとにかく完食した。

フランス人たちが「奥にいる犬は見た?」と聞いてきたので、食後に見に行ってみた。前日は馬までは見ていたが、その奥に犬がいたとは知らなかった。下の写真が女主人の馬と飼い犬。

私は犬は好きなので、少しだけ相手ができて楽しかった。

やがてフランス人たちが荷物をまとめて出発していった。これからミニバスでビシュケクへ向かうという。特に連絡先なども聞いていないが、いつか世界のどこかで再会できたら嬉しい。

私のほうは、できればイシククル湖の遊覧船に乗りたいと考えているのだが、この時期はオフシーズンなので運航されていないという情報もある。前日の夜、ロンリープラネット(フランス語版)にも「運航は6月から」と載っていると聞いていたので、まず無理とは思っているのだが、万一ということもあるのでとりあえず船着場までは行ってみることにしていた。

女主人に別れの挨拶をし、10時にゲストハウスを出発した。普段から外国人旅行者を扱っているだけあって英語もそこそこに通じるし、チョルポン・アタに滞在する際は「ペガサス」ゲストハウスはお勧め。


ゲストハウスを出て、船着場方面へ向かう。地図を見ると遊覧船の乗り場はイシククル湖に突き出した半島の西側にある。大通りをそれて半島のほうに入り、しばらく歩くと船が見えてきた。

インターネット上の夏のキルギス旅行記などを読むと、こういう船でイシククル湖の遊覧をやっている写真が出てくるので、ここが遊覧船の乗り場と考えていいだろう。しかしながら、予想通りというか、周囲には人の気配がしない。周囲を歩いても人を見かけないので、やはりこの時期はクルーズは行われていないようだった。

まあ、こうなることは予想していたので、クルーズは諦めた。次回、夏の時期にキルギスへ来る機会があれば、そのときに乗ってみたい。

遊覧船乗り場を出たところに、こういう看板があった。この写真を見るまで知らなかったが、イシククル湖ではダイビングもできるらしい。まだ湖では潜ったことがないので(淡水の場所であれば、この年の後半にメキシコのセノーテに潜ったが)、いつか湖底で遺跡探検をやってみたいものだ。

せっかくなので、さらに半島の先へ歩いていくと湖畔に出られる場所があった。夏の時期はここでも泳ぐ人がいるのかもしれないが、今は周囲を見渡しても誰もいない。

水はきれいだが、しかし冷たい。もともと標高の高い場所だし、天山山脈の雪解け水が流れ込んでいるわけだから当然といえば当然。夏の時期はどのくらいの水温になるのだろう。

しばらく湖を眺めた後、町へ戻ることにした。湖を近くで眺めるのは、今回の旅行ではここが最後になる。


チョルポン・アタの大通り沿いに、ミニバスのターミナルがある。一応、大きな建物はあるが(ただし中には入れない)、何だか廃墟のような感じ。この建物の近くにミニバスが何台か停まっていて、運転手が客集めをやっていた。

ビシュケク行きのミニバスはすぐに見つかり、乗り込んで出発を待つ。さすがに一番の主要路線なので次々と乗客が集まり、12時過ぎに出発した。待ち時間は10分ほどで、ほとんど待たずにすんだのは幸運だった。ビシュケクまでの料金は250ソム。

チョルポン・アタからバルックチュまではイシククル湖に沿って走る。ビシュケクからカラコルまでは南岸を通ったので、これで結果的にイシククル湖を一周することになった。ちょっと珍しい体験だと思う。

果たして、もう一度見ることがあるだろうかと思いながらイシククル湖を見送り、バルックチュからは山岳地帯に入る。途中から線路と併走するが、行きに続いて帰りでも列車を見かけることはなかった。キルギスで列車を見なかったのが今でも心残り。

途中でトイレ休憩があり、周囲の写真を撮ってみた。山の国だけあって、景色はどこでもきれい。

チョルポン・アタから3時間半で、ビシュケクの街中に到着した。終点は西バスセンターだが、途中で下りることもできる。ビシュケクでは「旅行人ノート」に載っていた「アルティン・サライ」というホテルを考えていたので、ロシア正教会の前でミニバスを下りた。ここから歩いてアルティン・サライへ。

アルティン・サライは予想していた通りにきれいなホテルで、ここに泊まりたいという気持が強かったのだが、フロントで聞いたところ満室で泊まれないということだった。残念。

仕方がないので、別のホテルを探すことにした。キルギスに到着した日に宿泊した桜ゲストハウスでもいいが、少し興味のあった「ドストゥク」というホテルへ行ってみることにした。値段が安いわけではないが、1991年から営業しているという「旧ソ連型ホテル」にも興味がある。

下の写真がドストゥクの外観。

中に入ると、旧ソ連型というイメージ通り1階はだだっ広くて薄暗く、さらに閑散としている。絵に描いたような雰囲気に何だか嬉しくなり、宿泊料金を聞く前にここに2泊することに決めた。フロントで部屋が空いていることを確認し、料金を聞くと朝食付きで1泊3,353ソムだった。約7,000円という料金に見合うだけの価値があると考えるかどうかは人それぞれだと思う。

下の写真が今回泊まった部屋。そんなに広くはないが、設備は十分。

最近はビシュケクでもきれいなホテルが増えていて、こういう昔からのホテルは人気が低下しているという。宿泊客も多くはないらしく、廊下や1階のホールはいつも閑散としていたし、何よりどこも薄暗い。エレベーターもかなり旧式だし、これでは人気が下がるもの無理はないという気がする。私のほうは旧ソ連型ホテルというイメージ通りの雰囲気を十分に楽しめたが。

下の写真では明るく写っているが、実際の廊下はもっと薄暗い。

ホテルの近くにサーカスの建物がある。キルギス到着初日にトクマクでサーカスを見てから、ビシュケクでもサーカスを見てみたいと考えていた。そこで、ホテルを出てまずはサーカスへ行ってみた。

前売り券のような制度があるかどうかも知らず、まずは翌日にサーカスが行われるかどうかを確認してみた。掲示されていた日程を見ると、翌日は開催日になっている。毎日開催されているわけではないようなので、ほっと一安心。

さらに、窓口で翌日のチケットを購入できた。座席は全席指定で、場所によって値段に差がある。高い席はほぼ埋まっているようだったので、残っている中からよく見渡せそうな席を選んだ。料金は600ソム。

サーカスのチケットがあっさりと入手できたので、こちらもほっと一安心。

これで翌日の予定も決まり(午前中にバラサグン遺跡へ行き、帰ってきてからオシュ・バザールを見て、夕方からサーカス)、続いてツム百貨店付近を歩いてみた。「ツム」とは「中央」という意味で、文字通りここがビシュケクの中心地になる。5階建てなのでそれほど大きなデパートではないのだが、それでも周辺に大きな建物がないので目立っている。(建物が少し曲がっているのは2枚の写真を合成したため)

店内は日本の百貨店と同様、小さな店がたくさん入っている。電気店や携帯電話店が多いが、中央アジアは韓国との結びつきが強いので、やはりサムスンや LG が目立っている。歴史的な経緯から仕方がないのかも知れないが、日本のメーカーにももっと頑張ってほしいところ。(中央アジアにはスターリンによって沿海州から強制移住させられた朝鮮民族が多いため、韓国との結びつきが強い)

デパート内のような人の多いところではなかなか写真が撮れないが、エスカレーターで下りているときに1枚だけ撮ることができた。

周辺にはケバブなどのファーストフード店が多い。写真を見るとかなりうまそうだったので、どれにしようかと考えながら歩いていると警官2人に呼び止められた。パスポートを見せるように言われ、しばらくパスポートくチェックした後、ついてくるようにと言って歩き出した。この時は「ついに偽警官に遭遇か?」と、妙に興奮した気持になった。

外国では、本物の制服(これが安く買える国も多い)で扮装した偽警官に旅行者が金を巻き上げられる事件があるという話は聞いていたので、とうとうその場面に出会ったのかと思ったが、この時点では警官が偽者かどうかははっきりしない。それに、本物の警官であっても国によっては悪徳警官が蔓延している場合もある。旧共産圏では警官の権威は日本では考えられないくらいに強いという話も聞くし、本物の警官だったらあまり逆らわないほうがいいので、とりあえずついていった。

すぐ近くにあった建物の中に入るように言われ、少し警戒したものの見た目は警察の詰め所のような感じだし、室内も奥行がなさそうなので入ることにした。入口の近くにある机に座り、今度はパスポートだけでなく財布までチェックが入る。盛んに財布の匂いを嗅いでいるので麻薬関係の確認かと思ったら、次は紙幣のチェック。当然、こちらも手元を凝視していたが、紙幣を抜きそうな素振りは見えなかった。後は「キルギスのどこを旅行した?」という話や、パスポートにウズベキスタンのビザがあることから「ほう、ウズベキスタンへ行ったことがあるのか」などという話になり、しばらく雑談した後で「協力してくれてありがとう」と言って解放してくれた。

こちらも愛想よく笑顔を見せながら建物を出て、少し離れたところですぐに財布を確認してみたが、ソム紙幣だけでなく一緒に財布に入れていた米ドル紙幣も減ってはいなかった。はっきりとはわからないが、おそらくは本物の警官による検問だったのだろう。悪徳警官でもなさそうだったが、こちらが手元を凝視していたので抜き取る余裕がなかっただけかもしれない。

(注)帰国後に調べてみたら、日本大使館からのお知らせの中に「警官はパスポートの提示を求める権利はあるが、バッグや財布の中をチェックする権利はない」「もし、そういうことをする警官がいたら、警官の氏名や身分証を確認するように」とあった。考えてみたら当然の話で、このとき財布を渡したのは軽率だったかもしれない。これからビシュケクを旅行する人は気を付けてほしい。

では、気を取り直して夕食。

値段はケバブサンドが70ソムで、露店で売られているアイスティが12ソム。ファーストフードといってもかなりボリュームがある。

その後もツム百貨店付近の散策を続けたところ、わりとレートのいい両替店が並んだ通りがあったので100ドルを両替した。受け取ったのは4,790ソムで、空港よりも2パーセントほどレートがよかった。ビシュケクでの両替はツム百貨店付近の両替店がお勧め。

さすがにケバブサンドだけでは空腹になってきたので、ショッピングセンターのようなところに併設された店でハンバーガーを買い、ホテルに戻った。ロビーに入ると相変わらず薄暗い。

風呂に入って寝ようかと思ったが、テレビをつけると指輪物語(日本ではロードオブザリングというタイトルだが、どうもこの邦題には違和感がある。指輪物語またはロードオブザリングスにしてほしかった)の3作目の「王の帰還」をやっていて、最後まで見てしまった。この映画については、あの原作をどこまで映像化できるのか多少不安にも思っていたが、実際に見てみると想像以上によく作られていた。あの最高に汚いホラー映画「ブレインデッド」の監督がここまで出世したのは嬉しい。

ただ、時間の関係でトム・ボンバディルの登場場面や最後のホビット庄の掃討がカットされたのは残念。個人的には、あと30分ずつ長くてもよかったと思う。

結局、この日は深夜1時半に就寝。